人間だけど私は魔化魍を育て、魔化魍の王になる。   作:創夜叉

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お待たせしました。
最近はコロナウィルスとか怖いですよね。
実はこの章にはウィルスを扱うゴエティア72柱の悪魔魔化魍を出そうと思ったのですが、コロナとかの話題的になんかアウトぽっさそうなので、やめました。
なので、予定していたストーリーの一部変更をします。


記録捌拾肆

「九州の猛士壊滅計画ねぇ」

 

 春詠お姉ちゃんやお姉ちゃんの友人の調鬼こと月村 あぐり曰く、九州地方支部は以前戦った北海道第1支部のように魔化魍を使った実験や異常な魔化魍殲滅主義または極少数存在すると言われる魔化魍共存派というわけではない。だが、異様に鬼の素質を持つ者が多く、更には各地方の引退や魔化魍との戦いで戦死した鬼の代わりを派遣するという役目を持つ。

 さらに九州地方の王である千葉 武司はかつてはかなりの実力を持っていた鬼であり、今では王という位置にいるが、いざ戦いとなれば今でも現役の鬼と同格いや、それ以上の戦闘能力を持つと言われている。

 また現在、捕虜として妖世館にいる突鬼こと佐賀 練も元は九州支部に所属していた鬼で、北海道第2支部への援軍として送られた鬼だと本人が言っていた。

 彼らの目的はそんな九州支部を滅ぼして、他の支部に優秀な鬼を送られないようにして、猛士の戦力の弱体化を狙っている。

 

【その通りです】

 

 正座の姿勢で、こちらを見るカツラオトコの眼は真剣な眼差しだった。そして、王である私の言葉を待っている。

 

南瓜

【……王よ。この計画は参加するべきと思われます】

 

 考えている私に対して、南瓜が口を開いた。

 

「南瓜……貴方の考えを聞かせてくれる」

 

南瓜

【はっ。王もご存知かと思われますが私はかつて南 瓜火と名乗って猛士に数年程潜入していました。潜入していた当時は、我ら魔化魍も猛士に見つからぬように警戒しながら暮らしていました。そもそも私が猛士に潜入したのはその情報を流して、魔化魍を守る為です。

 そして、私はある魔化魍に頼まれて、あのムカつく場所(北海道第1支部)に潜入して王が兜たちを救出したのを見届けて、本来の依頼者の紫陽花のところに戻り………おっと、話がズレてしまいました。それでは話を戻します。王が目覚める前の猛士は鬼も数多く、どの支部にも必ず数十人の鬼が存在しました。

 しかし、王が目覚めたことによって我ら魔化魍は活動を活発化し、あらゆる地方に出現する魔化魍の対応に追われて猛士は鬼たちを使って、魔化魍たちを清めてきました。逆に我らも鬼の数を減らしていきましたが。

 その時に我ら魔化魍を清めていた大方の鬼の出身はこの地、九州地方支部出身の鬼たちです。このカツラオトコの言う通り、この計画が成功すれば、曲者が多いこの九州地方の鬼の数を減らせれば、猛士の鬼の弱体化は必然です】

 

 確かに、猛士の鬼の弱体化は願ってもみないチャンスだ。猛士以外にも、私を狙う存在が居る。

 ゴエティア72柱の悪魔魔化魍と呼ばれる者たち。以前はオセという魔化魍だけだったが、今度はいつ仕掛けてくるか分からない。そもそも1体じゃないかもしれない。複数で攻めてくるのかもしれない。そんな魔化魍達

たちを相手にしながら、猛士の力量のある鬼を相手にするのは疲れる。いやハッキリ言って面倒くさい。

 それなら、猛士を弱体化させて、悪魔魔化魍に備えるのもいいかもしれない。

 

南瓜

ボソッ【それに、計画を立案したカツラオトコが友という魔化魍やその仲間はもしかしたら王の知らない魔化魍かも知れませんよ】

 

 南瓜の言葉を聞いて私の答えが決まった。

 

「分かりました。それでは、9代目魔化魍の王として命じます。貴方の言う友人のいる場所に私達を案内しなさい。この計画に参加するかどうかはその者に会ってから話します」

 

