どちらのSIDEも短いです。
では、どうぞ!!
土門たちが私に隠してモモンジイという魔化魍と戦った日から数日経った今日。天気は快晴で、気温は快適。空から降り注ぐ陽光が眩しい。
視線の先には洗濯日和と洗濯物を干す黒と捕虜の無銘の鬼たちがいて、その反対側では雛と波音と潜砂が仲良く眠っていて、凍と紫陽花が3人に布団を掛けている。
そんな今日は跳に色々と術を教えて貰う約束をしている。
私自身も魔化魍の王として恥ずかしくないように歴代の王たちの力だけでなく私自身の訓練をしている。これには白たち従者だけでなく他の家族も喜んで協力してくれている。
剣術を美岬と荒夜、槍術を劔、弓術を狂姫、武術を拳牙、帝王学を屍王、古の術知識を崩、術による戦闘訓練を紫陽花と跳、魔化魍の種族知識を緑と古樹、猛士の情報を春詠お姉ちゃんと調鬼ことあぐりさん、代わる代わるで教えてくれている。
今回は跳で、跳は基礎の術から基礎の術をアレンジしたオリジナルの術などを教えてくれるので楽しみに待っていたんだけど、時間になっても跳は現れない。
「おかしいな?」
普段の跳なら約束に遅れることはない。もしも遅れるとしても、家族の誰かに伝言を頼む。
流石におかしいと思ったので館周辺を家族にも協力して貰って跳を探したが何処にも姿がない。だが居ないのは跳だけじゃないみたいだ。
睡樹は野菜の手入れの手伝いを頼んだ命樹、鳴風は空の散歩の約束をしていた兜、あぐりさんはお出掛け(デート)の約束をしていた三尸、黒は洗濯の手伝いを頼んだ筈の昇布、顎は地下工事の手伝いを頼んだ五位と仕事を頼まれてた筈の家族もいない。
「あとは拳牙と大尊、それに単凍と不動も居ません」
それにプラスして白は現状仕事がないのに行方の分からない家族の名前を挙げた。
「うーーーん。何か心当たりない?」
私の言葉に全員頭を悩ます。そもそも何故居ないのか。
まあ、時折消える大尊と拳牙や武器の材料である魂を取りに行く単凍と不動が居ないのは分かるので、心配しなくてもいいはず。
しかし跳たちが居ないのが分からない。考えられるのは食糧調達位だろうが私に断りもなく出掛ける跳でもないし、食糧である人間はまだ沢山ある。
それに食糧調達をするのならそんな大人数で出る必要はない。術が使える跳と空輸として五位と兜だけでも十分だ。だが居ない家族の中には食糧調達として出ることのない命樹や昇布、三尸がいる。
そんなふうに考えてる中ひとつの言葉が私の耳に入る。
「ふわぁぁ、五位と跳がなんか喋ってたような〜?」
その言葉の方に全員が顔を向けると昼寝から起きたばかりで眠いのか目を擦る潜砂がいた。
「潜砂、今の話本当?」
「うん。雛と波音と遊んでる時にたまたま聞こえんだけど、でも何を話してるのかは途切れ途切れで分かんなかったけど」
「なんて言っていたか覚えてる?」
「うんとね。確か、用事がどうとかって言ってたような〜」
眠気でボンヤリしてる頭を動かして思い出そうとする潜砂の頭を撫でる。
「ありがとうね。潜砂のお陰で跳たちは私に黙って何処かに向かったのは間違いないね」
まだ眠いのか、頭をかくんとする潜砂をあぐりさんに任せる。
私の雰囲気を察してか白は側に立っており、他の家族も私の指示を待っている。まずは行動だ。
「白、みんなを集めて跳たちを探すよ。場所が特定できたら向かうから。
一緒に行くメンバーを決めて」
「かしこまりました」
跳たちが居ないのは只事ではないと悟った幽冥は白に命令して、跳たちの捜索を始めるのだった。
SIDE診鬼
五位が軼鬼と戦っている時刻から少し経った頃。
猛士中部地方静岡支部の一室。ミニマリストと言っても良いほどにあまり物が置かれてない部屋。まあ、外部から派遣されて此処に居る(表向きは)ので、そんなにものに執着してる訳ではないのでそんなに気にしていない。
強いてあるものを言うのならどの部屋にも共通して置かれてる寝具と机と椅子。そして、窓の側には赤い鸚鵡を入れた鳥籠があるくらいだ。
「はい。神通です」
そして、そんな部屋にいるのは、自身の所属を普遍派と偽り敵対派閥である過激派に潜入している共存派の角 神通 希美こと診鬼。
「ええ。大丈夫です。周りにカメラも盗聴器もありませんでした。
おまけに此処は他の過激派の支部に比べればだいぶ緩いので…………ええ」
連絡相手は私たち共存派のトップである日向さんだ。
「はい。いいえ。狼鬼が標的としてるのはどうやら『快楽猫姫』と『快楽猫姫』に協力する二つ名持ちの魔化魍のようです」
神通が語る『快楽猫姫』とは、関東地方と中部地方に出没するあるバケネコ種の異常種の魔化魍に付けられた二つ名だ。
その名の通りに老若男女問わずに快楽で溺れさせて自身に依存させて捕食する魔化魍で、狼鬼はこの魔化魍に幼き頃に家族を数年前に恋人を奪われ喰われたそうだ。
その復讐のためか狼鬼が部下を率いて行く場所には大抵バケネコ種の魔化魍がおり、人を喰らってようと喰らってなくても問答無用で清め。死体が残ってればその死体を損壊させるほどに攻撃を繰り返している。
過激派の2大看板と言われる狼鬼の実力は嘘ではないと言うのがよくわかる。
狼鬼の標的の話を伝え、私はこの後の行動についてを聞こうとした時–––
「っ!! 誰か来ます。連絡の続きはまた後で」
何かの走る音が聞こえ、急いで電話を切った瞬間、部屋の扉が蹴り飛ばされて扉だった破片がそこらに散らばる。
扉を蹴破って入ってきたのはこの静岡支部に所属する過激派の角 崗鬼だ。
「診鬼、報告だ!!
