人間だけど私は魔化魍を育て、魔化魍の王になる。   作:創夜叉

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更新完了です。
今回は、シュテンドウジ幽冥VS酒呑童子です。
戦闘シーンを長く書くのに慣れてないので、誤字がございましたら報告願います。


伍 シュテンドウジ対酒呑童子

SIDE赤

 王が出掛けた帰り現れた魔化魍 オセ。見たこともない複数の犬頭の人型魔化魍と3人の鬼を連れて、王たちに奇襲を仕掛けてきた日から1週間経った。

 

 あれから王の護衛を3人体制で行っている。今日は私と私の子ともいえる浮幽と灯籠の組み合わせだ。

 普段だったら、王の側にいると反応するあいつ()が羨ましがり喧嘩に発展するのだろうが今回の場合、もしもふざけてたら白だけじゃなく他の家族も冗談抜きで殺しにくるので、そのようなことはしない。

 

 とは言っても、この1週間。オセは現れずに沈黙していた。配下の鬼(?)や魔化魍達も現れず、幽冥たちは静かな平和の日常を過ごしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 現在、王は妖世館で歴代の王たちの力の鍛錬をしている。

 以前の不気味な生命体、北海道の8人の鬼との戦いで苦戦した王は歴代の王から借りる力を十全に対応出来るようになる為に鍛錬を行なっていた。しかも王はそれぞれの王の持つ技に多少のアレンジを加えて、新しい技も考えていた。

 以前の北海道の8人の鬼の1人のとどめや紫陽花の屋敷の鬼を拘束した際に使ったのはそういう技の1つらしい。

 

 太刀による剛撃と酒を媒体に味方の回復をする『狂乱酒の魔人』(シュテンドウジ)

 

 神風の如き神速攻撃と風の術を使った中距離戦法をする『旋風の巨狼』(イヌガミ)

 

 氷の技と冷酷無比かつ無慈悲で正確な攻撃をする『尖氷の冷血女王』(ユキジョロウ)

 

 古の術とあらゆる術を組み合わせる多様な知識を持つ『創意工夫の司書』(フグルマヨウヒ)

 

 どの王も戦い方は全く異なる。だが、王はそれらを扱えるようになる為に今日も鍛錬相手の朧や美岬、常闇、屍王、南瓜、紫陽花などの戦闘経験が豊富な家族を相手に鍛錬していた。

 

 最初はイヌガミ様の力を使った鍛錬を朧と常闇と行なっていた。

 内容は常闇の繰り出す血の槍を避けながらの朧との組手で血の槍に当たったら擦ったりしたら鍛錬終了。

 最初は王もいい感じに避けて、朧と組手をするが、時間が経つにつれて少しずつ動きが遅くなり、やがて常闇の血の槍が王の脚を擦りこの鍛錬は終わった。

 

 次はユキジョロウ様の力を使った鍛錬で、相手は屍王。

 内容は屍王に向けての氷柱弾の命中精度上昇で、1つでも当たれば鍛錬終了。

 だが、屍王はかつて陽太郎さんと互角の力を見せた太陽の死体(シャムス・ジュサ)の姿になり、杖から放つ熱線で次々と氷柱弾を溶かし、隙を見た瞬間に左手のケペシュで王に攻撃してきた。

 初めは、突然の攻撃で王が驚き、抗議するも屍王が『相手が不意をついてきた時に余裕で躱せるようになれ』という言葉で、渋々納得して屍王の攻撃を避けながら、氷柱弾を撃ちまくり、そこから数十分の戦いの末にようやく屍王のケペシュを持つ手に氷柱弾が当たり鍛錬は終わった。

 

 少し休憩をはさみ、フグルマヨウヒ様の力の鍛錬を始めた。相手は南瓜と紫陽花。

 内容は南瓜と紫陽花の術をその術に有効な術で相殺するというもので、これは術の相性を見極めてその術に対して有効つまり、赤に青、青には黄、黄には茶、茶には緑、緑には赤という術の相性で相殺するというもの。

 簡単だと思われたが、実際は鬼というような鍛錬だった。紫陽花の撃った術を南瓜が細工して王に近づくギリギリで術の属性が分かるようにした為に、それに対応する王はてんやわんやだった。30分経つと、紫陽花は術を撃つの止めたので、鍛錬終了らしい。

 

 疲れた身体を回復してる王に私はスポーツドリンクを持っていき、それを渡す。こういう行動で少しずつ王に好意をもってらうのが、これをする目的なのだが。

 

「ありがとう赤」

 

 純粋に心配してくれているのだと思われているので、少し悲しいです。

 そして、休憩の終わった王はそのまま、残っていた最後の鍛錬。シュテンドウジ様の鍛錬になり、これは美岬が相手をするようだ。

 王の姿はシュテンドウジ様の姿に似た姿に変わり、その手には瓢箪の蓋が付いた柄の太刀を持ち、対する美岬の手には、チェーンソーのように刀身が回転する奇抜な刀を持っていた。

 

美岬

【幽。鍛錬だからって手を抜かないでよ】

 

「そっちこそ、本気でやらないと怒るからね」

 

