前までの話に比べて今回は短いです。
次回では確実に幽冥&鉄VS福岡支部を書きます。
今回のおまけコーナーは前回書いた通りに天狗と戦輪獣の解説になります。
SIDE留守番組
幽冥たちが猛士九州地方支部壊滅計画実行中の同時刻。
幽冥が襲撃計画が終了した際に集合場所として定めた場所である山中にある洞窟。
そこは鉄が作り出した隠れ家の中でも最大の広さを誇る場所だが、他の隠れ家に比べれば少し見つかりやすいという難点がある。しかし、幽冥たちの襲撃によって、それどころではない九州地方支部のお陰で安全性より広さを考えたこの隠れ家が集合場所となった。
そんな隠れ家の中で何も置かれて無い広い場所の1つ。そこに何かを持ったまま立っている影があった。
普段の服装から稽古用の服装に着替えた美岬が額に大粒の汗を作りながら手に持つものに意識を集中していた。
「ふー、ふーーー」
美岬の呼吸音だけが空間全体に響き、手に持つものに意識をさらに集中させる。
美岬のその手に持つのは、自身が所有する魚呪刀の1つであり、それの形は今まで使っていた魚呪刀の中でも近代的または機械よりな特殊な形状をしていた。
刀身全体に細かい鮫や鯱を彷彿させる細い歯が乱雑に生え、刀の鍔には重ね合わさった牙らしき装飾が付いた太刀。
「ふーーー」
美岬の手にある魚呪刀は美岬の持つ7振りの魚呪刀の1振りである。
その名は
美岬は手に持つ壊鯱を鞘に納めて、そのまま床に正座し、抑えていた呼吸をゆっくりと戻す。呼吸も穏やかになり、美岬は鞘に納めた壊鯱を見る。
話が突然変わるが魚呪刀には鍛造の際に込められた魂によって能力が付与される。
後は
話は美岬の持つこの壊鯱に戻そう。多種多様な能力を持つ魚呪刀。その中でもこの壊鯱は最強であり最
その能力は武器破壊。この刀と連続で10度鍔迫り合った武器を完全に破壊するという異質な力。10回連続でこの刀に攻撃された武器はその形を残すことなく破壊される。それだけでも強力だというこの刀には副次能力があり、またその副次能力も強大だった。
その副次能力は、能力によって破壊した武器の持つ優れた部分を3割引き継ぐ。
例えば、炎を操る能力を持った武器がある。その武器は身体に炎を纏わせ、遠くに炎を放つことが出来、持ち主に炎によるダメージを軽減させることが出来る。そんな武器をこの壊鯱で破壊すると優れた部分である炎を操る能力、その中のいずれかの力を引き継ぐ。
何も能力を持った武器だけではなく普通の武器に対してもこの能力は発動する。
切断力の高い刀を破壊すれば、その刀の切断力3割を壊鯱の切断力に加算し、無駄に硬い盾を破壊すれば、その盾の耐久性の3割を壊鯱の耐久性に加算する。
つまり、武器を破壊すればするほど強化というより進化していく。
この能力が壊鯱をより強大にさせた。魚呪刀を鍛造した鍛治魔化魍によると元々、壊鯱には武器破壊の能力しか無かったが鍛造の際に使った鯱の魂と狂った人間の魂がこの副次能力を持たせる要因となった。
使われている鯱の魂の性質は好奇心。
よくテレビでは鯱が子アザラシを襲って仲間に向かって投げ、また投げ返すという残虐な場面を見ることがあるが、元々、鯱は好奇心が強い動物だ。
