人間だけど私は魔化魍を育て、魔化魍の王になる。   作:創夜叉

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こんばんは。
今回は五位の連絡を受けて中部地方に飛ぶ支度を始める幽冥たちとあの鬼に視点を当てた話になります。


記録百漆

 跳の残した『連絡の札』で伝えられた情報により幽冥たちは、跳たちは無事だということを知る。だけど、跳たちの状況を知った家族たちも今回の相手も前に戦った猛士九州地方支部と同じ連中だと知り、怒りを覚えて、怒りや殺意といった感情が漏れ出している。

 

「先程の話の通りにこれから私達は跳たちのいる中部地方に行きます。

 白! 黒!」

 

「「はい!!(ハイ!!)」」

 

「一緒に向かう家族の編成を頼みます。私は少し、鬼のところに向かいます」

 

「「っ!?」」

 

 幽冥の言葉に側に控えていた白と黒、そして会議で集まっていた家族たちも驚愕の顔をしてざわめき始める。

 それはそうだ。今までの戦いの中、鬼で連れて行ったのは姉である春詠とひなの家族を探すために一時的に協力して貰った突鬼こと錬くらいだ。

 

「なんでって思うかもしれないけど、今回の戦いには鬼を1人連れて行った方が良さそうなんだよ」

 

「その根拠は?」

 

「勘!!」

 

 自信満々に答える幽冥に家族たちはガクッと身体が崩れる。

 そんな中で口を開いたのは姉の春詠だった。

 

「まっ。幽の決めたことだし。こうなったら幽は梃子でも動かないから」

 

美岬

【はあーーそうですね。白、黒、諦めてメンバーを決めようか】

 

 美岬もやれやれと言うように春詠に同意する。

 流石は前世の兄もとい姉と親友。こうなった私は少し頑固なのだ。

 

「じゃっ、時間は有限。白たちは編成を急いで、私は鬼を1人連れてくる」

 

「「かしこまりました(カシコマリマシタ)」」

 

 白たちに準備を頼んだ、幽冥はただ1人で捕らえている捕虜の鬼たちのいる部屋に向けて歩き始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 妖世館地下の隅にある部屋。そこには幽冥と家族たちが捕虜とした捕らえた鬼たちのいる部屋がある。

 全部で四部屋あり、一つ目は北海道で捕らえた突鬼こと佐賀 錬、衣鬼こと黒風 愛衣の2人がいる部屋。

 

 二つ目は鹿児島支部で捕らえた無銘の鬼こと浅見 千枝、板垣 千種、内海 千弘の3人の部屋。

 

 三つ目は大分支部支部長 布都 ミタマと四肢のない布都の介護も任され同室となっている宮崎支部支部長 土浦 ふくの2人がいる部屋。

 

 そして、最後の四つ目。

 此処に今回の旅で連れていこうと考える鬼がいる。私はその部屋の前に立ち、ノックをする。

 

「どうぞ」

 

 中の声に従って、私は中に入る。部屋の中はつい最近の捕虜ということもあり、それほど物は置いていない。精々、椅子と机と寝具くらいだ。

 その寝具に腰掛けている者こそ、連れて行こうと思う鬼である。

 名は火野 薫子。鬼としての名は焙鬼。猛士鹿児島支部で最強と言われた鬼だ。

 

「どうされましたか王?」

 

「うん。今回、家族の事情でね中部に行くことになったんだけどね。

 それで貴女を連れていこうと思ってね」

 

「私をですか?」

 

「そう」

 

「…………良いのですか? 私を連れていくのは危険だと思いますが」

 

「まあ正直、鉄たちは反対しそうだけどね」

 

