人間だけど私は魔化魍を育て、魔化魍の王になる。   作:創夜叉

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前回の投稿して改めて安倍家読んでたらある魔化魍2体の話を書くのを忘れていたことに気付き、急遽書きました。
今回の話で各話の中で度々出てくる魔化魍(書き忘れた魔化魍と相棒の魔化魍)が出てきます。
それといつかの話でも書きましたが、安倍家の魔化魍を改帳して出そうと思っていますので、これの投稿が終わったら、一度安倍家の魔化魍を全部消そうと思います。


暴走する鯱と刀鍛冶

 魔化魍が捕虜となった鬼たちと戦う際に使用する部屋。

 普段は、戦闘好きな魔化魍や鍛錬を好む魔化魍が入り浸る部屋は静寂に包まれていた。

 

 その原因は擬人態の姿で部屋の中央に立つ美岬だ。美岬は壊鯱(かいしゃち)に宿る意思との対話を行なっていた。

 九州地方の猛士の戦いから戻ってから、時間がある時は美岬は壊鯱(かいしゃち)との対話をしていた。

 

「また失敗」

 

 そう呟くと閉じた目を開き、美岬は壊鯱(かいしゃち)を側に置いて、身体を休める。

 もう何度目かは分からない。何度も何度も、対話を行なっている。だが、壊鯱(かいしゃち)の意思のいのじも出ない時間が続く。

 だが、意思に会えないからなんだ。会えないからと諦めるような美岬ではなく、適度に休んで再挑戦しようとしていた。

 全ては、幽を守れる力を身に付けるため。

 

《本当にそれでいいの?》

 

「え?」

 

 何処からか声が聞こえた。

 

《君の大切なものを無くしてもいいの?》

 

 部屋には、誰もいないのに響く声。

 

「誰!? 姿を現れしたらどう!!」

 

 置いといた壊鯱(かいしゃち)を構え、いつでも戦えるように身構える。

 

《酷いなぁ。せっかく対話に応じたというのに》

 

 呆れにも似たその言葉で私は手に持つ壊鯱(かいしゃち)を見る。

 

《そう。僕は君が今、手に持つ壊鯱(かいしゃち)の意思だよ》

 

 今まで、対話をした際には魚呪刀の意思の空間に引き込まれていたので、声だけ対話に成功したという事実に気付くのに少し時間が掛かった。

 

「そうですか。…………貴方の力を貸して欲しい」

 

《嫌だ》

 

「え?」

 

《認めてない相手に力を貸すのは嫌だし》

 

 じゃあ、どうすればいいの。

 

《ねえ、なんで自分の手元に置かないの?》

 

 え?

 

《だから、大切なものをなんで自分の近くに置かないの。いや、大切なものを自分のものにしないの?》

 

 幽のこと?

 確かに幽は大事だよ。私のこの想いは昔(前世)から変わらない。でも他の子ましてや幽の気持ちを考えないなんて–––

 

《そんなんで、その子を守れるの?》

 

 それは–––

 

《その甘さで大切なものが無くなってもいいの?》

 

 ………幽が居なくなる? 嫌だ。そんなのは絶対嫌だ!!

 

《大切なものは自分の手の中になきゃ》

 

 ……… ソウダネ。

 

《そう。邪魔者は排除スレバイインダヨ》

 

 ソウダネ。ワタシト幽ヲジャマスルモノハスベテ、斬レバイインダネ。

 

《そうだよ僕を使って、今度こそ》

 

 そのままフラフラと美岬は抜き身の壊鯱(かいしゃち)を手に部屋を出た。

 それは、この後の騒動の始まりだった。

 

SIDE幽冥

 美岬が壊鯱(かいしゃち)との対話を行なっていた時間から少し後くらいの頃。

 この館の主である幽冥は美岬を探していた。理由は、九州地方支部壊滅計画の際に暴走で氷漬けになった昇布の護衛として残してしまった美岬への謝罪を含めて2人で出掛ける約束をしたからだ。

 因みにこの約束の話を美岬と話している時に白も一緒に行きたいと思ったが、自身は長崎支部壊滅に関わっていたので、自重して美岬に2人だけのお出掛けを許したという裏話があるとかないとか。

 

 そんなわけで幽冥は、廊下ですれ違う家族に美岬のことを聞いて美岬を探す。

 だが、誰も知らないようなので廊下から庭に出る。そして、長い付き合いという事で美岬の居るとこを知っていそうな荒夜と狂姫に質問してる最中–––

 