『魔笛雀』討伐に向かった軼鬼と無銘数名、天狗数名がやられた!! これから会議だ。お前もすぐに来い!」
命令にも近い一方的な言葉を言い終わると部屋の外に飛び出て違う部屋に向かったようだ。同じように扉の蹴破った音が聞こえた。
過激派の戦力がひとつ減ったのは喜ばしいことだが、それを顔に出すような真似はしない。この部屋にカメラや盗聴器が無かったとしても、何処で誰が見張っているのか分からないのだから、警戒するに越したことはない。
しかし、軼鬼はあれでも過激派では上の下ほどの強さをもつ鬼だ。『魔笛雀』と二つ名を付けられたヨスズメでも精々、撃退が関の山だろうし、おまけに連れられた無銘たちも過激派の洗脳に近い戦闘訓練のお陰で無銘とは言えない強さだし、天狗は明らかに普通の天狗と違う。到底『魔笛雀』だけで相手にするのは不可能だ。
だが軼鬼と無銘と天狗が全滅したということは二つ名持ちの他の魔化魍にやられたのか、それとも外部から来た勢力、魔化魍の王の魔化魍にやられたのかもしれない。
そうだとするのならなんとしてもこの機会を逃す手はない。上手くいけば王に会うことが出来るかもしれない。
神通はそう考えながらも、今は普遍派の診鬼として魔化魍対策会議が開かれるであろう部屋へと向かった。
そして、部屋の主である神通が居なくなった部屋で声がする。
【ヨスズメは無事そうで良かったよ。まあ、オイラはオイラの仕事をやらないと】
神通の部屋の窓際の鳥籠の中にいた
如何でしたでしょうか?
幽冥の本格的な魔化魍の王としての訓練と消えた家族のことと過激派潜入中の診鬼を書きました。
次回は、ヨスズメとチントウに連れられた五位たちにある魔化魍との接触になります。
ーおまけー
迷家
【なんか、騒がしいね? なんかあったんだろうな?】
迷家
【おろっ? あ、もう始まってる?】
迷家
【おっと、いけないいけない。じゃ、おまけコーナーはっじまるよ♬】
迷家
【今回のゲストはこの方!】
紫陽花
【此処がおまけコーナーという場所か?
ゲストの紫陽花だ】
迷家
【今回のゲストは、安倍家のかっわいい天使 立花 雛の祖母。
立花 紫陽花ことコソデノテの紫陽花!!】
紫陽花
【ふふ、天使か。
確かに雛は可愛いからの】
迷家
【そうだよねぇ〜。まあ、雛の話はこれくらいにして。
じゃあ、質問させてもらうよ】
紫陽花
【ふむ。それでなにを聞きたいのだ?】
迷家
【紫陽花は、元は小袖っていう着物だったんだよね?】
紫陽花
【ああ。そうだ】
迷家
【紫陽花が魔化魍として目覚める前。
まあつまり、紫陽花が小袖だった頃に最後に着たのはどういう人だったの?】
紫陽花
【最後に着たひとか……】
迷家
【うん。どういう人だったの?】
紫陽花
【………今から数百年前、当時は明治と呼ばれていた頃だったか】
迷家
【え? 明治?】
紫陽花
【そうだ。私はその時代のとある令嬢への贈り物として織られた小袖だ】
迷家
【え? ちょっと待って!!
もしかして紫陽花って、小袖として織られた時に意識を持っていたの!!】
紫陽花
【ああ。なんだなにかおかしいことを言ったか?
お主も私と同じツクモガミだったのなら、道具だった頃から意識はあった筈だが】
迷家
【……………紫陽花。言いにくいんだけど】
紫陽花
【なんだ?】
迷家
【僕は確かにツクモガミ種の魔化魍だけど、僕が意識を持ったのって今から3年前なんだけど】
紫陽花
【……………なに? 待て、お主確か、築
迷家
【うん。言ったね】
紫陽花
【だが、お主が意識をもったのは
迷家
【そう。僕だけじゃなく、水底も縫も道具として誕生した頃から時を経てから意識をもったんだよ】
紫陽花
【つまり】
迷家
【紫陽花はかなり珍しいタイプだったんだね。
道具として誕生した頃から意識をもっていたツクモガミはなかなかいないみたいだから】
紫陽花
【そ、そうなのか】
迷家
【うん。なんかごめん】
紫陽花
【いや、良いんだ。
お主も私と同じだと思っていたからな。おあいこだ】
迷家
【…………それで、話は続ける?】
紫陽花
【…………少し休ませてくれ】
迷家
【奥の方に小部屋あるから、そこで休んだらどう?】
紫陽花
【ああ、すまんな】
迷家
【……つ、続きは次回で、じゃあ】
ー次回のおまけコーナーへ続くー