人間だけど私は魔化魍を育て、魔化魍の王になる。   作:創夜叉

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長らくお待たせしました更新完了です。
今回は幽冥&鉄による最後の九州地方支部である福岡支部の話です。
この話と次の話で九州地方編は終了となります。


記録玖拾捌

SIDE福岡支部

 僅かな明かりしかない暗い一室に2人の男がいた。

 

「そうか。連絡は付かないか」

 

「はい。1時間前の定時連絡後から何処とも連絡は付きません」

 

 1時間前の九州地方支部同士の定時連絡の後、ある時間を境に各支部からの連絡が途絶えた。

 ひとつの支部だけならば連絡係の休憩とかを考えるが、同時にということはあり得ない。ましてや警察と関わることがある熊本支部の支部長である千野が連絡を怠るのはあり得ない。つまり、その状況が起きるのは–––

 

「佐賀支部と脳見支部長をやった魔化魍の王が来たのでしょうか?」

 

「そう考えるのが妥当だろう」

 

 2人の考えることは同じ。

 ここ最近、複数の支部を襲撃して猛士の構成員たる鬼や人間を殺した魔化魍の王とその部下が九州地方支部に襲撃を掛けた。他の支部も連絡がつかないことから残すはここ福岡支部のみ。

 

「………疾鬼」

 

「はい」

 

「支部のものを連れて此処から退避しろ」

 

「なっ!!」

 

「わしが時間を稼ぐ。なに、ただでは死なぬ。部下の魔化魍と可能なら王の首を斬ってやるわい。この老骨の身で若い命を救えるならの」

 

 その手に握られるのは白鬼に変身するための変身音叉 白夜。

 鬼として何十年も戦った男はまだ未来と可能性を持った若い者が死なぬように後先短い自身の命を使って、魔化魍の王と戦おうとしていた。

 しかし、千葉は油断していた。

 

「ご無礼を」

 

「ぬおっ!! は、や鬼……な…ぜ?」

 

 突然振りかけられた粉によって、意識が朦朧としてそのまま床に倒れそうになる千葉を疾鬼は支える。

 

「申し訳ございません武司さん。貴方は死んではいけない人です」

 

 支えられた千葉はやがて静かな寝息が漏れる。

 疾鬼が千葉に振りかけたのは対魔化魍捕獲眠粉。今は存在しない北海道第1支部支部長 志々田 謙介が開発したもので、幼体の魔化魍や1人前の鬼としての試験対象となる魔化魍を捕獲する際に用いられるもの。

 それを人間用に薄めた粉。元々が魔化魍用なだけに千葉の意識を容易に奪った。

 そして、千葉が眠るのを待っていたかのように部屋の外にいた同僚の鬼と天狗が入ってくる。

 

「いいか。魔化魍達に見つからずに総本部に武司さんを送るんだぞ」

 

「はっ!! 命に変えましても」

 

「師匠、今までありがとうございました」

 

「あとは頼んだぞ」

 

 鬼は疾鬼から支えられていた千葉を預かると疾鬼は裾から猛士創設期に開発された数少ない秘伝の1つ。巨大化するディスクアニマル 大茜鷹を取り出し、それを天狗に渡した。

 秘伝とも言われる巨大ディスクアニマルでも戦輪獣を操る天狗ならば魔化魍たちに見つかることもなく無事に本部まで千葉を運んでくれる。それに無銘とは言え、自身が直接指導した中でも期待している弟子の鬼には万が一のための時間稼ぎを頼んだ。

 見つかったとしても弟子のこの鬼ならば時間を稼いで、その隙に天狗が千葉さんを本部へ運ぶ。

 そして、地下室の隠し扉から千葉を運ぶ2人の姿を見送ると。

 

「はっ!!」

 

 変身音叉を音叉刀に変えて、隠し扉の扉の取手を破壊する。

 切断面を隠せば、隠し扉があった壁とは思えないただの壁になった。

 

「これで、ここの存在は気付くまい」

 

 隠し扉の破壊とはつまり脱出の手段を断つということ。

 だがそれで良い。さっきの話からすると、おそらく他の支部はもう壊滅したと考えた方がいい。

 それに、上にいる鬼や天狗たちとは既に話している。

 例え、最後の1人になろうとも魔化魍に一矢報いる。死んだ他の支部の人間、犠牲になった一般人、誇り高く戦って死んだ鬼や天狗たちのために。

 

「来たか」

 

 外から聞こえる喧騒を聞き、疾鬼は福岡支部の戦力を纏めて魔化魍たちへの迎撃準備を始めた。

 

SIDEOUT

 

 自身を襲撃してきたアロケルを蛇姫たちに任せた幽冥と鉄は目的地である福岡支部に転移した。

 転移した場所は既に福岡支部の敷地内。

 転移したのが福岡支部の人間の出入りが激しい交代時間だったらしく、大量の人間が転移した2人を見る。

 

「なんだアレは!!」 「魔化魍と女の子!!」

 

「あれは、女の子は人間じゃないぞ!!」 「おい、あの魔化魍、『不明』だぞ!!」

 

「鬼と天狗を呼べ!!」 「鬼たちが来るまで、俺たちで時間を稼ぐぞ!!」

 