美岬

【ア、幽ミツケタ】

 

 件の探し相手がやって来た。

 しかし、出掛ける時の服装ではなく、鍛錬の際に着ている服装で魔化魍の姿へと戻っている美岬に幽冥は違和感を覚える。戦闘時でもないのに抜き身状態の壊鯱(かいしゃち)を持ち、ふらふらと亡霊のような歩きをする美岬。

 そして、そんな明らかにいつもとは違う美岬の様子に真っ先に気付いたのは、美岬の元で長く共に暮らしていた荒夜と狂姫だった。

 

荒夜

【美岬様………いやお前は誰だ!!】

 

狂姫

【美岬様の筈なのになんか違う】

 

美岬

【ン。ジャマダヨ】

 

 壊鯱(かいしゃち)を狂姫に向けて振るう。

 余りにも突然の攻撃に荒夜は対応出来ず、狂姫にその一閃が–––

 

◯

【危ねえ!!】

 

 だが、空から乱入するように現れた何かが狂姫に向けられた一閃を防ぐ。

 

荒夜

【劔!!】

 

 その正体は劔だった。

 自身の武器である長剣と槍で重ねるように突き出して、美岬の壊鯱(かいしゃち)による攻撃を防いでいた。

 

劔

【危なかった。ところでどうしたんだ美岬さんよ。家族に斬りかかるなんてな】

 

美岬

【カゾク? ナンノコト? ソレヨリモワタシハ、幽ニイイタイコトガアルノダケド】

 

荒夜

【やはり武器の意思に干渉されたのか】

 

「武器の意思?」

 

狂姫

【美岬様や波音の持つ魚呪刀には、武器の意思と呼ぶものがいるのです。

 おそらく、それが美岬様になにか干渉したのかと】

 

 そう言う狂姫は私を守るように手を広げながら少しずつ後ろに下がっていく。

 

美岬

【ナニシテルノ、オマエ】

 

 ギロリと向けられた美岬の目が私を守るために構える狂姫を捉える。

 普段の美岬ならばする筈がない、家族ではない何かを、自分の邪魔をするものを見る目。

 

美岬

【ネエ幽ニフレテイイノハワタシダケダヨ!!】

 

 劔を蹴飛ばし、一目散に私に触れる狂姫に向かう美岬。そして、再び凶刃が狂姫に迫ると–––

 

荒夜

【美岬様といえど、姫に手出しさせません。ハッ!!】

 

劔

【俺もいるんだよ!!】

 

 荒夜が刀の鍔で壊鯱(かいしゃち)の刃を受け止め、残った鞘を鈍器のように振るい、背後からは蹴飛ばされた劔が槍を構えて突撃してくる。

 

美岬

【アマイヨ!!】

 

荒夜

【うぐっ……】

 

 美岬は荒夜の持つ鞘を脚(尾)で叩き落とし、直ぐに鞘を拾うと後ろから飛んでくる劔に鞘を投げ飛ばす。荒夜に対しては持っていた壊鯱(かいしゃち)を手放し、空いた手で無防備な荒夜の首を掴む。

 そして、目の前に飛んで来た鞘を避けるために上昇するように回避した劔に向け、美岬は銃のように構えた指先から水流を放ち、飛翔する劔の両翼を的確に撃ち抜く。

 

劔

【ぐっ】

 

美岬

【セイッ!!】

 

 翼を撃ち抜かれて上空から落ちてくる劔に向けて首を掴んでいる荒夜を投げ飛ばす。

 劔と荒夜の身体は空中で衝突し、地面に同時に落ちる。

 

狂姫

【荒夜様、うう!!】

 

美岬

【スキダラケ。アア幽、モウスグダヨ】

 

 愛する者(荒夜)を心配する狂姫の一瞬の隙をつき、狂姫の片腕を捻るように掴み、後ろにいる私に向けてそう言う。

 だが、狂姫も黙って腕を掴まれるつもりもなく、美岬に向けて隠し持っていた短刀を裾から抜き出して、美岬の身体に突き刺す。

 

美岬

【キカナイヨ】

 

 だが、狂姫の短刀は美岬が片腕で受け止めて、そのまま刃を砕く。

 そして、捻った狂姫の細腕を腕の構造状的に曲がらないギリギリの位置に留められていた細腕に更に力を込める。そして鈍く鳴る何かが折れた音。

 

狂姫

【ああああ………】

 

美岬

【フン!!】

 

