人間だけど私は魔化魍を育て、魔化魍の王になる。   作:創夜叉

140 / 176
お待たせしました。
今回は久々の猛士サイドの話です。
いつもは過激派の話や猛士の王たちの話ですが、今回は3派閥の1つに視点を当てます。



追伸、魔化魍の王の現れるのは1000年から150年に変更しました。
歴史の年表を改めて見てみたら、気付いたので変更しました。


魔化魍共存派

 猛士。

 その始まりは戦国時代まで遡り、当時、差別の対象であった彼ら鬼をサポートする組織を立ち上げようと提案したことが組織のルーツとされ、徹頭徹尾人類を守ることを主とする組織。

 しかし年を経つごとに魔化魍との戦いで減る優秀な鬼やその継承者。

 

 魔化魍に対処する鬼の不足によって増える被害者。

 

 権力にしがみついた老害。

 

 魔化魍によって家族を失い復讐に走る者。

 

 数々の問題によって徹頭徹尾人を守るという理念は薄れつつある。そんな状況下でも人を救うことを誇りとする鬼もいる。そんな鬼の存在が今の猛士を守っていると言ってもいいだろう。

 

 話を戻そう。そんな猛士には魔化魍に対しての考えによって分けられた3つの派閥がある。

 魔化魍によって家族を、親族を、恋人を、大切な人を失い魔化魍を滅ぼすことでその悲しみを断つために日夜魔化魍に対する怨嗟、憎悪を募らせる魔化魍殲滅派閥。通称、過激派。

 

 猛士としての理念を掲げ、鬼としての当たり前を行い魔化魍を討つ。しかし、魔化魍を殲滅するだけではなく研究を主とする魔化魍普遍派閥。通称、傍観派。

 

 そして、過去に魔化魍に命を救われ、魔化魍の歴史を知り、魔化魍を一方的に滅ぼすのではなく人類との共存という夢物語にも近い理想を掲げる猛士の異端派閥の魔化魍穏健派閥。通称、共存派。

 

 この3つの派閥、特に過激派と共存派は意見の食い違いによって何度も争ったのは言うまでもない。

 おまけに共存派の意見は猛士としても賛同できるものは少ない、何故なら今の猛士に所属する大半は魔化魍に大切な誰かを殺された者たちでそういった者たちは復讐のために過激派として活動するようになる。

 そして、共存派は過激派にとっては目の上のタンコブであり魔化魍との共存を望むものを人間ではないと言って、誰にも見られないところで共存派への暴行を行う者もいる。

 そんな少数意見に近い共存派は魔化魍の被害によって増える過激派との無駄な争いを避けるため秘密裏に会合をすることがあるのだが、しかし過激派のメンバーはかなり多く、会合はあまり出来ないことが多い。

 しかしある時、そんな過激派の監視いや共存派を除いた猛士のメンバーを騒然とさせる大事件もとい報告が入った。

 

 それは総本部に大茜鷹に乗った鬼と天狗、そして2人に連れられた九州地方の王である千葉 武司から伝えられた。その報告とは猛士九州地方全支部の壊滅。

 

 この報告によって1番驚いたのは過激派だった。

 長崎支部支部長の三ツ木 照弘。

 彼は勿論、長崎支部のほとんどが過激派のメンバーだった。おまけにそのメンバーのほとんどが魔化魍の被害者ということもあり、過激派を増長させた原因でもあった。

 魔化魍がいることによって出来た被害者の集まりともいえる長崎支部。この支部の存在によって魔化魍のことを知らず猛士に入って間もない人を過激派に加入させることができたのだから。

 だが、そんな長崎支部が消えたことで過激派へ入れるための説得力のある証拠ともいうものが無くなった。これによって過激派に過度ともいえる陣営集めをするのが難しくなっただろう。

 

 そんな猛士が特に過激派が大ごとと騒いでる最中、魔化魍穏健派閥こと共存派の秘密の会合が行われていた。

 

 総本部にいる共存派のメンバーからの連絡が共存派に属する各支部に伝わり、久々の共存派同士の会合が開かれていた。

 それぞれのモニターには東京第2支部、東京第5支部、大阪第2支部、埼玉支部、神奈川支部、沖縄支部と書かれたプレートとその支部の支部長たちが映っていた。

 

「こうやって揃うのは何ヶ月ぶりでしょうか?」

 

 会合で最初に口を開いたのは、黒の眼帯を着けたスキンヘッドのヤのつく稼業に見える男。猛士東京第5支部支部長 碇 長助。鬼の名は激鬼。

 

「過激派に毎度妨害されるからなぁ」

 

 次に口を開いたのは大雑把に纏めた長茶髪と胸元に実る果実が豊かな長身の女性。猛士大阪第2支部支部長 天城 カノン。鬼の名は撤鬼。

 

