人間だけど私は魔化魍を育て、魔化魍の王になる。   作:創夜叉

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こんばんは。
正月はとっくに過ぎて1月も終わりに近いですが新年あけましておめでとうございます。今年最初の投稿になります。今年も何卒よろしくお願いします。
今回は東口での戦闘回です。それではどうぞ!!


記録百弐拾

SIDE鳴雷

 王が聞いた予言の『お告げ』で振られた編成によってボクたちが東の方に向かったら鬼と無銘、天狗たちがいた。

 何かを話し合ってたり、樹に寄りかかってボクたちを襲撃するための道を見てたり、ディスクアニマルを持って情報を確認をしてたりと色々しているみたいだ。

 

 攻撃を仕掛ける側が逆に襲われるなんて思わないだろう。

 すると隣を飛ぶボクの育て親であるライチョウの妖姫()から攻撃の指示を送られる。え〜と指示は?

 

 なるほど。じゃあ一丁いってみよー!!

 

ビリリリリリリリ

 

 鳴雷が黄から受けた指示は『徹底的にやれ』。

 鳴雷の鳴き声と共に両翼に電気が迸り、辺りが少し黄色く明るくなっていく。

 突然明るくなったことに気づいた鬼や無銘、天狗たちが上を見上げるがもう遅い。

 

ビリリリリリリリ

 

 鳴雷の電気音のような鳴き声と共に翼に蓄えられた電気が弾ける。

 翼から降り注ぐ無数の落雷はいくら鬼といえども当たればタダでは済まない。名持ちの鬼たちは鳴雷の攻撃に気付き、いち早く回避するが無銘と天狗たちは落雷を避けられずに鎧ごと落雷によって黒焦げ死体とかした。

 

 一瞬にして無銘と天狗は全滅した。

 残ったのは、鳴雷の攻撃を察知して瞬時に回避行動に移った3人の鬼だけだった。

 

「全員やられちゃったね」

 

「いいんだ姉さん。弱え奴が悪いんだ気にすんな」

 

「ええそうですね。しかし、まさか空から攻撃を仕掛けられるとは」

 

 そう。この班の襲撃を仕掛けたのは全員、飛翔能力もとい空を飛ぶことが出来る魔化魍と妖姫だ。

 鬼たちは、宙を飛ぶ鳴雷たちの姿を捉えながら各々の獲物である音撃武器を持って構える。

 すると臨戦体勢に入った鬼たちの姿を見た鳴雷たちは一斉にその翼を羽ばたかせて、猛烈な風を鬼たちに浴びせる。

 

「きゃああああああ!!」

 

「うおおおおお!!」 

 

 鬼の1人が飛ばされると同時に音撃管から放たれたナニカが風を起こす魔化魍たちの身体を掠める。それによって風は止み、その場に吹き飛ばされなかった2人の鬼がいた。

 

幻笛

【あれは? 気を付けてください。あの2人、噴鬼と芯鬼です】

 

五位

【あれがか?】

 

 幻笛の言葉を聞いた五位の視線の先には風で飛ばされなかった2人の鬼が立っている。

 頭部と腕が赤紫色で縁取りされ、目元を一周するように配置された赤紫色の隈の入った面、腰に先端が鋭く長い棒状の物を吊るした2本角の黒い鬼と白で縁取りされた頭部で右腕に湾曲した腕飾りを付け、左腕に鬼爪の変わりとも言わんばかりの鋭い長針を生やした1本角の灰色の鬼が立っていた。

 

 この2人の鬼こそ新潟支部において空を飛ぶ魔化魍の討伐率トップの噴鬼と芯鬼だ。

 2人共、従来の鬼が使えないようなカスタマイズされた特殊な音撃管を使って魔化魍を清めてきた。その功績が認められて芯鬼は支部長がいない時の新潟支部代表となり噴鬼は代表補佐となった。

 

鳴雷

【……あれ。揺火は?】

 

「さっき飛ばされた鬼の方に向かった」

 

幻笛

【では拙たちの相手は】

 

五位

【あの鬼たちってことになるな。じゃあ早速!!】

 

 言うや否や五位が羽をばら撒く。

 

「「っ!?」」

 

 それを見た鬼たちは面越しにギョッとする。

 以前にも話したが、五位ことアオサギビの羽根は機雷のようなものである。

 