 あまりものの腕の痛みで気絶したのか、そのまま投げ飛ばされる狂姫を離れた位置にいた荒夜が身を挺して受け止める。

 

荒夜

【ひ、姫。う……】

 

 だが、狂姫受け止めた際、その衝撃で壁にぶつかった荒夜は当たりどころが悪かったのか、狂姫を抱えた状態で気絶する。

 

美岬

【幽、ツカマエ–––】

 

迷家

【はいストップ!!】

 

 手を伸ばす美岬の上から突如、檻が降ってきて私を捕まえようと手を伸ばしていた美岬を捕らえる。

 そして、その檻の側には宙を浮く迷家がいた。

 

美岬

【?】

 

 迷家の生み出した檻の幻覚に美岬は一度動きを止めるが–––

 

美岬

【ナニカシタ?】

 

 なにこれ、いや何かしたというように幻術で生み出された檻を何事もなく通過する美岬。

 

迷家

【ウソっ!! 幻術が通じない!? なら––】

 

美岬

【ムダ!!】

 

迷家

【ぐぅう!!】

 

 美岬の刀は迷家の腹部を横一文字に斬り裂く。斬れた箇所から吹く血が美岬の頬を赤く染める。幽冥を守ろうとした家族が呻き声を上げながら地面に転がる。

 そして、そんな姿を気にせずに美岬は幽冥に近付く。

 

美岬

【サア、幽、ワタシヲウケイレ、フタリ【そうはさせない!!】キ……ダレダ!! グッ!!】

 

 壁まで追い詰められ、もう後がないと思われた幽冥のピンチを救ったのは突如現れたなにかだった。

 それは美岬を背後から斬りつけると美岬はプツンと切れた糸に吊られた人形のように倒れ、斬りつけた者が倒れる美岬の背中に手を当てて倒れるのを防ぐ。

 

【間に合ったか】

 

 1つは手に七支刀に似た刀を持ち、ボロボロなコートを羽織り、首に白い編み込みマフラーを巻いて、白い水晶のような氷の義足を付けた猪の等身大魔化魍。

 

【間に合ったと言っていいのか?】

 

 もう1つは、足先がキャタピラで全身の各所に戦車に似た装甲を付け、右肩部から伸びる長い砲塔が目立つアルマジロに似た大型魔化魍。

 猪の等身大魔化魍に抱えられた美岬は糸が切れた人形のようにぐったりとしているが少し経つと意識が戻り、目を開けた。

 

美岬

【あ、あなたは!!】

 

【久しぶりだな美岬】

 

SIDEOUT

 

 あれ、なんで横にというか誰かに抱えられてるの?

 確か、壊鯱(かいしゃち)との対話を行なっていて、それで………って、え?

 

美岬

【あ、あなたは!!】

 

【久しぶりだな美岬】

 

 私を抱える魔化魍の正体に驚く。

 そうこの魔化魍こそ、私の魚呪刀(ぎょじゅとう)、青の怨魚弓(えんぎょきゅう)を鍛造したユキニュウドウと呼ばれる魔化魍だ。

 このユキニュウドウもとい彼らの種族は変わりものとも呼ばれている。

 その種の祖先は従来の魔化魍同様人を襲っていたが、ある時、その種族の1体が人の鍛治に心奪われてしまった。その1体が見様見真似で鍛治を初めたのが始まりだった。

 そして、それを見た他の個体が真似をしはじめ、最終的にはその種族全体が鍛治をやり始めた。

 各個体が各々様々な武器を造っては、等身大魔化魍や鬼、果てにはただの人間にも造った武器を渡したという異色な経歴を持つ種族。後にその魔化魍たちは鍛治魔化魍と呼ばれた。

 その種族の名はイッポンダタラ種。

 だが、鬼側いな猛士は結局魔化魍であるということには変わらないという理由で、数多くのイッポンダタラ種を清めていった。今では、各地にひっそりと隠れ住むイッポンダタラ種が鍛治をしながら過ごしている。

 

 そんなユキニュウドウが手に持つのは黒みがかった青の七支刀に似た魚呪刀解腔棘魚(かいしーらかんす)というものだ。

 この魚呪刀は他の魚呪刀には類を見ない特殊能力がある。

 それは、武器に宿る意思との強制対話と武器に宿る意思による干渉を断つという2つの力。この魚呪刀は戦闘の為ではなく、ユキニュウドウ自身が造り出した武器へ対応出来る為に生み出した魚呪刀。