「でも、今回の事件のお陰でこうして開けるから」

 

 そんな2人を宥めるように言うのはホワホワした雰囲気を感じさせる温和そうな男。猛士沖縄支部の支部長 龍田 譲。鬼の名は赤鬼。

 

「にしても大騒ぎですねぇ〜過激派のみなさん。ある意味、いい気味ですねぇ」

 

 宥める龍田の上から被せるように喋るのは薄茶の鳥打帽を被った黒の短髪、閉じてるように見える細い糸目、口元はニヤニヤと笑みを浮かべる青年。神奈川支部支部長 那珂 乱歩。鬼の名は識鬼。

 

「静粛に!! ………はい。では、今回の内容を日向さんお願いします」

 

 まだ喋る他の支部長を鎮めるのは右寄りにまとめた黒髪、キッチリとした灰色のスーツ、胸元は天城に比べると慎ましい、残念? ともいうほど良い実を持った女性。猛士埼玉支部支部長 霧島 文。鬼の名は泡鬼。

 

「うん。ありがとう霧島」

 

 最後に口を開いたのは、花の刺繍が施された和装を身につけた大和撫子を体現した女性。猛士東京第2支部支部長 日向 美与。鬼の名は南鬼。

 この女性こそ魔化魍共存派を纏めるトップともいうべき女性で、戦国時代にいた凶暴な魔化魍 ヒトツミを倒した『7人の戦鬼』の1人 羽撃鬼の血を引く鬼でもある。

 

「今回の話は、魔化魍の王との接触をどうするかというものです」

 

「接触かぁ〜王もその家族も、神出鬼没。何処にいるか分からないからなぁ〜

 そういえば、以前話してた慧鬼をこちらに引き込むって話なかったっけ?」

 

 那珂が思い出したかのように口にすると、それに対して霧島が答える。

 

「彼女は任務先で死亡したことが報告されてます」

 

「ありゃりゃ、やっぱ拉致ってこっちに連れてきた方が良かったんじゃねえか?」

 

 強引にでも連れてくるべきだったという天城の言葉には納得出来るものもあるが、それは出来なかった。

 初代の王を倒した英雄でもある『8人の鬼』の直系の1人でもあった慧鬼こと安倍 春詠。

 そんな鬼がもしも共存派に加われば、過激派ほどはいかなくても傍観派並の勢力の人間を集めることが出来ただろう。勿論、過激派はそんなことを許さないので、実現できたとしても、その時には猛士同士の無意味な殺し合いになっていただろう。

 それが分かっていたからこそ、日向は何も出来なかった。

 

「惜しい人を亡くしました」

 

「ええ」

 

 久々の会合とはいえ、こうも湿っぽい話ばかりでは気分が滅入ると思った碇は話題を変えようと思い違う話題を上げた。

 

「そういえば、壊滅した北海道第1支部には、我らの同士候補だった調鬼がいたとか」

 

「北海道第1支部には死体が無かったそうなので、もしかすると–––」

 

 可能性を口にする霧島だが、その可能性は低いだろう。

 魔化魍にとってみれば猛士と鬼は敵。友好的かどうかなど向こうが分かるはずはない。

 

「せめて、もう少し同士がいればいいのですが」

 

 龍田が苦々しく言うのも無理がない。

 共存派に所属する戦える力を持つのは共存派筆頭である南鬼、その筆頭補佐の泡鬼、赤鬼、撤鬼、激鬼、識鬼。彼らの弟子である無銘の鬼が男4名、女3名の計7名。天狗11名。計24名が共存派に所属する戦うことができる者たちである。

 その他にも各支部の所属員50名ずつを合わせれば324名。他にも各支部に共存派ということを隠して行動する鬼や人員も含めれば350名程、これが魔化魍穏健派閥こと共存派に所属する者たちの総数である。

 

 まあ、この人数なのは仕方ないというべきなのだろうか。

 『魔化魍は人を喰らい人の幸せを奪う怪物』と、猛士からは教えられている。

 それなのに人を喰らう魔化魍と共存を目指すという共存派の考えは万人受けする筈がない。その考えに共感出来るのは、魔化魍に救われた過去を持つ者と底無しに心優しい者だけだろう。

 

「それについては今はいいよ。魔化魍の王との接触をどうするか」

 

「––––うむ可能性になるが、最近中部地方に我らの同志が飛ばされたことを聞いた。

 あそこはおそらく今回の事件もあって真っ先に動くだろう。魔化魍の王の噂が本当なら、もしかすれば」

 

「おいおい、中部は確か死んだ三ツ木と同じくらいの憎悪を抱いた過激派がいるとこじゃねえか。

 バレたらそいつお仕舞いだぞ!!」

 