 突然現れた、幽冥と鉄に福岡支部の人間たちが各々が声を上げながらも魔化魍が襲撃を掛けたことを理解し、鬼と天狗を呼びに行く者、時間稼ぎをしようとする者に分かれて幽冥たちの前に立つ。

 

【王よ。こんな奴らに貴女が力を振るう必要はない。私がやろう】

 

 そう言うと鉄は自身の身体に張り付く浅蜊貝を数枚剥がすように取りそれを手裏剣のように投げる。

 

「がっ」 「うぐっ」

 

「ぎゃあ!!」 「ぱがっ」

 

 くるくると軌道を描きながら目の前の人間たちに浅蜊貝が身体に刺さり、肉を抉り、首を刎ね、四肢のいずれかを落とす。

 一瞬にして時間稼ぎと鬼と天狗を呼ぼうとした人間の半数が死に、また半数も無事とは言えないが生き残った。

 

【まだ生きてますね。では、もう1度】

 

 再び、浅蜊貝を手に取り投げようとした瞬間–––

 

【なっ!!】

 

 鉄の手にある浅利貝は何かが当たって砕け、ぱらぱらと地面に破片が落ちた。

 

「全員下がれ、あとは俺たちがやる!!」 「早く避難を!!」

 

「魔化魍『不明』。同士の仇を取らせてもらう」

 

「魔化魍にこれ以上好き勝手にさせるか!!」

 

「仲間の仇が来たんだ、抜かるなよ!!」

 

 鉄の浅蜊貝を砕いたと思われる音撃管を構えた鬼や天狗たちが福岡支部の人間たちを庇うように現れて私や鉄を睨む。

 鬼と天狗に守られた人間たちは動けない仲間を連れて、支部の建物とは反対の森の方に逃げて行った。

 おそらく、街の方に逃げたのだろう。追いかけて情報を猛士に渡さないようにするべきだろうが、おそらく追いかけたところで情報は別の手段で報告されているだろうし。

 

 だから、人間は追いかけない。

 目の前の鬼と天狗という鬼の仲間たちを倒すことに専念する。

 

「魔化魍の王!! 何が目的でこの支部にやってきた!!」

 

 鬼の1人がそんな質問をしてきた本当は答えなくても良いけど、どうせ殺すし言って問題ないよね。

 

「うーーん。まあ答えてあげる。私たちの目的は九州地方全支部の壊滅」

 

「「「「「っ!?」」」」」

 

「発案者は私の隣にいる鉄。私がこの地方に来たのは事故なんだけどね。鉄から話を聞いて、この計画に参加したの」

 

 私の言葉で何かに気付いたのか鬼の1人が口を開く。

 

「……じゃあ、他の支部から連絡がないのは?」

 

「多分、うちの家族が壊滅させたんだと思うよ。私の家族は優秀だから。今頃は此処を残して他の支部を壊滅させて私が帰ってくるのを待っているんだと思うよ。まっ、そういうわけで早く終わらさせて貰うよ」

 

 鬼の質問に自慢のように家族のことを言い、待たせるのも悪いから早々に終わらせようと口にすると、鬼たちは各々武器を構えて、私と鉄に向ける。

 

「許さん。許さんぞ!!」 「私たちの仲間をよくも!!」

 

「お前を殺し、他の魔化魍も殺す」 「王とはいえ、人間のようなお前など楽勝だ!!」

 

「魔化魍に子供がいたらきちんと殺さないと」 

 

「ああ、幼体がいたらきちんと殺さないとなwwww」

 

「他支部の仇を取る!!」

 

 鬼たちはそんなことを言うが、今言った言葉の中の1つが私の怒りのゲージを上げる。

 

「……………私ね。普段は怒ることがないって言われてる方なんだよ。例え、自分が死にそうになったとしてもその時まで生きていけたことに感謝するくらい。

 でもね………貴方たちのことにちょっと、いやかなりイラついてるんだよね!!」

 

「「「「「っ!?」」」」」

 

「許さん? 仲間をよくも? 子供を殺す? 仇をとる? はっ。こっちからすれば同じことを言わせてもらうよ。

 此処の魔化魍たちはお前たちに何か被害を出したか? 遥か昔から此処の自然の一部として山と川と海の幸を喰らう魔化魍たちがお前たち人間を襲ったことがあったか?」

 

「魔化魍は害悪だ!! 存在そのものが許されない!! 此処の魔化魍が人間襲ったことがあるかだと、俺の同僚も魔化魍に喰われて死んだ!! 

 それに魔化魍は人間を喰らう畜生だ。人間を襲わない魔化魍など居るはずがない!!」

 

「へえ〜〜随分と短絡的な思考だね」

 

「何だと!!」

 

「その同僚を喰らったのって、お前らが鬼育成のために魔化魍退治を行って死んだ幼体の魔化魍や魔化魍の仇討ちでしょ。

 そもそも、お前らが小さな魔化魍たちを手を掛けなければその同僚は死ぬことがなかった。

 お前らが魔化魍に何もしなければ鉄が猛士の九州地方支部壊滅を計画することもなかった。

 お前らが魔化魍をそっとしておいてくれればこんなことにはならなかった…………つまり。

 全ては貴方たちの自業自得。因果応報ってこと、少しはその味の薄そうな脳みそで理解できた?」

 

「五月蝿い!! お前も害悪な魔化魍共の王なんだろう。ならお前も殺すだけだ!! 本宮!!」

 

