人間だけど私は魔化魍を育て、魔化魍の王になる。   作:創夜叉

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こんばんわ。
今回の話で鳥獣蟲宴編は終了となります。なおこの話は短いです。
では、どうぞ!


記録百弐拾参

 狼鬼との戦いが終わり、鈴音と共にみんなのところに戻ろうと思っていたが–––

 

「しまった!! 『魔化水晶』を取るの忘れてた!!」

 

鈴音

【ニャンと!!】

 

 そう。あの狼鬼は『8人の鬼』。

 つまり、『魔化水晶』を持っている。それを思い出した私は鈴音と一緒に急いで狼鬼の死体のある場所に戻り、死体を探ったら見つけた。

 ただ、私が触ると『魔化水晶』の中にいる王に意識だけ呼ばれて何日か倒れることになるので、妖世館()に戻るまでは鈴音に預かってもらうことにした。

 ………本当は別の王様にも会いたかったのは内緒である。

 

 

 

 

 

 

 

 そうして、狼鬼のところから戻ってみれば何人か戻ってきたようだ。

 

荒夜

『王、ご無事でなによりです』

 

潜砂

【王様、僕ね砂灸と一緒に鬼を倒した!】

 

【……はあー疲れた】

 

砂灸

【……体の節々が痛い】

 

 今この場にいるのは、私たちがいた南口の班と西口で戦っていた荒夜たちだ。

 他の子たちは遠くで戦ったのかまだ来ていない。だがそれよりも–––

 

「美岬、その鬼は?」

 

美岬

【ええと、ちょっと事情があって連れてきたの】

 

 美岬の後ろにはおそらく単凍の鍛造したであろう特徴的な刀(?)に身体をぐるぐる巻きにされている鬼がいた。

 それにしても、珍しいというべきなのだろうか。前世の人間だった時の美岬に比べて今の美岬は元人間だがほぼ完全な魔化魍だ。故に相対した鬼を殺すことが多い。

 他の家族が鬼を捕虜として捕えることには何も言わないが、美岬自身が鬼を捕まえて捕虜にすることは私からのお願いがないかぎりほとんどゼロだ。

 そんな美岬が鬼を捕虜にしているのは驚愕と言うべきだろう。

 

美岬

【この鬼についてはあとで説明するから気にしないで】

 

 まあ、美岬がそう言うなら心配ないだろう。

 おまけに拘束具として使ってるのは単凍の魚呪刀。あの鬼が戦うことも逃げることも出来ないだろう。

 さてと、まだ全員集まっていないけど、この場にいる家族には先に伝えておこうかな。

 

「さて、まだ全員揃ってないけどちょっと報告があるからね。先にこの場にいるみんなに話すよ」

 

 私の声で全員静かになり、私をジッと見つめる。

 

「先ずはみんなお疲れ。みんなのお陰で魔化魍の根絶を掲げる過激派の戦力をかなり削れたよ」

 

鈴音

【ニャンからも礼を言わせてほしいニャ。

 ニャンたちの仲間の仇をうってくれてありがとうニャ】

 

 鈴音はそう言うと頭を下げる。

 『鳥獣蟲同盟』だった天鏢と砂灸も鈴音と一緒に頭を下げる。

 

「気にしないで。貴方たちは既に王の家族なのよ。ならそんな家族の願いを王は聞き届けてくれる」

 

 私の言おうとしたことを赤が代わりに答える。

 まあ、赤の言う通りだ。私は前世の時から家族第一、親友第二の考えだ。それのせいで何度か危険な目に遭いかけたけど今は気にする必要はないよね。

 

「鈴音、礼はいいよ。赤も言ったけど鈴音たちはもう私の家族。

 そんな家族の頼みを私は無碍にはしないよ」

 

鈴音

【でも言わせて欲しいニャ。王、本当にありがとうニャ】

 

 涙を流しながら感謝の言葉を述べる鈴音。

 私はそっと鈴音の前にハンカチを差し出す。

 

「ほら、これで涙を拭いて」

 

鈴音

【ありがとうニャ////】

 

「(また、ライバルが)」

 

 ハンカチを受け取って顔を赤らめる鈴音。

 それを見た赤はまたライバルを増やしてと原因である幽冥を睨むが、睨まれてる当の幽冥自身、なぜ睨まれているのか理解出来ずそのまま話を続ける。

 

「さて、本当なら『転移の札』を使って、妖世館()に帰ろうって言いたいところなんだけど………ちょっと問題が起きてね」

 

「問題ですか?」

 

 赤が幽冥の言葉に首を傾げると幽冥が衝撃の言葉を述べる。

 

「えっとね。『転移の札』が無くなって転移できないの」

 

「…………え?」

 

美岬たち

【【【【【【【【【【ええええええええええええ!!】】】】】】】】】】】

 

天鏢

【何か問題なのか?】

 

砂灸

【そもそも『転移の札』とは?】

 