 2人は笑いながら互いの獲物を構えた。

 

SIDEOUT

 

 太刀と刀による激しい剣戟。刀同士がぶつかる度に激しく火花が飛び散る。そんな火花も目にくれずに鍛錬ということを忘れるかのようにただ、振り続ける2人。しかし、その顔は斬り合ってるとは思えないほどに清々しい顔をしている。

 幽冥は手に持つシュテンドウジの太刀を振るいながら、昔のことを思い出していた。

 

「(昔はよくこういう風にやってたな〜)」

 

 前世の頃からの親友でもある美岬との鍛錬は幽冥にとって楽しい。別に他の家族との鍛錬がつまらないというわけではない。幽冥と美岬の最初の関係は近所の遊び相手という関係だった。そこから遊んでいるうちに親友となった。

 2人は小学生に上がった時に剣道を始めた。2人は飲み込みがよく、よく互いの腕を競い合っていた。だが幽冥と美岬が18の頃、あと数日で卒業式というある日に美岬は車に轢かれそうになった子供を助けて、この世を去った。幽冥は親友でもあり、競い相手でもあった美岬が居なくなった事で剣道をやめた。

 

 そんな2人はなんの因果か転生して、再び出会った。2人は久々に剣を交える事が楽しくなっていた。

 

 高揚してさらに激しい剣戟が繰り広げられる。そして、刀同士のぶつかる衝撃を利用して両者は相手の攻撃範囲から離れる。

 2人が再び刀を混じえようとしたその時、幽冥と美岬の間の空間が突然歪む。

 幽冥と美岬はすぐにその歪みから離れるように幽冥は赤たちの側に跳び、美岬は朧たちのいる所に跳ぶ。全員歪みに対して、警戒する。

 

「んん。やっと出られたは」

 

 歪みから出てきたのは、赤黒い肌に露出度の高い着物を着て鬼のように2本の角を頭に生やした少女だった。

 

「初めましたやなウチは酒呑童子。あんたが、まかもうの王やなぁ」

 

 幽冥と美岬の間に忽然と現れたそれは、幽冥の方に顔を向けると友達に気軽に話しかけるように挨拶する。

 

「まあ、挨拶はこんなもんにして…………ちょっと動かんでいてもらおうか」

 

 酒呑童子はそう言うと、朧たちの方にいつの間にか移動して、口から黄緑色の煙を吹き出す。

 まさかの煙を出してくるとは思わなかった朧たちはその煙を吸い込んでしまい、その場に倒れる。幽冥は毒だとマズイと思い朧たちのところに行こうとすると–––

 

「王。近づいてはいけません」

 

「だけど、朧たちが!!」

 

ルルル、ルルル

 

灯籠

【大丈夫です王】

 

 赤に止まられて浮幽と灯籠の視線の先には煙を吸い込み、その場で身体を僅かしか動かせない朧たちがいた。赤たちの言葉で幽冥は落ち着き。原因の酒呑童子を睨みつける。

 

「おお恐い恐い。そんな恐い顔しないで、気楽にしぃな」

 

 その原因を作った酒呑童子はあっけらかんとしていた。

 

ルルル、ルルル

 

 浮幽が触手をうねらせて火球を放つ。

 

「ぬるいなぁ〜」

 

 いつの間にか取り出した薙刀で、浮幽の火球は両断されて、見当違いな方角に飛んでいった。

 浮幽は火球が斬られたことに驚き、酒呑童子はその隙を突いて、浮幽の胴部分に薙刀の石突きでバットのように振り、浮幽は痺れている朧たちの元に吹き飛ばされて気絶した。

 

 次に灯籠が右前脚を勢いよく地面に振り降ろすと地面はどんどん変質して石になった。これは灯籠たちバケトウロウの持つ固有能力で右前脚で踏んだものまたは触れたものを石化させる能力で、バケトウロウ達はこれを使って獲物となる人間に当てて、石になった人間を砕いて捕食する。

 そして、その能力で石になったところを勢いよく左前脚で蹴り砕くと無数の尖った石が散弾のように酒呑童子に向かっていく。

 

「しゃらくさいわぁ〜」

 

 酒呑童子は薙刀をくるくる回転させると、竜巻が生まれ飛んでくる石の散弾を取り込み、そのまま鏡の反射のように石の散弾は灯籠に向かっていき、灯籠は自分の出した攻撃に苦しめられ、酒呑童子が一瞬にして近付き、灯籠の甲羅の石灯籠を砕く。

 

灯籠

【うああああああああ!!】

 

 攻撃する為の手段であり弱点でもある石灯籠を砕かれた灯籠は痛みによるショックで気絶し、そのまま地面に倒れ伏す。

 灯籠が倒れると同時に赤が走り出し、十字槍を酒呑童子に向けて突きつける。

 

「おお、危ない危ない」

 

「ちっ!!」

 

 酒呑童子は薙刀の柄で十字槍の刃元付近を抑えて身体に刺さるのを阻止し、そのまま赤に蹴りをいれる。

 

「ぐっ!」

 

 幽冥は飛んで来た赤を受け止め、そのまま横に下ろす。

 

