人間だけど私は魔化魍を育て、魔化魍の王になる。   作:創夜叉

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はい。新話になります
今回は妖世館で囚われた捕虜や捕虜じゃない鬼の1日。
家族ポジを確立してる慧鬼こと安倍 春詠の話です。


妖世館での鬼の1日 慧鬼編

 朝7時。

 私はこの時間にきっかり起きるように心掛けている。

 側に置いてある赤い眼鏡を持って部屋を移動する。

 

 大きな三面鏡の前に立って私は顔を洗う。

 顔を洗う際に鏡に映る姿を見ていつも思う。目の前に映る女性が今の自分(・・・・・・・)なのだと。

 私の名前は安倍 春詠。この館の主たる安倍 幽冥の前世の兄で、現在は血の繋がりはないが姉をしており、そして不本意ではあるが初代魔化魍の王 オオマガドキを倒した『8人の鬼』の末裔で、その力を受け継いだ鬼でもある。

 

 しかし、転生したらまさか性別が変わっているとは予想外だった。

 男の頃だった昔とは異なり女性の身体に色々苦労させられた。特に女性の日に関しては女性はいつもこんな思いをしているのかと思った。

 前世の自身の身の回りの女性はその日の影響が比較的に軽いものが多く、ベッドから動けなくなるほどの重たいものを経験していた知り合いが居なかったということもあって軽く見ていたのが駄目だった。

 

 私はどうやら重い方だったらしく、それによる体調不良では調鬼もとい月村 あぐりに色々お世話になった。

 そんな前世の頃の違いを思いながらも身の支度を整えて普段着に着替えて、今日の支度を終えると共に部屋を出る。

 

「オハヨウ春詠サン」

 

「おはよう黒」

 

 部屋を出ると手にファイルを持った黒が立っていて、挨拶をしたので私も挨拶をする。

 当時は私が幽の姉(元兄)ということもあってか私にも様付けで呼ぼうとしていたが、正直、そういうのに興味がないので、なんとか、さん呼びにさせるのに苦労した。

 

「コレヲ」

 

 そう言って、黒が渡したのは一冊のファイル。

 このファイルは、私が幽に頼んで作って貰った私への仕事。

 私は猛士では死亡していることになっているため、自身に関わること以外では迂闊に外に出れない。かといって、この館でぐうたら過ごすのは違う。その為、幽に頼んで仕事を貰った。

 仕事といっても、家の手伝いや魔化魍や戦闘員との戦闘訓練、教育など多岐にわたるが難しいことではない。

 

「ジャア、マタ後デ」

 

 黒はそう言うと、仕事に戻り私も渡されたファイルの中身を確認する。

 

 

 

 

 

 

 今日の予定が書かれたファイルを黒から受け取り、別れてすぐに春詠は妖世館の外の広場に行った。

 ファイルに挟まれた紙の要請で向かった春詠は、そこで待っていた者たちから頼まれて慧鬼に変身し、その者たちと模擬戦を行っていた。

 

「はー、はー、はー」

 

 息を荒くしながら立つ慧鬼の前にはこの妖世館に所属する戦闘員である眼魔コマンドこと黒服たちとその上司ともいえるインセクト眼魔が同じように息を荒くして立っていた。

 

「ふー、………流石は8人の鬼と言うべきかしら」

 

「あまり、それを言わないでくれない。私に過去の栄光を押し付けようとした馬鹿を思い出すから」

 

「そう。それはごめんなさい」

 

「そろそろ時間だね………今日はここまででいいかな?」

 

「ええ。私はなかなか楽しめたし、黒服たちの訓練に戻るわ」

 

 そう言ったインセクト眼魔は身体を無数の蜂に変えて、黒服たちも揺らぐようにその場から消えた。

 それを見送った私は汗を拭き、消臭スプレーで汗の匂いを消してから着替え、次の場所に向かう。

 おそらく今日やること、もとい頼まれた仕事の中で一番疲れるだろう部屋に。

 

 

 

 

 

 

 着いたのは『勉強部屋』と呼んでいる妖世館2階の端にある部屋。

 この場で勉強させる子に合わせた長机で座って待つ3人。雛と波音と潜砂だ。

 幽からのお願いで前世では教育免許を持っていたこともある私に頼まれた仕事。週に一度この部屋で勉強を教えている。

 朝に別れた黒も補佐として入り、時折、黒が教えることもある。

 

「じゃあ勉強をしようか」

 

 春詠による勉強が始まって数分経った。

 

「「もう、いやだぁああああ!!」」

 

 また、いつものように勉強していた箇所が分からなくて、扉を破壊して2人は廊下に飛び出る。

 

「はあー。波音少し待ってて、黒は波音を見ていて」

 

「ハイ」

 

「うん。いってらしゃい」

 