 宙にばら撒かれた羽根は鬼たちの眼前までくると、1つ1つが自壊するかのように壊れ、壊れると同時にそこから熱エネルギーが広がる。

 鬼の2人はその熱エネルギーに当たらないように左右に分かれる。

 

ビリリリリリリ

 

 さらに追い撃ちを掛けるように鳴雷は雷を広範囲に落とす。

 あたりに激しく降る雷によって残った2人の鬼は分断される。

 

「そっちはまかせた」

 

 分断された鬼の1人に向けて黄が電撃を放って、さらに違う場所へ誘導した。

 そして残ったのは、芯鬼だった。

 

「くそ! まさか俺たちを分断するとは」

 

鳴雷

【お前の相手はボクたちだよ!】

 

「確か『雷纏翼』と『青光鳥』だったな。名持ちが2体か」

 

鳴雷

【ねえ〜その、『雷纏翼』って名前どうにかなんない? ボク、凄いその名前不満なんだけど】

 

「知るか! そういう文句は総本部に文句を言え。まあ、それは出来ないがな」

 

五位

【?】

 

「なぜなら、俺に倒されるからな!!」

 

 芯鬼が真っ直ぐとボクたちに近付いて、その長い針を突き刺してくる。

 

鳴雷

【危な!!】

 

 だが、鳴雷は芯鬼の攻撃を直ぐに避ける。

 

五位

【隙あり!!】

 

「ねえよ!!」

 

 攻撃後の隙を狙ったつもりの五位だったが、芯鬼は五位の方に向くと右腕を向ける。

 何も無いかと思えたが、そこには従来の音撃管よりも小さな音撃管 縮射(しゅくしゃ)が握られ、その銃口は五位を捉えていた。

 

鳴雷

【させないよ!!】

 

 近くで芯鬼を見ていた鳴雷は翼から電撃を放つ。

 

「ちっ!」

 

 芯鬼は舌打ちと共に腕を振って長針で電撃を掻き消して、右腕に握られた音撃管の空気弾をばら撒くように撃つ。

 

五位

【てっ………小型化したからか威力はそこまで高くないがあの連射力が厄介だな】

 

 五位の言う通り、芯鬼の音撃管は不意打ちと牽制に特化するようにカスタマイズした音撃管だ。

 芯鬼は従来の音撃管を使う鬼とは違い、近接戦闘を好む鬼だった。だが武器適正があったのは音撃管だった。そこで芯鬼は鬼の基本武装のひとつでもある鬼闘術 鬼爪に目を向けた。

 鬼爪の形状を爪から針へと変えて、鬼爪の戦闘の邪魔にならないように音撃管を従来のサイズの半分以下のサイズへとカスタマイズしたのだ。

 

 芯鬼は音撃管で撃ちながらは左腕の長針をフェンシングのように連続刺突を繰り出して五位や鳴雷を攻撃してくる。

 五位も鳴雷も芯鬼の緩急のあるヒットアンドアウェイ攻撃で僅かな疲労を感じ、動きが少し鈍くなっていく。

 

音撃射(おんげきしゃ) 溶融岩石(ようゆうがんせき)!!」

 

 五位と鳴雷の疲労の瞬間を待っていた芯鬼は、直ぐに離れるとカスタム音撃管に音撃鳴を取り付けると清めの音を吹き始める。

 芯鬼の小型カスタム音撃管の口から小型から放たれたとは思えない膨大な炎の塊の音撃が五位と鳴雷に迫り、逃げる隙すら与えずに一瞬にして2体の魔化魍は炎の音撃に呑まれた。

 

「これで片付いた」

 

 音撃管から口を離し、炎の音撃に包まれた五位と鳴雷はやがて消し炭となるだろうと判断した芯鬼は、分断された姉である噴鬼の元に向かおうとする。

 

五位

【これ程とは、流石は鳥類系魔化魍でも最上位に位置する魔化魍の力だな】

 

鳴雷

【これでも使ってるのは半分くらいなんだけどね。戦いの前に頼んで良かったよ。お陰で咄嗟の攻撃に対応出来たからね】

 

 音撃によって消し炭になったと思った筈の2体の魔化魍の声に芯鬼は振り返る。

 炎が消えるとそこには全身を覆うように展開された電撃のドームの中に2体の魔化魍がいた。

 

