人間だけど私は魔化魍を育て、魔化魍の王になる。   作:創夜叉

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こんばんは宣言通りに留守番組の話になります。
それとちょっとだけ、共存派のとある鬼の様子を入れようと思います。では。どうぞ!!

よく読んだらキャラの一部が居たらおかしいことに気づいて、2023年7月23日にその部分を変更しました。


記録百拾伍

SIDE迷家

 イエイ、ハーーーイ迷家だよ。

 今、僕は妖世館のとある一室をちょっと弄っている最中だよ〜。

 

 え? なんでそんなことをしているのかって?

 ヨシッ。では説明しよう。

 

 あれは主人(あるじ)たちが中部地方へ向かって直ぐ後のことだった。主人(あるじ)たちが転移で行ったのを確認して僕はいつも通りふらふらと家の中を浮いてたら。

 そしたらある子から声を掛けられた。

 

波音

【ねえ、迷家。少しお願いがあるんだけど】

 

 そう波音だ。

 波音が僕に声をかけたのは、雛と睡樹の3人で術の練習をしたいとのことだ。

 

迷家

【あれ? 雛って人間だよね。術使えるの?】

 

波音

【正確に言うと人間の血がほとんどだけど4分の1は魔化魍だから。

 それに最近は紫陽花が自衛のために簡単な術は教えてるみたいだし】

 

迷家

【そうなんだ】

 

 術。

 魔化魍の不可思議な力のひとつで、魔化魍はこれらを使って攻撃や防御、回復、人間の捕獲といった様々な目的で使う。だが、ひとつ言うのなら術は魔化魍にしか使えない。

 鬼にも『鬼幻術』と言う技があるが、思い出して欲しい。

 世界の破壊者の彼が訪れたヒビキの世界。その世界でのヒビキがどうなったかを、力を求めるあまり鬼としての力を制御できなくなり、力に飲み込まれて本当の化け物(魔化魍)、ギュウキへと変貌してしまった。

 つまり鬼と魔化魍とは表裏一体の存在であり鬼になるということは一時的に人を捨て、魔の者、魔化魍になる事に等しいということだ。

 

 マヨイガである僕の力、というか能力には取り憑いた家を自由に改築するというものがある。そう主人(あるじ)の家であるこの妖世館に僕は取り憑いている。

 前でこそは顎や鋏刃、命樹などが地下を掘り進めてそこに部屋を作っていたが、今は僕のこの力でそんなことをする必要もなく、安全に必要に応じた時に部屋を増やしたり、空き部屋を改築したりしている。

 そんな僕のこの力を使っても問題なさそうな1つの空き部屋の空間の広さを変えていた。

 

「ありがとう迷家」

 

 お礼を言う雛に悪い気はしないけど–––

 

迷家

【気にしなくていいよ。僕もね自分の力が鈍らないようにこういうことをひっそりとやってるから】

 

 言ったように僕はこの妖世館の誰もいない部屋のひとつを使って能力の鍛錬をしている。部屋を増やす時も改築する時も基本は家族が増えたり、捕虜が出来た時なので。それ以外では部屋を増やすことがない為に、部屋を勝手に作るわけにはいかない。だから堂々と部屋を弄れるこういう時はありがたいのだ。

 

「まだ……掛か…る?」

 

 待つのに飽きたのか睡樹が疑問を声を出す。

 

迷家

【大丈夫。もう直ぐ終わるよ〜】

 

 そして、部屋の改築が終わって弄った部屋から尾を離す。

 改築された部屋は前の部屋同様に何も無かったが、その広さは前の部屋とは比較にならない程に大きくなっていた。

 

「すごい!!」

 

波音

【建物を自由に改築するって言ってけど、ここ迄とは】

 

「じゃあ………はじ…め…よう】

 

 広くなった部屋を見て、睡樹も擬人態から本来の姿であるコロポックルに戻り、波音たちと術の練習を始めた。

 

 

 

 

 

 

 そんな、波音たちの術の練習を見ていた迷家は驚いた。

 

「ふっ、よっ、どう出来てる?」

 

 とくに手のひらの上に術で生んだ水の玉を風の術を使って保っている雛の姿に驚いていた。

 