【はっ!!】

 

「睡樹と南瓜もついてきなさい」

 

睡樹

【かし…こま…りまし…た!】

 

南瓜

【はっ!】

 

 カツラオトコはその命令に従い、私たちを友人の居る場所に案内を始めた。

 

SIDE白

 王が消えて、既に1日経った。

 あれから、蛇姫は『転移の札』によって転移した場所の特定をしている。その方法は、既に使えなくなった札に僅かに残っている王の気から行き先を判定するというものだ。

 王の気を判別するという集中力のいる作業をする蛇姫の眼の周りは隈が酷く、眼の光もほんの少し薄くなっている。

 

 おまけに『転移の札』の開発の際の徹夜と異変が起きた際に白に問い詰められた影響でほんの少し蛇姫の髪と鱗の艶がなくなり、肌も若干荒れ、動きが止まって頭がカクンとなるのも何度かあり、限界を迎えそうになっていた。それでも自分が作った物で起きた事故故か、その眠気を抑えながら、ひたすら作業を続けていた。

 しかし、その作業も–––

 

蛇姫

【あ、ああ眠っちゃ駄目、眠っちゃ、駄目、眠ったら、お、うが】

 

 限界を迎えた。

 

「そろそろ限界でしょうね」

 

 ぐわんぐわんと頭が揺れ始めてきた蛇姫を見ながら白はそう呟いた。

 だが、何も私は睡魔に耐えきれなくなるまで作業をするとは思わなかった。まあ、最初に朧から話を聞いた時は少し、ほんの少〜し殺意に芽生えて半殺し、いや10分の9殺しにしそうになったところでしたが、そこは王の家族です。王が戻ってきて時に蛇姫が居なかったら悲しまれる。

 それに、もしも王のいる場所が判明し、私が王捜索メンバーを編成した後にその場所に転移させるのは他ならぬ蛇姫だ。

 彼女は術を扱う者の中で転移の術に優れた家族だった。かつては、人間それも術を扱う巫女だった。だが、同じ人間に裏切られ、無名の蛇の魔化魍が喰いやすいようにと腕を切り落とされ、そのまま呑み込まれた。

 だが彼女は自身を喰らった無名の蛇の魔化魍と憎しみと恨みを同調させて無名の蛇の魔化魍の意識を奪い魔化魍 カンカンダラとなった。その後は、裏切った人間を殺し、殺した6人の人間の腕を片腕ずつ奪って自身の身体に付けた。

 

 そんな彼女が巫女の時に得意としたものこそ転移の術

 崩や跳、などといった術を得意とする家族の中でも完全なる転移の術を使えるのは、蛇姫だけだった。

 

 しかし、その蛇姫は徹夜と私のお話(?)が原因なのか寝ずに作業し、そのまま1日経った。

 私は何も眠らずに続けろと思わない。それは、蛇姫が無理をしてでも王は見つける為なら構わないと思うが、どのみち転移の術を使う蛇姫が肝心な時に転移させることが出来なければ意味がない。

 

「………居るんでしょ朧」

 

 床の影に向かって言うと、影が盛り上がり、そこから姿を現す。

 王の側の座を巡って、争う関係である朧。元々は、蛇姫と行動を共にしていた経歴を持つ。

 

【………それで、なんの用って言うまでもないか】

 

「話が早くて助かります。では、お願いします」

 

【いいよ。でも、代わりは?】

 

「跳にお願いしました」

 

【そう。じゃあ、眠ってもらいますか】

 

 そう言った朧は再び、影の中に潜り込み蛇姫の影の近くから顔を出す。

 

【お疲れ、蛇姫】

 

蛇姫

【……あ、朧。はい。お疲れ、さま、です】

 

 朧の言葉に蛇姫は少し間の開いた返事で返し、すぐに前を向いて作業に戻る。

 

【……蛇姫。幽冥お姉ちゃんを心配するのは分かるけど、眠ってくれないかな。蛇姫が倒れたら、誰が幽冥お姉ちゃんのいる場所に連れて行くの?】

 

