2話連続投稿2話目です。この幕間はある魔化魍の持ち物がツクモガミ化して更に異常種へと進化するお話です。
まただ。
主人はその気持ちをいつまで胸に隠すのだろうか?
せめて、このもの言わぬ身体を自由に動かすことが出来ればと、何度思ったことか。
だから、風は願う。自由に動く身体が欲しいと。
SIDE◯◯
妖世館の一室。
そんな暗い部屋の中で大きな塊が動き出す。それは四つの脚で起き上がると身体を伸ばし、ブルブルと身体を揺さぶり眠っていた意識を覚醒させている。
塊が動くのを止めると今度は塊が光りだし、数秒経つと、そこには先程の大きさとは異なる小さな影が立っていた。
「さて、今日もやろう」
影の正体は乱風。
妖世館に住まう魔化魍の王の家族であるカマイタチだ。
そんな彼女の朝の日課。
それは自身の武器でもある3本の鎌の手入れだ。
食香の元から独り立ちし、当てもなく各地を回っていた。
本人は風の気ままにあちこち回っていたのだが、乱風はカマイタチ。親代わりだった食香が魔化魍の事情に詳しくなかったのが災いした。カマイタチはその存在を確認されれば複数の鬼が派遣してでも討伐しなければならないと言われる強大な魔化魍だ。
食香の元で暮らしている時は食香が鬼に見つからないように暮らしていたこともあり、鬼との戦闘経験が一切無かった乱風はたった3人の鬼に追い詰められた。
そんな危機の乱風は偶然通りかかった魔化魍に助けてもらい。カマイタチとしての戦い方と風系の術、擬人態の術などの役立つ術を教わった。そして、ある程度のことを学んだ乱風はまた旅をしようとした時、その魔化魍から餞別として渡されたのが3本の鎌だった。
そんなことを思い出しながら3本中2本の手入れが終わり、最後の1本を手入れしようとすると–––
「乱風、ちょっといいか」
外から聞こえる声に私は鎌を置いて急いで扉を開けるとそこには–––
「おはよう乱風」
私の
「おはようございます………どうかしました?」
「うん。今日はお客さんの予約も少ないから手伝いは大丈夫だからってことを伝えにね」
「そ、そうですか」
普段、私は野間さんのピザ屋で働いている。
忙しい時には、王の家族が入れ替わり立ち替わりで続々と来るために野間さんひとりでは回らないからだ。その時は私と憑の2人で注文や今日のオススメを紹介したり、ウェイターなどをして、野間さんとおやっさんが料理を担当する。お互いに料理の手伝いもしていたおかげでおやっさんはピザも焼けるし、野間さんも焼き鳥やおでんを作れる。
だけど、お客が少ない時は野間さん一人で対応できるために私の出番はないので、私を気遣ってかこうやって店に出なくてもいいと教えてくれる。
「分かりました。手伝いが必要でしたら………呼んでください」
「うん。ありがとう。じゃあ、仕込みの準備をするからこれで」
「あ…………」
野間さんはそう言って、店に戻っていった。
はあ〜…………どうして私は「手伝います」という一言を言えないのだろう。あの人の優しさに甘えてる訳ではない。仕事のこと以外であの人を前にすると私は恥ずかしさが勝って言いたいことを言えなくなってしまう。
はあー今日は手伝いがいらないと言われてしまったので何をして過ごそうかと部屋に戻ろうとすると–––
ビュン、ビュン
「誰だ!?」
誰もいない筈の部屋から聞こえた声の主を探したら直ぐに見つかった。鎌の手入れ用に置いてる机の上には見たことがない鼬の魔化魍がいた。鎌状になった先端の長い尻尾を持ち、光の一部を反射させるほど汚れのない銀毛の鼬の魔化魍。
「(いつの間に入り込んだ)」
いくら好いた相手との話の最中とはいえ、風の流れを知覚できる私から気配も全く感じさせず部屋に入り込むのは不可能だ。正体が不明な魔化魍の存在に私は警戒しながら、手入れ途中で机の上に置きっぱなしにした鎌を確認すると–––
「(鎌が1本足りない!?)」
