人間だけど私は魔化魍を育て、魔化魍の王になる。   作:創夜叉

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昇布の変異態(自動変身タイプ)の暴走鬼鏖殺回です。
ハッキリ言うとある特撮の怪獣2体がモデルで周りに害を与えるヤバい進化をした昇布です。
因みに害は人間に絶大な効果がある害です。魔化魍には、あまり影響がありません。一部魔化魍は有るかも(亜種か異常種又は変異態を生み出すという意味で)。


記録捌拾捌

 大量の蒸気の中から現れた昇布の姿は元の姿から大きく離れていた。

 

 白かった身体は全体的に発光する赤に変わり、右側頭部に凶々しく鋭利な鹿の角を左側頭部には鼻先から左側頭部に移ったのか螺旋状に捻れた犀の角を生やし、ヘドロの如く濁った液体が長い尾の全体を覆い、そして、尻尾を覆っている物と同じ物を頭から爪先まで身体全体に滴らせている。

 体躯は東洋龍から人型に変わり、2本の脚で立つ昇布は赤く濁った涙を流しながらギラつくような十字の虹彩が目立つ赤い瞳を鬼達に向ける。

 

「なんだ、あれは」

 

「何という禍々しさ」

 

 鬼たちは昇布の変わりように驚き。

 

波音

【いけない。このままじゃ】

 

穿殻

【術の準備を】

 

波音

【お願い】

 

ルルル、ルルル

 

 波音は姿の変わった昇布を見て、そう呟く。まるで何か危険なような言い方に幽冥たちは疑問に思う。

 

ブジュルルルルルゥゥゥゥゥゥ

 

「ふん。姿が変わっただけだ。気にするな!!」

 

「姿が変わった程度で!! 音撃響(おんげききょう) 土柱岩棺(どちゅうがんかん)!!」

 

「ああ。これでもくらえ!! 音撃波(おんげきは) 暗斜火輪(あんしゃかりん)!!」

 

 濁った液体をぶち撒けながら咆哮する昇布に鬼たちは音撃を放つ。

 茶色の鬼は手に持つ音撃弦の刃先を地面に突き刺し、そのまま弦を弾くと地面が盛り上がり土の壁は鉄の如き硬さに変質して、変異した昇布の全身を壁で覆い尽くし。

 赤い鬼は手に持つ音撃管から炎に包まれた車輪の如き音撃が土の壁に覆い尽くされた昇布に地を回りながら迫る。

 炎の車輪状の音撃が土の壁にぶつかると炎が弾けるように土の壁を覆い尽くした。

 

「「音撃合奏(おんげきがっそう) 火葬岩棺(かそうがんかん)」」

 

 1人の鬼が対象の魔化魍を土の音撃で変質させた土の壁に閉じ込めて、もう1人の鬼が炎の車輪型の音撃を放って土の壁全体を燃やす。それが、この音撃合奏(おんげきがっそう) 火葬岩棺(かそうがんかん)だ。

 この2人の鬼は名持ちの鬼では無いが、同時に繰り出した音撃合奏技(おんげきがっそうぎ)によって数体の魔化魍を清めた(殺した)実績を持つ。

 今回も名持ちである『白蜥蜴』の討伐のために編成され、その音撃合奏技(おんげきがっそうぎ)を使って『白蜥蜴』を討伐しようと九州地方支部(長崎支部)は考えた。だが–––

 

ブ…ュ………ルルゥゥ……

 

 炎に覆われた土の壁の中から声が響く。

 2人の鬼はまさかと炎に覆われた土の壁を見る。

 

ブジュルルルルルゥゥゥ

 

 土の壁を突き破って、身体の一部が炎に包まれた昇布が飛び出す。

 2人の鬼は現れた昇布に再び、音撃合奏技(おんげきがっそうぎ)を浴びせようと音撃武器を構えるも。

 

ブジュルルルルルゥゥゥ

 

 昇布が腕を振るうと腕から滴る液体が音撃武器に触れた途端–––

 

「うお!」

 

「俺の音撃弦が!!」

 

 鬼の持っていた音撃管と音撃弦は白い煙を立てながら中の音撃を放つのに必要な機構を溶かし、形を残したまま音撃武器を破壊した。

 

「がっ、ぐああああああああ!!」

 

「あががあああああ!!」

 

 音撃武器を破壊した昇布は両手で鬼たちの顔を掴む。

 すると、鬼たちの面から蒸気が上がり、鬼たちは苦しいのか腕や脚を使って昇布から逃れようともがくが、少しずつ鬼たちの動きが鈍くなっていく。

 

ブジュルルルルルゥゥゥ

 

 昇布が声を上げると鬼たちの身体は勢いよく発火し、炎に包まれた。

 その光景は先程、昇布に仕掛けた音撃と似たような仕返しを鬼たちはされた。

 

「勇人!! 了!! くそーーーー!!」

 

 2人の鬼の名前を呼ぶも、返事はない。

 その意味を理解したのか、名前を呼んだ鬼は変身音叉を音叉状の刃先の槍、音叉槍に変えて、昇布に向かって走り出す。

 

「死ねぇぇぇぇ魔化魍!!」

 

 鬼の持つ音叉槍の刃先が昇布の身体に触れた瞬間–––

 

「なっ!! 音叉槍が!!」

 

 先程溶けた音撃武器とは異なるように、音叉槍は柄半分を残してドロっと融けた。

 そして、言うまでもないだろうが、音叉槍の元は変身音叉である。鬼に変わる為に必要なもの。それを失った鬼はどうなるか?

