今回は大分支部と宮崎支部襲撃の回です。
二日酔いで苦しむ屍を寝かせて暴れる暴炎たちとあることが起きてブチ切れる浮幽。
猛士側のオリジナル設定やオリジナルアイテムが出ます。
では、どうぞ!!
SIDE大分支部
快晴な空の下、大分支部の訓練所に多くの鬼や大分支部の人間が集まっていた。
大分支部に配属されたばかりの鬼に成り立ての未熟者を鍛える訓練を行っていた時だった。
地面が突然割れて、そこから3体の魔化魍が飛び出した。
1つは、九州地方の各支部に攻撃を仕掛けた『
斧を振るい、割れた地面の近くにいた鬼の首を刎ねる。
また、1つは四国地方高知支部で暴れ、8人の鬼である暴鬼を殺した『
頭の炎を使って、遠くにいた大分支部の人間を焼き払う。
最後に現れたのは、壊滅した北海道3支部で目撃された『
尾の提灯を光らせて鬼の視力を奪い、脳天に爪を突き刺し、ぐりぐりと腕を動かして鬼を殺す。
三尸に殺された鬼の仇と言わんばかりに若手の鬼が音叉刀を持って斬りかかるが–––
クルルウウウウ
「なっ!?」
三尸の硬質化した皮膚によって音叉刀は根本から刃が折れ、刃先がくるくる途中を舞う。
クルルウウウウ
そのまま、隙を見せた鬼の身体に爪を突き刺し、上に振り上げると鬼の身体は上半身だけ両断される。
「おのれ!!
殺された仲間に怒る鬼はバックルから量産型音撃鳴を量産型音撃管に取り付け、必殺の清めの一撃を吹く。
しかし–––
クルルウウウウ
三尸は音撃に焦ることもなく、今、両断した鬼の死体を音撃に向かって放り投げる。
「なっ!!」
音撃は鬼の死体に当たり、風の音撃の影響か上半身を両断された死体の断面から血が噴き出て、辺りを赤く染めて鬼の面に降り掛かる。
「うお!! 前が!!」
面を覆った血が音撃を中断させて、血を拭おうと必死に鬼は手を動かすが–––
桂
【はっ!!】
鬼の目前まで瞬時に移動した桂は長斧で鬼を袈裟斬りする。
鬼の身体は斜めにズレてそのまま倒れる。長斧に付いた血を勢いよく振って飛ばし、違う敵の元に向かおうとする。
桂
【ぐっ!!】
突如、桂の肩に衝撃が走り、その衝撃で桂は膝をついた。
桂
【これは!!】
肩を見ると、そこにははんば砕けかかった音撃弦が桂の肩に突き刺さっていた。
桂は音撃弦に手を掛けると–––
桂
【ふっ!!】
音撃弦は徐々に白い氷に覆われていき、凍りつくと同時に凍った音撃弦に力を込めて、音撃弦を砕く。
砕けた音撃弦の残った刃を桂が抜き、地面に捨てる。
桂
【味なことをする】
「そうですか。ですが、これで終わりじゃありません」
桂が声の方に身体を向けると、死んだ鬼の傍らに立つ鬼がいた。
頭部が薄い黄色で縁取りされ、左右からアシンメトリーに伸びるシャープな角、橙色の鎧を纏い、右肩に半透明な肩当てを着けた鬼がいた。
桂
【その姿、お前が大分支部の閃鬼か】
閃鬼とは、従来よりも持ち手が長くハルバードに近い形状をした音撃弦を持ち、大分支部の鬼の中で最も九州地方から逃げようとした魔化魍を
「でしたら、何ですか?」
音撃弦 閃を構えて答える閃鬼に対して桂は–––
桂
【………同胞の無念を晴らさせてもらう】
素早く閃鬼の元に移動し長斧を振り下ろす。
「同胞の無念? それは、こちらのセリフです。私たちの仲間を仇を取らせてもらう!!」
音撃弦の持ち手を盾のようにして桂の長斧の攻撃を防ぐ閃鬼は振り下ろされた長斧を強引に押して、桂との距離を離して音撃弦を横なぎに振るう。
それに対して、桂は音撃弦の刃すれすれで身を曲げて避ける。
桂は避けてすぐに口から冷凍ガスを閃鬼に吹き付ける。閃鬼は音撃弦を回転させながら桂へと距離を詰める。
詰め寄ってくる閃鬼に焦ることもなく桂は冷凍ガスを吐きながら、長斧を投げる。
突然投げられた長斧に驚いて回転が緩み、長斧は回転が緩んだ音撃弦にぶつかって閃鬼の手から滑り落ちる。
桂は投げた長斧を掴み、勢いよく閃鬼の首元に振り下ろす。
閃鬼は身体を屈めるて長斧から避けようとする。が–––
「っ!!」
閃鬼の左脚がいつの間にか凍っており地面に固定されていた。
先程音撃弦を落とした時、桂は口から冷凍ガスを吐きながら閃鬼に接近していた。身体の凍結ではなく、移動するための脚を凍らして回避行動を封じるために吐いていた。
凍った左脚のせいで動けない閃鬼は迫る長斧に向けて右拳を突き出す。
桂
【なっ!!】
「ぐっ」
拳は長斧に当たり、長斧による攻撃をズラし、命の危機は回避した。
しかし、首元を狙った一撃は閃鬼の面に当たり、面はひび割れる。
面のヒビは徐々に広がり、やがて面は砕けて地面に落ちていく。
砕けた面の下から現れた顔を見て、桂は驚く。
桂
【女か】
「っ! うあああああああ!!」
砕けた面の下から現れたのは、この大分支部の支部長 布都 ミタマ。
しかし、布都は桂の言葉を聞き額に青筋を作り激昂する。