 碇の言葉に反応した天城は声を荒げる。

 その理由は同志であるものが飛ばされた場所が理由である。

 猛士中部地方には王である飯塚 徹の他に鬼を纏め上げる存在がいる。その者は過激派のメンバーの1人で、亡くなった長崎支部支部長の三ツ木と同じように魔化魍に果てしない憎悪を抱く者だ。おまけにその者は『8人の鬼』の末裔である。

 その名は狼鬼。とある『名持ち』の魔化魍に親族、恋人を殺されて怨みを抱えた復讐の狼。

 

「霧島、同士には後で連絡をお願い」

 

「かしこまりました」

 

「では、魔化魍の王との接触は取り敢えず保留とし、次の内容に移りましょう」

 

 共存派たちの話は続く。時間に限りのある彼らの会合は猛士内の騒動が収まるまで話は続いた。

 魔化魍の王と出会い魔化魍との共存を目指すために。

 

SIDE◯◯

「そうか、同志三ツ木が死んだか。分かった。連絡ご苦労」

 

 黒電話の受話器を掛けて通話を切った男は机の上にある瓶の蓋を開けて、側のグラスに流し込む。

 

「次に会ったらこれを飲み干そうという約束、結局出来なかったな」

 

 グラスを持った男は窓に映る月に向けると、中の酒を一気に飲み込む。

 

「ぷは〜。……………まあ、向こうで待ってろよ三ツ木。

 向こうに行く際には奴ら(魔化魍)の頸をいっぺえ持っててやるよ」




如何でしたでしょうか?
実際の響鬼たち音撃戦士が何時代に誕生したかは不明ですが、当小説設定では、奈良時代としております。
魔化魍自体はその前の時代から一応存在していたことにしています。
人間を食すようになったのは、普段喰らってるものよりも美味いし、強くなれるからということで奈良時代から人を襲う魔化魍が増えてきたという感じです。
共存派の会合は3時間行われ、総本部にいる同士の連絡で会合は終わりました。


ーおまけー
迷家
【あれ、今日魔化魍全然出てきてないよね? こんなこともあるんだぁ〜】

迷家
【先ずは取り敢えず、こんばんは〜♬】

迷家
【今日のおまけコーナーはっじまるよーー!!】

迷家
【うんとね〜今日のゲストは悩んだけど。
 彼女を連れてきたよ。じゃあ、自己紹介お願いね】

浮幽
【ルルル、ルルル〜ル】

迷家
【あ〜、え〜と、名前だけでもいいから普通に喋れないの?】

浮幽
【ルルル、ルル〜ルル、ルルル、ル】

迷家
【もう、これじゃ質問しても答えられないじゃん】

浮幽
【…………ルルル】

迷家
【え、何これ?】

浮幽
【ルルル、ル】

迷家
【これを耳を付けるの】

浮幽
【ルル!】

迷家
【…付けたけど、これでどうなるの?】

浮幽
【どうなるもなにも、これで聞こえるでしょ?】

迷家
【ええ!!? ちゃんと聴こえる】

浮幽
【それはそうよ。そのための(まじな)いが掛けられてるからね】

迷家
【釈然としないけど、改めて自己紹介!】

浮幽
【はじめまして、というのはおかしいかな?
 私はクラゲビの浮幽。この場所でならどうやら普通に喋れるよ】

迷家
【なんで喋れるのにルルル〜としか言わないの?】

浮幽
【私はあれで普通に喋っているのよ。あれでも】

迷家
【じゃあ、なんで今は普通に聴こえるの?】

浮幽
【あなたの付けているそれは変な人とやらから貰った物でね。
 それのおかげで私の言葉は普通に聴こえるのよ】

迷家
【へぇ〜変な人さまさまだねぇ。
 じゃあ、質問するね。ズバリ、写鏡のことをどう思っているの?】

浮幽
【写鏡ね。あの子はいい子だよ。
 私の後ろに引っ付いては同じことを真似しようとしたり、赤のことを『おばあちゃん』とか言って凹ませたり、一緒にいると賑やかだね】

迷家
【浮幽てきにはあの子は子供みたいなもの?】

浮幽
【そうね。子供産んでない私が言えるのは、血の繋がりがなくてもあの子は自分の子供ってことを言うんだろうね】

迷家
【そっか】

写鏡
【発、発、発見。さ、さ、さびしかった】

浮幽
【ごめんね。ほら、よしよし】

写鏡
【も、も、もっと。暖、暖、暖かい】

浮幽
【そういうわけだから迷家。私は戻るけどいいよね?
 それと付けているそれ、後で変な人に返しなさいね】

写鏡
【い、い、いこう。楽、楽、楽しみ】

浮幽
【はいはい。じゃあね】

迷家
【あ、行っちゃった。
 まあいっか。聞きたいことは聞けたし、じゃあ今日はここまでバイバーーイ♫】
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。