 

「しまった!! ぐっ、がああぁぁ」

 

「目が、目がああああああああ」

 

「があああああ、溶ける、痛い、痛い!!」

 

 鬼の変身は解け、その隙を見逃さない昇布がすかさずその身を横に振るうと、身体から滴る液体が四方八方に飛び散り、変身の解けた鬼の脚に当たって脚を溶かし、そこから離れた場所に立つ鬼の面に当たって面ごと眼を溶かし、音撃管で液体を撃った鬼は防げたと思うも逆に細かくなって避け辛くなった液体を浴びて、鎧の上から溶けて中を溶かしているのか、毟り掻くように全身を掻く。

 鬼たちにだけダメージがあるように思われるが、幽冥たちにも昇布が四方八方に飛び散らせた液体は飛んでくる。

 

穿殻

【避けてください!!】

 

「ぎゃあああああ!!」

 

暴炎

【そらぁ!!】

 

睡樹

【防…ぐ】

 

南瓜

【せい!!】

 

 しかし、幽冥の側にいた穿殻が触手から水流を放って幽冥に掛かりそうになった液体を飛ばし、水流の先にいた三津谷と呼ばれていた鬼に命中させた。勿論、液体の混じった水流を浴びた鬼は当たった箇所、頭から溶けて死んだ。

 

 暴炎も操炎術(そうえんじゅつ)で操った炎で液体を蒸発させて液体を防いでいた。

 

 他にも睡樹がツタを使って飛んでくる液体を防いだり、南瓜が土系の術で土を盛り上げて壁を作ったりと、このような家族連携によって幽冥たちには1つも被害がない。

 

「こうなったら全員であの魔化魍に音撃を仕掛けるんだ!! 音撃管は全員、音撃合奏技の準備を、残りは奴の足止めだ!!」

 

 鬼のリーダーらしき者の声で行動する鬼たち。

 音撃棒や音撃弦、音叉刀、音叉槍を持った鬼たちが昇布に攻撃を仕掛け、音撃管を持った鬼たちは集まって、最初に昇布が殺した鬼たちと同じことをしようと音撃管を昇布のみに向けて、タイミングを図る。

 

 昇布は迫る鬼たちに向けて今度は尻尾を振るう。

 身体から滴る液体と同じ物が鬼たちに向けて飛んでくる。鬼は液体を浴びて死んで仲間のこともあり、液体には何もしないで避けようとするが、液体は先程の液体と異なって広がるように飛んでいき鬼の2人は避けるが他の鬼たちは液体を浴びてしまう。

 液体を浴びた鬼たちは身体が溶けることを覚悟したが、溶ける様子もなく。こけおどしかと思い、鬼たちは昇布に攻撃する。しかし––––

 

ブジュルルルルルゥゥゥ

 

「おい、どうした」

 

「ぐっ、なんだ、これ…」

 

「脚が!!」

 

「動こかねえ!!」

 

 昇布まであと少しという所で、数人の鬼は動きが止まった。止まった鬼たちも何故動けないのか焦りを覚えながら、必死に身体を動かそうとする。

 

「いったい何が………アレは」

 

 身体を動かせる鬼の1人が動けない鬼たちをよく見ると、鎧の各所に黒い物が動かそうとする腕や脚を固める様に引っ付いていた。

 

「みんな!! その黒いやつを剥がせ!! それが動けない原因だ!!」

 

 原因は何なのかが分かったが、動けない鬼たちは身体自体動かせないので、剥がそうとしても、その剥がそうとする黒い物によって動きが阻害されている。

 

「おい、背後を見ろ!!」

 

 すると昇布の相手をしていた鬼が仲間の方を見ていた鬼に叫ぶ。

 鬼が振り向くと––––

 

ブジュルルルルルゥゥゥ

 

 昇布は口に何か集めるかの様に開き、その中心には橙色の光球が少しずつ大きくなっていく。

 

「何かヤバい。素鬼!! 戻ってこい!!」

 

「なら、撃たせなけりゃいい!! 視鬼! そいつらを守ってろ!!」

 

 素鬼は自身の音撃弦を垂直に持ち、昇布に向けて走る。

 昇布の口元の光球はどんどん大きくなりあたり一面を照らし、遂には口に収まるギリギリの大きさ変わる。光球の周りに紫電を迸らせながらいつでも撃てると言うように構える昇布。