布都は魔化魍によって家族を殺され、自身も殺されそうになった時に当時ではまだ少なかった女性の鬼である眩鬼に助けられ猛士に入った経緯を持つ。そして、鬼として戦う眩鬼に憧れて鬼になる修行を始めた。
だが、当時猛士では女が鬼として戦うことに否定的だった。
眩鬼はそんな否定的な中で鬼として名を馳せた人物であるが、布都が鬼になるまでは苦難の日々が続いた。
『女が鬼になるな』、『女が戦えるのか?』、『女に背中を任せられるか』、『女性は戦わないべきだ』。女、女、女、自身の性別が女というだけで否定の言葉を何度も受けた。
1度は心が折れかけたが、そんな布都を助けてくれたのも眩鬼だった。
彼女のお陰で折れかけた心も持ち直し、同期の男に負けてたまるかという意思でやってきて、鬼として一人前となった。そこからは魔化魍を清めていき、その実力もあって、当時引退間近だった大分支部の支部長に認められて大分支部の支部長となった。
まあ、長々と説明して何が言いたいのかと言うと、布都は『女』という言葉を聞くとキレるということ。
閃鬼こと布都は凍った脚を無理矢理動かして、地面に刺さっている音撃弦 閃を拾うと桂に向かって走る。
だが、桂はそんな布都の昔を知るはずもなく長斧で追撃する。
それに対して、布都も音撃弦 閃を突き出して、桂の長斧と鍔迫る。
布都の攻撃を桂は長斧で急所を狙う攻撃だけを逸らす。しかし、逸らした軌道を無理やり変える音撃弦による攻撃は桂に地味なダメージ少しずつ与えていた。
長い攻防が続き、桂の長斧が音撃弦の攻撃をズラすのに失敗する。布都は遂に桂の右肩に音撃弦を突き刺す。
そこから閃鬼は早かった。
突き刺した音撃弦で桂の体勢を崩して地面に転がし、桂が転がされると同時にベルトのバックルに着く音撃震を取り外して音撃弦の窪みに嵌め込む。
「
閃鬼が何故、閃鬼と呼ばれるようになったのか。
閃鬼が音撃を放つ前準備の動きと音撃を放つ動き、その一連の動きがあまりにも速く、魔化魍に音撃弦を刺し、音撃を放って30秒で魔化魍を塵に変えたという当時、組んでいた鬼からの証言からその名を着けられた。しかし––––
「ぐっ! 脚が!!」
音撃も終盤に入ろうとした時に左脚が悲鳴をあげる。凍らされているの無理に動かした左脚のダメージが今頃になってあらわれる。
そして、そんな隙を見逃す桂ではない。
音撃を放っていた音撃弦の持ち手を掴んで、音撃弦を凍らせていく。布都は急いで離れようとするが、桂が握り締めると音撃弦の持ち手は氷と共に砕ける。砕けた音撃弦を見て唖然とする布都の頭に長斧の峰を振り下ろす。
桂
【残念だったな】
「く、お、のれ…」
剥き出しになった頭に受けた衝撃で布都はそのまま地面に倒れて気絶する。
音撃武器の破損と気絶によって戦闘不能になり地面に横たわる布都。桂は何を思ったのか布都を捕虜にすることにした。その為に先ずは倒れている布都を抵抗できないようにすると右腕に長斧を振り下ろして腕を落とす。
「ううううううううううううう!!」
気絶していたのに腕を切り落とされればその激痛で目を覚ます。布都の口元には自殺防止のためか、五月蝿い声を黙らせるためなのかそこらへんで死んでいた大分支部の人間の服を千切って猿轡のようにして口に巻いていた。続いて左腕に長斧を振り下ろす。
「ううううううううっう、うう!!」
そして、最後にダメ押しと言わんばかりに布都の脚に腕を押し付けて能力で氷漬けにする。このダメ押しが原因か抵抗する気力を無くした布都を米俵のように担いで桂は暴炎の元に向かった。
SIDEOUT
SIDE暴炎
炎はいい。
赤かったり、青かったり、緑色だったり、橙色だったり、いろんな色の炎がある。
手の中でゆらりと揺れる炎を舌で舐める。
やはり、炎は自分の炎を喰らうより燃やしたものから喰らうのが美味い。
そう心中で語る暴炎の周りには自身の吹き出した炎によって、焼かれたものが黒い塊に変えられて、そこら中に転がっている。
酸素がある限り燃え続ける万物の始まりたる炎。人間は炎を手にしたことで進化した。
炎を手にして、食料を焼いたり、獣を追い払ったり、夜を照らす明かりにする術を見つけた。
しかし–––
「ま、魔化魍を通すな、ぎゃああああ!!」
炎を手にして進化したのは人間だけではない。
人々を恐怖に陥れた魔化魍たちも炎を手にし、人間たちを苦しめた。当時の猛士は魔化魍の存在を隠しつつ、魔化魍の脅威を教える為に妖怪という言葉を作ったとされている。
人は人智を超えた
そして、妖怪として呼ばれていた魔化魍が猛士の活躍によって昔より遥かに数を減らしたことと科学が進んで妖怪という存在が空想だとされたことにより
あらゆる不思議や霊的現象が科学で解かれる時代ともいわれる現代だが、それでも人類が解明できたのは95%。つまり5%は人類が解明出来ていない未知の世界。
その未知に属する魔化魍。人は未知を嫌悪し恐怖し受け入れられない。
–––––話がズレた気がするので戻すが、そんな人類進化の象徴ともいえる炎を操る暴炎は、現在ハイになっていた。
ボオオオオオ