蛇姫

【分かって、る。……ですが、私が、やらないと、私の、せいで……王に、もしも……】

 

【はあー。仕方ない。本当は自主的に眠って欲しかったけど………ごめんね】

 

 朧はそう言うと、前足に影を纏わせて、そのまま蛇姫の後頭部に振り下ろす。蛇姫の頭からゴンッと鈍い音がして、蛇姫はそのままずるずると机にもたれ掛かるように倒れた。

 

【取り敢えず、これでいいの?】

 

「ええ。ありがとうね朧」

 

【いいよ。蛇姫は友人だし】

 

【失礼しやす】

 

 朧が私の側に戻ってきた時と同じタイミングで扉が開き、魔化魍態の跳が入ってきた。跳を見た私は蛇姫の近くに行き、蛇姫の身体に手を忍ばせて持ち上げようとする。

 

「せーの んぐっ!!」

 

 女性である蛇姫にこう思うのは失礼なのだが、蛇姫は意外と重かった。しかも持ち上げた瞬間に両腕からビキッという音まで聞こえた。

 術を掛けていることもあって忘れていたが、蛇姫ことカンカンダラは本来、大型に分類される魔化魍である。この妖世館に住むにあたって、中型から大型の魔化魍は館をその大きさで破壊しないように自身に術を掛けて、その本来の大きさから身体を少し小さくしている。しかし、術を掛けているとはいえ、体重までは変わらない、その結果、見た目は等身大と思われがちだった蛇姫の身体を私は持ちあげる事が出来なかった。

 だからそれを見ていた朧も蛇姫の下半身の尾の太い部分を咥える。

 

【じゃ、あっしはこの札の作業をさせてもらいやす】

 

 そう言った跳は蛇姫がいた場所にある『転移の札』の作業を始めた。

 それを見た私は気絶している蛇姫を朧と共に部屋の隅に敷いておいた布団に寝かせ、軽い毛布を掛けた。毛布を掛けられた蛇姫は穏やかな寝息と共に深い眠りに入り、私と朧はその様子を見てから、そのまま部屋を出た。

 

 

 

 

 

 

 そして、ぐっすり眠れたのか、清々しい笑顔を見せて起きた蛇姫は作業をしていた跳と共に作業をし、幽冥達の特定が出来たのは数時間後だった。

 

SIDEOUT

 

【ようこそ魔化魍の王。私は貴女が来るのを待っていたのだ】

 

「貴方がカツラオトコの友人ですね」

 

【ああ。その通りだ】




如何でしたでしょうか?
今回はこんな感じです。次回は主人公がカツラオトコの友人『不明』が登場。


ーおまけー
迷家
【じゃあ、おまけコーナーは、じまるよーー!!♪】

迷家
【4回目の今回のゲストはーーこのおまけコーナーに来る前に会った放火魔こと暴炎だよーーー】

暴炎
【誰が放火魔だ!!】

迷家
【でも、燃やすの好きじゃん】

暴炎
【燃やすのが好きなんじゃねえよ。これは種族上の性だ】

迷家
【性って言ってもーー君のその種族上の性って、多分、他のヒトリマよりヤバいと思うよーー】

暴炎
【ぐっ、否定できない】

迷家
【まあ、僕は気にしないんだけどねーー♪】

暴炎
【あ、そう。で、俺への質問ってのは?】

迷家
【そうだねーーー。じゃあじゃあ、今まで喰べた炎で1番美味しかったのは何?】

暴炎
【1番美味かった炎? うーーんとな、お!! そうだ、あの炎が美味かったな?】

迷家
【どんな炎?】

暴炎
【ある魔化魍の生み出した炎だ。あれは凄かった、何せ、3日間ずっと燃えていたからな】

迷家
【3日も!?】

暴炎
【そうだ。そいつの炎は透き通る様な綺麗な青い炎だった。だが、綺麗さの中に激しい憎悪の込められた炎。
 あれ程の美味い炎を俺は喰った事がない】

迷家
【そっか。まあ教えてくれてありがとう。おっとそろそろお別れの時間だね。じゃ、まったねーーー♪】

暴炎
【また会おう】

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