 鬼が誰かの名前を呼ぶと、鬼が後ろから突如現れた。

 

音撃射(おんげきしゃ) 突破強風(とっぱきょうふう)

 

 不意打ちともいうべき、突然吹かれた風の音撃が私の身体を浮かして遠くに吹き飛ばす。

 

「そっちは任せたよ鉄」

 

 飛ばされる前に鉄にそこにいる鬼たちを任せた。

 

SIDE鉄

 鬼の突然の音撃により遠くに吹き飛ばされる王。

 

「そっちは任せたよ鉄」

 

 だが、飛ばされる直前に聞いた言葉で、鉄は王を助けるではなく。この場にいる鬼たちを殺すことにしたのだ。

 

「王は分断した、あの『不明』を倒して、王を倒し、各支部を襲撃している魔化魍も倒す!!」

 

 そう言うのは、不意打ちも同然で音撃を放った鬼だ。その鬼の言葉に賛同する様に鬼たちは音撃武器を取り、鉄に向ける。

 

【……任せたか。ふふふ、なら存分に暴れさせてもらおう】

 

 全部で7人。

 振り向くと同時に手にした浅蜊貝を鬼に投げる。

 

「ぐぶっ」

 

 突然の攻撃に対応出来ず、鬼の喉元に浅蜊貝が食い込み、面の下の口から血の混じった声を上げて倒れる。

 

「海野!! おのれっ!!」

 

 倒れた仲間に駆け寄るも、身体はピクリとも動かず、既に事切れたことが分かると、音撃弦を構えて鉄に向かって突撃する鬼。

 

【ふん!!】

 

「がべえっ」

 

 だが、鉄は右腕を伸ばし、右腕を形作る蛸壷の1つを水の術で生み出した水流で飛ばし、突撃する鬼の頭に命中する。

 鬼の頭は面ごと砕け、割れた面の下から潰れた顔の一部がピンク色の肉片と共に垂れ、そのまま倒れる。

 

「渡辺!! みんな迂闊に近づくな!! 距離をとってチャンスを窺うんだ!!」

 

 僅か数十秒で2人の鬼が死んだことで冷静になろうと、距離を取ることを伝えるが–––

 

「2人がやられて黙ってるわけないでしょ!!」

 

「おお。その通り。俺は右だ。左を頼む!!」

 

「ええ」

 

「瀬島! 樋野!! やめろ!!」

 

 仲間の鬼の声を無視して、2人の鬼は左右に分かれて、鉄に迫る。

 鉄は浅蜊貝を左右に投げて、牽制するも2人の鬼は音撃棒を使って浅蜊貝を割り、徐々に距離を詰める。

 

「「くらえっ!!」」

 

 左右からの音撃棒による挟撃、同時タイミングで繰り出された攻撃はどちらか防いだとしてもどちらかの音撃棒による攻撃が当たる。

 2人の鬼も攻撃が当たると確信した。だが––––

 

「「がはっ」」

 

 同時タイミングの攻撃、どちらの攻撃を防げないのなら、どちらも同時に倒せばいい。

 鉄の身体まで後僅かというところまで接近した2人の鬼の動きを止めたのは、鉄の身体を構成する無数の栄螺の殻から長く伸びた突起物。

 それが攻撃を仕掛けようと宙に飛んだ2人の鬼を貫き、標本のように刺されて止まっている。刺されてない腕や脚を見るとだらんとなっており2人の鬼はそのまま死んでいるのが分かる。死んだのを確認した鉄は伸ばした突起物を戻す。

 突起物が抜けてそのまま落ちる死体はべちゃりと鳴り、刺された傷口から血がどんどん流れていく。

 

「瀬島。樋野。うおおおおおおお!!」

 

 バックルから外した音撃震を音撃弦にはめ込み、音撃を放つために鉄に近付く。

 

「おおお!! 音撃斬 無銘土塊(むめいどっかい)!!」

 

 音撃を放つのに最適な距離に着いた鬼は音撃を放つために音撃震に指掛けると–––

 

【撃たせるわけないだろう!!】

 

 先程死んだ鬼の死体を掴んで、音撃を放とうとする鬼に向けて投げる。

 

「がっ!! くそ!! 動けない!!」

 

 音撃を放とうと動けなかった鬼に死体がぶつかり、鬼の死体の重さで後ろに倒れる。

 

「かぺ!」

 

 さほど離れてなかったからか鉄は倒れた鬼に一瞬で近付いて、その頭を踏み砕く。

 その光景を見せられた鬼は自分だけでも鉄に一泡吹かせてやろうと、後方にいる鬼に呼び掛ける。

 

「小林、援護を!! どうした、小ばや、し」

 

 だが呼び掛けに反応せず、振り向いて見た鬼の視線の先には浅蜊貝で斬られたのか転がっている四肢と心臓を栄螺の槍で貫かれて死んでいる鬼だった。

 

「小林!! そんな」

 

 自分を除いて、最後の仲間もいつの間にか殺されていたことを知った鬼はそれをやった鉄を探すが、何処にも居ない。

 地面が突然盛り上がり、2つの腕が鬼の身体がガシッと掴む。

 

「し、しま、があああ!!」

 

 まさか地面からとは思わずに油断した鬼は一瞬で捕まり、地面から鉄が現れる。

 鉄はそのまま、両手に力を込めて、掴んだ鬼の身体を握り潰す。

 