 波音の返事を聞き、私は2人が壊した扉から出ていつものように2人を追いかけようとする。

 普段ならこれで、時間がかなり削られてこっちの体力があまりない状態にさせられてからなんとか捕まえ、そこから勉強を教える羽目に合うのだが、今回はいつもと違った。何故なら–––

 

迷家

【はーーーい。こっから先は行き止まりだよ♪】

 

 2人の逃亡者の先には幻術を使って、生み出して壁で2人の足止めをする迷家がいた。

 なんでこの場に迷家がいるのかと聞いてみたら。

 

迷家

【僕はね約束はちゃんと守るんだよ♫】

 

 そう言った。

 

「もう! 迷家邪魔しないで!!」

 

「勉強やだ。もうしたくない!!」

 

 不満文句を言うのはいつものこと。

 だが、まるで迷家には勝算があるのか妙な笑みを浮かべている。

 

迷家

【そっっか。残念だ〜なーー。

 僕ね。王からこんなもの預かってるんだ〜】

 

 そう言って迷家が取り出したのはラッピングされた小さな袋。それに見覚えのある私は迷家の笑みの意味がわかった。

 

「それって!!」

 

「幽冥お姉ちゃんのお菓子袋」

 

 幽が自作した自慢のお菓子。

 昔は私が勉強していた際に糖分補給やおやつとしてよく出してくれたのが懐かしい。……………今度時間があったら幽に頼んでみようか。

 

迷家

【そう!! 王が勉強を頑張った子のご褒美にって、お菓子を作ってくれたんだ〜♬

 で〜も〜頑張らない子にはあげられないし、真面目に勉強してる波音の分残して、残った2つは僕が食べちゃおかな。あーーーーん】

 

 器用に尻尾を使ってお菓子を入れた袋を口元に持っていこうとする迷家を見て2人は慌てる。

 

「あーーー駄目!! 頑張るから!! ねっ潜砂!!」

 

「……う〜勉強嫌だけど、ご褒美、お菓子、じゅるり。うーーー頑張る」

 

迷家

【じゃあーーー部屋に戻ろう。波音が寂しかがってるかもしれないからね。

 それに頑張ったら僕はちゃんとお菓子あげるからね】

 

「「はーーーい」」

 

 迷家はそう言って、2人を部屋に連れて行ってくれる。

 迷家がいつかの時に約束してくれたことを守ってくれるとは思わなかった。

 こう言うのは彼女(?)に失礼だが、正直約束のことを忘れるか、約束のことを放棄して2人の味方になると思っていた。だからこうして約束を守ってくれたのは嬉しい。少しだけ私の迷家への好感度が上がった。

 

 

 

 

 

 

 3人への勉強が終わり、迷家は約束通り勉強を頑張った3人に幽が作ったお菓子をプレゼントしていた。

 そして、私はある時間が迫っているので急いで『勉強部屋』を出て、その部屋に向かっていた。

 

 目的の場所に着いた私は軽く身だしなみを整えて、部屋に入る。そこに居るのは前世においては私の妹であり、今では魔化魍の王として日に日に魔化魍に近くなっていく幽がいた。

 映画とかでよく見る大きな机が部屋の主役と主張するように置かれおり、私を待っているかのように、いや実際は待っていた。

 

「遅かったねお姉ちゃん」

 

「いつものように勉強中に2人が逃げてね。それが理由で終了時間がズレちゃって」

 

「そっか。そろそろあの2人もNORMALにしたら。波音はそろそろHARDなんでしょ」

 

「うーーん。今のEASYの段階で逃げるのに、NORMALに変えたら絶対に2人は二度と勉強しないでしょ」

 

「…………そうだね」

 

 私の言葉にその光景が想像できたのか、幽はため息を吐く。

 この2人が言う、EASY、NORMALというのは、前世で春詠が考えた教育レベルのことである。

 EASY、NORMAL、HARD、LUNATIC、ULTIMATEという5つのランクに分けており、勉強させる子に合わせて徐々に上げていく。

 因みにこの教育レベルに基づいて春詠が勉強を教え、ULTIMATEまで行った生徒は卒業後に世界的な教授になったり、大会で新記録を打ち立てたり、ノーベル賞を受賞したり、無敗の弁護士になったりしていた。

 

 波音も当時は、EASYで勉強を嫌がっていたがNORMALになってから勉強に楽しさを見出したのか、今では積極的に勉強している。雛と潜砂は、もう少しEASYで様子を見なければ、NORMALには上げられない。

 

「まあ、勉強はお姉ちゃんたちに任せてるしね。何も言わないよ。じゃ、ご飯にしよう。もうお腹ペコペコ」

 

「そうだね。白お願いね」

 

「はい」

 