あらゆるものを等しく燃やし、ゆらゆらと揺れる炎を眺めつつ敵対する猛士の人間を手から放った炎で燃やし、咆哮を上げる。
ヒトリマ種の魔化魍は総じてパイロマニアである。自身の燃やした炎によって生まれた炎を喰らう。その中でも暴炎のパイロマニアぶりは従来のヒトリマ種の魔化魍よりも群を抜いていた。
まずヒトリマ種は確かに炎を喰らうが、それ以外にも人間の僅かな肉も喰らう。だが、暴炎は違う。暴炎は完全なる炎喰らい、つまり炎のみを喰らうという偏食いや炎食家(時折、幽冥たちの作る料理を喰うが)なのだ。
とにかく炎を喰いたいと、自身の本能と欲求のままに目に映った大分支部の人間を次々とその炎で燃やしていき、燃やした身体についた人の脂の混じった炎を食らっていく。
「そこまでだ!!」
新たな獲物を探そうとする暴炎を止めたのは1人の鬼だった。
頭部が濃い灰色で縁取りされ、両こめかみから沿って伸びた2本の角、黒に近い緑色の鎧を纏い、両肘と両膝から直線上に伸びた突起のある鬼がいた。
右手には吹き矢に似た音撃管、音撃
その名は改鬼。
猛士九州地方佐賀支部の生き残りの鬼で、現在は大分支部の鬼として行動している。
暴炎
【誰だ、てめえ?】
「私は改鬼。以前貴方達に壊滅させられた佐賀支部の鬼です」
暴炎
【佐賀? ああ、世送にやられたとこか】
「………その世送という魔化魍が私の敵ですね」
暴炎
【おいおい。俺を無視か? まあ、世送はここには居ねえがな】
「ならば探し出して清めるだけ」
暴炎
【出来るのか。それと、俺を倒してからそう言うのを言え】
「その必要ありません。既に終わっています」
暴炎
【ああ? 何だこりゃ?】
暴炎の足元にはいつの間にか複数の石つぶて、いや鬼石が何かの紋章のように埋められていた。
「
口元に音撃
暴炎
【うおおおおおお!!】
突然の炎と衝撃に驚き混じりの声が響く。鬼石から発生した炎の音撃は蓮華のような形を保ち、中心に居る暴炎を焼き尽くす。
中にいる魔化魍を焼き尽くすまで消えることのない炎の蓮華は曲に合わせて炎の勢いが増す。
「コレでおしまいです」
音撃
暴炎
【………あーあー。俺に炎を浴びせるとかやっちゃったなーーー】
炎の中から聞こえた声に足を止めざるえなかった。
「馬鹿な炎とはいえ、音撃だぞ!!」
暴炎
【だから、それがダメなんだって。俺に炎は駄目だぜ。なにせ俺らヒトリマは炎ならば火事だろうが、火災旋風だろうが糧にできる。そして俺は
そう言いながら炎の音撃の華が吸い込まれるようにして消えて、中から現れたのは二足歩行の蜥蜴ではなく太古を支配した恐竜の中でも凶暴と謳われるTレックス。
全身を赤く染め、山吹色の縦に開いた瞳孔の瞳、後頭部と尻尾には朱色混じりの炎をうねらせ、肩部には触れたものに傷を付けるギザギザな鱗、背中には動いてるようにも見える炎の形状をした背鰭を生やしている。
暴炎
【此処で炎を喰らってたところで追加の
ぐっぱぐっぱと手を握ったり閉じたりしながら改鬼を睨む暴炎。そんな時–––
「改鬼さん無事ですか!!」
「魔化魍がいるぞ!!」
「動いてない今のうちに音撃で!!」
大分支部の鬼たちがやって来て、改鬼を手伝うために音撃武器を構えて、全員が戦闘態勢に入る。それに対して暴炎は–––
暴炎
【おお。鴨がきたきた!!】
喜ぶように声をあげて頭部にある炎を掴むと朱色の炎はその色を変えていき、蒼く揺らめく炎に変わる。
その炎を持ちながら腕を振るう。蒼い炎は扇状に広がり、改鬼たちに襲いかかる。
「なっ!!」
炎の音撃を扱うからこそ、蒼い炎の脅威に気付き横に転がるようにして炎から避ける。他の鬼たちは回避することもなく蒼い炎に呑み込まれ、鬼たちは断末の声を上げることもなく一瞬にして炎の中へ消えた。
「小尾、奈美、ゲン。なあ、返事をしてくれ!!」
一瞬にして消えた鬼たちの名前を言うも無反応。だって、既に焼滅しているのだから。
暴炎
【あちゃーー火力が強すぎたか。これじゃ炎が喰えねなぁ】
まるで、失敗失敗というような暴炎の言葉に改鬼の冷静さを奪う。
「よくも仲間を!!」
音撃
「なっ!!」
鬼石は暴炎の身体に張り付くことなく、ジュッと焼けるような音とともにその形を残さずに消えた。
暴炎
【俺のこの姿にさせてくれた礼として一撃で葬ってやるよ】
頭部の炎を根こそぎ取るように掴むと、その炎をこねくり回し先程と同じように色は蒼くなっていくが、炎はこねくり回す際に一緒に練り込まれる空気によってその大きさはどんどん大きくなっていく。
手を離せば、暴炎の全身を覆うほどに大きくなり龍の形状に変化した蒼い炎が蜷局を巻いて宙に浮いている。
「これは!!」
蒼い炎の龍は炎の筈なのにまるで意思があるように改鬼を睨むように顔を向け、燃焼音に近く龍の唸り声にも似た声が聞こえる。
暴炎
【さあ終わりだ。
暴炎が腕を振るうと蒼い炎の龍は顎を開き、改鬼に向かって真っ直ぐ飛んでくる。
「魔化魍ううういいいうう…」