「無傷だと、馬鹿な!!」

 

 渾身の一撃とも言うべき音撃を受けて無傷の五位と鳴雷の姿に芯鬼は驚く。

 

 ライチョウ種。

 それは鳥類型の魔化魍の中でも上位に位置する強さを誇る強大な魔化魍だ。

 だが幼体の頃はその強さとは無縁の最弱の魔化魍でもある。幼体の頃は、親であるライチョウまたは怪童子や妖姫から主食である人間と電気を喰らって成長する。

 幼体から成体になると今度は自らの力で電気を集めるようになる。自ら雷の起きそうな暗雲を探して、暗雲を見つければその中に飛び込んで雷を自分の身体に浴びせて電気を集めるのだ。成体になったライチョウの羽は1枚1枚が蓄電池のような役割を持ち、身体に浴びせた雷を蓄え、それを電気エネルギーに変換して攻撃や防御に転じている。

 芯鬼の音撃を防いだのは、その蓄えた電気をドーム状に展開し音撃が入り込まないように電気を使い続けて防ぎきったのだ。

 

「クソ、クソ!!」

 

 芯鬼は五位と鳴雷の無傷な姿に腹立てて、音撃管を撃ち続ける。

 鳴雷は電撃のドームを解除せずに何かをし始める。すると黒いもやが鳴雷の周りに漂いはじめる。

 

 鳴雷は先程の高威力の音撃を受けて、さっさと決着を付けるために己の中に溜め込んだ全電力を使って芯鬼を仕留めることを思いつく。黒いもやは暗雲に変わり、鳴雷は暗雲に身体を押し込んで電撃を暗雲の中に向けて放つ。電撃を浴びた暗雲はどんどん大きくなっていく。

 

鳴雷

【(これやると暫く電撃や雷を撃つことができなくけど、後で黄に術を頼んで失った分の電気を回復できるから問題はないかな)】

 

 鳴雷がそんなことを思ってる間に暗雲から迸る電気が徐々に太くなっていく。すると音撃管を撃つ芯鬼の頭上に鳴雷の周りにある暗雲と同じ暗雲が形作られていく。そして暗雲が出来上がると同時に–––

 

「があああああああああああああ!!」

 

 暗雲から閃光と共に放たれた一筋の雷が芯鬼の頭上に落ちる。

 無銘の鬼とはいえ鎧ごと焼死体に変えれる鳴雷。そんな鳴雷が身体中にある電気を一点に集めて放った雷を受けた芯鬼の身体は左半身が焼滅し、残ったのは右半身のみだった。

 そして、芯鬼が倒れたのと同時だった。そこに何処からか吹き飛ばされてきた噴鬼が芯鬼の前に現れた。

 

SIDEOUT

 

SIDE黄

 少し時が遡る。五位と鳴雷の攻撃で上手く鬼の2人を分散した。

 目の前には、従来の音撃管とは少し形の異なるカスタム音撃管 深込(ふかごめ)を持った噴鬼が立っていた。

 

「『魔笛雀』は何処にいったの?」

 

「それを答えるわけないでしょ」

 

 幻笛には戦闘に入る前に頼んだあるお願いが理由でこの場にはいない。

 鬼の質問に答える気はなく戦闘が始まる前から取り出した血まみれの狼(bloody wolf)を構えて目の前の鬼の動きに注視する。

 すると早速–––

 

「挨拶がわりだよ!!」

 

 音撃管から空気弾を撃つ。

 私は飛んでくる空気弾を血まみれの狼(bloody wolf)で切り裂いていく。

 伊達に数十年生きてきた訳ではない。音撃管を持った鬼との戦いは『鳥獣蟲同盟』に所属してからも数多く経験している。空気弾は確かに連射力もあり、何度も受ければ怪童子や私のような妖姫も倒されるが威力自体はそこまで高くない。

 

 鬼は私に近づかれないような距離を保ちつつ何度も空気弾を撃ってくるのだが、どこか違和感を感じる。ある程度撃ったのが理由か、今度はタイミングを変えて撃ってくる。

 

 その攻防の時間が経つ毎に空気弾による攻撃が徐々に嫌らしくなってくる。私への攻撃というより、私の持つ血まみれの狼(bloody wolf)に向けて、まるで何かを探るかのように撃ってくる。

