人間だけど私は魔化魍を育て、魔化魍の王になる。   作:創夜叉

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遂にこの章も終わりが近づいてきました。
読んでる方は気づいたでしょうが、付喪神編から九州地方編に変更しました。
それでは幽冥が猛士九州地方支部壊滅計画を発動します。


記録玖拾弐

 九州地方某県の森中。

 そこには、戦闘用の服に変えた幽冥と魔化魍としての本来の姿に変わっている鉄が側に立っている。

 

「時はきた!! みんな、まずはありがとう!! 計画を先走りすることもなく3日間よく待ってくれた。鉄たちも今まで殺された魔化魍のことを思って耐えてくれて、本当にありがとう!!

 3日、たった3日。だが、みんなその胸には惨たらしく清められ(殺され)た魔化魍達の怒りや哀しみや怨みもあった。怒りで襲撃を仕掛けようとした者もいることは知っている。だが、皆、耐えた。怒りに蓋をしてその心を大海のように穏やかにして耐えた!!」

 

 幽冥と鉄しか居ないのに演説の様に喋るのは、勿論家族に聞かせるためにだ。

 だが、鉄以外の家族は何処にも姿が見えない。しかし、幽冥の前には、ユキジョロウの力で作り出した水晶の様に透き通った氷の玉が宙に浮いていた。

 幽冥の前にある氷の玉は映像を他の氷の玉(端末)に送り、その姿を映像のように投影して声を伝えるものである。分かりやすく言うとしたら、某銀河騎士の映画に出てくるホログラム通信のようなもの。

 

 その声や姿はこの場に居ない家族に向けて流されている。

 そして、そんな家族が何処にいるか。

 

 答えるなら、襲撃を指定された家族は幽冥に指定された襲撃場所の付近で待機して、同じ氷の玉(端末)を宙に浮かせながら王である幽冥の言葉を聞いていた。

 

「そして、待つ時間は終わった。解放せよ、その身に溜めた怒りを、哀しみを、怨みを、奴らに向けて解放しなさい!! 

 その爪で引き裂け、その牙で噛み砕け、炎で燃やし尽くせ、潰せ、捻れ、壊せ、屠れ、抉れ、溶かせ、殺せ。奴らが手を出したものが如何なるものか。骨身の髄にいや、魂の奥底までに思い知らせろ!!」

 

 そして、幽冥は一呼吸置いて氷の玉から他の氷の玉(端末)に向けて離れた場にいる家族たちに王としての命令を下す。

 

「9代目魔化魍の王たる安倍 幽冥が命じる。力のない幼き魔化魍や逃げることしか出来なかった魔化魍を殺した猛士を! 九州地方支部を壊滅させなさい!!」

 

 その指示は聞いた家族は歓喜の声を、そして、猛士に対しての怨嗟の声を上げて動き始めた。

 幽冥の命令によって家族は猛士九州地方支部壊滅計画を開始した。

 

SIDE長崎支部襲撃メンバー

 海に面した場所の崖の近くにひっそりとある猛士長崎支部。

 そんな長崎支部のある近くの海に巨大な影が浮いていた。

 

 動物と魚の骨を幾重に重ねた艦の姿をした水底の半身の上には4つの影があった。

 

「では、行きましょう。そちらの準備は青?」

 

「ああ、問題ない」

 

 手に持つ氷の玉(端末)を砕き、肩に大尊を乗せた白が鉄扇を裾から取り出し、その側に立った魚のような外見を持った大弓を持つ青が先にある長崎支部を睨みつける。

 

大尊

【始める】

 

渦潮

【ああ、我らの怨讐を始めよう】

 

 白の肩に乗っかっていた大尊は術で縮小していた身体を大きくし、渦潮と共に海に飛び込む。

 

水底

【では、開戦の号砲でも撃たせて頂きます】

 

 舵輪を握った硨磲貝の人型の水底が半身である艦を操作し、砲身を長崎支部に向ける。

 

「撃てえぇ!!」

 

水底

【–––発射】

 

 白の号令とともに骨の砲身から放たれた3つの砲弾は長崎支部に直撃し、凄まじい爆発と炎を生み出し、建物の一部が崩れていく。

 建物から慌てて出てくる長崎支部の人間を視界に収めて、白たちは長崎支部襲撃を始めた。

 

SIDEOUT

 

 

SIDE大分支部襲撃メンバー

 猛士大分支部の建物がある場所から遥か下の地面の中、そこには大分支部に襲撃を掛けようとする幽冥の家族がいた。

 だが––––

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【うう、頭が痛い】

 

暴炎

【ああーーーーなんか、すまん】

 

【別にいいです。体質を変えようとしない私にも問題が、ううう】

 

三尸

【しかし、アルコールによる弱体化がここまでとは】

 

 頭を尻尾で抑えながら唸る屍と屍を介抱する暴炎たち。

 屍は暴炎に無理矢理呑まされた酒の影響がまだ抜けていなかった。

 