しかし、その好奇心の高さゆえに誤って人を殺すこともある。特にこの魂の持ち主の鯱はとりわけ好奇心が強かった。その高さで何人もの人間を殺した。故に人間の手でその鯱は殺された。
もう1つの人間の魂。
この魂の人間は俗に言うならば、狂った人間。だが、狂ったといっても色々あるだろう。
気が狂う。
金に狂う。
欲に狂う。
そして、愛に狂う。
この魂の持ち主の人間は元は正義感の強い普通の青年だった。
幼少の頃から一緒だった幼馴染と一緒に将来は一緒に暮らそうと言って日常を過ごしていた。しかし、ある日を境にその幼馴染は変わった。普段はしない服装と化粧をして口調も変化し、咽せるような甘い匂いを纏わせていた。
だが、青年は気にしなかった。
幼馴染との付き合いが減った数日後。家のポストに入っていた1つのDVD。何だと気にしながら再生し、青年は絶望する。
青年の見た映像には、幼馴染が衣類を一切纏わずに複数の男と交わる姿だった。
青年は知った。幼馴染の変化の理由をそれから数時間、変わり果てた幼馴染の姿を見せられ、最後に男達によって顔が白濁に染まった幼馴染が言った言葉で青年は壊れた。
その幼馴染を思う一途な愛故に狂った。その結果、幼馴染を誑かして、快楽に溺れさせ、人間性を無くさせた人間たちは全員殺し、その後、幼馴染と共に焼身自殺した。
鯱の魂と人間の魂。好奇心と一途だった愛。2つの魂が惹かれあい混ざりあった結果、壊鯱は2つの能力を持つ刀となった。まあ、この能力にも例外がある。
例として挙げるのなら、酒呑童子が現れる前の時、美岬は幽冥の王の力を制御する鍛錬の際にこの刀を使って稽古したが、幽冥の持つ武器は壊れなかった。その理由は幽冥の持つ武器にあった。
幽冥の使った武器はシュテンドウジの持っていた太刀。この太刀は刀身に薄い酒気で覆われており刀身や武器に対して発動する能力を防ぐ力がある。
つまり、武器に触れなければ効果が発揮しないという弱点もある。
話は美岬が何をしていたのかに戻すとしよう。
美岬が行っていたのは壊鯱の奥に眠る壊鯱の意思との対話を行なっていた。
対話によって魚呪刀の意思に認められれば、その力を完全に引き出すことができる。
だが–––
「やはり認められませんか」
美岬は手に持つ壊鯱を見ながら呟く。
美岬が魚呪刀の意思に認められているのは、畏鮫、咬鱓、突烏賊の3振り。
魚呪刀を鍛造した製作者の魔化魍曰く、『力を示せば認められるだろう。だが、他の刀の意思も力でははない何かで認められなければならない』と。
確かに上記の3つは美岬がある魔化魍との戦いの際に見せた力のお陰で魚呪刀の意思に認められた。
認められはしなかったものの斑鰒、幽蛸、堅鯨の魚呪刀の意思には対話によって会うことはできたが、波音に渡した刺鱏とこの壊鯱にはその意思に会ったことはない。
美岬がこのように鍛錬するのは全て、幽冥のため。
これから激化していくであろう猛士との戦い、幽冥を狙う悪魔魔化魍、幽冥という人間を単に気に入らない野良魔化魍。
それらとの戦いにおいて、やはり所有する魚呪刀を全てを使わなかればならない時が必ず来るだろう。
その日のために、認められていない魚呪刀の意思にどうすれば認められるかを模索する。
だが、何がキッカケで意思に認められるのか。それは鍛造した魔化魍すら知らず知るのはその魚呪刀の意思のみ。