 

 そして、何百発目かの空気弾を撃った鬼は動きを止めて腰にぶら下げる棒状の物を外すと素早く音撃管に装填した。

 どうやらあの音撃管は装填したものを発射できるように改造された物のようだ。

 そして、直ぐに鬼は私に向けてそれを発射した。真っ直ぐ一直線にこちらに向かって飛んでくるそれを空気弾と同じように切ろうとした。

 

「な!?」

 

 だがそれは振り下ろした血まみれの狼(bloody wolf)の峰をスレスレに通り抜けて私の脇腹に深く突き刺さった。

 

「ああっ!!」

 

 数年ぶりの痛みで血まみれの狼(bloody wolf)を落としてしまう。だが、今はそれよりもこれを抜かなければ、何か良くないものを感じる。

 

「ぐう、抜けない。それにこの痛み……まさか!? がはっ……」

 

 脇腹に突き刺さったそれを抜こうとするが抜けず、刺さってから続く継続的な痛みに気を取られていた私はいつの間にか近付いていた噴鬼に腹を蹴られ地面に倒れる。

 

「どう? 特殊弾の味は?」

 

 噴鬼のカスタム音撃管 深込が発射するのはただの棒ではない。鬼の音撃武器の要である鬼石を砕き、ツクモガミ種の魔化魍の身体を粉々に砕き、砕いた鬼石と混ぜ合わせて作り上げた特殊弾だ。

 従来の鬼石の弾よりも頑丈でさらに先端にかえしが付いたそれは魔化魍の肉体に突き刺されば抜くのが難しく、動きの阻害や戦闘中に外れる心配も無い。おまけに清めの音に反応する従来の鬼石の弾と違い、僅かな動きで生じる風だけでも極小規模の音撃によるダメージを与えられる。つまり撃ち込まれれば撃ち込まれる程、身体に響く極小の音撃は強力な音撃へと変わり魔化魍を倒す際に用いる音撃を使わずとも魔化魍を倒せるのだ。

 だが、その強力さ故に従来の音撃管で1発でもこの特殊弾で撃てば音撃管に多大な負荷が掛かり、音撃管は壊れてしまう。

 そんなマトモに撃つことができないそれを撃てるように改造を施し、実戦で用いるのが噴鬼だ。

 

「どう、痛い?」

 

 黄の身体に深く突き刺さった特殊弾を噴鬼は押し込むように蹴る。

 

「ぐうううううう!!」

 

 痛みに苦悶の表情を浮かべる黄に気分が良くなり、黄の髪を掴んで特殊弾に脚を掛けるとぐりぐりと踏む。

 

「あああああああ!!」

 

「いい悲鳴だね!! 父さんも母さんもお前たちにそうやって殺されたんだ。同じことをされたんだ同じ仕返しをしなきゃねえ!」

 

「ぐあああああああ!!」

 

 黄の髪を持ち上げて体を浮かせて視線を合わせる噴鬼。

 踏まれ続けた特殊弾はかえしを無視して背中に突き出るが、それに気付いてか気付かずか噴鬼は黄の身体を蹴り続ける。

 

「かひゅ、うう、あ」

 

 執拗な噴鬼の攻撃は顔や腕、脚など身体以外の場所も蹴られ、蹴られ続けた箇所は青紫色に変色し、全身を襲う痛みでまともな呼吸をするのが難しく、黄は虫の息ともいうべき状態だった。

 そして、蹴り飽きたのか急に髪の毛を手を離して、腰元にある特殊弾を音撃管に装填し始める。

 

「じゃあ、とっと死んで」

 

 特殊弾の装填された音撃管の照準が地面に仰向けに倒れる黄の頭に定まる。そして、噴鬼は引き金を引いた。

 

「あ……」

 

 撃たれた特殊弾は正確に黄の頭に突き刺さり、そのまま動くこともない黄。

 特殊弾の突き刺さった死体からは白い血が流れていく。

 

「ハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」

 

 これでまた両親を殺した妖姫がひとり減った。

 次は『魔笛雀』。芯鬼のところにいる『雷纏翼』や『青光鳥』、『増火鳥』を仕留めてやる。そう思いながら噴鬼がその場から離れようとした。その時–––

 