 何億年も姿を変えてない古代魚シーラカンスと交渉を行うネゴシエイターと精神の治療を行う精神科医の3つの魂を合わせて造られた。

 

「美岬。その魔化魍は?」

 

美岬

【幽は会うのは初めてだよね。彼は鍛治魔化魍のユキニュウドウ。私のこの刀を打った鍛治師だよ】

 

【はじめまして魔化魍の王。俺がユキニュウドウ】

 

【ワタシは彼と共に旅をするゴグマゴグだ】

 

美岬

【しかし、流浪の旅をしてるあなたが何故ここに?】

 

【ふむ。俺の武器のよくない気配を感じてな。

 急いで来てみれば、お前の暴走する姿、だから解腔棘魚(これ)で介入したのさ】

 

 刀を見せながら説明するユキニュウドウに私は迷惑をかけたという気持ちで申し訳なく思う。しかし–––

 

美岬

【対話もうまくいかず挙句に暴走か。壊鯱(これ)の意思に相当嫌われてるみたいだね私】

 

 今は鞘に収まる壊鯱(かいしゃち)を見て、蛇姫に封印を施してもらって使わないほうがいいのかと考えている。

 

【…………ひとつ方法がある】

 

 そう言ったユキニュウドウは手に持つ解腔棘魚(かいしーらかんす)を見せる。

 

【こいつの力を使って、お前の意識をこの壊鯱(かいしゃち)の中にいる武器の意思のいるところに飛ばし、強制的に対話することが出来る】

 

 ユキニュウドウの話を聞き、私は喜ぶ。

 対話がなかなかうまくいかない今の状況では助かるとも言える能力だ。成功すれば幽の力になれるのは間違いない。だが、いいことばかりではないようだ。

 

【だが、失敗すればお前の意識は壊鯱(かいしゃち)の意思に閉じ込められるかもしれない。そして再び、暴走するかもしれない。

 暴走した時には、また解腔棘魚(かいしーらかんす)を使うが、お前の意識が壊鯱(かいしゃち)の意思の側にいる状態で解腔棘魚(こいつ)の能力を使えばお前の意識と身体の繋がりを絶つことになるかもしれない。

 それは実質廃人と変わらん状態になるだろう】

 

 その言葉に周りは騒めくも私の答えは決まってる。

 

【頼むよユキニュウドウ】

 

【いいのか?】

 

 本当に良いのかと言う風に私を見るユキニュウドウ。確かに廃人になるかもしれないと言われれば怖い。でも、幽がピンチの時に助けられないことの方がもっと怖い。

 だから私はユキニュウドウに力強く肯定の言葉を答える。

 

美岬

【ユキニュウドウお願い!!】

 

【では、「反対」っ!!】

 

 ユキニュウドウが刀を振るおうとした時のひとつの声が刀を止めた。

 

「反対!! 嫌だよ、美岬がまた居なくなるのは」

 

 私の大切なひとである幽が涙を流しそうな顔で反対する。

 

美岬

【幽】

 

「また美岬が、あの時のように」

 

 幽冥の頭によぎるのはおそらく前世の私が死ぬ時のあの事故の光景だろう。

 

美岬

【心配しないで幽、私は必ず戻るから。あの時のようなことは2度としないよ。

 お願いユキニュウドウ】

 

【では往くぞ!】

 

 ユキニュウドウが解腔棘魚(かいしーらかんす)を天に向けて掲げ、私に振り下ろすと腕に小さな傷が出来る。すると、急な眠気に似た何かに襲われ、私の意識はどんどん遠のいていく。そして、身体が倒れそうになると–––

 

「…………美岬。必ず戻ってきてね」

 

 倒れる寸前に私を抱えた幽のそんな言葉を耳にして意識が落ちていった。

 そして、目を開ければ、真っ暗、漆黒、闇、暗闇、そんな黒という黒要素を詰め込み濃縮したような空間に立っていた。

 

《あと少しで、あの子を永遠にお前だけのものに出来たのに》

 

 声の方に向けば、黒い空間から声の主が歩いてきた。

 乱雑に生えたセミロングの銀髪、うっすらと笑う口から覗く鯱のような八重歯、男か女か判断に迷う中性的な見た目と中性的な和装、背には壊鯱を納めた鞘を背負う。

 だが、何より特徴的なのは目だった。白いはずの白目が黒で黒目は血のように真っ赤な赤い瞳。苛立ちを隠そうともせずに私に近付き、ある程度近くまで来ると歩みを止めて、口を開いた。

 