蒼い炎の龍は改鬼を呑み込んだ。
暴炎の炎の龍は放たれた先で暴れるように動き回り、炎の龍は満足したかのように落ち着いて、そのまま暴炎の頭部の炎に一体化する様に消えた。
炎の龍が動き回った地面は炎の龍に呑み込まれた改鬼は影の形や塵すらも残さずにこの世から焼滅した。
暴炎は、身体から勢いよく漏れ出ている炎を頭部に戻す。
暴炎
【ふううううううう。抑え、ろ。お、さ、え、ろ】
炎を抑えると今度は手で押さえつけながら自身に暗示を掛けるように呟く。
炎の勢いは少しずつ落ち着いていき、暴炎の姿も少しずつ元に戻っていく。
暴炎
【ふううううう。ふうううううう。はああああああ、ようやく、治った】
その言葉を口にした暴炎は元の姿に戻り、膝が地面についた状態で息を深く吸いながら整えていた。
息が整った暴炎は後ろから近づく気配に気づく。
暴炎
【おお、桂。終わったか? うん。それはなんだ?】
桂
【ああ。こいつは捕虜だ。戦うことは2度と出来ない】
その内容を聞いて納得したのか暴炎は何も言わず、先程の戦闘の余韻で興奮している身体を少しずつ冷ましていく。
そして、数分経つ頃には戦闘の興奮を完全に抑えて、捕虜を抱えた桂と共に三尸の元に向かった。
SIDEOUT
SIDE三尸
桂と暴炎が鬼と戦っている頃。
三尸はひとり、大分支部の人間の殲滅を行なっていた。
だが、その殲滅の途中に大量のディスクアニマルが三尸の行方を阻んだ。
猛士九州地方大分支部。
九州地方全体の魔化魍の発見と足止めを主だって行う支部で、鬼の数はそれこそ少ないが、その鬼たちを支える『天狗』が所属している。
天狗とは鬼の後継者不足や鬼の死亡によって減った戦力を猛士の上層部が苦渋の末に生み出した鬼とは違う存在。
そのほとんどが鬼の適正を持たない者で、ディスクアニマルを戦闘用に改造し大型化した『
三尸
【ちっ!! 面倒だ!!】
そう言いながら、三尸が爪を振り下ろしたのは瑠璃狼が元となった戦輪獣 瑠璃牙と黄赤獅子が元となった戦輪獣 黄赤爪。
だが、その小型犬位の小ささと素早さもあってかなかなか爪が当たず、逆に死角となっている場所から走り出して三尸に噛みついたり、その鋭利な爪で傷を作っていく。
「魔化魍が戦輪獣にいいようにされてる」
「いい気味だ」
「瑠璃牙と黄赤爪の速さはこんなもんじゃない」
「……………」
「仲間の仇だ!!」
そう言いながら5人の天狗は戦輪獣たちを操って三尸を攻撃する。戦輪獣専用の鬼笛こと『天狗笛』を吹いて、様々な指示を送って戦う天狗。
勿論。三尸も戦輪獣を操る天狗を狙おうとするが、天狗たちも自身の非力さを理解している。
5人の天狗の側には従来のよりも遥かに大きくなった、黄檗蟹が元となった戦輪獣 黄檗盾が天狗を守る壁として肥大化している右爪を構えている。
よく見るとその爪には三尸の爪が無数に突き刺さっており、三尸の攻撃から天狗たちを守った証拠でもあった。
三尸
【(あのデカイのが邪魔で)】
戦輪獣 黄檗盾によって攻撃を当てられない。おまけに瑠璃牙と黄赤爪の攻撃によって傷を増やしていく三尸。皮膚の硬質化をすれば良いと思われるがあらゆる死角から攻める戦輪獣たちの攻撃よって皮膚の硬質化は間に合わず、傷を作っていく。
どうにかして、黄檗盾を潜り抜けて天狗を倒さないといけない。頭で考えてもどうすればいいかと三尸は思考する。
三尸
【(イチかバチか、やってみるか)】
三尸は尾の提灯を持つと、提灯に自身の折った4本の爪を突っ込む。すると爪が少しずつ橙色に変色していく。
変色した4本の爪を指で挟むように持つと同時に尾の提灯から光を放ち、遠くの位置にいた天狗たちの目を一時的に潰す。
「げべっ」
走ると同時に4本中3本の爪を天狗たちに向けて投げつける。だが、黄檗盾が間に入ることによって1本は黄檗盾の右爪を削り、2本目は脚の1つに突き刺さる。しかし、3本目は黄檗盾から離れた位置に立っていた天狗の眉間に突き刺さる。
偶然とはいえ天狗を1人始末出来たことで、イケると判断した三尸は残った1本を握りしめて黄檗盾まで走り、黄檗盾を袈裟斬りをする。しかし––
三尸
【熱が足りなかったか】
急拵えで生み出した技によって付けた傷は浅かった。
落石にも耐える強固な装甲を持っていたディスクアニマル 黄檗蟹を元とする戦輪獣 黄檗盾はその強固さ故に三尸の付けた傷は装甲の上部しか焼き切れなかった。
「やれ黄檗盾!!」
三尸
【しまっ、ぐっう!!】
動きの止まった三尸は、眼を回復させた天狗の指示で動いた黄檗盾の右爪で首を挟まれ、ギチギチと電子音を鳴らしながら機械のように徐々に力を込めていく。
三尸
【おご、がああ!!】
「苦しめ、苦しめ。仲間を殺した罪だ。ゆっくり苦しめ」
「毛利遊ぶな、とっととトドメをさせ」
三尸の苦しむ姿に気分を良くしたのか、天狗の1人が恨みのように呟きながら黄檗盾に指示を出すが、他の天狗は三尸にトドメをさせと言う。
◯
「チッ!! まあ良い、黄檗盾や【させるか!!】なっ!」