幻笛

【どうでしたか。拙の仕込みは?】

 

「流石ね。お願いしといて良かったよ」

 

「ハハ、は?」

 

 誰もいないはずの場から聞こえた声で噴鬼の笑い声は止まり、声の方に振り向けば噴鬼は驚愕する。

 

「『魔笛雀』!! それに妖姫まで! さっき間違いなく殺したはず!!」

 

 そこにいたのはいつの間にか消えていた幻笛と先程、自分が殺したはずの黄だった。

 

幻笛

【さっきまで貴女が戦っていたのは拙の作った幻術で作られた幻です】

 

「な、幻術。 そんな馬鹿な。だって、そこに死体が!! っ!!」

 

 噴鬼が黄の死体がある所に指を刺すが、そこには地面に突き刺さった特殊弾しかなく死体はどこにも無かった。

 

「貴女と対峙する前に少し離れた場所から幻笛が人の耳には聞き取りづらい極小音の音で幻術を掛けた。貴女はそれに気付かずに私にその音撃管の攻撃手段を見せてくれた。色々と助かったよ」

 

 そう言った黄の手には熊の爪のような飾りが両端に着いた巨大な戦鎚の双獣器 荒れる熊(raging bear)空間倉庫から取り出されていた。

 

「また、お前を倒すだけだ!!」

 

 噴鬼が構えると同時に黄に向けて放たれる特殊弾。

 だが、先程まで噴鬼を見ていた黄は–––

 

「はあ!!」

 

 タイミングよく特殊弾を容易く弾き飛ばす。確かに特殊弾は厄介だ。だが、それは刺さらなければ意味がない。

 それを見た噴鬼は急いで腰にぶら下げた特殊弾を外して音撃管に装填をするが、装填を終えた時には既に目と鼻の先に黄がいた。

 荒れる熊(raging bear)を水平に構え荒れる熊(raging bear)の柄からギチギチと軋む音が鳴る。そして、次の瞬間–––

 

「せやあ!!」

 

 勢いよく振られた荒れる熊(raging bear)が最初に当たった噴鬼の左腕と共に身体に深くめり込む。

 

「ごぶはっ…ぶべっ」

 

 荒れる熊(raging bear)による渾身の一撃によって噴鬼の身体からは骨の軋む音と肉がブチブチと千切れる音、臓物が潰れる音が鳴ると同時に噴鬼の面の口元から多量の血が吹き出て身体がくの字に曲がる。

 

 そのままゴロゴロと地面を跳ねるように吹き飛ばされた噴鬼の前には鳴雷の雷を受けて倒れた芯鬼がいた。

 

「………アサ、ごふっ」 「ね、えさん、ねえ、さん」

 

 互いに気付いた鬼たちは互いを呼びながら身体を近付けようとする。

 だが、身体の動かない2人は手を伸ばす。まともに残った右腕を伸ばす芯鬼と折れていながらも真っ直ぐ左腕を伸ばす噴鬼。そんな姿をなぜか邪魔しないで眺める黄たち。

 

「…さん、ねえ……さ」 「あ、アサヒ、いま、そっちに」

 

 そして芯鬼と噴鬼の互いに伸ばし腕がもう少しで届きそうとなった時、2人はそのまま力尽き、息絶えた。

 

「…………」

 

 黄は2人の亡骸を見ると、左手にある猛る熊(raging bear)に電気を集める。

 死んだ2人の身体を滅茶苦茶にして原型も跡形も残らないように焼き潰そうとするが–––

 

五位

【……おい、やめろ】

 

 五位が電撃を纏った猛る熊(raging bear)を抑えて動かさないように止める。

 

「………離してください」

 

五位

【気持ちは分かるがやめておけ】

 

 気持ちが分かる?