「悩んでても仕方ないし、もう1度やってみよう」
そう言った美岬は立ち上がり、壊鯱を鞘から抜いて、再び、対話を始めた。
SIDEOUT
SIDE波音
美岬が壊鯱との対話を再開した同時刻。
朧
【何か最近、幽冥お姉ちゃんに避けられてる気がする】
波音
【急にどうしたの?】
美岬の居る場所とはまた違う場所で、朧と波音はいた。
朧
【最近は私を連れていくこと少ないから、幽冥お姉ちゃんが強くなりたいのは分かるんだけど…………何か幽冥お姉ちゃんに嫌われたのかな】
朧の言っていることはなんとなくだが理解した。
朧は確かに幽冥と共に戦うことは少なくなってきた。王として、魔化魍としての人間を超えた身体になりつつある王は自分1人で戦えるようになろうとしている。
だが、それは何も朧だけでは無い白も同じ目にあっている。まあ、本人は王の意思を尊重するということであまり気にしていないらしい。
つまり朧は、王に頼られていないまたは嫌われていると思っている。
しかし、敢えてそれに対してノーといわせてもらう。
波音
【王は朧のことを嫌ってるじゃないよ】
朧
【慰めの言葉だったらありがとう。でも……】
王の鈍感っぷりもそうだけど、何で王に恋心を抱く連中はこうもメンタル弱いの。普段の王にベタベタする白がマシに思えてくる。
波音
【ああーーーもう。面倒くさいね。だから、王はアンタを嫌ってないよ】
朧
【でも】
波音
【アンタは王を守るだけが使命とかみたいに思ってない!!】
朧 波音
【別に使命というわけじゃ【反論しない!!】……はい】
言い訳を言う前にちゃんと王のことを伝えないと変になりそうだからハッキリ言おう。
波音
【良い!! アンタ、王の側に居られないだけでなにウジウジしてるの!!】
朧
【ううう】
波音
【イヌガミの娘ともあろう魔化魍が王との会話が減っただけで、なんなのそのメンタル!!】
朧
【ううっ】
波音
【王はね。アンタが思っているように、アンタを避けてるわけでも、アンタを嫌ってるわけでもない!!】
朧
【じゃあ】
波音
【頼りにしてるんだよ!!】
これは言うまでもないが、白や美岬、姉の春詠と同じくらいに朧は頼られている。
本人は気付いてなかったみたいだけど。
朧
【頼りに?】
波音
【そう。アンタは強い。この家族の中でも1、2を競う実力を持っている。もしも王が今回の時のように何処かへ消えたら。悪魔魔化魍みたい奴らと戦って王が怪我をしたら。そんな時に館にいるひなや幼体や非戦闘の家族を守るのはアンタや紫陽花たちや白たち従者だけ。
中でもアンタは歴代最速の王の娘。その速さなら敵を直ぐに殲滅でき、影に侵入するその力で家族の危機を救える。
そんなことが出来るのは5代目魔化魍の王の血を引く朧しか居ない!!】
兎に角言いたいことは全部言えたけど、これで通じないんだったら王が帰ってきた際に、言ってもらった方がいいかも。ていうかそっちの方が効果ありそうだけど。
朧
【………うん。そう考えると少しは気が楽になったよ。ありがとう波音】
波音
【ハアー、別に気にしなくていいよ。兎に角アタイたちは待っていよう。無事な姿の王を】
波音は、王たちの帰還と昇布が無事に目覚めることを願った。
如何でしたでしょうか?