黄檗盾の右爪の根本近くに何かが掛かり、そのまま蒸気をあげて挟んだ三尸ごと右爪が地面に落ちる。
三尸
【げほ、げほっ】
◯
【大丈夫か三尸?】
三尸が顔を上げた先にいたのは、地面の下で横になっていた筈の屍だった。
三尸
【助かった。だが、お前酔いが】
屍
【まだ、覚めてないけどやれ「あああああああ!!」………うっ】
屍の話は天狗の大声に遮られる。しかも、大声のせいで頭に響くのか屍は尾で頭を抑える。
「くそ! まだいたのか魔化魍が黄檗盾やれ!!」
天狗の指示で黄檗盾の補助爪が頭を抑える屍に振り下ろされる。
屍
【ああアアアアア、頭が痛えんだ。五月蝿え!!】
人間も二日酔いの時に大声で喋られると頭が痛くなると思うが、屍の今の状態は正にそれ。酔いが完全に覚めてないのに響く天狗の大声が屍をブチ切れさせた。
屍は封印が解けている尾を黄檗盾に向けて毒血液をぶち撒ける。狙いなどない無造作に撒かれた毒血液は黄檗盾の補助爪と右半身に当たる。
ギチギチと電子音を出し、毒血液が掛かって溶けていく黄檗盾。
「黄檗盾が……はっ! ヤバい!!」
「瑠璃牙!!」
「戻れ黄赤爪!」
「………!!」
その光景に呆然している天狗たちも屍の危険さに気付き、天狗笛を吹いて、瑠璃牙と黄赤爪を呼び寄せ、天狗の1人は別の戦輪獣を出そうとする。だが–––
屍
【死に腐れ!! 人間ども!!】
溜め込んだ怨念の質によってはダイヤモンドすらも数秒で溶かす屍の毒血液は、アルコールによって威力は落ちたといえど天狗とその戦輪獣が見るも無惨な姿に変えるのは容易かった。
三尸が天狗と戦っている間に大分支部の人間の3分の1は逃げられてしまった。
だが、三尸の活躍–––––もとい最終的には屍の活躍によって大分支部は壊滅した。だが–––
三尸
【大丈夫か?】
酔いは完全に覚めてないのにも関わらず、地面から現れた屍。再び、襲ってくる酔いによって苦しそうに声を上げる。
屍
【うう、まだ気持ち悪い】
三尸
【ほら、肩貸してやるから休め】
三尸はまだ酔いで気持ち悪くなっている屍を支えながら合流した布都を連れた桂と時折、身体をブルリと震わす暴炎と共に幽冥の定めた集合場所に向かった。
SIDEOUT
SIDE宮崎支部
猛士九州地方宮崎支部。
ベテランの鬼が数名所属し、長年の経験に基づいた戦いで新人の鬼を死なせることなく確実に魔化魍を清める。
また8代目魔化魍の王 シュテンドウジの部下だった魔化魍を清めた鬼の子孫がおり、猛士としては将来性に期待されてる支部でもある。
魔化魍を討伐する仕事が最近多い、宮崎支部の鬼たちは仕事のこない平和な日を過ごしていた。
上空には魔化魍の侵入や監視の目的のために放たれた数十体のディスクアニマル 茜鷹が羽ばたいている。
「そろそろ交換だな」
ディスクアニマルの管理をしている宮崎支部の人間が鬼笛を吹いて茜鷹に帰還の指示を出す。
空からどんどん降りてくる茜鷹。
鬼笛の持つ人間のそばまで来ると、その場で4体の茜鷹が滞空する。
「おかしいな。ディスクにならねえ」
一向にディスク形態に変形しない茜鷹に不思議に思い、触れようとすると。
「があああああ!!」
茜鷹の口から熱線が放たれ、茜鷹を掴もうとした男の顔を焼き尽くす。
顔の表面は焼け焦げ、皮の下の焦げた表情筋が剥き出しになって倒れ息絶える。
「なんだ!!」
「茜鷹にあんな機能はないはずだ!!」
「魔化魍だ、魔化魍に違いない」
一斉に慌ただしくなった場に、追い討ちをかけるように他の茜鷹も攻撃してくる。
その時、茜鷹の1つが声を出す。
迷家
【じゃあ、みんなやるよ!!】
ルルルルル、ルルルルルル パリン、パリン、パリン ボボボ、ボボボ
従来の茜鷹から聞こえなさそうな声とともに迷家の有幻覚解けたことにより茜鷹のガワを被せていた魔化魍たちの姿が現れる。
熱線を浴びせたのは、ここ九州地方で暴れていた『
ルルル、ルルル
「ケースが! ぎゃあああ!!」
次に出たのは、『鏡』に似た魔化魍
最後に出たのは渦巻く青い炎の中心に狼の頭がある魔化魍
「ケースがひとりでに」
「茜鷹が!!」
憑のついたのは茜鷹のディスク。
ディスクは宙で茜鷹に変形し、翼に炎を灯す。そして、側にいた男に嘴で突く。
「やめろ! やめろ!」
鬼笛を吹いて、目の前の憑が取り憑いた茜鷹を止めようとするも止まることもなく、後ろから滑空する別の茜鷹の翼で男の首の頸動脈を切られ、首元から血を流して死んだ。
憑
【さあ、空中火の玉祭りを味あわせてやる!!】
茜鷹から憑の声が響き、編隊飛行のように飛ぶ茜鷹が宮崎支部の人間に襲い掛かる。
迷家
【さぁて、物色物色】
そんな中、ただひとり戦闘に参加せずに宮崎支部に侵入する迷家がいた。
SIDEOUT
SIDE浮幽
迷家の有幻覚によって奇襲に成功した私たちは宮崎支部の人間や鬼への攻撃を始めた。
憑
【そらそら逃げろ!! 逃げろ!!】
「がはっ」