 仲間を失ったことのない貴方にそんなことが分かるわけがない。

 

「……………」

 

五位

【今はそれよりも優先することがある】

 

鳴雷

【そうだよ。早く、揺火探さないと!!】

 

 何を優先と思ったが、そういえばさっき飛ばされた鬼の方に飛んでいった揺火を忘れていた。

 そうだ。あの子は戦闘慣れしてない子だ。いつも戦いの時に付き添いの私がいた鳴雷とは違う。もしも、鬼と戦って揺火が死んだら。もうこれ以上死んだ誰かを見送りたくない。

 

「揺火を探しましょう」

 

 私は荒れる熊(raging bear)に集めた電気を自分の中に戻した。

 そして、鬼の亡骸を置いて私たちは揺火を探すために空を飛んでいくのだった。

 

SIDEOUT

 

SIDE揺火

 また時は遡る。

 風で飛ばされた掃鬼とそれを追いかけるように飛んでいった揺火。

 やがて風はだんだん弱くなっていき、拓けた場所に鬼は転がり落ちる。

 

「いたた、もう許さないから!!」

 

 打った腰を摩りながら言う様子になんとも言えない何かを覚えるが今は関係ない。

 

揺火

【………一掃の掃鬼】

 

 藍色で縁取りされた頭部、首と胸元の間に小さな鬼面を付けた群青色の鎧、腰には淡い水色の腰布を巻き付けて、その背には従来の音撃弦よりも刃が細長い薙刀に似た音撃弦を持つ鬼、掃鬼がいた。

 一掃という名の由来は、かつて負傷した鬼を守りながら5体の魔化魍を纏めて清めたことがある。そして、その戦い方はまるで掃除してるような様から一掃と呼ばれるようになった。そして、その功績から福井支部の代表にもなった鬼だ。

 

「フラリビ種の魔化魍ですか。相手にするのは初めてですね」

 

 そんな掃鬼の言葉にムカついてオイラの周りの火の玉を一気に放つ。

 

「はあ!!」

 

 自身に迫る火の玉に掃鬼は背にあるカスタム音撃弦 掃出(そうで)に手を掛けると勢いよく振るい火の玉をひとはらいで一掃する。

 

揺火

【むう。じゃあ、これはどうだい!!】

 

 揺火は火の玉をバラバラのタイミングで掃鬼に向けて撃つ。だが掃鬼は手に持つ音撃弦を振るって火の玉を容易く両断し、火の玉を消し去っていく。そして掃鬼はその場から動かずに揺火の行動を注視する。

 

揺火

【(やっぱり、これじゃあダメか)】

 

 揺火は内心で相手する掃鬼の戦い方は自分とは相性が悪いことを悟る。

 揺火は自身の周りにある火の玉と赤系の術による中距離からの攻撃を主とした固定砲台のような戦い方をする一方、掃鬼は自ら動かず相手の攻撃に合わせてのカウンターや魔化魍の疲弊のタイミングで攻撃を仕掛ける後行攻撃型。

 

 揺火がいくら攻撃しようともひたすら火の玉を斬り裂く掃鬼。そんな掃鬼の隙を生むためにひたすら火の玉で攻撃を続ける揺火。いくら撃っても掃鬼はその場から動かずに音撃弦で切り払う。そのまま揺火が疲れ果てた同時に直接攻撃を仕掛けるつもりの掃鬼はその場から動かず揺火が疲れるのを待つ。

 

揺火

【これでもまだ動かないかな!!】

 

 そう言って揺火が火の玉を放ったのは、掃鬼にではなくその足元だ。

 

「ぐう、はあ!!」

 

 いくら動かないとはいえ、流石に足元を燃やされれば動かない訳にはいかない。

 掃鬼は音撃弦を足元に突き刺して燃える地面から飛び跳ねるように避ける。宙で身動きが取れない掃鬼に向けて火の玉を放つ。

 

「はっ!!」

 

 だが、掃鬼はそれに動じずに身体を捻ると同時に音撃弦を勢いよく回して火の玉を切り裂いて、そのまま地面に降り立つ。

 

揺火

【面倒だなぁ】

 

 オイラの呟きに掃鬼は何にも反応せず音撃弦を構えてる。

 あの鬼の狙いがオイラの疲労なんだろうけど、そこまで付き合うつもりはオイラには無い。

 神通から教えて貰ったアレで–––

 

ヂヂヂヂヂヂヂ

 

 揺火の声に反応して周りにある火の玉は揺火の前で一箇所に集まり始める。さらに収束させた火の玉は小さな太陽のような光球に変わる。

 

「むぅ。させません」

 

 その光球を撃たせてわならないという直感した掃鬼はバックルに嵌った音撃震 清掃(きよはき)をカスタム音撃弦 掃出に嵌め込み必殺の清めの音を掻き鳴らす。

 