「がっ、ああ………殺して、やる、こロし」

 

【黙れ】

 

 腕や脚もぐしゃぐしゃになっても鬼は恨み言を垂れ流す、だがそんな言葉など耳に入らず、鉄は更に力を込めて虫の息の鬼にとどめを刺した。

 力を込めた手を離すと、元の原型から大幅に変わった鬼の圧死体が地面に横たわる。

 

【…………ふん。もっと醜い姿にしてやろう】

 

 今までの憎しみと恨みがまだある鉄は先程潰した鬼の死体を持ち上げて八つ当たりのように更に握り潰そうとすると–––

 

「やめろーーーーー!!」

 

 後ろから声が響き、鉄がそこへ振り向くと、1人の鬼が立っていた。

 頭部が濃い橙色で縁取りされ、右米神から生えた牛の如き角、白が主体の茶色の鎧を纏い、ベルトのバックルには通常の音撃鼓よりも大きな音撃鼓が着けている鬼がいた。

 

「………………みんなよく戦った。後は俺が戦う。安らかに眠ってくれ。『不明』!! 貴様を此処で滅してやる!!」

 

 腰に付けられた音撃棒を抜いて鬼は構える。

 鉄は音撃棒を構えた新手の鬼に浅蜊貝を数枚取り、投擲した。

 

SIDEOUT

 

 鉄のいる場所から随分遠くに飛ばされたと思う。

 少し腕に痛みがあるので、腕を見ると少しひび割れていた。音撃を受けた魔化魍の身体のようなヒビを見て、自分の身体の人間らしさも少しずつ無くなっていると理解したが、気にすることはない。

 

「貴様が魔化魍の王か?」

 

 後ろを振り向くと、鬼に似た鎧を纏い背中に円盤を背負った人間が6人立っていた。

 

「だとしたらって、言わなくても分かるよね。そう私が今代の王」

 

 その言葉を聞いた天狗たちは各々の怨みを叫ぶ。

 

「お前らのせいであいつは、あいつは!!」 「鬼だったあの人は魔化魍に!!」

 

「俺の弟も!!」 「私の姉ちゃんも!!」 「我が友も!!」

 

「お前らのせいで、いや、お前のせいで………ごぷっ」

 

「「「「「なっ!!」」」」」

 

 怨みを叫ぶ、天狗たちの言葉を止めたのは勿論、幽冥だった。言葉を止めた天狗の胸には空洞になった穴があり、口元から垂れる夥しい量の血が天狗が間もなく死ぬということを物語らせていた。

 

「ふうーー。で、話は終わり?」

 

 正直言っていることが先程の鬼たちと近しい内容なせいで、同じことを聞くのが面倒くさかった幽冥は怨みを叫んで隙だらけの天狗の1人を一瞬で殺す。

 そんな幽冥の手には札が握られているが、使用したことでぼろぼろと崩れていく。

 

「やりやがったな!」

 

 天狗の1人がそう言うと、天狗たちは背中に背負った円盤を投げ、一斉に天狗笛を吹く。

 すると、円盤はみるみる形を変えて、その姿を前世の世界で見たことのあるものに変える。

 

 

 緑色の猿の姿をした戦輪獣と鈍色の蛇の姿をした戦輪獣が天狗の側で天狗の指示を待っていた。

 

「行け緑大拳!!」

 

 天狗の指示と共に天狗笛が吹かれディスクアニマル 緑大猿がベースとして作られた戦輪獣 緑大拳たちが幽冥にその拳を振るう。

 

「当たったらこれは痛いね」

 

 そう言うと、幽冥の姿はシュテンドウジの力を借りた姿へと変わる。

 姿は変わっても緑大拳たちは動きを止めることもなく、その拳を振るう。

 幽冥はシュテンドウジの瓢箪を使って、緑大拳の攻撃を逸らしたり防いだりするも、緑大拳はかなりの力があるせいなのか、それとも拳の先にチラリと見えた綺麗な石が原因か少しずつ手先が痺れていく。

 

「(あの石ってあれだよね。多分)」

 

 ディスクアニマル 緑大猿をベースに作られた戦輪獣 緑大拳は、全戦輪獣の中で最も攻撃力強化に力を込められた戦輪獣。

 ヒット&ウェイを主体とした攻撃が主な戦輪獣に魔化魍に対しての継続戦闘能力を求めた。

 その結果、何種類もあるディスクアニマルの中で人に最も近い形をした緑大猿が採用され、魔化魍との接近戦用に改良されて戦輪獣 緑大拳が完成された。

 更に緑大拳は拳の一部に加工された鬼石を埋め込まれており、幽冥の手先が痺れつつあるのもそれが理由だ。

 考え事をしているせいか、ギリギリで当たっていないが、緑大拳の拳を掴んで、投げようとした瞬間、後方にいたもう1体の緑大拳の拳が幽冥の身体をくの字に曲げて吹き飛ばす。

 

「ぐっ!」

 

 緑大拳の拳を受けて飛ばされた先にはいつの間にか移動していた6体の蛇型戦輪獣 鈍色尾が待ち構えており、それを待っていたと言わんばかりに避けた幽冥の全身に巻きつく。

 

「あら、動けないなあ〜」

 