 まだ家族になったばかりで『転移の札』のことをよく知らない天鏢と砂灸は疑問を浮かべながら首を身体ごと傾げる。

 

「そうだったね。『転移の札』っていうのは–––」

 

 疑問を浮かべる2人の為に説明すること数十分。

 

砂灸

【そ、それは】

 

天鏢

【困ったな】

 

 ようやく事態を把握した2人はどう言葉を返せばいいのかと悩む。

 『転移の札』はご存知の通り蛇姫(2代目の助力あり)が製作した道具ということを覚えているだろう。幽冥の何気ない言葉で作られたこの札。実は製作が非常に難しいのだ。

 2代目の補助のおかげで蛇姫は数十枚の『転移の札』を作り上げたのだが、蛇姫ひとりで『転移の札』を作れる確率は五分五分なのである。

 おまけに『転移の札』の札に使う紙は蛇姫が様々な呪いを込めて作る特別製の紙で、それも作るのに時間が掛かる。

 そんな様々な事情で『転移の札』には限りがあり、確実に作れるようになるまでは王である幽冥が遠くへ出る時のみの行きと帰りの為の2枚しか使用が許可されていない。

 さて何故、帰りの為に使う『転移の札』が無いのか。それは–––

 

「………あの狼鬼との戦いの際に鬼に札を切られちゃって」

 

 そう。実は幽冥、狼鬼との戦いの最中で『転移の札』を入れていた裾を狼鬼の攻撃で斬られて札が破損してしまったのだ。

 それに気づいたのが『魔化水晶』を探している時で、狼鬼の死体を漁っている時に斬られた裾からのぞく破損した『転移の札』に気付いて今の事態になったのだ。

 ならば転移の術を使えばいいと思うだろうが、実は転移の術にも弱点がある。

 それは転移する人数が多いと転移の精度が下がることと転移に使う莫大なエネルギー、そして転移の術の使用中は転移の術以外の術を発動出来ないし中で転移を待つものは動けない為、もしもそのタイミングを猛士の鬼たちに攻撃されたらひとたまりもない。確実に周りの安全が分かってる場合ではない限り転移の術を行うのは危険なのだ。

 それ故に転移の術は使うことが出来ない。更に厄介ごとというのは重なるものでもうひとつ問題がある。

 

「さっき狼鬼から『魔化水晶』を回収した際に見つけたんだけど」

 

 そう言って私は1枚の紙を出す。

 

「王。それは?」

 

「あの鬼。自分たちが敗北した万が一を想定して中部地方以外の他支部にいる過激派で実力のある鬼を中部地方と関東地方の境に招集したみたい。

 つまり妖世館()に帰るにはこの鬼たちと戦わないといけない」

 

「なっ!!」

 

 そう。これがもう1つの問題だ。

 私たちが『転移の札』を使わずに妖世館()に戻る場合は関東地方に繋がる道に向かわなければならないが、そこへ向かえば鬼たちが待ち構えているのだ。

 まだ戻ってきてないから他のみんなの状態は不明だが、もしもこの状態のまま妖世館()に戻ろうとすれば間違いなく鬼との戦闘が始まる。しかもこの紙に書かれてることが事実ならひとつの道に鬼を10人。他の道も同じように10人ずつ配置されているらしく総勢100人の鬼が待ち構えている。10人の鬼と戦った後に残り90人の鬼が同時に攻めてくるかもしれない。そんな連戦が続けば間違いなく重症者が出て最悪の場合は死者が出る。それだけはどうにか避けないと。

 

荒夜

【王、ひとつ提案を宜しいでしょうか?】

 

 そうして1人考えていると荒夜から声が掛かる。

 

「提案? 何かあるの?」

 

荒夜

【はい】

 

狂姫

【もしかして荒夜様。あそこへ】

 

荒夜

【そうです姫】

 

 狂姫は荒夜が言おうとしている提案だ何か分かるみたいだ。

 

「えーっと、それで提案ってなんなの荒夜?」

 

荒夜、

【はい。私の友人がいる宮城へ向かうのはどうでしょうか?】

 

 宮城!? 確かに宮城はここから近いし、鬼の奴らが待ち伏せてるのは中部と関東の境目になる場所。反対方向にある宮城に向かうとは思わないだろうから安全だろうし、向かうのは構わないけど–––

 

「……知り合いって魔化魍なんだよね?」

 

荒夜

【はい。私のライバルと言うべき魔化魍と姫の親友である魔化魍の夫婦です】

 

「夫婦!?」

 

 これを聞いた私は以前、春詠(お姉ちゃん)から聞かせてもらった話を思い出す。

 この世界の魔化魍はテレビにあった童子や姫によって作られる又は自然発生による誕生よりも、オスとメスの魔化魍の生殖によって誕生することが主らしい。

 骸みたいに想いの強さで魔化魍化したり、迷家や水底、穢流、不動のようなツクモガミ種の魔化魍は何十年という歳月と器物に宿る想いで魔化魍となるし、自然発生で誕生する魔化魍もいないわけでは無い。