手入れのために置いた鎌3本の内、1本がどこにも無いのだ。
鎌が1本無いところで残りの2本で戦えない訳ではないが、対面する魔化魍の身体をよく見ると見覚えのあるものが目に入った。
「(あの傷は!?)」
その魔化魍の右腹部をよく見ると黒い痣がある。
それは間違いなく私の持つ鎌に付いていた火傷跡と似た痣だった。ある魔化魍との戦いで相手の攻撃を防いだ際についてしまった焼け目。
すると私に気付いたのか魔化魍は私の近くまでとことこ歩き、私の直ぐ目の前でちょこんと座り込む。
【風はカマカゼ。主人とお話できる】
SIDEOUT
SIDEカマカゼ
妖世館の地下にあるとある一室。
かつては魔化魍の研究が行われていたであろう研究室。中にあった重要そうな物を選別して別の部屋に移し、伽藍堂になった部屋を改装し、和と洋の雰囲気が混じり合った部屋に替えた。そこでは昼と夜でやる内容が変わる。昼はドルフィンオルフェノクこと野間 茂久がピザや軽いイタリアンを提供し、夜には炭火焼オルグこと文左衛門が
そんな店の客は勿論、幽冥の家族である魔化魍たちである。
「へえ〜この子が乱風の鎌だった子?」
【はい。私の持つ3本の鎌の内のひとつがこのように】
主人が風を野間さんに紹介する。
一区切りついているのか店の中にお客となる家族はひとりもいない。
【初めまして野間さん】
「おお! えらいぞ」
そう言って風の頭を撫でる野間さん。それを少し羨ましそうに見る主人に焦ったく思う。
そこは素直に「撫でてください」とでも言えば野間さんは撫でてくれるだろうに。そんな主人を見て風は悩む。
【《どうにか主人と野間さんを二人きりにしないと)】
野間さんは昼の時間は大抵、この店で料理を出してるためにお客が来たら料理をとなってしまう。今は幸い昼飯の時間からかなり時間が経っているためにお客が来ることはないだろうが万が一もある。
産まれて間もないカマカゼは2人の邪魔が入らないようにするにはどうするべきかと考えているとひとつのアイディアを思い浮かべる。
【主人。野間さんと買い物に行ってみてはいかがでしょう。確か、野間さんが新作のピザの試行錯誤をする為に材料が足りない仰ってた筈です】
これはまだ魔化魍としての身体を持つ前に偶々、主人が風を野間さんの店に置いておつかいをしている時に野間さんの言っていた独り言だ。
野間さんは新しいピザ作りに余念がなく日々、新しいピザを考えては新作のピザの試食を主人に任せることが多い。
「ああ、確かに新しいピザのために買い物に行こうと思ったんだ。乱風、一緒に買い物に来てくれるか?」
【分かりました。少しお待ちください直ぐに支度をしてきます】
主人はそう言うと、店を出て自室に向かって行った。
そして、数分後。
普段の擬人態の時の服装とは違い、草原のような緑色のデールからアイボリーカラーのパーカーワンピースに変え、黒の長靴下に黒紐のスニーカーを履いている。
最近のトレンドを押さえた服装に正直、誰かの入れ知恵を感じるがそこはどうでも良い。
「お待たせしました」
「おお、普段の服装も可愛いけど、こっちも可愛いいよ」
「////////」
野間さんは下心とかは一切なく褒めたのだろうが、主人からすれば普段あまり聞くことがない言葉に顔を真っ赤に染めて下向きになっている。
「よ〜し。じゃあ行くか」
「……はい////」
赤くなった顔を見せまいと下を向きながらも野間さんと手を繋ぐ主人。野間さんは分からないが、少なくても主人はこれで多少は進展したと思いたい。
だが、主人の
如何でしたでしょうか?
ある魔化魍は乱風でした。そんな乱風が鎌を手にした経緯と乱風の恋模様(?)の回でした。
カマカゼの一人称は『風』です。
次の投稿は年が明けてからになりそうです。そんな次回の話は猛士視点で魔化魍(安倍家の魔化魍ではない)との戦いの話です。では次もお楽しみに!
よいお年を!