美岬の魚呪刀は元々8振りでしたが、波音に刺鱏を譲渡したことで7振りになりました。
ーおまけー
迷家
【ふう。おまけコーナー、始っまるーーーよ!!】
迷家
【……はーーー。けど、どうしよう】
迷家
【変な人のお願いで、今日は鬼たちに関わる天狗とその武器の解説しないといけないんだけど】
迷家
【産まれて間もない僕がそんなの知ってるわけないでしょ!!】
迷家
【あーーでも、どうにかしないと】
「痛っ!」
迷家
【うん。誰?】
「っててて、何ここ?」
迷家
【あーーーー!!】
「うわっ、ビックリした!! って、迷家?」
迷家
【春詠ーー!! 助かったよーーー!!】
「はっ?」
迷家
【天狗と戦輪獣の説明できる?】
「天狗と戦輪獣? ああ、あれね。まあ出来るけど、ていうかここ何処?」
迷家
【此処はおまけコーナー♫ まあそれは置いといて、説明。お願い!!】
「ええ〜」
迷家
【お願いっ!! 説明してくれたら
「うう、仕方ないですね。じゃあ、手伝ってね」
迷家
【うん。僕は約束はちゃんと守るよ】
「じゃあ天狗から説明するね。
天狗っていうのは、鬼の素養持たない者が増えたことによる後継者不足や魔化魍との戦いによっての鬼の死亡で減った戦力を猛士の上層部が苦渋の末に生み出した鬼とは違う戦力。
でも殆どが鬼の素養を持たない人間だから鎧を纏うことが出来ない。私が抜ける前は擬似鎧を制作するとか言ってたけど、いつ出来るのやら」
迷家
【つまり変身できない鬼モドキ?】
「まあ、そういう解釈で問題ないよ。次に戦輪獣だね。ディスクアニマルは分かるよね」
迷家
【うん。ちっこい円盤状の鬼の持ってるやつでしょ】
「そう。あれは本来、魔化魍を捜索したりする際に作り出した物でね。今では戦闘に使うこともあるけど、魔化魍を足止めする程度の力しかないし魔化魍の攻撃で簡単に壊れる」
迷家
【うん】
「そこで、本来の捜索目的の為に使うディスクアニマルを戦闘用に変えて、より大型化させたのが戦輪獣」
迷家
【戦輪獣】
「そう。私の知る範囲でならば、茜鷹を改良した茜羽、瑠璃狼を改良した瑠璃牙、黄檗蟹を改良した黄檗盾ってところかな。
まあ、他にもディスクアニマルあるから多分そっちも戦輪獣として作ってるんだろうけど」
迷家
【………ねぇ、春詠ってさ猛士から送られた間者ってことはないよね?】
「どうしたの急に?」
迷家
【春詠は猛士では死んだ扱いらしいけど、やけに猛士の最近の事情に詳しい。まるで猛士からそういう情報を知らされてるかのように】
「私が間者? ハッハッハッ! 間者ね。確かに迷家達からすれば間者って言われてもおかしくないか」
迷家
【何で笑うの!】
「いやいや、失礼。やっぱり幽は昔と同じで周りから愛されてるなって思ってね」
迷家
【なんで
「幽のことを心配してるから聞いたんでしょ。もしも私が猛士の間者だったら幽から私の記憶を消して、私を始末できるように、迷家は記憶弄る術を持ってるんでしょ」
迷家
【……………】
「沈黙は肯定って判断するよ。私が最近の猛士の状況を知ってるのは、突鬼と衣鬼から情報を聞いたからね」
迷家
【あの2人が?】
「そう。捕虜としてもう少し丁重に扱って貰えるよう幽に頼んであげるって話をしたら、少しはマトモな扱いされたいのか、少しだけ話してくれたよ」
迷家
【確かにあの2人の扱いは少し変わってたけど、それが理由?】
「そう。幽にちょっとお願いしてね。幽も家族に害さえなければってねそのお願いを聞いてくれた。
まあ変身道具は白たちが交代交代で管理してるし、万が一の逃走防止もあるからね。それと信用するかは別としてあえて言うけど私は猛士の間者じゃないよ」
迷家
【証拠はあるの?】
「………証拠ね。証拠になるようなものは持ってないから言葉で信じてもらうしかないから何とも言えないけど。
私は元々ね人間と魔化魍で研究出来れば良かったのに、上が先祖が偉大な鬼だから鬼になれってね。はんば無理やり鬼にされたから正直言って、そんなに猛士に思い入れはないの」
迷家
【…………】
「それに私は幽の姉だけどそれと同時に幽の家族である貴方たちの姉でもあるんだから、間者なんってやるわけ無いでしょ」
迷家
【姉?】
「幽のお姉ちゃんだからね。幽の家族なら全員可愛い弟や妹みたいなもんだよ。でも1番は幽だけどね」
迷家
【そっか。可愛い弟。…………今はその言葉を信じるよ。でも、もしも
「その時は、この首を獲っていいよ」
迷家
【………おっと、そろそろお別れの時間だね。じゃ、バイバーーーーイ♫】
「また、会いましょう」