睡樹

【すごい……………雛。僕も…負けて……られ………ない】

 

波音

【紫陽花から教えられてるのは聞いたけど、上手だね】

 

 そう。崩から術を教わっている睡樹や長く生きてる為に基礎練習を繰り返す波音とは違い、数ヶ月前までただの人間として育てられていた雛。

 波音と比べるわけにはいかないが、それでも雛の術の操作性は潜砂よりも上手い。

 

迷家

【(確かに上手い。これも紫陽花の孫だからなのかな)】 

 

 雛の実祖母である紫陽花ことコソデノテは中距離攻撃と術を使った戦闘スタイルを持ち、最も得意とするのが術だった。

 そんな術に興味を持った雛に術を教えている紫陽花は水を吸収するスポンジのように上手くなっていく孫の姿に嬉しくなって、近々に本格的な術の練習を教えようとしていることを雛は知らない。

 

睡樹

【む、むむ……出来…た!】

 

「砂のお城!! あ、落としちゃった」

 

 そんな思考をしていたらいつの間にか睡樹が術で作った砂を操作して大きな城を作り上げていた。

 雛は純粋な目でそのお城に目を輝かせるが、それに気を取られて手のひらに浮かべた水の玉を落としてしまった。

 少し泣きそうな顔になる雛に睡樹が近付くと–––

 

睡樹

【どんまい………どんま…い】

 

 雛の頭にツタの腕を乗せてヨシヨシとひなを慰める。

 人造魔化魍として産まれたコロポックルこと睡樹が術を学ぶのは、王である幽冥を守る為でもあるが、術の威力を弱めれば他のことにも利用できると知ってからは、術を日常的な様々な場面で活用できるようにする為に学んでいる。

 

波音

【ふうーーー】

 

 波音は手のひらから出した水流を左右上下に激しく動かしていた。

 雛としていることは似ているが、それよりも難しい。波音は水を落として、一息つくと迷家のほうに顔を向ける。

 

波音

【迷家。術で狙う的を出せる】

 

迷家

【的? じゃあ、作ったあげるよ】

 

 迷家は幻術を使って3つの的を波音たちの近くに置く。

 

波音

【じゃあ次はあの的を術で狙って】

 

「分かった」

 

睡樹

【オー…………ケー】

 

波音

【はあ!! 水流波!】

 

睡樹

水礫

 

「ええい」

 

 波音が突き出した指先から水流が、睡樹のツタの腕先から無数の小さな水球が、雛の手からも波音よりは勢いはないが水流がそれぞれの的に向かって放たれる。

 

「あ?」

 

波音、睡樹

【【あ!?】】

 

 だが、的へ向かう途中で偶然混ざり合ったそれぞれの術は狙う的から大幅にズレ、近くに浮いていた迷家に命中してしまった。

 

「的からズレちゃった」

 

 そこには水系の術によってびしょ濡れになった迷家が水を滴らせながら宙に浮いていた。

 

迷家

【……なにか言うことない】

 

「ごめんなさい」

 

波音、睡樹

【【ごめん】】

 

迷家

【うん。謝れるのは偉いけど、へくしゅん!】

 

「迷家、大丈夫」

 

 雛が紫陽花から教えられた風系の術を使って、僕の身体の水を飛ばしたけど–––

 

迷家

【ありが………ふ、ぶえっくっしゅうん!!】

 

 すっかり身体の冷えた迷家のくしゃみが妖世館に響くのだった。

 

SIDEOUT

 

SIDE?

 奈良県吉野郡の八経ヶ岳にある魔化魍から人類を守る組織 猛士の総本部。

 魔化魍の敵の総本山ともいうべき本部の中にある一室–––

 

「おい。そこに纏めてある資料を第2作戦室に持ってとけ!」

 

 分厚い紙束を持った男が事務作業をする1人の女の机に置く。

 

「……はい」

 

 女は作業をやめて、男の指示にあった資料を持ち上げて、そのまま部屋を出た。

 

 紙束を持った女は資料の重さで微妙にフラフラしながら通路を歩く。

 

「おい」

 

 それを見た1人の男が隣にいる男の肩を叩き、それを見たもう1人の男は顔を見合わせて口を歪める。そして、男が女の前に足を軽く出す。

 