 そう。元々、幽の元に来たのは今日の報告もあるがもうひとつ理由がある。それは家族揃っての夕食のため。

 週に1度、私と幽が揃って夕食を食べる日がある。主に、食事をしながら私が猛士にいた頃の話や前世にはいなかった魔化魍の話、幽が私と会うまで今の家族(魔化魍のほう)と何をしていたかの話などをしている。

 

「本日は、睡樹と命樹の育てた新鮮野菜のシチューです」

 

 白が持ってきた2枚の皿には程よい大きさに切られた彩り豊かな野菜の入ったシチュー。温められた直後によそったために湯気が上がっている。

 

「「いただきます!!」」

 

 うん。スプーンに収まるサイズでちゃんと切ってる。前は大雑把に切っていたから、それに比べたら全然違う。そんなことを思いながら私は一口。

 

「うん。野菜の火の入りも良い、しょっぱくないし、盛り付けも良い、腕を上げたね」

 

 料理を力任せに作ろうとしていた頃に比べれば、本当に腕を上げたと思う。

 

「今日はどんな話をするお姉ちゃん」

 

「そうだね。じゃあ私が猛士で会ったね全裸で魔化魍と対話しようとしたある支部長の話をしようかな」

 

「何があったの!!」

 

「うん。そう思うよね。あれはね––––」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「–––って感じだったかな」

 

 私の話す話に時折質問をはさみながら会話して食べてるとあっという間に私と幽の皿のシチューは無くなっていた。

 

「ごちそうさま」

 

「ごちそうさま。美味しかったよ白」

 

「ありがとうございます」

 

 幽には見えないように小さくガッツポーズをした白は、中身の無い皿を片付けようとテーブルに近付く。

 食べ終えた皿を回収する白に少し顔を寄せる。

 

ボソッ「今度、新しい料理を教えてあげる」

 

ボソッ「ありがとうございます」

 

 白に耳打ちのように小声で伝えると同じように白も小声でお礼を言う。

 白は花嫁修行として幽に知られないように私に料理を教わっている。実は幽との食事の裏で私は白の料理チェックも行っている。基準が満たせたら新しい料理を教えるという約束。

 

「じゃあ、明日もあるしおやすみ幽」

 

「おやすみお姉ちゃん」

 

 私はそのまま部屋を出る。

 

 

 

 

 

 

 食事が終わり自室に戻って寝巻きに着替え、ベッドに倒れる。

 幽には言っていないが、私は幽が魔化魍の王となったら人を捨てる覚悟がある。この話は白や美岬には話している。2人は否定するかと思ったが、むしろ逆で喜んでくれた。

 だから私は例え幽がどんな王になろうとも私は姉として、いや家族としてずっと側にいる。

 例え、世界を敵に回したとしても、幽がいない世界に未練は無い。そんな世界なんて破壊してやる。




如何でしたでしょうか?
内に秘めたる元兄の姉の話です。
そういえば主人公と姉である春詠の苗字が一緒なのは2人とも前世の苗字を名乗っているからです。
さりげなくおまけコーナーで約束していたことを守る迷家を入れてみました。


ーおまけー
迷家
【はいはーい。おまけコーナー始まり始まり】

迷家
【今日のゲストは悩んだんだけど、決まったよ♬
 ではご登場。この子です!!】

飛火
【ゲストっていうのはよく分かんないけど呼ばれた飛火だよ。
 迷家の質問に答えればいいんだよね?】

迷家
【そうそう。
 じゃあね〜〜〜今回の質問はズバリ。葉隠とはどういう関係?】

飛火
【葉隠? 友達だよ、いや散歩仲間?】

迷家
【あ、あらら期待してたのとなんか違うよ】

飛火
【ん。何を期待してたの?】

迷家
【ううん。なんでもないよーー】

飛火
【で、なんで葉隠が出てきたの?】

迷家
【んっとね。単純によくふたりで散歩してるからね。なんか、ね?】

飛火
【そうだね。最初は私ひとりで散歩してたんだけどね。いつからだったかな葉隠が散歩に一緒に来るようになったのは】

飛火
【このカメラ貰ってからだったかな。何気なく色んなところを撮ってたんだけどね。
 写真を見た葉隠がね。いい場所を教えるからって、あまり他の子には教えない場所に連れてってくれたんだよ】

飛火
【其処の景色がすごく綺麗でね。そんで何枚も写真を撮ったんだよ。
 そしたら葉隠が『また、いい場所を教えるよ』ってね】

飛火
【その言葉通り、散歩に行くたびにいろんな景色のところに連れてってもらって、それで今じゃ、ふたりで散歩する様になったんだよ】

迷家
【そうなんだ。じゃ、今日はここまでまったーーーねーー】

飛火
【あれ終わり? じゃあ、葉隠と散歩に行こうかな】

迷家
【…………】

迷家
【ウーーーン。これは強敵かもしれないよ葉隠】












葉隠
【僕は諦めないよ!!】
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