音撃斬(おんげきざん) 広即一掃(こうそくいっそう)!!」

 

 激しく弦を弾く掃鬼の行動を見るだけの揺火。

 掃鬼は疑問を覚える。魔化魍ならば、鬼の音撃に対して何もしないのはありえない。音撃の成功は自身の死を意味するからだ。なのに動かない揺火。

 

 そのまま掃鬼は音撃の最後を弾くと共に勢いよく音撃弦 掃出を振るうと扇状の衝撃波が揺火に向かっていく。

 

 ジリジリと地表を削りながら迫る音撃が揺火の近くまで来ると、その場で浮いていた光球がくるくる回転を始める。それはどんどん回転を早めて、回転速度が上がるたびに光の輝きが増していく。

 そして、光球が激しく光ると同時に光球から光が放たれる。それは迫る音撃に向かっていき、音撃にぶつかると火花を散らせながら拮抗する。だが、音撃の衝撃波にピシッと割れるような音が聞こえ始める。それからものの数秒で衝撃波を貫通する。

 音撃の衝撃を貫いた光はそのまま、音撃弦と掃鬼の身体を貫く。

 

「……がはっ、音撃が破られるなんて」

 

 光はそのまま何処かへと消え、光球は崩れて元の火の玉に戻って揺火の周りを漂う。

 掃鬼の手からズルっと音撃弦が落ち、掃鬼の身体はグラリと傾く。音撃の発生源でもある音撃弦が破壊されたことで音撃はいつの間にか消え、面越しから多量の血を吐きながら掃鬼は地に倒れ伏す。

 胸元に空いた空洞ともいうべき穴は焼かれているせいで血は流れなかったが、心臓の半分を焼かれているせいで呼吸が荒くなっていく。それで己の死を悟ったのか抵抗することもない掃鬼。

 

「ひゅー、ひゅー、あう………」

 

 オイラは鬼に手を出さずに苦しむ様を見る。

 

「………あっけない、人生でした、ね………」

 

 そう呟いた鬼はそのまま事切れた。

 すると、幻笛たちが飛んで来た。みんな少し傷があるけど重傷はいないようだ。

 

鳴雷

【揺火、怪我はない?】

 

揺火

【うん。オイラは大丈夫】

 

「そうですか無事で何よりだよ揺火」

 

五位

【どうした揺火】

 

揺火

【いや、呆気なかったなって思っちゃって】

 

 オイラの言葉に五位以外が顔を顰める。

 オイラたち中部の魔化魍を散々苦しめ、『鳥獣蟲同盟』の仲間を殺した鬼たちの死に本来は喜ぶところなのだろう。だが、実に呆気なく死んだ鬼たちにオイラたちはなんとも言えない気分になった。

 

五位

【………行こう、我らの王の元へ】

 

揺火

【………そうだね】

 

 五位の言葉でオイラたちはなんとも言えない気持ちを心の内側に入れ、翼を広げて、王の元へ向かうべく空へ羽ばたいた。

 

 

 

 

 

 

【アイツの迎えに来てみたら、良いものを見させてもらちゃったなぁあ〜】

 

 黄たちが飛び去って放置された掃鬼たちの死体以外なにも存在しない場所で声が聞こえてくる。何処か嘲笑うかのような声質の声だ。

 

【それと、これは彼奴への土産になるな】

 

 謎の声が止むと同時に掃鬼たちの死体は消えていた。まるで初めからそこに無かったかのように。




如何でしたでしょうか?
今回はこんな感じです。戦闘描写をどうするかに悩んだり、新作のゲームやアプリゲームのイベントに遠回りしたりして遅くなりました。
次話はいよいよ、幽冥と鈴音たちのいる狼鬼との戦闘回です。
次回もお楽しみに。

