人間だけど私は魔化魍を育て、魔化魍の王になる。   作:創夜叉

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先ずは、幽吾の話から始まります。
そして、お待たせしました。ついに始まるコラボ編での戦闘回。



漆 始まる戦い

SIDE幽吾

 酒呑童子を追い掛けてやってきたこの世界。

 俺のいた世界の妖怪とは違い、この世界には魔化魍という種族がおり、それらが妖怪として伝えられてきた世界のようだ。話によると、俺の仲間であるヌリカベとその保護者を名乗る妖姫、カワウソ、然王は魔化魍だと、この世界で出会った幽冥という名の少女が言っていた。

 

 妖世館の地下にある1つの部屋。中に入れば、香ばしいチーズと鳥の匂いが来て、来る者の食欲を刺激する。乱風と憑の保護者(?)をしていて、魔化魍とは違う異形の店主であるドルフィンオルフェノクの茂久と炭火焼オルグのおっちゃんの2人が店を移したこの場所は、元々は研究室のあった場所だったが、今では和風な飾りがされた食堂に変わっており、交代交代で店を開き、料理を提供している。

 今日はおっちゃんが店主のようで、鳥肉に串を刺しながら、憑の出す炎で焼き、目の前にいる幽吾ともう1人の客のハハマナコに焼き鳥を提供していた。

 

「………」

 

「………」

 

 2人は焼き鳥が置かれても沈黙が続いていた。やがて、その状況を変えようとしたのか、ハハマナコが口を開く。

 

「久しぶり……で良いのかな」

 

「あ、ああ。久しぶり」

 

 ハハマナコと幽吾。この2人は同じ世界から来たもの同士で、この妖世館で世話になっている零士。彼の父親は今、ハハマナコの側にいるこの青年、幽吾である。

 そもそも零士が父親である幽吾のことを知らないのは、零士が産まれた時に幽吾はその場に居らず、ハハマナコがその存在を教えなかったのが理由だ。

 そして、何故自分の子供が産まれる瞬間に幽吾が立ち会えなかったのは、酒呑童子が原因である。幽吾と酒呑童子の関係はこの話ではなく、また違う機会があれば話すことにしよう

 

 幽吾は零士に会った瞬間に、零士が自分の息子だと分かり、その肩に乗る妖怪も自分の妻だということに気付いた。ハハマナコも幽吾を見た時に、久しぶりに自分の夫に会えたことが嬉しかったが零士が居るためにその場で初対面という風に喋っていた。そして、零士がひとみや雫の相手をして疲れて眠ったのを確認して、この店に来たのだ。

 

「それにしても、その姿はどうしたんだ?」

 

「ああ、私はあの時(・・・・)のが原因で今はこの姿に………」

 

「そうか……すまんな、お前の側に居なきゃいけなかったのに」

 

「ううん。気にしてないよ。でも、あの時は私の側に居てくれると嬉しかったな」

 

「本当に…すまん」

 

 久しぶりの夫婦の会話をしている2人を見て、おっちゃんと憑は数本の焼き鳥を置いてからそっとその場から離れて店の中を2人きりにして、店の外に出て行った。

 

「しかし、その姿では昔のように触れれないな」

 

「………そんなことはありません。見ていてください」

 

 やがて、ハハマナコを覆うように吹いていた冷たい風が止み、幽吾が目を向けると、そこには––––

 

「どう幽吾さん?」

 

「零…華……?」

 

 幽吾の前に座っているのは、ユーモラスな姿をした小人ではなく、美女だった。

 この姿こそ今の姿になる前のハハマナコの姿であり、かつてその美しさから数多の妖怪に狙われた雪女 零華。そして、そんな零華を狙う妖怪達から守ったのが幽吾だった。

 

「最近やっとこの姿になれるようになったの」

 

 和服を着た瞳の小人から、氷のような光沢を見せる水色の長髪をなびかせる和服姿の血色がない色白の美女の姿になったハハマナコ改め零華は幽吾の方に身体を向けると。

 

「ちょ、ちょっと、幽吾さん///////」

 

 幽吾が零華を抱きしめる。突然抱きしめられた零華は、顔を赤くしながら幽吾を離そうとすると、幽吾の頬に触れた時に触ったもので、零華は離れようとするのをやめる。

 

「もう暫くはこのままにさせてくれ、零華」

 

「しょうがない人ね」

 

 零華は抱き寄せられて近くなった頭を撫で、幽吾は零華が何か辛いことがあるたびにしてくれた事に懐かしさを覚えていた。

 2人はそのまま、店仕舞いになるまで置かれていた焼き鳥と酒を肴に息子である零士の話をして、幽吾は今の息子の話を聞き嬉しく思いながらも父親と名乗らない方がいいと思い。零華に自分のことを秘密にしてくれと頼み、零華はそ

れを悲しげな顔をしながら納得した。

 

SIDEOUT

 

 幽吾たちが来て、数週間経った。

 あれから酒呑童子が現れる事もなく。平和な日常を過ごしていた。例えば––– 

 

 『空を飛びに行きたい』と言った、ひとみの為に似た姿をしている鳴風と兜が付き添って人目のつかないように空を飛ばせたり。

 