 資料で目の前が見えないため、簡単に足に引っ掛かり、そのまま資料を撒き散らして派手に女は転ぶ。

 

「いや〜すまんすまんw」

 

「わざとじゃねえぞw」

 

 声からして悪意のあることがすぐに分かる。

 だが、この男たちが女にこのような事をするのには理由がある。

 

「でも、敵の友達(・・・・)に謝る必要はねええか」

 

「それもそうだな。ぎゃははっはは!!」

 

 『敵の友達』。

 この言葉は猛士ではある者たちのことを指す蔑称。そう『猛士魔化魍穏健派閥共存派』に属する人間たちだ。

 ………以前の説明ではあまり語れなかった共存派の話を改めて説明しよう。

 

 人類を魔化魍の魔の手から守る非政府組織 猛士。

 そんな猛士にある3つ派閥の1つである魔化魍穏健派閥 共存派。そこは人間と魔化魍との共存を志向する猛士の派閥だ。

 そのメンバーのほとんどが『魔化魍に命を救われた者』や『魔化魍の良識研究者』、『無駄な殺生を嫌う者といった者』たちばかりだ。普段は『共存派』ということは言わずに他派閥である穏健派と偽ったり、逆に堂々と共存派と名乗る者もいる。

 だが、ここで勘違いしてはいけないのは、魔化魍との共存を目指す一派であるが、猛士本来の目的である人を守るという本質は変わってはいない。

 

 猛士に属する共存派にも勿論、魔化魍討伐の指令は総本部から下される。

 穏健派や過激派はどんな魔化魍だろうと討伐に入るが、共存派は魔化魍の研究という名目で捕獲を主とする。そして、研究中に死んだということにして魔化魍を秘密裏に逃している。

 では共存派はどの様な魔化魍を討伐するのか、共存派が討伐する魔化魍は人類との共存を望めない魔化魍である。

 そういった魔化魍の多くは、一定の実力を持った者でない限り振られることの強大な魔化魍であることが多い。

 

 だが、共存派の鬼たちは、いや鬼だけでなく天狗はそんな強大な魔化魍たちを何十体も討伐している。

 

 数も勝り魔化魍を多く清めている過激派だが、強大な魔化魍の前では多大な犠牲を出して討伐したのに対し、少人数で多少の怪我はあれど死者を出さずに討伐する共存派。

 この事実には過激派に属する者たちは声を荒げた。なぜ、魔化魍を倒すことに心血注ぐ自分たちよりも強大な魔化魍を倒せるのかと。

 

 勿論、共存派が少人数でそんなことが出来るのは、討伐までの下準備にあった。

 共存派が討伐指令を受けた際にまずするのが情報収集。それも徹底的な情報収集だ。討伐指令の度に書庫に保管される魔化魍のデータを全て広げ、討伐対象の魔化魍を調べる。この時にその魔化魍の情報によって討伐するのか、保護か討伐偽装するのかと話し合い、共存派のトップである日向の判断によって行動を決める。

 行動が決まれば、今度は縁のある魔化魍から情報を聞く(・・・・・・・・・・)

 そう餅は餅屋、要するに魔化魍のことなら魔化魍から聞くという従来の猛士からは考えられない方法で情報を手に入れ、それらの情報を駆使し討伐魔化魍について調べ上げたうえで、その場所へ向かう。

 保護や討伐偽装の場合は、魔化魍と話し合った上で軽度な戦闘を行い討伐したという偽報告を行って、情報提供をしてくれた魔化魍の協力で魔化魍を逃す。逆に討伐が認定されれば徹底的な弱点攻めによってその魔化魍を討伐する。

 そして、魔化魍の討伐報告によって共存派は猛士として活躍したということになる。

 

 つまり、過激派は共存派の実力に嫉妬している。いやそれだけでなく憤慨している。

 

 それほどの力を持っておきながら、多くの魔化魍を倒せる実力を持っていながら、やっていることが魔化魍との共存の模索や保護。

 親類や友人を殺された復讐心から所属することの多い過激派からすれば腹立たしいことだった。

 