 紫陽花と雛のようなことだってある。魔化魍と人間の間でも子供は産まれる。ただし、産まれた子供は魔化魍というよりは魔化魍に近い体質や身体能力、特殊能力を持っている人間である。

 春詠(お姉ちゃん)も猛士で知った時には驚いたらしいし、私も驚いたものだ。

 

 それにしても夫婦の魔化魍か………………うん。是非とも会いたい。

 

「分かった。荒夜、狂姫。2人にはその場所への案内をお願い」

 

荒夜、狂姫

【【かしこまりました】】

 

「じゃあ、みんなと合流次第、宮城に出発!!」

 

「畏まりました」

 

鈴音たち

【【【【【【【【【【【おおーーーーー!!】】】】】】】】】】】

 

 こうして『転移の札』が無い私たちは猛士の目から逃れて妖世館(我が家)に帰るために荒夜と狂姫の案内で宮城に向かうのだった。

 

SIDEOUT

 

SIDE◯◯

 幽冥たちが宮城に向かう行動を始めた同時刻。

 幽冥たちの目指す宮城県にある宮城県指定名勝のひとつである巨釜。そこからほんの少し離れた深い海の中にある全てが曇りのない水晶で出来た巨大な城があった。

 そんな城の中にあるある大きな扉の前に立つふたつの影があった。

 

【今日も出てこないか?】

 

【ええ】

 

 影たちは扉を見ながら中にいる誰かを心配している。

 

【ここに閉じこもって数年…………食事は取っているようですが】

 

 影のひとつが扉の前に置かれた皿を上げるとそこには多量の人骨が積み上げられている。

 

【俺たちにはどうしようも出来ない…か】

 

【待ちましょう。あの子がまた私たちに顔を見せるようになるまで】

 

【そう、だな】

 

 そう言って、ふたつの影は扉の前から離れていく。

 そして、ふたつの影の姿が消え足音が聞こえなくなった時–––

 

【…………会えるわけないよ。全部、ボクが悪いんだから】

 

 扉の中の誰かがそう呟くと、中から声は聞こえなくなって静寂が辺りを包むのだった。




如何でしたでしょうか?今回の話で鳥獣蟲宴編を終了となります。
色々な事情が重なり遅れに遅れて、この編を終わらせるのに2年ちょっと掛かってしまいました。そんな更新の遅さでも待ってくれて、読んでくれる読者の皆様ありがとうございます。
さて、幕間を書いて、その次に九竜編を書くつもりだったのですが……しばらく、執筆をお休みします。理由は次編の内容改変と今まで上げた話の一部書き換え()などです。なるべく時間を掛けないように終わらせたいと思います。
では、次話を楽しみにしていてください。

ーおまけー
迷家
【イエーーイ! おまけコーナーはっじまるよーー!】

常闇
【ふむ、今回は私か】

迷家
【イ、エーーース! 王と鈴音が使った技の宝具風解説を頼もうと思ってね】

常闇
【まあ、いいが】

虹大蛇(にじおろち)
ランク:A++
種別:対軍宝具
レンジ:1~99
最大捕捉:400人
由来:2代目魔化魍の王 フグルマヨウヒがある魔化魍との戦いで偶然生み出した究極攻呪術。
様々な術が混ざり合ったことで虹色に輝く巨大な大蛇が敵に向かっていく。
ある魔化魍との戦いで追い詰められたフグルマヨウヒが最後の力を振り絞って放った術にフグルマヨウヒの仲間の魔化魍たちがその術に向けて異なる術を放ち、術同士が混じり合って虹色に輝く光の蛇となり、魔化魍を倒したという術を得意とする魔化魍たちなら誰でも知る伝説の術。術使いとしても名を馳せた2代目魔化魍の王が使っていた術であるからか、術使いの魔化魍たちの目標のひとつともされる。
だが、この術は発動のために複数の魔化魍の協力が必要であり単体で使用するのはほぼ不可能である。
攻撃の核となる術に向けて複数の異なる属性の術を放ってそれらの力が混ぜ合わせて放つという工程自体は簡単に見えるが実際はそんな生易しいものではない。
そもそも術にも魔化魍の「属性」のように相性があり、その相性も関係なく術を合わせるということ自体がかなりの難度である。それが行える魔化魍は明らかに上位魔化魍や「魔化魍の王」といった並外れた力を持つ魔化魍だけであろう。
今回は幽冥が攻撃の核である術を放ち、鈴音がそれに向けて連続で異なる術を放って生み出した。

常闇
【私の知る限りこんな感じだな】

迷家
【うんうん。ありがとね常闇。おっと、そろそろ終わりだね。じゃ、まったね〜♪】

常闇
【また会おう】
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