ーおまけー
迷家
【あれ? 今回はえらく早いね? まあ、そんなのは気にしない。では、おまけコーナーはっ「フゥ、なんとか逃げ切れました」じ………って、ナイちゃん!! なんで!! 世送に追いかけられてたよね!!】
「フフフ、私にかかれば時空を自由に行き来し、鋭角から出現して獲物を執拗に追い続ける猟犬相手だろうと逃げ切ってみせますよ」
迷家
【えっと、何それ?】
「私の親戚みたいなやつのことです。まあ、気にしないでください」
迷家
【ナイちゃんがここにいるってことは?】
「はい。再び私のターンです!!」
迷家
【まあ、そうなるよね。で………今回は僕が指定していいの?】
「まあ、連続で来てますし要望は聞きますよ」
迷家
【じゃあね。僕と同時期にツクモガミとして目覚めた。水底のサーヴァントを教えて】
「水底さんですね。分っかりました!!」
「ではでは、
【CLASS】ライダー
【真名】水底
【性別】女
【身長・体重】165cm・55kg
【地域】日本
【属性】中立・悪・地
【好きなもの】鋏刃、筑前煮
【嫌いなもの】鋏刃に手を出そうとする男、汚いもの
【ステータス】
筋力D 耐久A+ 敏捷B 魔力E 幸運B 宝具A+
【クラス別スキル】
対魔力(D)
一工程(シングルアクション)によるものを無効化する。魔力避けのアミュレット程度の対魔力。
騎乗(B)
大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、幻想種あるいは魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなすことが出来ない。
【固有スキル】
沈む怨嗟の囁き(B)
今まで殺した者の怨みや嘆き、悪意などのマイナスな感情を相手に浴びせて聞いた者の肉体を衰えさせ、精神を蝕む。
一心同艦(A+)
宝具『深海獣骨戦艦』が「擬人態の術」によるサーヴァント化に伴いスキルへと変化した。
ツクモガミ異常種ユウレイセンの特殊能力がそのまま名前の由来である。
操舵者と艦のどちらも本体であり、いずれか片方を倒したとしても数分経てば元に戻るのだがサーヴァント化に伴い、再生に掛かった数分がなくなり何処からともなく現れる。
魔蟹への御恩(EX)
魔化魍ではないただの艦だった頃、艦に恨みを持つ鋏刃に沈められなかった一生の恩。
もしも鋏刃が彼女を沈めていたら彼女は存在しなかった。そのことからどんなことがあろうとも鋏刃を裏切ることは絶対になく、鋏刃のピンチの際には本来あるクラスしか獲得できない「単独顕現」の代わりとしてこのスキルが使われて、ピンチの鋏刃の元に現れる。
【宝具】
開戦を告げる号砲(ウォータイム・アーティラリー)
ランク:A+
種別:対軍宝具
レンジ:20~40
最大補足:300人
由来:水底が参戦する戦いにおいて開戦を告げる最初の攻撃。
「擬人態の術」を解いて本来の姿であるユウレイセンの姿に戻り、自慢の砲塔から繰り出される集中砲火。
最初の攻撃でありながら相手に甚大な被害を与え、味方を優位に立たせたことが理由なのか相手との戦闘前にこの宝具を使えば強制的に相手を負傷させて、戦闘を優位に運ぶことが出来る。
幻魔転身(げんまてんしん)
ランク:B+
種別:対人(自身)宝具
レンジ:0
最大補足:1人
由来:二代目魔化魍の王 フグルマヨウヒが力の無い魔化魍を強くするために生み出した古の術。
使用者の深層心理にある成りたい自分の姿に変異し、使用者の幸運以外の全ステータスが上昇する。
水底の場合、鋏刃に手を出そうとした者を跡形もなく吹き飛ばす力とピンチの味方を助ける援軍。
「水底さんはこんな感じでしたね」
迷家
【ねえ。ナイちゃん】
「はい。なんでしょう?」
迷家
【ライダーって乗り物に乗っている人のことでしょ?】
「はい。ライダーは騎兵のクラスですね」
迷家
【じゃあ、なんで水底はライダーなの? 砲撃とかするんだから騎兵じゃないと思うけど】
「それがサーヴァントの変なところなんですよね」
迷家
【変なところ?】
「ひとつの例として言うなら双刀を使って戦う英雄がいるんですが、この人のクラスが何か分かります?」
迷家
【え? 双刀ってことは剣でしょ。ズバリ、セイバーじゃない】
「ところがどっこいこの人、アーチャーなんですよねー」
迷家
【え!? アーチャー!? なんで!?】
「この人、主武器が双剣なんですけどね。弓矢も使えるんですよ」
迷家
【えーそれアリなの?】
「アリ……としか言えませんね。まあ、水底さんの場合、本来の姿に戻ったら艦ですから。そういう意味でライダーのクラスに当てられたんだと思いますよ」
迷家
【不思議だね】
「ホント。不思議ですよ…………」
迷家
【ナイちゃん?】
「…おっと。ちょっと懐かしいことを思い出してました」
迷家
【そうなの? おろ、そろそろお別れだね。今日はここまで来年もよろしくねーー】
「ではみなさんサヨウナラ!!」