 そう。九州地方の戦いが終わり、捕虜の話をしていた際に、焙鬼こと火野は鉄たち九州出身の魔化魍に殺されてもおかしく無かった。

 そこに待ったを掛けたのが、焙鬼を捕まえた蝕だった。蝕は優秀だった鬼に対しての薬品実験のために焙鬼を殺さないように幽冥に頼んで、彼女の殺害を防いだのだ。

 しかし、捕獲の際に用いた薬の効果で廃人に近い火野を会話可能レベルにまで戻すのは、いくら薬品に精通した蝕でも難しかった。

 その中で特に問題だったのは原液のままぶっ掛けられた壊楽(かいらく)葬嫉(そうしつ)によるダブルコンボだ。身体を回る快楽物質でやること全てに快感を覚える。つい最近まではマトモに食事することも出来ず前まで同じ部屋だった土浦が無理をして飲み食べ、なんだったら下の手伝いもしていた。

 四肢のない布都の介護もあるというのにそれに追加して火野の世話は不味いと思った蝕は急いで解毒薬を作ろうとしたが、解毒薬は出来ず、効果を抑える薬は出来た。しかし、薬の影響で廃人状態の火野を元に戻すことは出来なかった。

 そこで蝕は廃人から元に戻すのではなく、人格を作り変えることにした。その結果が今、幽冥の前で話す彼女だ。

 

「………分かりました。此処では王の言葉が全て、着いていかせて頂きます」

 

「じゃあ、家族のところに行くから着いてきてね」

 

 因みに姉である春詠と三尸の恋人の月村 あぐり、導の恋人の三枝 紗由紀は捕虜の鬼たちとは別の部屋に共同で暮らしており、捕虜の鬼たちよりもいい暮らしなのは言うまでも無いだろう。

 そうこうして、薫子を連れた幽冥は中部に向けて飛ぶメンバーの居る外に向けて歩き始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、外に着けば編成によって呼ばれた家族たちが王である幽冥を待っていた。幽冥の連れてきた鬼が焙鬼だと分かると、九州にいた家族たちは一気に顔を顰める。だが幽冥が連れてきたのもあるので、いつまでも顰めているわけにいかず、徐々に顔を普通に戻していく。

 編成された家族の名を聞き続けていく中、その編成に幽冥は驚きの声を上げるのだった。

 

「ええ!! 白は来ないの!」

 

「はい。今回、私は留守を預からさせていただきます」

 

 そう白だ。いつもは幽冥の側にいることが多い、最初の妖姫従者だ。

 

「またどうして?」

 

「いつも王に着いて行ってはいざという時に行動できないといけませんので」

 

 その言葉に幽冥は納得する。

 確かに今までの戦いで白は幽冥の傍らにいることが多く、妖世館で留守を任された事はない。常に幽冥の側にいる白は留守を任される他の妖姫従者と違い、館の中の全てをまだ把握しきれていない。

 そのことから今回は留守に回り、館の把握に努めるのだろうと幽冥は判断した。

 

 此処で他の方々も気付いてるだろうが白が留守をすると言ったのは別の理由(・・)がある。勿論、白の言っていることに嘘はない。館の把握が足りないのは本当だ。だがそれは留守をする理由の2割に過ぎない。

 話は少し変わるが白は最初の妖姫従者ということもあってか常に幽冥の側に居るべきだと一種の使命感に似た何かを持っていた。初めは自分を含めて土門と鳴風、顎たちしかいなかった。だが家族が増えていき、黒や赤、緑、灰、青といった他の妖姫従者も増えていった。それでも白は幽冥の傍らに、幽冥を守るのは自分だと思っていた。しかし、幽冥のことで恋愛相談を受ける姉の春詠はそこに待ったを掛ける。

 春詠は白にマンネリ(・・・・)のことを教えた。

 同じ行動や形式に固執し、惰性のように繰り返されることで、新鮮さや独創性が感じられなくなることつまり『退屈』や『つまらなくなる』ということを春詠は前世では彼女こそ居なかったがたまに友人の恋愛相談に乗っていたこともあってそう言う話を聞かされたことが多々あると。

 

 それを聞いた白は顔を青褪める。想像してしまったのだろう。

 白はその目に涙を浮かべて春詠にどうすれば良いのかと聞いた。それに対して春詠はこう答えた。『いつもとは違うことをすれば良い』と。

 