 家族に怪しいものを売りつけようとしていた白蔵主を零士と共にお仕置きしたり。

 

 ほうこうが新しく作った試作の漬け物をみんなで食べて感想を言ったり。

 

 幽吾がハハマナコを連れて、何処かに行こうとしたので、何処に行くのかというのを家族を連れて追跡したり。

 

 潜砂が家鳴りに頼んだ振動マッサージがかなり凄く。他の家族もそれの虜になったり。

 

 沼御前は持ってきた酒を全て呑んでしまい、それを見た灯籠が怪しい飲み物を勧めて、従者戦闘員を巻き込んだ事件になりかけたり。

 

 色々なことがあった。

 また今日も、何か起きるのだろうと私は思いながら、眠っていたベッドの中に潜り込んでいた白と朧、美岬を揺り起こそうとする。

 

【よ〜うや〜くだ】

 

 私のでも、眠っている3人の声ではない声が聞こえる。部屋一面を見渡しても、眠っている3人以外は誰も居らず、幻聴か気のせいだったのかと思おうとすると。

 

【お〜れは〜外に〜い〜る!! やか〜たの〜バル〜コニー〜か〜らみ〜てみろ〜!!】

 

 再び聞こえた声に幽冥は声の主の言う通りに館の外にあるバルコニーに出て、魔化魍の身体に近くなっていく影響で増えた視力で声の方向に向ける。

 

 妖世館のある山から5kmちかく離れた山にある広く拓けた場所。そこには先程の声の主である魔化魍 オセとお猪口に入れた酒をクイっと呑む酒呑童子。そして、その後ろには襲撃の時にいた3人の鬼と犬頭の魔化魍が数十体、そしてツチグモ、ヤマビコ、バケガニなどの大型魔化魍がオセの背後にある2つの魔法陣から続々と出てくる。

 

【さ〜あ、俺は〜ここ〜だ!! 魔化〜魍のお〜う!! あ〜の時〜の決〜着をつけ〜に、そ〜して、王〜のあ〜かしを〜頂〜く!!】

 

 オセの声と共に、魔法陣から召喚された魔化魍達が一斉に動き出し、まるで音楽隊の行進のように幽冥のいる妖世館に向けて進行を開始した。

 

 山から聞こえてくるオセの声に幽冥は、幽吾に言われた決戦の時が来たと確信した。さらにオセが幽冥に襲いかかった理由も分かった。それは幽冥の……いや、魔化魍の王としての証の1つともいえる魔化水晶。

 そして、オセの声が聞こえたのは幽冥だけではない。眠っていた筈なのにいつの間にか居なくなっていた白や朧、美岬を中心に妖世館に住む家族に広がり、数分経つ頃には、幽冥が家族と呼ぶ者達が集まっていた。そして、進撃を開始したオセの軍勢を見た、幽冥は集まった家族に身体を向けて言葉を出す。

 

「みんな、既に白、朧、美岬から聞いてるだろうけど、私達を襲った犯人ともいう魔化魍が来た。奴の狙いは私、いや魔化魍の王の証の1つともいうべき魔化水晶の破片。目的は不明だけど……でもこれが奪われれば、あの魔化魍はさらに強大な力を手にして、私達の平穏を奪うでしょう。

 ……………ですが、そんなことを私が許さない!! みんなと過ごすこの大切な日常を守るために…………9代目魔化魍の王 安倍 幽冥の名において命じます!! ゴエティア72柱の悪魔魔化魍オセとその軍団を殲滅せよ!!」

 

グルルルル ピィィィィィィ ギリギリギリギリ ノォォォォン シュルルゥゥゥ 

ウォォォォォォ コォォォォォン アオオオオオオオン ジャラララララ

カラララララ ボオオオオ ヒュウウウウウ フアアアアア プルルルル

グガアアアアア キュウウウウン ショキ、ショキ ハハハハハ キキキキキキ

コン、コン ンキィ、ンキィ ヒュルルルル ルルル、ルルル フシュルウウウウ

クルルウウウ ピァァァァァ カッカッカッカッ ユレレレレ 

チッチッチッ、チッチッチッ ユラユラ、ユラユラ オギャァァァ

シャアアアアア ポロポロポロポロ カラン、カラン チュッチュッ、チュッチュッ

ビュウウウウウ ボボボ、ボボボ ピチャ、ピチャ、ピチャ フフフ、フフフ

ワン、ワン キリギギギギ ブルルル ヒヒィィィィン ザアー、ザアー、ザアー

ポポポ、ポポポ

 

 次代の魔化魍の王になる幽冥の宣言を聞いた家族は雄叫びとともにぞろぞろと魔法陣から湧いて出てくる謎の魔化魍と野良魔化魍の軍勢めがけて進撃を始めた。

 ここに幽冥対オセの戦いの火蓋が切って落とされた。




如何でしたでしょうか?
次回の話でようやく、犬頭の魔化魍の正体を書きます。
ちなみに野良魔化魍が数十体居ますが、犬頭の魔化魍よりも早くやられます。
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