 少なくても人間だったら3日も経てば、酒のアルコール成分も抜けて普通になるだろうが、だが屍は人間ではなく魔化魍。それもとびきり酒に弱い種族であるテオイヘビだった。

 そんなことを知らずとはいえ、無理矢理呑ませて今の状態にしてしまった暴炎は後にその話を聞いた白にお仕置きされるのは言うまでもない。

 

【頭痛が治まるまでは屍殿は此処でしばらくは待機だな。何、少し遅れたとしても問題ないだろう】

 

【ありがとう………じゃあ、後は、よろしく】

 

 桂の言葉を聞いた屍はそのまま眠る。

 屍が眠るのを確認した一同はそのまま、地面の上を睨む。

 

【ああは言ったが、別に屍殿が起きる前に潰しても問題ないだろう】

 

暴炎

【そうだな。屍にはゆっくり眠ってもらって】

 

三尸

【俺たちで潰すとしよう】

 

 その先には、標的である猛士大分支部がある。

 3体の魔化魍は口元から牙を覗かせ、爪を研ぎ、斧を構え、炎を揺らめかせる。

 

SIDEOUT

 

 

SIDE熊本支部襲撃メンバー

 猛士熊本支部の建物近くの森の中。

 乱雑に生える樹々の間をくねるように駆けるながら走る影があった。

 

ポオオオオオオオオオ

 

 その影の正体は、幽冥の新たな家族であるユウレイキカンシャの穢流だった。

 

穢流

【目標に接近。皆さん準備を】

 

「「おおーー(うむ)」」

 

 穢流の、いやユウレイキカンシャの身体は電車の客車のように天井から丸輪っかの吊革やピンク色の少しプニョっとした独特な座り心地の座席がある。

 そんなユウレイキカンシャの穢流の身体に乗ってるのは、擬人態の姿となっている崩と穿殻だ。

 何故、2人がこのようにしてるかと言うと、2人は肉体的にいえば既に成体になっており、本来の姿のままで行動すれば作戦発動前に猛士に見つかってしまう。

 

 そこで、穢流の提案により擬人態の姿で穢流の電車のような体内で待機し、王である幽冥の命令を待っていた。

 そして、幽冥の命令によって穢流たちは行動を始める。

 

穢流

【では、突撃!!】

 

 穢流はそのまま、熊本支部の壁に向けてさらにスピードを上げる。

 どんどん迫る壁に臆することもなく穢流は壁に最高速度に近い速度で体当たりする。

 

 

 

 

 

 

 穢流の激突によって壁は破壊され、砕けた壁の破片がそこらじゅうに散らばる。

 

「穿殻よ。大丈夫か?」

 

「だい、丈夫」

 

 そんな穢流の体内にいた2人は座席から滑り落ち、互いの状況を確認する。

 

「うむ。我は問題ない。さあ、始めるぞ」

 

 2人は立ち上がると穢流の身体の一部を押すと扉のように開き、そこから降りる。

 2人の降りた先には、猛士の人間がぞろぞろと壁に突撃した穢流の周りに集まり始めていた。

 

「何だ!!」

 

「敵襲!! 敵襲!」

 

 警笛に似た物を吹くと、周りから警報が鳴り響く。

 

「魔化魍だ。早く鬼を––」

 

穿殻

【五月蝿い!!】

 

「た、助け、べが」

 

 猛士の人間がディスクアニマルを使って鬼に報告する為に投げようとすると擬人態を解いた穿殻は触手の1つを唸らせて人間の首を締め上げて、残りの触手で人間の身体を食い千切る。

 

【潰れろ】

 

「ぎゃっ!!」

 

「がっ!!」

 

 擬人態を解いた崩はその脚で人間を踏み潰して、穢流の周りにある岩を尾で吹き飛ばす。

 さながら某ゾンビ映画やクリーチャー映画の怪物のように暴れる2体は、そのままズンズンと奥に進んでいく。

 

穢流

【せめて、出してから行ってください】

 

 壊れた壁に挟まる穢流を置いて。

 

SIDEOUT

 

 

SIDE宮崎支部襲撃メンバー

「9代目魔化魍の王たる安倍 幽冥が命じる。力のない幼き魔化魍や逃げることしか出来なかった魔化魍を殺した猛士を! 九州地方支部を壊滅させなさい!!」

 

 王の命令が宙に浮かぶ浮幽たちに響く。

 浮幽たちがいるのは、宮崎支部のある建物のはるか上空。襲撃メンバー全員が空を飛べるまたは宙を自在に移動するという特徴を活かした待機だった。

 

 しかも、見張りとして放たれているディスクアニマル 茜鷹を破壊し、迷家の有幻覚を使って作った偽物を飛ばしてることで敵がまだいないと思わせる徹底ぶりの待機だ。

 

ルルル、ルルル

 

写鏡

【心、心、心配】

 

迷家

【大丈夫だよ写鏡。僕の幻覚は本物と同等。絶対にぜったーーーいにバレないよ!!】

 

【まあ、俺たちが宮崎支部に近づけるのも迷家のおかげだ】

 

迷家

【えっへん。まあ、手加減は此処までにして、そろそろ本気で行くよ】

 

 迷家は飛ばしていた茜鷹の幻覚を自身たちに被せて宮崎支部にゆっくりと近付く。浮幽たちのその姿はさながら隠密行動する某蛇の様だった。

 