 こうして白はいつもとは違うことの実行をした。そう留守役である。

 これには幽冥は驚いていた。いつもは着いてくる白が留守をすることに、この幽冥のリアクションを見た白は早速効果があったと内心で思う。

 編成メンバーであり幽冥の傍に立っている赤に白は苛立つも、これもマンネリを防ぐためと心に言い聞かせて耐える。堕触手()に任せるのは本当に本当に癪だがと心の中で赤を罵る。それでもマンネリでもしも幽冥に飽きられたら、嫌われでもしたらという恐怖で白は今回は大人しく妖世館で留守を務めることにしたのだ。

 

「いってらっしゃいませ」

 

「ありがとう白。………じゃあ行くよ!!」

 

 白の言葉を聞いた幽冥は礼を言うと、『転移の札』を地面に叩きつけると光が起き、その場にいた幽冥たちを包み込んだ。

 そして、光の収まった場所に誰も居らず、見送りで残った白たちは王と家族の無事の帰還を願うのだった。

 

SIDE◯鬼

 幽冥たちが『転移の札』で中部に向かう同時刻。

 場所は変わって猛士中部地方静岡支部。

 

 長々とした会議が終わって、猛士の人間は会議室から自室に戻るなり、己を鍛えにいくなり、身体を休めるなりと各々が違う行動をしながら部屋を出ていく。

 そんな中で1人の男が立ち上がり部屋を出ていく。

 

 山伏に似た服装をする彼の名は岡本 岩雄。鬼の名は崗鬼。

 猛士中部地方静岡支部に配属されている過激派の鬼であり、自称、『狼鬼の理解者』と言っているが、他の過激派の鬼や敵である魔化魍からはこう呼ばれている『狼鬼の狂犬』と。

 

 俺の名は崗鬼。

 狼鬼さんの理解者であり、魔化魍を殲滅するあの人のために戦う鬼だ。

 

 俺は狼鬼さんに助けられて鬼になった。俺のいる過激派は所属する鬼の大半は家族や親友、恋人を殺されてその仇を討つために鬼になるケースが多い。

 しかし、俺が鬼になったのは復讐や仇討ちではない。狼鬼さんへの恩義いや独りよがりというべきものだろう。

 狼鬼さんの力になりたいと思った俺は猛士に入り、鬼になるために先代の崗鬼の元で血反吐を吐くような修行をして鬼となった。

 

 初めて狼鬼さんと一緒に魔化魍を討伐した日は今でも覚えている。

 まだ先代から力を受け継いで間もない時にカッパが大量発生し、その討伐のために向かった中に狼鬼さんがいた。

 大量のカッパを相手に縦横無尽に動いて翻弄し、音撃縦笛(リコーダー)でカッパを蹂躙していた。

 

 そんな狼鬼さんの姿を見て、早くあの人の役に立ちたいと思い、それから狼鬼さんと一緒の任務は無かったが、名持ちの鬼としての多くの魔化魍を清めてきた。だが、俺は分かっている。

 鬼としての俺はおそらくいや、間違いなく弱い部類に入るのだろう。新しく入った新人の鬼が怪我をすることなく魔化魍を清めることが出来るのに対して、俺は幾度も怪我を負い、身体を壊している。怪我が治り次第に鍛えるもいくら鍛えても、結局は怪我を負う。

 

 進歩しない自分自身が嫌になりある時に俺は許されざる行いをした。それをしたおかげで俺は怪我を負うことなく魔化魍を討伐出来るようになった。しかし、俺はこの行いを止める事は出来ない。これを辞めたらあの人(狼鬼)の側に立てなくなる。

 これをやって俺の身が滅びようとも構わない。俺はあの人(狼鬼)のためなら喜んで命を懸ける。

 それが例え、過激派としての根底を歪めるようなことだろうと–––

 

「………そろそろか」

 

 崗鬼は自室とは違う部屋に大きな袋を持ってなにかを待っていた。

 すると突然、目の前が光り始める。そして光ると同時に何かが描かれていく。描くものは何もないはずなのにどんどん描かれていく、そしてそれは円のようになり魔法陣へと変わる。