 ディスクアニマル 鈍色蛇をベースに作られた戦輪獣 鈍色尾は他の戦輪獣と比べると戦闘能力は最低と言っても程だが、他の戦輪獣には無い拘束力を持った特殊な戦輪獣だ。

 1体だけでも並の大型魔化魍の動きを封じる強力な拘束力を持った鈍色尾が6体全てが幽冥の身体を拘束する。

 

「〜〜〜♪」

 

 普通だったらその拘束力で魔化魍は苦悶の声をあげるが、幽冥は何事もなくただ縛れているだけ。おまけに口笛を吹きながら余裕を見せる。

 

「舐めやがって!!」

 

「おい、やめろ!!」

 

 その姿に苛立った天狗の1人が仲間の声を無視して鈍色尾の側に立つ緑大拳に天狗笛で指示を出し、無防備な幽冥の顔に向けてその拳を振るう。

 

「なにっ!!」

 

 だが、緑大拳の拳はまるで鋼鉄を殴りつけたかのような音を響かせて振るった拳は砕け散る。

 そして、幽冥は鈍色尾で縛られていない右手を目の前の緑大拳に振り上げる。

 

 ギィーーという金切り音に似た音が響き、幽冥によって真っ二つに切り裂かれた緑大拳の身体は火花を散らしながら左右に分かれて中の機械部品をばら撒いて地面に倒れる。

 

「緑大拳が!!」

 

 天狗たちは驚く。

 見た目は鬼の如き角の生えただけの少女である幽冥が一瞬で緑大拳を切り裂いたということに。

 

「まだだ、緑大拳はもう1体いる!!」

 

 天狗笛でもう1体の緑大拳に指示を送り、再び幽冥に殴りかかる。

 だが、幽冥は身体を逸らして緑大拳の拳を自身の腕近くを縛る鈍色尾の1体に当てさせる。

 勿論、緑大拳の攻撃を受けた鈍色尾の頭は一瞬で潰れて、1体分の拘束が緩み腕が自由になったことで自身を縛る2体の鈍色尾の頭を掴み万力のように力を込めて、2体の鈍色尾の頭を砕く。

 それに続くように残った3体の鈍色尾の身体を纏めて掴むとその身体を纏めて引き千切る。

 さらに幽冥はバラバラとなった鈍色尾の一部を掴むと目の前の緑大拳と緑大拳をけしかけた天狗に投げる。

 

 ビュンという風が天狗たちの間を通る。

 幽冥の前で拳を突き伸ばした姿勢のまま腹に大きな穴を作った緑大拳は崩れ落ち、けしかけた天狗は顔を何かが貫通していて倒れる。投げられた一部は何処にもなく、何処かへ消えた。

 

 天狗たちは鈍色尾を6体、緑大拳1体を破壊し、指示を出した天狗を瞬く間に殺したことに驚愕する。

 幽冥がこのようなことが出来るのも勿論理由がある。

 シュテンドウジには鬼を体現するという能力があり、それは伝承や伝説として伝えられる鬼の出来ることを全て体現することが出来る力

 つまり、幽冥はその力で自身の身体能力を伝承や伝説の鬼と同じにして上記のことを可能にしたのだ。

 そして、戦輪獣のいない天狗はただの人間と変わらない。戦闘手段もない人間に幽冥は鬱陶しく思っていると。

 

【なら、うちがやらせてもらおうか、久しぶりに遊びたいからな〜。ちぃ〜と身体を借りんよ】

 

「(え、シュテンドウジさん?)」

 

 幽冥の意識は内側にいき外側に出たシュテンドウジは瓢箪を下に傾けると透明な酒が地面に溢れていき、地面に垂れるたびに酒はどんどん気化していき、色がほんのりついた煙が天狗ごと空間を包み込んでいく。

 

「何をしている?」

 

 天狗の1人が理解不能な幽冥、シュテンドウジの行動に疑問の声をあげるがすぐに変化が起きる。

 

「の、喉が、があああ!!」 「手が、手が融ける!」

 

「お姉ちゃん、助けて、助けてよぉおお!!」 「うぐ、ゲボッ、ああ……」

 

 天狗たちが悲鳴の声をあげていると幽冥に憑依しているシュテンドウジが唱う。

 

「さあ、さあ、逃れることのできひん酒宴へようこそ!!

 

 漂う酒気は歓迎。

 

 鼻腔を燻り、まずは一杯。

 

 思考を蕩かし止めどなく溢れる絶望と涙に身を捩らせ。

 

 身体を融かす悲鳴は我が身を悦に浸らせ、歓喜に振るわせる。

 

 死を満たし、蕩けた屍を晒し、累々の光景はうちの肴に。

 

 さあ、たっぷり堪能しぃ!