「大丈夫、赤」

 

「すいません王」

 

「気にしないで」

 

 幽冥はそう言うと酒呑童子の方を見たあとに赤を見る。何かを決めたように幽冥は赤に耳打ちをする。

 

ボソッ「赤、私があいつの動きを封じる。その内に妖世館に向かって走って」

 

ボソッ「しかし、王!」

 

「いいから行って!! 白や零士たちを呼んで!!」

 

 私は赤を急いで向かわせるために太刀を瓢箪に変えて瓢箪の蓋を外し、酒呑童子に向けて瓢箪の中の酒気と酒を合わせて砲弾のように飛ばす。酒呑童子は驚くも軽々と避ける。

 

「………分かり、ました。すぐに戻ります。それまでどうかご無事で!」

 

 赤はそのまま妖世館の中に走っていき、残った私はシュテンドウジさんの瓢箪を太刀に変えて構える。

 

「びっくりしたわぁ。………ほー今度はあんたが相手するやな〜ほんなら、いい勝負が出来そうやぁ」

 

 薙刀の刃の近くの柄を持ち、酒呑童子は剣のように振るう、それを幽冥は太刀の峰を利用して防ぎ、シュテンドウジの能力である鬼を体現する力を使って、酒呑童子の溝に拳を叩き込む。

 

「ぐっ! やるな〜ほんなら、これをくらいなぁ」

 

 溝を殴られて怯むも酒呑童子は口を開くと黄緑色の煙が漏れ始めるが。

 

「くらいませんよ!!」

 

 太刀を一度瓢箪に戻して、中から出る液体を口に含み、そのまま毒霧にしてブシュウウと吹き出す。

 すると煙は毒霧に触れると何も無かったかのように跡形もなく消えた。

 

「あらま〜うちの毒を消すなんて、けったいな能力やわぁ」

 

 毒が効かないと判断した酒呑童子は薙刀を構えて、幽冥に向かって走り、その勢いのまま連続で突きを放つ。突きが終わると今度は大振りに振り、幽冥はなんとかその攻撃を去なす。

 激しい酒呑童子の攻撃をなんとか防ぎながら、僅かな隙を幽冥は攻撃するもあっさりと防がれてしまう。

 

【右から来る気をつけよ】

 

「(イヌガミさんが攻撃の動きを教えてくれるお陰でなんとか対処できてるけど、かなりキツくなってきた)」

 

「楽しい楽しい〜な〜!!」

 

 歪んだ笑い声と共に薙刀の動きもさらに上がり、徐々に押されていく。

 

「離れてください!!」

 

 激しい剣戟は続くかと思われたが、幽冥は酒呑童子を蹴り飛ばし、さらに距離を取るとその場で、幽冥の動きは止まる。

 幽冥は肩で息をするほどに疲労していた。それもそのはずだ。酒呑童子が現れたのは、よりにもよって多大な疲労を残す歴代の王の力を使った鍛錬。

 しかもシュテンドウジの力だけでなく、イヌガミやユキジョロウ、フグルマヨウヒの力も使っていた。ただでさえその力を行使した際の反動が強い歴代の王の力、その疲労は計り知れないだろう。

 おまけに先程の酒呑童子の攻撃もそうだ。ただひたすらに薙刀の激しい連撃に見える。だが幽冥からするとそれはゆっくりにしか見えない。だがそれは眼がその連撃に追いついていない為にゆっくり見えるのだ。はんば強制的に幽冥の思考にイヌガミが割り入ったおかげで、その攻撃を防いだり避けたりすることが出来たのだ。

 そして、魔化魍に近い身体になってきていたとしても、元々はやはり人間、肉体の限界というものがあり幽冥はその場で膝をついてしまう。

 

「はい。終わりやぁ」

 

 そんな隙を見逃すはずのない酒呑童子は薙刀を構えて、幽冥に迫る。だが、酒呑童子に目掛けて何かが飛んできて、幽冥に向かっていた酒呑童子はそのまま、その場で宙返りして避ける。

 

 そして、酒呑童子は飛んできた何かを見ると、ため息を吐く。幽冥は飛んできた何かを見るとそれは1本の刀だった。だが、その刀を見て思ったのは何処かで見たことがあるという既視感だった。

 酒呑童子は刀が飛んできた方角を見て、呆れのような声を出す。

 

「はあ〜ここでも邪魔するなんて、まったく空気の読めない男やなぁ〜」

 

「黙れ! 遂に見つけたぞ酒呑童子!!」

 

 そこに居たのは、12の異形を引き連れ、左眼に特徴的な傷を持つヒゲを少し生やした赤髪の青年だった。




如何でしたでしょうか?
今回はこんな感じです。次回は謎の助っ人が活躍します。

それと、まだ種族名を出しませんが、オセの引き連れた犬頭の魔化魍のヒントを3つ教えます。
1 頭文字がイの国から来てます。
2 最も古い伝承があるのは14世紀です。
3 ある神の眷属とされる。

こんな感じです。ヒントは割と簡単な気がします。
では、次回をお楽しみに待っていてください。

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