 やがて、迫る鬼の音撃弦が昇布に当たりそうになった瞬間––––

 

ブジュルルルルルゥゥゥ

 

 咆哮と轟音と共に昇布の口からは放たれた橙色の巨光は自身に迫っていた素鬼と呼ばれた鬼を、動けない仲間を守る為に立った視鬼という鬼を、その後ろで動きを止められた鬼を、その後方にいた音撃を放とうとした鬼を呑み込み、その後ろにある山の山頂付近を擦り、空に広がる雲を消し去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 光が治り目を開けた幽冥たちの目には昇布の放った攻撃の破壊跡が大きく映った。

 地面が抉れるようにまっすぐ伸びた破壊跡をよく見ると所々にドロドロというのが生緩い様な醜く融けた鬼だった物があった。

 

ブジュルルルルルゥゥゥゥゥゥゥ

 

 だが、昇布はそれでも暴れ足りないのか、あたり一面に先程のよりは威力が低い口から吐く熱線によって辺りの樹は焼け、震えた身体から溢れる液体が下に垂れる度に落ちた先から白い煙が上がる。そして、幽冥たちの方に振り向き、口から鬼を殺したのと同じものを溜めて放とうとした瞬間–––

 

波音

【今よ!!】

 

 蛇姫と波音、穿殻の繰り出した水の術と水流が昇布の身体に命中する。

 命中した水の術や水流は昇布の身体に当たると蒸気を生み出し、視界を奪うようにどんどん増えていく。それでも波音たちは術を昇布に当て続ける。

 

ブ、ジュ……ルルル…ルルゥ…ゥゥ……

 

 すると昇布の赤く染まった身体をどんどん白くしていき、人型だった身体も元の龍の姿に戻っていく。水を浴び続ける昇布は力が抜けたように地面に横たわり、波音が昇布に近付き、更にその身体に付いた水を利用し、術で昇布の体を氷漬けにした。

 

波音

【これで大丈夫、のはず】

 

 自信のない波音の言葉を聞きながら幽冥たちは氷漬けになった昇布を見ていた。

 

「波音、昇布のアレはいったい?」

 

波音

【分からない。前にも昇布が鬼に怒りを覚えて、あれに変化した】

 

「そう言えば、何故マズいと」

 

波音

【過去にあの姿になった時、その場にいた猛士の人間は、昇布の放った攻撃と熱によって骨すら残さずドロドロに融かされたように死んだ】

 

波音

【そして、昇布もその熱にやられるようにどんどん融けていった】

 

「!?」

 

波音

【あの時、その場にいた全員で昇布の身体を冷やし続けたことで元に戻り、融けた身体も少しずつ元に戻っていった】

 

 氷漬けになった昇布の身体も先程、波音が言ったように一部が融けており、元々の白い身体でも目立つほど幽冥たちに痛痛しく映っていた。

 

「傷が癒えるのはどれくらい?」

 

穿殻

【前にあの姿になった際には、1週間ほど】

 

 幽冥の質問に答えた穿殻は触手で凍った昇布を持ち上げて、自身の殻の上に乗せた。

 

「みんな移動しよう。このまま居たらまた鬼が来る。その前にここから離れよう」

 

 幽冥は周りに影響を与えない結界も張れず、昇布によって起きた大きな被害を察知した鬼たちが再び現れることを考え、青の案内で目的の場所に移動することにした。

 場所は今回の計画の立案者のセトタイショウが用意した隠れ家。




如何でしたでしょうか?
今回は昇布の無双とオリジナル音撃技の音撃合奏技を出してみました。音撃合奏技のイメージは劇場版響鬼達のやった音撃連続攻撃や仮面ライダーディケイドの音撃同時演奏攻撃みたいなやつです。
因みに2人だと合奏、5人だと大合奏、8人以上だと超合奏となります。



ーおまけー
迷家
【はーーい。おまけコーナーだよ♪】

迷家
【今回はーーー昇布を止めた立役者の波音だよ♪】

波音
【立役者って、あ、波音です】

迷家
【いやーー立役者だよ〜♪ それでさ、昇布の……アレについての質問何だけどさ、アレって結局何なの?】

波音
【……王には言ったけど、アレについては何なのか実際不明。
 王達に出会う前にいつの間にかあの姿になれるようになっていたとしか言えない】

迷家
【うーーーん。ねえさ、昇布があの姿になれるようになる前、なんか変わった事なかった?】

波音
【………あ、関係あるか分からないけど、昇布は時折、散歩に出て行った時に何か入った物を持って帰っては、それをよく飲んでいた、それが原因?】

迷家
【………ねえ。その何かってさ、有害物質て奴じゃないのー?】

波音
【有害、物質?】

迷家
【そう。それが昇布に影響を及ぼしたんじゃないのーー?】

波音
【分からない。………でもあの昇布が再び現れることがないようにしたい】

迷家
【あ……そうだね。…………なんか変な感じだから今回はここまで。じゃあね】

波音
【………】

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