 

 神便鬼毒死屍累々宴(しんぺんきどくししるいるいえん)

 

 ごゆっくり」

 

 シュテンドウジの技の1つである神便鬼毒死屍累々宴(しんぺんきどくししるいるいえん)とは、空間全体をシュテンドウジの持つ瓢箪の中身の酒で覆うという単純な技だ。

 しかし、瀕死の重傷だった五位の傷を癒したシュテンドウジの酒が何故、人間は回復せず苦しむのか。

 

 シュテンドウジの持つ瓢箪の中身は一見はただの酒。だが、魔化魍と人間では効能が違う。

 魔化魍に対しては瀕死の重症だろうと、出来たばかりの欠損だろうとを異常治癒させる回復効果を持ち、人間に対しては匂いを嗅ぐだけで精神異常、吐き気、頭痛、倦怠感に襲われ、酒を呑む、又は気化したものを吸いこんでしまえば何か知らぬ幻覚を見せながら身体を内側から溶かしていく。

 

 その酒を空間全体に気化させて敵を溶かし、味方を回復させるのが神便鬼毒死屍累々宴(しんぺんきどくししるいるいえん)

 

 あたり一面は咽せるほどに濃い酒と血肉の匂いが充満し、天狗たちのいた場所にはピンク色の肉片が一部混じった液体が残っている。

 

「ほら、戻ってきい」

 

 瓢箪の口を上に向けてそう言うと、瓢箪が周りを吸い込むように吸い始めてものの数秒で吸い込むのをやめて、シュテンドウジは蓋を閉じる。

 本当は蕩かし溶かした人間を気化させた酒ごと回収して呑むのだが、シュテンドウジはまだ人間の部分を持つ幽冥には早いために気化した酒だけを回収した。

 すると少しずつ身体の操作がおぼつかなくなってきたことに気付く。おそらく幽冥の意識が戻りかかってるからだろう。シュテンドウジは内側に戻る前にほんの少しだけ瓢箪の中の酒を呑み、満足そうに幽冥の内側に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 天狗たちを憑依したシュテンドウジが殺して意識が戻った幽冥は6代目魔化魍の王 イヌガミの力を借りて自身に風を纏わせ、更に追い風を利用し、分断されて鬼と戦う鉄の元へ駆ける。

 

 鉄の居る場所に着いた私が見たのは、様々な殺され方をしている鬼の死体が転がっている中で、双方睨み合う2つの影だった。

 片方は身体を構成している一部が砕け、その破片が身体や地面に散らばっている鉄。

 

 もう片方は鬼石の付いていた先が折られて、ただの木の棒と化した音撃棒を持っている(疾鬼)

 互いに睨み合っているが、鉄は私がいる事に気付き声を掛ける。

 

【王よ。ご無事でしたか】

 

「なに!?」

 

 その言葉を聞いて驚いた疾鬼がこちらに顔を向ける。

 

「(みんな、すまん)」

 

 そして、幽冥の状態を見て戦っていた天狗たちがどうなったのか理解し、疾鬼は心の中で死んだ同僚であり友だった天狗たちに謝罪する。

 だが、それと同時にその悲しみを糧に己が王を清める(殺す)ことが出来ずとも、その腕を1本でも奪ってやると思う。

 疾鬼は折れた音撃棒を捨て、バックルに着いた独特な音撃鼓を外す。

 

「『不明』よ。さっきまでの動きと同じと思うなよ」

 

 本来、音撃鼓は魔化魍に張り付け、そこに向けて音撃棒を振り下ろし音撃を放つのだが、疾鬼の音撃鼓はバックルから外れるとその大きさを変え、外縁に沿って刃が飛び出す。

 疾鬼は慣れた手つきでその音撃鼓(?)を持ち、構える。

 鉄は疾鬼の音撃武器を見て、目の前の鬼が何者か思い出す。

 

【その音撃武器。そうかお前が音撃攻手鼓(タンバリン)使いの疾鬼だな】

 

 音撃攻手鼓(タンバリン)

 本来は魔化魍に音撃を叩き込む際に使う補助的なものである音撃鼓を直接攻撃に転用出来ないかと考えたある鬼の手によって開発された異質な音撃武器だ。

 似た音撃武器でいうのなら響鬼の劇場版に登場した煌鬼の持つ音撃震張(シンバル)だろう。

 だが、音撃震張(シンバル)と違う点を挙げるのなら。音撃攻手鼓(タンバリン)は近接、近距離ではなく音撃弦や音撃管などの中距離から遠距離に分類される武器だ。

 鼓を叩くことで音撃を衝撃波に変えて撃ち出し、例え遮蔽物のある場所に隠れようと衝撃波は遮蔽物を貫通して隠れた魔化魍に命中させる。更には盾のように片手に固定して音撃棒や音撃弦などを装備して戦うことが可能で攻守に優れた音撃武器だった。

 しかし、この音撃武器には攻撃に関して重大な欠点があった。

 衝撃波の命中精度。衝撃波を狙った場所に撃ち当てるのが難しかった。これが音撃となるとさらに難易度は増し、まともな攻撃が出来なかった。当時はまだ沢山いた鬼たちがその音撃武器をどうにか使おうとしたが、まともに使えたの開発者とその友の2人の鬼だけだった。

 それ故に音撃攻手鼓(タンバリン)は大元となった初期型と幾つかの完成型のみしか存在しない。

 

「ここ数年は戦闘に出ることがなかった私を知っているとは驚いた」

 

 だが、この疾鬼はその音撃攻手鼓(タンバリン)を使いこなし、いくつもの魔化魍を清めたという実績を持つ。

 

「だが知ってるだけで私の実力を全て知ったと思ったら大間違いだ!!」

 

 疾鬼は音撃攻手鼓(タンバリン)を叩くと叩いた時に出た音が衝撃波となって鉄に襲い掛かる。

 

【ぐっう!!】

 

「鉄!!」

 