〜おまけ〜
「そうだった。そうだった危うく名前の話だけで終わるところだったよ」

迷家
【うっかりさんなの?】

「手厳しいね………まあ、それは置いといて」

「おほん。君たちはサーヴァントまた英霊という存在を知ってるかい?」

迷家
【さーゔぁんと?】


【聞いたことない言葉でやすね】

サーティセブン
【英霊…………ああ境界記録帯(ゴーストライナー)のことですか】

ドクター
【そういえば、先生たちもそう呼ばれてたような】

常闇
【はあーあの時、よく生きてたな私】

迷家
【えっと、常闇たちは知ってるの? そのエイレイっていうのを?】

「まあ、常闇ちゃんは師匠が英霊だし、迷家や跳くんが知らないのは分かるけど、なんで君たちは知ってるの?」

サーティセブン
【知人が英霊だからですね】

ドクター
【悪魔魔化魍になる前の私に医療を教えてくれたのが英霊でしたので】

「えっと、因みに誰に?」

サーティセブン
【『引き篭もりのオタク姫』、『聖処女』、『太陽を落とした女』、『大江山の鬼』、『キングメーカー』ほか多数】

ドクター
【………『太陽神の息子』と『錬金術師の祖』と『クリミアの天使』ですね】

「ああ………あの人たちですね」

ドクター
【まあ、おかげで今の私がいますのでなんの文句もありません…………まあ、『クリミアの天使』から徹底的な教えを受けたあの子は思考が似ちゃいましたが】

「えっと、あの子って?」

ドクター
【私と同じように医療知識を叩き込まれたある妖姫です】

「妖姫が?」

ドクター
【その子、過去に人間の子供に助けられたことがあるんですよ。本当の姿を晒してのにそんなことを気にせずに自分の怪我の手当てをしてくれたんですよ。ですがその子供がある病に罹って、どうにか子供を助けられないかって願った時にかの英霊を召喚したんです】

「はああああ!! 召喚できたの妖姫が!! 人間じゃ無いのに!!」

サーティセブン
【いや、召喚できるのはたしか人間だけじゃ無い。知人曰く、死徒と言われる吸血鬼や合成生物にも英霊は応えたことがあると聞いたことがあります】

ドクター
【そして、召喚した英霊、まあ『クリミアの天使』にその子が子供のことを頼んだら治してくれたんですよ。子供も病気が治ったあとは老衰で亡くなるまで何事もありませんでした。
 まあ、それがキッカケで医術を学びたいと『クリミアの天使』に頼んで医術を学び始めたんですよ。あの子の直向きさを気に入って、教えられる知識を叩き込んだって言っていましたよ】

「ええ…………よりにもよってあの人に教えを乞うって………もしかして、それで!?」

ドクター
【そうですね。結果で言うのなら2代目『クリミアの天使』ってところですかね。ですが医者として彼女は優秀ですよ…………時々、暴走しますが】

「へえ〜合わないことを祈りたいですね」

迷家
【それで、そのエイレイがどうしたのナイちゃん?】

「あらら、また本題からズレるところでした。実は私、その英霊たちと共にある旅に出たことがあるのですが、その時に出会ったんですよ」


【なに出会ったんでやすか?】

「あなたたちですよ」

迷家たち
【【【【【え?】】】】】

「だから、英霊となったあなたたちに会ったんですよ」

迷家たち
【【【【【えええええええええ!!】】】】】

「五月蝿いですね」

迷家
【いやいや、僕たちのエイレイに会ったの!?】

サーティセブン
【そんな馬鹿な、私たちは魔化魍だぞ。そんな私たちが何故、英霊に!!】

「う〜ん。よくわかりませんが、貴方たちの王が関係してるみたいですよ」


【王が、でやすか?】

「そうそう。でね、私はそんな英霊となった貴方たちを紹介したいんですよ」

常闇
【ふむ、私たちが英霊か………面白そうだな】


【はい?】

サーティセブン
【まあ、気にならないかと聞かれれば気になるとしかいえませんね】

ドクター
【私が英霊ですか】

「興味を持ってくれて嬉しいですよ」

迷家
【はいはーーい。それっていつやるの?】

「あ、それはですね。本当はすぐにやりたいのですが、何かと色々とありましてね。まあ、私が暇になりましたらこっちに来ますので気長にお待ちください。おっと、そろそろ時間だね。じゃあ、また会いましょう」


【行ってしまいやしたね】

迷家
【エイレイか、まあ今度教えてくれるみたいだし、楽しみに待ってよかな】

ドクター
【迷家、そろそろ時間ですよ】

迷家
【おっと、じゃあここ迄だね。じゃ、まったね〜】
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