鬼の武器となるディスクアニマルに取り憑いて、人間を攻撃する憑。
炎の翼を纏わせた茜鷹がカッター状の翼で非戦闘員の人間の首を狙って飛ぶ。
「くそ!! 音撃s、ぎゃあああ!!」
写鏡
【燃、燃、燃やす】
写鏡は頭頂部の鏡に太陽光を集め、集めた太陽光を熱線に変えて茜鷹に向けて音撃を放とうとした鬼を燃やす。
「うぐぐ!!」
「むぐぅ!!」
「ううううううう!!」
浮幽は触手で数人の鬼と人間を捕らえ、その触手の先から炎を噴き出して焼き尽くす。ものの数秒で焼き尽くした浮幽はそのまま違う鬼に向けて触手を伸ばす。
すると、浮幽の頭頂部を掠るように何かが飛んできて、伸ばした触手を止める。
ツーと血を流す浮幽が焼き殺した死体を離し、飛んできた方を見ると音撃管を構えた1人の鬼が立っていた。
頭部が朱色で縁取りされ、左側頭部から飾りのついた歪曲した角を生やし、胸部部分が少し膨らんだ橙色の鎧を纏い、腰にはひらひらした布のような装飾を付けた鬼がいた。
鬼の名は踊鬼。
かつて8代目魔化魍の王 シュテンドウジの部下だった魔化魍 ヨロイツチグモを清めた初代踊鬼の正当後継者。
「魔化魍。これ以上の蛮行はこの踊鬼が許さない!!」
ルルル、ルルル
「ちっ!! 死ね魔化魍!!」
踊鬼は宙に浮かぶ浮幽に音撃管を撃つ。
浮幽はふわりと海にいる海月のように空気弾を避ける。空気弾を避けた浮幽は反撃として触手を伸ばす。
今度は触手に向けて音撃管を撃ち、迫る触手を防ぐ。しかし、浮幽は触手の攻撃をやめず、さらに触手の先から火炎を放ち踊鬼の攻撃速度を下げる。
そんな踊鬼の音撃管と浮幽の触手と火炎による攻防の中、浮幽の触手による攻撃で踊鬼は体勢を崩し、隙が生まれた。
浮幽は隙の生まれた踊鬼に向けて近付き、鬼との戦いを終わらせようとしていた。
だが、いくつもの茜鷹に取り憑いて憑は鬼の行動に気付く。
憑
【逃げろ浮幽!!】
鬼が何かをしているのに気付いた憑は鬼に近付いていた私に叫ぶ。
「遅いわよ!! 死ね魔化魍!!」
踊鬼が手に持つ音撃管には変身鬼笛と音撃鳴を合わせた物が付けられており、通常の音撃管から放たれる軽快な音とは違う重厚な音が音撃管から放たれる。
私の不意を突いた鬼の攻撃に動くことが出来ず、棒立ちのように宙に浮いていた私を何かが押し退けた。そして、鬼の攻撃は押し退けたものに当たる。
押し退けたものからパリンとガラスが砕ける音が響く。
そう。私を庇って鬼の攻撃を受けた写鏡のトレードマークともいうべき頭頂部の鏡が割れる音が響いた。割れたガラス片が地面に落ちてさらに細かく砕ける。
写鏡ことウンガイキョウの頭頂部の鏡は攻撃するための武器であり、人間を喰らえなかった時に太陽光を吸収して腹を満たす為の大事な部位である。
落ちていく写鏡を受け止めると私は、茜鷹に取り憑いていた憑に写鏡を頼んだ。
憑
【任せな】
そして、
ルルルルル、ルルルルル
浮幽は触手を擦り合わせて自らに炎を灯す。一瞬にして業火のように燃え上がり浮幽の全身を繭のように包みこみ、中からパチパチと火花の散る音が響く。
「何をしている?」
炎の繭に包まれた浮幽を見た踊鬼は疑問の声を上げるが、炎の繭は一気に大きく膨らみ中から勢いよく飛び出た無数の触手が周りの炎の繭を引き裂き、中から姿を現した。
浮幽の姿は劇的な変化というほどではないが、右半身が赤で左半身が青のアシンメトリーカラーで、プニプニそうでプルプルしている独特な質感を持った身体、頭頂部の肥大化した傘と先端から中間までに丸い球体状に膨らんでいる触手を3本持った海月の姿へと変わった。
踊鬼は姿は変わったところでと思いながら音撃管から空気弾を発射する。すると、浮幽は特徴的な球体状に膨らんでいる触手の1本に普通の触手を伸ばし、そのまま勢いよく引き千切る。
「なっ!」
千切った触手を踊鬼に投げつける。踊鬼は触手に何かあると思い、触手を撃つ。
空気弾が触手に命中すると触手は膨らんで破裂し、爆発する。
「ぐっ」
その衝撃と熱風が踊鬼の動きを封じる。
浮幽は残っている2本の触手を引き千切り再び踊鬼に向けて投げつける。
踊鬼も先程の光景から危険度は理解しているために触手を音撃管で撃ち落とす。
同じように膨らんで爆発する触手。だが、踊鬼は先程の爆発範囲から離れた位置で撃ったため焦ることない。むしろ、爆発すると思われる触手を失った浮幽に向けて音撃管を放つ。
ルルル、ルルル
踊鬼の音撃管から放たれる空気弾を少し鬱陶しくも思うが、自分の子供のように感じた同族を傷付けた鬼に対して浮幽は、その傷の千倍、万倍、いや億倍の傷を与える為に赤と青のアシメントリーカラーになった触手を動かし始めた。
触手は地面に転がる無数の小石を拾い。そのまま踊鬼に投げつける。
武器となる触手を失ってヤケクソになったかと思う踊鬼は、投げられてくる小石を気にせず浮幽に音撃管を撃とうとした瞬間、1つの小石が脇腹に当たり、小石は破裂して小さな爆発を起こす。
「ぶほっ!」
踊鬼の脇腹周辺の鎧の一部を砕き、衝撃がそのまま伝わる。