 そして、その魔法陣から何かが飛び出るように現れる。

 

【クケルゥゥゥゥ。今回は長かったなァァ】

 

「………待たせたな。今回の『契約』の対価だ」

 

 俺の目の前に居るのは()のために『契約』した悪魔魔化魍(・・・・・)だ。ヤツは月に1度に『契約』の対価を貰いに現れる。

 そんなヤツに俺は『契約』の対価を渡す。

 

【クケルゥゥゥゥ。オマエは変わり者だな。

 力を得るためにオレサマなんかと『契約』して。まあ、オレサマは上のヤツらと違って簡単に呼べるからなァ。それが過激派の鬼でもな】

 

「五月蝿い!! それよりもさっさとしろ」

 

【クケルゥゥゥゥ。まあ『契約』は『契約』だ。ちゃんと守ってやるさ。ホラっ!!】

 

 影から放たれた光は崗鬼の身体に入り込み、崗鬼は全身に激痛が走る。

 それを見ながらニヨニヨと口元歪めながら影は嗤う。

 

「ぐう、あああああ!!」

 

【じゃあ、オレサマは帰るぜ。また用意できたら呼びな!!

 クケルゥゥゥゥ!!】

 

 そう言ってヤツは自分の出てきた魔法陣に飛び込み姿を消し、ヤツが居なくなると同時に魔法陣も跡形もなく消える。

 滅ぼすべき敵と呼ばれる奴らから貰った許されぬ力だろうと、俺はあの人の側で、あの人と共に戦いたい。




如何でしたでしょうか?
今回の話では、中部に飛んで幽冥とあの鬼こと崗鬼と謎の魔化魍の話でした。
火野こと焙鬼の以前の性格は俺口調のオラオラ系な女性でしたが、蝕によって私口調のノーマル女性へと変わりました。
謎の魔化魍はまあ、分かると思いますがあの陣営に連なる魔化魍です。
ヒントは『UMA』です。この魔化魍のモデルは某特撮の幹部にも、某カードゲームのモンスターにもなっています。

ーおまけー
迷家
【おまけコーナーの時間だよ♪
 うんうん。なんだかんで結構続いてるよね〜このコーナー】

常闇
【それも変な人とやらが頑張ってるからであろうな】


【そうでやんすね。……………ところでなんでやすが?
 彼方さんはどちら様でやんす?】

迷家
【あ、そういえば跳も常闇は知らないよね。
 魔化魍の解説を担当してるサーティセブンだよ】

サーティセブン
【初めましてサーティセブンと申します。
 貴方たちが迷家の代理進行役の跳と宝具風技及び武器解説の常闇ですね】

常闇
【ああ、まだ1度しかしていないがなこの場の技と武器解説を担当している。
 しかし、宝具か】


【何、黄昏てるんでやんすか。まあ、常闇の解説はその内やるでありやしょう。まあ、初めまして跳でやんす】

迷家
【そう言えば、もうおまけコーナー始まっちゃてるけどさ、なんで僕たち集められてるの?】


【確かにおかしいでやんすね。そもそもあっしが此処に出るのは迷家がいない時の筈でありやすし】

常闇
【それを言うのなら私だってそうだ。サーティセブン、お前はどうなんだ?】

サーティセブン
【さあ、私にも分かりませんが、此処に集められた理由には心当たりがあります】

迷家
【え! なになに、どんな心当たり?】

サーティセブン
【此処に呼び出される前に変な人に呼ばれましてね。
 新しい解説者を連れて行ってくれと頼まれましてね】

迷家、跳、常闇
【【【新しい解説者!?】】】

サーティセブン
【ええ、多分紹介も含めてで此処に皆さん集められたのでしょう】

常闇
【ほう。ならその者を早く紹介してもらおうか】

サーティセブン
【ええ言われなくてもそこで待ってもらってますよ。
 では、入ってください】

ー次回のおまけコーナーへ続くー
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