 鉄の身体を構成する蛸壷の1つが衝撃波によって砕かれる。

 そして、幽冥にも衝撃波が迫る。

 幽冥は裾から取り出した札を地面に貼りつけると地面から盛り上がった土が壁に変わり衝撃波を防ぐ盾へと変わる。

 

「ぐあっ!」

 

 だが、衝撃波は土の壁を貫通して、幽冥の顔や脚にごく小さなヒビを生み出す。

 先程と同じように音撃(清めの音)によって受けた傷は身体に響く。誰だって安全と思ってる場所で攻撃を受けたら、動きが鈍る。

 そして、そんな隙を見逃すはずのない疾鬼は音撃攻手鼓(タンバリン)を何度も叩き衝撃波を乱発する。

 音撃によるダメージを受けた幽冥は動き出すのに遅れて、そのまま呆然としてしまう。自分の身に来る衝撃波に目を閉じてしまう。

 

 しかし、衝撃波が自分の身体にこなかった。不思議に思った幽冥が目を開くと、覆い被さるように立った鉄がその身を挺して自分へ来る衝撃波を防いでくれていた。

 

「ちぃ、さっさとくたばれ!!」

 

 その光景が気に食わない疾鬼は音撃攻手鼓(タンバリン)を叩いては衝撃波を繰り返して撃ってくる。

 

「(鉄ありがとう)」

 

 自分の身体を顧みずに衝撃波から身を守ってくれる鉄に感謝しながら、音撃攻手鼓(タンバリン)の衝撃波をどうするのか幽冥は考える。

 衝撃波は今のところ、鉄が防いでくれてるがいつまでその身が保つか分からない。

 

【タンバリンなんて懐かしいな。私が王の頃にも1人いたが敵じゃなかったな】

 

 どうすれば良いかと思ってるとイヌガミさんの声が頭に響く。

 幽冥はイヌガミから聞いた言葉からして同じ音撃武器を持った鬼と戦い、勝ったということを知り、イヌガミに質問をする。

 

「イヌガミさん。もしかしてアレどうにか出来るの?」

 

【ああ。簡単だよ私の力を使えばな】

 

「どうすれば良いの?」

 

【まずはな–––】

 

 

 

 

 

 

【––という風にすれば良い】

 

「ありがとうイヌガミさん」

 

【ふっ。礼ならばあの鬼を早急に仕留めるがいい】

 

「はい!!」

 

 イヌガミさんがそう言うと、イヌガミさんの意思は私の奥底に戻った。

 そして、教えてもらった通りのことをするために先ずは、衝撃波を防いでくれてる鉄の腕を掴んでそのまま自分の後ろに移動させる。

 

【なっ! 王何を!?】

 

 鉄の疑問に答えずに、イヌガミさんの力で風を腕に纏わせていく。普通なら見えないはずの風が可視化できる程までに腕に集まる。集まった風の塊を私は横凪に振るう。

 

「なに!?」

 

 衝撃波は幽冥が振るった腕から放たれた風の塊とぶつかり、何事もなかったかのように消え、その光景を見た疾鬼は驚愕の声をあげる。

 

「何をした!!」

 

 自身の攻撃を無力化した私に鬼は声を荒げる。

 それに対して、私はイヌガミさんから教えて貰った通りのことを喋る。

 

「風を何重にも重ねて、衝撃波を無効化した」

 

 そもそも衝撃波とは音速を超える速度で移動する物体が空気を切り裂くことで生まれる爆発的な衝撃を伴った大気の変動のことを指す。まあ必ずしも音速を超える物体が必要というわけではなく、光や放射線などの電磁波や雷などにおいても衝撃波が発生することもある。

 小規模なものとして、鞭を振るったときに先端部が音速を超えて衝撃波が発生することもある。

 

 まあ、幽冥がやったのは簡単なことだ。上記に書いた通り衝撃波は爆発的な勢いを持った大気の変動。つまり、撃ち出された衝撃波に対して、それと同等の風の塊をぶつけて衝撃波を相殺、無効化したのだ。

 

「まぐれだ! くらえ!!」

 

 疾鬼は再び、音撃攻手鼓(タンバリン)から衝撃波を放つ。

 連続で放たれた3つの衝撃波が幽冥に目掛けて飛んでくる。しかし、幽冥は先程と同じように今度は両腕に風を集める。

 衝撃波が迫るぎりぎりまで溜めた風を同じように振るって風の塊を飛ばす。

 3つの衝撃波は同じように風の塊とぶつかり、そのまま消える。

 

「くそ!!」

 

 同じように防がれれば、それはもうまぐれでもなく現実だと疾鬼は気付く。

 音撃攻手鼓(タンバリン)の衝撃波を無効化すれば疾鬼の音撃武器は音撃以外はただのチャクラムもどき同様。疾鬼は音撃を放とうと準備しようとするが遅かった。

 幽冥の姿はイヌガミを憑依させた姿からユキジョロウを憑依させた姿へと変わり、適度に空気中に存在する水分を利用して氷柱を生み出して、それを疾鬼に向けて撃ち込む。

 

「っ!!」

 

 しかし、棒立ちしている訳ではない疾鬼はただの近接音撃武器となった音撃攻手鼓(タンバリン)を振るい、自身を狙う氷柱を砕いていく。

 

「じゃあ、これはどう?」

 