《言ったと思うけど、僕は認めないよ。僕のことは諦めて、他の意思のところに行ったらどう?》

 

 貴方のことは前にユキニュウドウから聞いた。でも不思議に思ったことがある。

 

《不思議? 何が不思議だって言うの?》

 

 魚呪刀は動物と人間の2つの魂を使って鍛造するらしいけど、普段私が貴方(壊鯱)を使っている時と今目の前にいるあなたの気配が違うってことに。

 それで思い出したんだけど、恋人と共に焼身自殺した男の魂を使ったとユキニュウドウは言っていた。でも貴方は男ではない、貴女は男と一緒に死んだ女性の魂なんでしょ。

 

《…………なんで気付いたの? あの刀鍛冶は僕を彼と認識してたみたいだけど》

 

 正確に言うなら、貴女は死んだ彼と魂が混じり合ってんでしょ。普段は男の魂の方が表だけど、私が対話を行なっている時だけ貴女は表に出て、私の対話を拒んでいた。違う?

 

《…………そう。私は彼との幼きころの約束を破り、彼を傷付け、彼を壊して、彼と死んだ愚かな女》

 

 なんで貴女は対話を拒むのか理由を教えて。

 

《理由ね…………まあいいよ教えてあげる。僕がお前を拒む理由は、お前が気に入らないから》

 

 き、気に入らないって。

 

《お前があの子に対して並々ならぬ感情を持っているのは僕はこの刀の中から見ていた。

 再開した時からずっと想いを胸に仕舞い込んで、前(前世)の時のような友人関係であろうとした。

 でも、見ていて凄く鬱陶しかった、なんで自分に振り向かせようとしない、なんで自分の気持ちを隠す、なんで、素直に自分の気持ちを伝えようとしない!!》

 

《本当にそれで良いの? その想いを胸に抱いたままあの子が他の娘に獲られるさまを見たいのか?》

 

《お前は逃げてるんだ、自分の気持ちから、想いから、あの子に嫌われたくないから。

 だから僕はね、お前に力なんて貸したくないんだよ。想いを仕舞い込むだけの臆病者なんかに力を貸す気もないね》

 

 それって私に対して思っていることなんだよね?

 

《そうだよ。分かったならとっとこの空間から出ていけ、身体を乗っ取るつもりは無いし、お前の顔なんて見たくない!!》

 

 …………その話は確かに私に対して思っていることなんだろうけど、でも別の誰かと重ねて私に言ってない。

 

《っ! な、何を言ってるの》

 

 そして、その誰かは私の目の前にいる貴女自身のことなんじゃないの?

 

《……………》

 

 貴女はかつての過ちを後悔してるんでしょ。

 死の直前いやその前からもう気付いていて、でも過ちを彼に伝えることが出来なかった。言えば、彼に嫌われる。嫌われたくない。離れてほしくない。それで彼は壊れて、壊れても愛してることを忘れてない彼は貴女と一緒に死んだ。

 前(前世)の私だったら同じだったかもしれないけど、私は幽にいつか告白するつもりだよ。

 

《いつかって、そのいつかの間に他の娘に––》

 

 ああ、それは大丈夫だよ。なにせ幽のことが好きな娘たちと同タイミングで告白するっていう約束ごとがあるからね。万が一、その前に告白するようなのがいるなら––––

 

《いるなら?》

 

ワタシガ、ジゴクヲミセテアゲル!!

 

《………訂正するお前は臆病じゃない。少なくても僕とは違って》

 

 ……話を戻そっか、改めて貴女の力を貸して欲しい!!

 

《……………》

 

 貴女が経験した過去の過ちと同じ悲劇を起こさないため!! 幽を守れる力の為なら貴方に身体を一部奪われても構わない!! そんなものを気にしてたら大切なものも守れない!! 自分が傷付いても大切なものを死んでも守る!! 

 それが私の覚悟。さあ、貴女の答えは!!