SIDEOUT

 

 

SIDE鹿児島支部襲撃メンバー

 人の住む住宅街から少し離れた場所にある猛士鹿児島支部。

 その支部に繋がる隠れた一本道を歩いていく4つの影。

 

羅殴

【さーーて、暴れるか】

 

【暴れよう】

 

 腕をぐるぐる回しながら歩く羅殴とまち針を取り出す縫。

 

食香

【では、準備を】

 

 食香がそう言うと、身体からポコポコと音が鳴り、食香の身体から小さな分体が増えていく。

 その様子を見ながら、最後列にいる蝕が口を開く。

 

【みなさん、先ずは私からですよ作戦通りに】

 

羅殴たち

【おう!!【【はい】】】

 

 異様なオーラを放つ液体の入った試験管を持った蝕が氷の玉(端末)を砕き、不気味に笑う。

 蝕によってこれから鹿児島支部は恐怖に陥る。

 

SIDEOUT

 

 各支部を襲撃する家族に配った氷の玉(端末)が消えていくのを感じ取り、そのまま私も目の前の氷の玉を握りつぶす。

 そして、私も鉄と共に転移の支度を始める。

 

【では、王。このまま目的の福岡支……何者だ!!】

 

 鉄が急に何もないところに向けて叫ぶと、空間が歪み、そこからローブを纏った男が片手に歪なナイフを持って飛び出し、私の目の前にまで一瞬にして動いて、私に向けてナイフを振り下ろした。

 

【させるか!!】

 

 ナイフは鉄の腕に阻まれて砕け散り、ローブの男はすぐにナイフを捨てると今度は鉄に殴りかかる。

 

【貴様!! 何が目的だ!?】

 

「王を殺す」

 

【させると思うか】

 

「邪魔だ!!」

 

【ぐっ】

 

 鉄の脇にローブの男の蹴りが入り、鉄は体勢を崩す。

 

「鉄!!」

 

「死ね魔化魍の王」

 

 鉄を振り切ったローブの男は隠し持っていたもう1つのナイフを取り出し、私に突き刺す。

 

【させるか!!】

 

 地面を割って飛び出した溶岩の様な腕がローブの男のナイフを止めた。

 

「南瓜!!」

 

 地面が盛り上がり姿を現すのは南瓜だった。

 

南瓜

【まんがいちを考えて、待機してよかった】

 

「ちっ!! 邪魔を、むん」

 

睡樹

【おか……げで…王……守れる】

 

「睡樹!!」

 

 南瓜の後ろから現れるのは南瓜と同じように待機を命じた睡樹がツタの腕で男の身体を拘束する。

 

蛇姫

【ありがとう睡樹。後は私が!!】

 

「蛇姫!!」

 

 そして、睡樹のツタの腕を掴み現れたのは、南瓜たちを待機させる要因となった蛇姫だった。その手には私をこの地に飛ばした原因の『転移の札』が握られていた。

 

蛇姫

【鉄。あなたは王をお願いします。この男は我ら3人で】

 

 そう言うと蛇姫の手にある『転移の札』が光り、蛇姫たちと睡樹のツタで拘束されたローブの男は遠くに転移した。

 

「睡樹!! 蛇姫!! 南瓜!!」

 

【王!! あの者が何者かは不明ですが彼らに任せ、我らは目的の福岡支部に】

 

 『転移の札』で消えた3人の名前を叫ぶ私を落ち着かせる様に鉄は声を掛ける。

 

「………分かった。行こう鉄」

 

 そう言った私は、蛇姫が渡した目的の福岡支部に転移する『転移の札』を地面に向けて振り下ろす。

 光に包まれた幽冥たちの居た場所には破けた『転移の札』が残っていた。




如何でしたでしょうか?


ーおまけー
迷家
【僕、復活!! 前回はながい話で頭が痛くなったけど、休んだら治った!!】

唐傘
【ど、どどうしたの急に?】

迷家
【気にしないで。じゃあおまけコーナー始っまーるよーーー!!】

唐傘
【は、は始まるよ】

迷家
【はい。というわけで今回の質問! 唐傘は人造魔化魍だけどさ、ツクモガミ種の魔化魍と似てるよね。
 それって偶然? それともなんか深いわけが?】

唐傘
【どうなんだろう?】

迷家
【えっ?】

唐傘
【ぼ、僕ね。う、産まれて直ぐに製作した奴らに封印されました。だ、だだからなんでこの姿かは知らない】

迷家
【何か聞いちゃまずかった?】

唐傘
【いいですよ別に…………ただ】

迷家
【ただ?】

唐傘
【僕を封印する際の製作者たち、なんか目に光がなかったな、それに肩が何かに喰いちぎられた痕や腕がぐにゃぐにゃになってたりしたなって】

迷家
【………………】

唐傘
【あっ、そうだ。僕、飛火と葉隠といっしょに空中散歩する約束があったので、これで失礼します】












迷家
【…………結局聞かなかったけど、あの札、何だったんだろう? まっ、いっか。じゃ、今日はここまでバイバーーーイ!♪】
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