人間だけど私は魔化魍を育て、魔化魍の王になる。   作:創夜叉

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大変長らくお待たせしました。
クロス編の2話投稿です。

今回は、少年達の正体と小雨の友人魔化魍の話です。


弐 小雨のフレンド

SIDE◯◯

 神奈川県某山中。

 

【居ない。居ない。どこに行ったんだよ!!】

 

 そこにはまるで誰かを探すように声を出しながら探す1体の魔化魍がいた。

 

【あいつの居るところには必ずあるアレ(・・)がないのはどういうことなんだよ!!】

 

 魔化魍は辺りを探すのを止めて、今度は地面に染みるように残っている水溜りに触手を突っ込み、暫くそのままでいると、水溜りから触手を抜き、遠くの方を魔化魍は見た。

 

【向こうに居るのか…………待っててよ……アメ】

 

 魔化魍はそう言うと見た方角の方にふわふわと浮きながら移動した。

 

SIDEOUT

 

 ひな達が何処からか連れてきた少年と魔化魍(?)に幽冥は自己紹介と共になんの魔化魍なのか聞いていた。

 

「「魔化魍?」」

 

「そう。君も君の手に居るのも背後で眠っているのも魔化魍なんでしょう? 君は多分、擬人態もしくは人間に近い姿の魔化魍なのかもね。それに君の手に居るのはヒトツメコゾウ? それともモクモクレン? いや〜〜眠眠や葉隠みたいな小さい身体の子はいるけど眼に身体を生やした魔化魍がいるとは思わなかったな〜」

 

 幽冥はまくし立てるように喋り、少年達はぽかんとしながら幽冥の話を聞いていた。

 

「ああ、いけないいけない脱線するところだった。まあ、改めて、なんの魔化魍なのですか?」

 

 幽冥はキラキラした目を少年達に向けて、少年の目の前に移動し回答の返事を待っていた。

 少年と少年の手に乗る彼の母親というものは、魔化魍というよく分からないものを聞いて困惑するも、少年は意を決して目の前の幽冥に話しかける。

 

「そ、その魔化魍というのは何なんだ?」

 

「む。だから魔化魍は魔化魍ですよ」

 

 幽冥は少年の言った言葉にそのまんまの答えを言うが、少年はそもそも魔化魍が何なのかが分からなかった。

 

「う〜〜ん………お嬢さん。私たちは本当に分からないのです。その魔化魍というものが」

 

「魔化魍が分からない………そんな筈は、どう見ても魔化魍らしいのに「幽冥お姉ちゃん」…ん。どうしたの朧?」

 

 少年の手に乗る何かが言った言葉に困り、自分の世界に入りそうになったが………朧の声が聞こえて、朧に顔を向けると。

 

「そいつらの言ってること多分、本当だよ。そいつら全然、魔化魍らしい匂いがしないんだもん」

 

 朧の言った言葉に幽冥は驚く。

 ひなが連れてきた者たちは、目の前の少年を除けばその近くで眠る異形はそれこそ魔化魍と呼ばれてもおかしくないからだ。だが、少年の手に乗る何かは魔化魍が分からないと言った。

 もしも、魔化魍の事で嘘をついているのだとしても、嘘をつくメリットが無いので、彼らの言うことは事実だろうし、何よりも朧が私に嘘を付くはずもない。そうすると考えるのは、彼らが何者なのかということだ。

 

 だが、幽冥は彼らの正体に気付く。そもそも魔化魍とはあるもの(・・・・)をモデルにして生まれた空想の産物。勿論、そのモデルも空想の産物かと思われるが、それは違う。科学がまだ進んでいない昔。

 

 それは人智を超えた現象を起こし。

 

 それは人を巧みに騙し、惑わし。

 

 それは人を魂ごと喰らい。

 

 それは人に恐怖を与えた。

 

 その正体を幽冥は確認するように口にした。

 

「妖怪?」

 

 それが幽冥の前にいるもの正体。その言葉を聞き、少年とその手に乗るものは首を縦に振った。

 

「そう。僕と母さんは違うけど、僕の仲間はみんな妖怪だよ」

 

 少年の答えに幽冥は驚きと困惑の混じった顔で、倒れそうになった所を白に支えてもらった。

 