 

《………………いいよ。癪だけど、認めてあげる》

 

 壊鯱(かいしゃち)の意思がそう言うと、私の身体が宙に浮く。

 

《認めたからね。もう此処には来るな》

 

 どんどん宙に浮かぶ私の身体。

 他の3振りではこんなことがなかったから慌てる私を見る壊鯱(かいしゃち)の意思が最後の言葉を告げた。

 

《……………守るんだぞ。守れなかった俺(・)と同じようにならないでくれ》

 

 黒い白目で赤い黒目だった瞳は青い瞳に変わり白目になっている壊鯱(かいしゃち)の意思が私から振り向くとそのまま黒い空間に溶けるように消えて、私の身体は白い光に包まれる。

 

 

 

 

 

 

 目を開けると幽の姿が目に入る。

 

「美岬? 大丈夫?」

 

「うん。心配掛けてごめん、うわ、幽?」

 

 私が幽に謝ろうとすると、幽が僕に飛び付き、急なことだったために耐えきれず後ろに倒れる。

 

「馬鹿!! 美岬の馬鹿!! また、いなくなっちゃうのかと思ったよーーー!! うわああああん!!」

 

「ごめんね幽」

 

 前世のこともあり、私の胸元でそのことを思い出して泣く幽の頭を撫でながら謝罪の言葉を言う。

 その後に、話を聞き駆けつけた春詠さんによるO・HA・NA・SIを受けて、『お出掛けはあらためて行こうね』と幽が言い、私が怪我をさせてしまった家族に謝って話は終わった。

 

 

 

 

 

 

【蚊帳の外な気がするな】

 

【言うな】

 

 2体の魔化魍(知り合い)が隅でその様子を見ていたことに気付くのは、話が終わってから30分後だった。




如何でしたでしょうか?
実は壊鯱は3つの魂を持っていた魚呪刀になります。これが副次能力がついた理由になります。
魚呪刀の副次能力が発生する条件は魂の数(3つ以上)とその魂の質(魂の本質または強い心残り)と運(連続で三毛猫の雄が産まれる程)などで発生します。
解腔棘魚は能力を2つ持つ魚呪刀が出来る理由を知ることと武器の意思に何かできることが無いかということで試行錯誤と長い実験によって鍛造した最近出来たばかりの魚呪刀です。
斑鰒は毒液の貯蔵と射出ですが、これは貯蔵したものを外に出してる(射出)だけですので、1つしか能力を持っていません。
これにより、美岬は壊鯱に認められたので、残るは斑鰒、幽蛸、堅鯨の3振りとなります。
そして遂に魚呪刀と怨魚弓の製作者であるユキニュウドウが登場です。
因みにゴグマゴグは元は戦車だったツクモガミが異常種に進化した種です。



ーおまけー
迷家
【うう、酷いめにあったよ〜〜ぐすん】

美岬
【むしろ、それだけで済んで良かったというべきか、申し訳ないと言うか】

迷家
【別にいいよ。君があれに強制させられてやっていたのはみんな分かってるから】

美岬
【誠に申し訳ございません】

迷家
【だからいいって、アレ? あーーー!! もう始まってる!!】

美岬
【あれ? そういえば此処は?】

迷家
【説明は後でするからちょっと待ってて美岬!!】

美岬
【ああ、はい】

迷家
【ううん。じゃ、改めておまけコーナーの時間だよ〜♪】

美岬
【それで此処はいったい?】

迷家
【此処はね。変な人に頼まれてやってるおまけコーナー!!】

美岬
【変な人?】

迷家
【そう。毎度ゲストとして誰かひとり連れてきてぇ〜僕が質問するの】

美岬
【質問ですか?】

迷家
【うん!! じゃあ、美岬には対話のことを教えてよ】

美岬
【対話のことを】

迷家
【そう。それって結局なんなのかな〜って思ってね】

美岬
【分かった、対話のことを教えればいいんだね?】

迷家
【うん。あ、でも分かりやすくお願い】

美岬
【分かった。じゃあ先ずは対話のことだよね。
 対話は私の魚呪刀、青の持つ怨魚弓みたいな魂を込めて造られた武器に対して行う特殊技術】

迷家
【技術ってことは誰でも出来るの?】

美岬
【誰でもというわけじゃない。少なくて私や青の持っているような魂を込めた武器がないと出来ないかな。
 なにせ、対話はその武器の中で眠る意思と話すまたは認めてもらう事でその武器本来の力を解放するためにするものだから】

迷家
【意思って、意思を持ってるのその武器!?】

美岬
【やっぱりあまり知られてないのかな。波音に教えた時もそんなリアクションだったし】

迷家
【僕は産まれて少ししか経ってない魔化魍だから、知らなくてもおかしくないでしょ】

美岬
【そうだけど】

迷家
【それでその意思に認められるとどうなるの?】

美岬
【意思に認められれば、その武器の真の実力を引き出すことができるし、波音のように変異態に変異するキッカケにもなるんだよ】

迷家
【そっか。おっと、じゃあ今日は此処までかな〜
 じゃあ、また今度バイバーーーイ! 】
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