「な、何が」
踊鬼の言葉を聞き、浮幽は触手に持つ小石を1つ地面に投げつける。
投げられた小石は地面にぶつかると爆発する。
「なっ!!」
踊鬼は理解した。浮幽の力を、能力を。
変異態へと変化した浮幽の力。それは爆弾。
触れたものを爆弾に変える能力。
某奇妙な冒険の殺人鬼の持つ能力と似ているがアレとの違いを上げるとするのなら、それは爆弾に変えるものの制限数がないということ。しかも触手1本で触るだけで変哲もないただの小石を簡単に爆弾に変える。見た目自体に変化がないが、その中身は紛れもない爆弾。
その脅威にゾッとする踊鬼は触手を撃ち抜こうとするが無数に飛んでくる小石によって狙いを定めることも出来ず妨害される。
おまけに小石は爆発しないものと爆発するものが混ざって投げられてもいるのでどれが爆発するのかわからない恐怖で全部をなんとか避けると、また違う小石が投げつけられる。
恐怖によって焦り、本来のパフォーマンスなど関係なく動きが粗雑になる。つまり––––
「ぐああああああ!」
罠に掛かったネズミ同然。
小石に気を取られすぎて、受けた攻撃により肩の一部が抉れるように消えていた。
そして、浮幽を見た踊鬼は驚いた。浮幽の身体をよく見ると千切れて無くなってはずの触手が生えている。そのことで踊鬼は理解した。千切れた触手は再生し、そのおまけのように投げられる小石の形をした爆弾。
終わることのない永遠に続く爆撃によって踊鬼は絶望した。
それから数分経ち、既に浮幽は勝利を確信、というかいつでも踊鬼を殺せるようなものだった。
あれから鬼の武器となる音撃管は右手と変身鬼笛と共に粉々に爆破され、逃亡を防ぐために左脚の足首ごと吹き飛ばされた。浮幽は既にない右手を抑えて裸体を晒しながら床に転がっている踊鬼をどうしようかと悩む。
捕虜として捕まえて九州地方に恨みを抱える鉄たちに頼んで徹底的に身体を破壊させるか、それとも残っている四肢を吹き飛ばしてオブジェのように飾って人としての尊厳を失わせるせか、はたまた蝕に頼んで薬漬けになるような新薬の実験台にさせるか。
兎に角、苦しむ写鏡よりもさらに苦しめないと、頭の中にはどんどん嗜虐的な考えがポンポン浮かぶ。
だが次の瞬間、浮幽は鬼の行動に驚く。
「鬼をや、めます、あなたの、手足になります。助けてください。命は、命だけは」
土下座だ。
人としての、偉大な父の後を継いだ鬼としてのプライドなど捨てたと言わんばかりな、恥もへったくれもない、みっともない命乞いの土下座をする踊鬼を見下ろす浮幽。
写鏡を傷付けた癖に虫が良すぎると思いながらも、浮幽は目の前の鬼に侮蔑の視線を送る。踊鬼はそんな視線に気付かず、土下座を続ける。だからとっとと終わらせることにした。
ルルル、ルルル
妙に明るい声が聞こえた。喋ることがない浮幽の声質から許されたと判断し、自分は助かったと踊鬼は感じた。
「ありがとうございます。ありがとうございます」
踊鬼は浮幽が止めを刺さなかったことに感謝の言葉を告げながら土下座の姿勢を解こうとすると、額にピタッと何かが張り付く。
視線を上げると、額には浮幽の触手が張り付いていた。
「ひっ!! や、やめ–––」
直後、ポンとコルクの抜けたワイン瓶のような音と共に踊鬼の頭は吹き飛ばされる。
頭が無くなった身体はぐらりと前に倒れ、首無しの全裸死体が晒された。
ルルル、ルルルルルル
容赦なく踊鬼の頭を吹き飛ばした浮幽はゆらゆらと揺らす触手と勝利の雄叫びをあげ、写鏡を手当てしている憑の元に戻った。
迷家
【うーーーん。コレとコレに、コレ、あ、コレも良いなーーー♪】
一方、戦闘に参加しないで宮崎支部の保管庫にいる迷家は保管されていた猛士の道具を物色し、それらの道具を空間倉庫の術で仕舞いながら盗んでいた。
そして、そんな迷家の足元には紐のような物でぐるぐる巻きにされている宮崎支部の支部長 土浦 ふくが転がされていた。
迷家が何故、宮崎支部の支部長を捕まえてるのか、ぶっちゃけると迷家が保管庫を探すためにたまたま会った人間が土浦だった。有幻覚で宮崎支部の人間に化けて、案内をさせて教えてもらった後に当身をかまして、そのまま捕獲した。
迷家
【うん。大体は盗んだし、捕虜も出来たしみんなと合流しよ♩】
めぼしいものがなくなって、土浦を縛っている紐の端を持った迷家は合流のために動き始めた。
後にこの盗んだ道具が猛士の鬼たちを苦しませて自分たちを喜ばせるものになるとは今の迷家は知る由もなかった。
如何でしたでしょうか?
自身の能力を活かした桂たちと初めて見た同族の傷付く姿を見てブチ切れた浮幽の回でした。
ちなみに量産型音撃管や量産型音撃鳴や、音撃射 無銘疾風はこの作品だけのオリジナル設定です。
量産型の音撃武器は若手の鬼に最初に支給されます。魔化魍の討伐数が50以上又は、名持ちの鬼になった時に自分に合った音撃武器を渡され、独自のカスタマイズができるようになります。