「君にばかり自己紹介させるのもどうかと思うし、僕らも自己紹介させて貰うよ……僕の名前は零士」

 

「私はこの子の母親のハハマナコ」

 

 ハハマナコが言う言葉に幽冥だけではなく、白も朧も驚く。

 

「「「「ううう」」」」

 

 驚いてる幽冥達を置いて、零士の側にいた妖怪達も目を覚ましていく。そこから幽冥と妖怪達の自己紹介のしあいが始まった。

 

SIDE◯◯

 此処だ。此処にアメがいる。

 

 妖世館の入り口に1体の魔化魍がいた。ふわふわと漂いながら2本の触手を向けて少しずつ身体を回るように動くと、妖世館の庭の方角で触手が振動して魔化魍は触手が振動した方に向かう。

 

 ふわふわと浮くように飛んで、魔化魍は庭の方に着き、魔化魍が見た先には–––

 

小雨

【もう止めてってばーーー】

 

【ここ、ここが良いのかーーー】

 

 魔化魍が探していたレインコートを着たペンギンのような魔化魍 アメフリコゾウの小雨とその小雨にじゃれつくように小雨の身体にとぐろを巻いて引っ付く頭部と尻尾が白骨化した蛇の魔化魍 テオイヘビの屍。

 

 他人から見ると襲われているようにそれを見た魔化魍は何かがプチンと切れて、小雨にとぐろを巻く屍に接近する。

 

SIDEOUT

 

 

SIDE屍

【僕の友達を離せ!!】

 

 上から突然声が聞こえて頭を上げると、触手を振り下ろそうとする魔化魍がいた。屍は小雨に巻きついてるからか避けられず、そのまま魔化魍の攻撃を受けて、妖世館の壁に叩きつけられる。

 

【っ〜痛いじゃない………って小雨、小雨】

 

 小雨ごと壁に叩きつけられた屍は身動きが出来なかった故に壁に頭を打ち、気絶した小雨を揺するが気絶している小雨が起きるはずもなく、屍は小雨の身体から離れて、自分を攻撃した魔化魍を見る。

 

 頭頂部が一周するように燃えていて、垂れ下がるかのように生える無数の触手の中に目立つ4本の長触手、まるで海の中にいるように思わせて宙を浮く小ぶりな鰹の烏帽子の魔化魍。

 

 その姿を見て、屍は王の家族の1人であるクラゲビの浮幽を思い浮かべる。それらの事を考えながら屍は相手の魔化魍をクラゲビ又はそれに連なる種族と予想した。

 

【念のために聞くけどあなた何の種族?】

 

【アメを襲った奴に教える気はないと言いたいけど、冥土の土産という事で教えてあげるよ。僕の名前はタクロウビ】

 

 タクロウビの言葉を聞くとどうやら小雨の友人らしい魔化魍に先ほどまで小雨にやっていた事を勘違いしているらしく、私は取り敢えず、タクロウビに誤解している事を言おうとするが、タクロウビから飛ばされた火球により、まずは話し合う前に動きを封じる事にした。

 

 飛んでくる火球を尻尾で振り払いながらタクロウビに徐々に近づく。だがタクロウビもただでは近づけさせず、触手を使って屍の身体の身体に攻撃する。だが、触手の攻撃はさほど気にするような威力でもなく、屍はどんどん近づく。

 

 おかしい。この程度の攻撃を本気でする筈はないと、得体の知れない核心のある屍は触手1つ1つを警戒しながら、尻尾で叩く。やがて、その核心は当たり、普通の触手とは違う長触手が伸びてきた。長触手は屍に刺さらず、地面に刺さると怪しい煙を出して溶解していた。

 

 タクロウビは長触手を屍、目掛けて突き刺そうとする。屍はそれを躱し、尻尾でタクロウビを地面にはたき落とす。だが、タクロウビはすぐさま起き上がり、屍に向かって飛ぶ。

 

【これでも喰らいなさい!!】

 

 屍の尻尾から大量の毒血液がタクロウビに向かって降りかかる。

 

【がああああああァァァァあ!!】

 

 タクロウビは屍の毒血液を正面からもろに浴び、絶叫の声を上げながら地面に落ちる。

 

【ああ、やり過ぎちゃったかな】

 