 幽冥が腕を振るうと猛烈な吹雪が疾鬼に襲いかかる。

 実体のあった氷柱と違い、実体のない吹雪は確実に疾鬼の動きを遅くし、動きがどんどん鈍くなっていく。

 

「はっ!!」

 

 幽冥は吹雪を放ちながら、空中に先程の氷柱よりも長く鋭い氷の槍を4本生み出し、動きが亀並みに鈍くなった疾鬼に向けて撃ち出す。

 

「うぐっがあ!!」

 

「これで動けないでしょ」

 

 幽冥が放った氷の槍は疾鬼の四肢を貫き、手に持っていた音撃攻手鼓(タンバリン)を落とす。そのまま氷の槍の勢いで後ろに倒れる疾鬼の身体を氷の槍が地面に固定する。それを見ると幽冥は鉄に指示を出す。

 

「やりなさい鉄!!」

 

【うおおおおおお!!】

 

 今まで殺された魔化魍たちの恨みや憎しみが鉄の拳に宿ったかのように黒いオーラを纏わせ、拳を振り上げて自身の身体に振り下ろす鉄の姿を疾鬼は見ることしか出来なかった。

 

「くそっ!!」

 

 四肢を幽冥の氷の槍で磔にされた疾鬼は避けることも出来ず、鉄の拳をもろに受けて、ゴキャという骨が砕ける音とブチャと臓物の潰れる音が疾鬼の身体から鳴る。

 

「ごぼっあ……あ」

 

 砕けた面から見える口から大きな血が噴き出る。幽冥はそんな疾鬼の姿を見て、鉄に告げる。

 

「あとは好きにすれば良いよ」

 

 幽冥からの言葉を聞いた鉄は殴りつけた拳を振り上げ、再び、振り下ろす。

 それを繰り返す。徐々に音は肉を鈍器で叩きつけている音しか鳴らなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【計画に参加していただきありがとうございます王】

 

 もう原型が残らないほどに叩き潰され、砕けた鎧の混じったミンチ肉に変えられた疾鬼から手を離し、幽冥に礼の言葉を言う。

 

「気にしないで、私も同じ立場なら思うことは一緒だったから」

 

 そう言いながら、幽冥は手に氷の球を作り出して、福岡支部の建物に向けて投げる。

 氷の球が建物にぶつかり砕けると同時に建物全体は水晶のように透き通った氷に覆われた。

 瓦礫や死んだ猛士の鬼や天狗、人間の死体も建物と一緒に凍りつき不気味でありながら幻想的な景色を生み出した。幽冥は凍った景色をしばらく眺め、鉄に声を掛ける。

 

「じゃあ、行こっか」

 

 音撃攻手鼓(タンバリン)を拾った幽冥の言葉を聞き、幽冥と共に仲間、いや家族たちの待つ集合場所へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、それから3日後に猛士は九州地方支部の支部長である千葉を連れた鬼と天狗と命からがら逃げた福岡支部の人間数名が総本部に報告した。

 猛士九州地方全支部は魔化魍の王と王率いる魔化魍の手によって壊滅したと。




如何でしたでしょうか?
今回で遂に九州地方編の戦闘回終了です。
千葉さんが戦うと思っていた読者の皆さんごめんなさい。千葉さんは別の話で戦うことになります。その時を楽しみにしてください。
戦闘回を考えるのが結構時間がかかりましたが、ですが作品を放棄する事なくこのまま作品の完結を目指していきたいと思います。
次の話で九州地方編は終了になります。その後に幕間を書いて、次の鳥獣蟲宴(ちょうじゅうちゅうえん)編に入りたいと思います。


ーおまけー
迷家
【いええーーーい!! おまけコーナーだよーーー♩】

迷家
【今日のゲストはこの魔化魍。では、どうぞどうぞ】

迷家
【………あれ? ちょ、ちょっと待ってね】

迷家
【あーーー!! やっぱり寝てる! 起きてよ!】


【うう、あと〜5時間】

迷家
【長いよ! それにさっきもそう言ってもう10時間寝てるでしょ!! 終わったら寝ていいから起きて!!】


【分かったよ〜〜ふあ〜〜じゃあ、やろっか】

迷家
【じゃ、あらためて、今回のゲスト魔化魍の】

眠眠
【眠眠だよ〜ふあああ〜〜よろしく〜〜】

迷家
【じゃ、今回の質問ね。ズバリ今の主のランピリスとは何処で出会ったの?】

眠眠
【ん〜ランピリスと、え〜と、確か〜〜】

眠眠
【あれ、何処で会ったんだっけ…………ていうかランピリスって誰?】

迷家
【え?】

眠眠
【え? あれ、ここは何処? おじいちゃんは何処なの?】

迷家
【おじいちゃん? どうしたの眠眠?】

眠眠
【眠眠? 誰? それよりもおじいちゃんは何処?】

迷家
【本当にどうしたの眠眠!?】

眠眠
【行かなくちゃ、おじいちゃんを守らなきゃ、大丈夫だよおじいちゃんは僕が守る
 何処、何処にいるの、おじいちゃん!!】

迷家
【あ、あわわ、明らかに聞くとまずい話だったどうしよう!?】

「大丈夫です」

コンコン

眠眠
【おじい………………すぴー、すやーー】

「すいません。あのままだと、あの子が危なかったので、無理やり眠らさせて貰いました」

迷家
【き、君は!!】

ー次回のおまけコーナーへ続くー
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