音撃射 無銘疾風も同様のオリジナル音撃。自分らしい音撃(師から継承される音撃)を持っていない鬼に最初に覚えさせられる音撃です。
音撃射には音撃射 無銘疾風と音撃射 無銘吹雪の2つがあります。打と斬も同様で、
音撃打の場合は、音撃打 無銘火焔と音撃打 無銘流水。
音撃斬の場合は、音撃斬 無銘電光と音撃斬 無銘土塊になります。
天狗や戦輪獣は次のおまけコーナーで紹介しようと思います。
ーおまけー
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【ええと、今回のおまけコーナーは迷家が来れねえようでやすから、あっしが司会をやらせて頂きやす】
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【…………と言いやしても、ゲストは誰を呼べばいいでやすかね?】
「何だ此処は?」
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【うん? おお!! 白蔵主ではないでやすか】
「おう。それより何だ此処は?」
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【此処はおまけコーナーでやす。アンタこそ何で此処に居るんでやす】
「それがよ。金の匂いがすると思って変な穴覗いたらいつの間にかココさ!!」
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【そうでやしたか。じゃあ、此処に来たのもなんかの縁でやす】
「な、何だよ!?」
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【なーーーに、ちょっと質問するだけでやす。それに答えるだけでやす】
「ふん。 断る。金にならない事はしたくねえんだよ俺は–––」
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【そうでやすか。残念でやす】
「何が残念だ!!」
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【いや。昔、金を大量に蓄える魔化魍の噂を聞いたことがありやして、なんでもその魔化魍が死した後もその金は手を付けられてなくて、それの––––】
「さあ、質問って、何を聞くんだ!!」
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【早いでやすね】
「そんな事はいい。質問に答えたら。その金の場所を教えてくれんだろ。だったらさっさと質問しやがれ!!」
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【まあ、せっかくやる気になったようでやすから。じゃあ、白蔵主】
「おお!! 何だ!!」
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【あんたが金を集める理由は何ででやすか?】
「!!」
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【気になってたんでやす】
「……………」
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【あんたはいつも金に関する話をしてる。親友である零士に止められようと決してやめようとしない。
何がアンタをそこまで、金を欲しがらせるのか】
「……………」
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【あっしの経験からすると––––】
「やっぱいらねえ」
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【うん?】
「いらねえよ。その魔化魍の金。やっぱ、自分で稼いでなんぼよ!!」
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【そうでやすか。本当にいいんでやすか?】
「………これは、俺の
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【結局、金でやすか】
「そうさ。まあ、用意できたんなら答えてやってもいいぜ。じゃあな」
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【いつか聞かせてもらいやすよ白蔵主】
「せっかくの金の話だったが………まあ、しゃねえか」
「あの時、俺が金持ちだったら–––––」
「ちっ!! 嫌なことを思い出しちまった。まあ良い。なんか金儲けのいい予感もするし。
さっさとこんな空間からおさらばしてやる」