 だが、腹立たしいのは過激派だけではない。普遍派閥こと傍観派も共存派を攻撃する事がある。その理由は過激派と似たような理由だ。

 つまりこの女性がこのような目にあうのは人間の醜い嫉妬心によって衝動的に起こされる嫌がらせだった。

 

「手ェ貸してやろうか?」

 

「ほら、資料拾ってやるよ」

 

 女に近付いて、手を伸ばす男たち。もちろん善意ではなく更なる嫌がらせをしようという魂胆がその笑みで察せる。

 

「………いえいえ。すいませんでした。私もよく見えていませんでした」

 

「「ひっ」」

 

 男たちは上げられた女の顔を見て短い悲鳴をあげる。そして、ちょっかいを掛けた数分前の己を恨んだ。

 その顔のあるところに本来収まっているはずのものがそこには無く、暗い孔があった。

 

「あら、いけないいけない。無くしてしまうところでした」

 

 女がそう言って拾った丸いもの。それは目だった。

 

「ありがとうございます。資料に埋まっていたのに気づいて、資料を退かしてくれて」

 

「そ、それはよかったな、なあ」

 

「あ、ああ。じゃあ、俺たちはこれで!!」

 

 先程までの嘲笑は消え、青白い顔を浮かべる男たちは目の前の女に一刻も関わりたくないので、その場を逃げるように走り去った。

 男たちがいなくなり、その場には片目が外れて、その眼を見せる姿勢の女だけになった。

 

【大丈夫?】

 

 女だけしかいない場所から声が聞こえる。

 

「ええ大丈夫です」

 

【ホント? もしも仕返しする気があるならボクがさっきのヤツらを–––】

 

「良いんです。あの程度のことでアナタが力を振るう必要は無いんです」

 

【でも】

 

「心配してくれてありがとう」

 

 そう言いながら、持っていた義眼を空いた孔に戻して散らばった資料の紙を集める。

 

【…………あの時、ボクのせいで伊八は………】

 

「いいえ。あの時のことがあったからこそ、アナタと出会えた。鬼の力は取り上げ(・・・・)られましたが、後悔はありません」

 

 そう言う女こと伊八 暦は声の主に返答する。

 伊八が総本部に居るのは、『共存派』とバレたことと声の主である魔化魍を庇ったことだ。

 上記のことで『共存派』の鬼とバレた伊八は『鬼の力』を上層部に取り上げられて、此処、猛士総本部で監視付きの雑務を命じられている。

 声の主である魔化魍はその時には無事に逃げられたが、『鬼の力』を取り上げられて総本部で雑務を行う伊八の身が心配で陰から伊八を守っているのだ。

 

【……………分かった】

 

 声の主は納得したのか、声は消えて、伊八は散らばった資料を集め終わり、もともと言われていた第2作戦室へと向かうのだった。




如何でしたでしょうか?
総本部で働く共存派を出してみました。ついでに猛士での共存派がどういう感じかというのも入れてみました。因みに伊八と話すこの存在は他の共存派に知られています。
総本部にもしも共存派がいるとしたらどういう状況なのかを考えてみた結果、追放や処刑とかではなく手元に置いての監視という考えになりました。他にも総本部には共存派に属する人は居ますが、それぞれが出会わないように徹底的に監視のもと、猛士総本部での雑用をさせられています。
因みに共存派のトップである日向の場合は共存派であることを言っていますが『鬼の力』は奪われていません。理由は今までの実績です。日向は数々の強大な魔化魍をひとりで討伐した実績がある為、『鬼の力』を奪うよりはその力を利用するという総本部の決定で奪われていません。

ーおまけー
迷家
【へ、へ、ぶえくっしゅん!!】

鳴風
【! もうびっくりした〜】

迷家
【ごめんごめん。あ〜怠い、怠いよ〜】

鳴風
【大丈夫? つめたい風いる?】

迷家
【あ〜大丈夫大丈夫。じゃあ、早速、今日のおまけコーナーはっじ………】ドサッ

鳴風
【え!! ちょ、迷家!! 迷家!!】

迷家
【ううぅぅぅ……】

鳴風
【えええっと、そうだ! 白、白ううう!!】

ー次回のおまけコーナーへ続くー
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