 屍は小雨の友人らしいタクロウビに話をしようとして成り行きで戦ったが、流石にやりすぎたと思いながら、肉体が一部溶けたのか身体から蒸気のような煙を出して倒れているタクロウビに近付く。

 

【甘いよ!!】

 

【何、あっ!】

 

 触手で蒸気の煙が消えると中からは、屍の毒血液を受けた筈なのに無傷なタクロウビが屍の身体に炎を纏わせた触手を叩き込み、屍は少し離れた所に飛ばされた。

 

【油断したね】

 

 屍の尻尾から流れる毒血液を浴びてもタクロウビが無傷だったのは、タクロウビが頭頂部の炎を巧みに操り、自身の体に迫る毒血液を炎で蒸発させたのだ。

 この毒血液は実は炎や熱に極端に弱く、マッチの火程度で蒸発してしまう。それを知ってか知らぬかの偶然でタクロウビは屍の毒血液を無効化したのだ。

 そして、身体から出ていた風に見えた蒸気の煙はタクロウビが毒血液を蒸発させた際に出た気体を触手で集め、あたかも自分の身体から出ているように見せていたのだ。

 そのまま屍に近付き、タクロウビは屍を見下ろす。

 

【うう、がふっ……】

 

 屍の攻撃を受けて無力化したと思った屍は油断でタクロウビの攻撃を受けて、丁度真ん中の蛇腹が炎で焼けて黒くなり、白骨化している頭の口からは血にも似た黒い液体が流れていた。

 

【これで終わり】

 

 タクロウビの頭頂部の炎が勢いを増し、頭頂部の炎はやがて触手に集まり、ボーリング玉と同じくらいの火球が作られ、その火球を触手で掴み、目の前に倒れる屍に叩きつけようとする。

 

小雨

【タク!! もう止めてよ!!】

 

 だが、倒れる屍を庇うように気絶していた小雨が両翼を広げて、屍の前に立っていた。

 

【アメ退いて。そいつにこれをぶつけられない】

 

小雨

【嫌だ!! 退かないよ】

 

【どうしてそいつを庇う】

 

小雨

【屍は僕の家族だよ!!】

 

 小雨の言葉を聞き、屍に叩きつけようとした触手に灯った炎がみるみる小さくなっていき、タクロウビはアメフリコゾウに疑問の混じった声で質問した。

 

【え? で、で、でも、アメがそいつに襲われてるのを!!】

 

小雨

【ああ。あれは……】

 

【どっちかというと、スキンシップかな】

 

【え?】

 

 小雨と屍の返答にタクロウビはぽかんとしたような状態になり、先程まで命の取り合いになりそうだった場の空気は一気になくなり、風がピュウーと吹いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タクロウビは小雨の話と庭で騒いでいた事を家族から知らされた幽冥の話を聞き、自分が勘違いしていた事に気付き屍に謝罪し反省していた。

 

「どうしましょうか?」

 

 う〜んと唸るような声を出しながら幽冥が目の前のタクロウビをどうしようかと考えていると。

 

「家族になれば」

 

 零士の何気ない一言に雷に打たれたようにショックを受ける幽冥は千鳥足になりながらタクロウビに近づき、燃えている筈のタクロウビの頭部を両手で掴み、自分の顔の見える位置にタクロウビを移動させると。

 

「私の家族にならない?」

 

 タクロウビは自分の頭部を素手で触って、平然とする目の前の王に内心驚きながらも、その答えは決まっていたかのように口にする。

 

【僕をあなたの家族にしてください】

 

 タクロウビは幽冥に掴まれたまま、その言葉を言うと幽冥はさらにタクロウビの身体に抱きしめようとするが、タクロウビは長触手を使って幽冥に抱きしめられるのを阻止する。

 

【ちょっと、流石に抱きしめるのは危ないです!!】

 

 その様子を見ていた他の家族も幽冥がタクロウビに抱きしめようとするのは危ないと思い、近くにいた白たちが中心となって幽冥の引き離しを始めた。その後、幽冥をタクロウビから引き離すのしばらく時間が掛かったのは言うまでもない。




如何でしたでしょうか?
今回登場した魔化魍 タクロウビはこのクロス編でクロスさせてもらった覇王龍さんのアイディアの魔化魍です。
次回は零士達が来て少し経った後に現れるクロス編の敵が登場します。


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