崩や他の魔化魍たち(白や黒、睡樹を除く)が小さくなれる事が分かって、1週間が過ぎた。
今では、家族全員色んな事をしている。
白は私の世話係もといメイド。土門はひなちゃんの遊び相手。鳴風はふらっと空を飛び、何かを白に伝えている。顎はそれ以来、見かけるのが少ないが白によると地下の改築をしているらしい。崩は庭で寝る事が増えた。睡樹は黒が山から取ってきた植物のガーデニングをしている。
黒は私とひなちゃんの着る服の洗濯係。羅殴は顎の手伝いやひなちゃんの遊び相手。飛火は私の所に来てご飯ねだりに来るなど色んな事をしている。
そして、今私がしているのは–––
「ここの奥に誰か居るんだね」
シュルルゥゥゥ
「白はなんかあると思う」
「この部屋は一度しか来てないのでハッキリ言えませんが、何かあるのは間違いないと思います」
白が睡樹を見つけた隠し部屋を探検している。
白は普段通りだが、睡樹は自分がここにいた時に散歩的な事をしていたので、何も知らない2人だけより、詳しく中を知っている者がいた方が良いだろうという事で白に連れてこられた。
「大丈夫なの睡樹?」
シュルルゥゥゥ
ツタの腕でサムズアップするが、頭の蕗の葉が少し萎れている。
白が睡樹から聞いた話によると睡樹はこの秘密部屋の奥にある研究室で洋館の男女らしき者が新種の植物の魔化魍を生み出す実験で生まれた魔化魍らしいが、当初の人間を餌にするという部分が目的のものとは違い、失敗作として植木鉢に封印されたが、館が揺れて封印の札が剥がれ、自由に動けるようになった。
だが、生まれてすぐに封印されたのもあって、思考は赤ん坊に近かったらしく、秘密部屋にあった書物や巻物を読み知識を得たようだ。
言葉が拙いのは産まれてから碌な会話をしたことが無いために声帯を司る部分が成長不足だったのが原因。
そして全ての書物や巻物を読んでしまい、白が来るまでの2年間は何もない所でじっとしていたせいか苦手な部屋らしい。
「まあ、あまり無理しないでね」
シュルルゥゥゥ
「王!! こっちに来てください!!」
白が少し奥の壁のところで呼んでいたので、向かうと何もない壁だった。
「何も無いけどどうしたの?」
「ここの壁に何か押せるものが付いてるんです」
そう言われて壁を触ってると埃や暗さでよく分からないが確かに押せるやつがある。
「本当だ」
確認出来たので早速押してみた。
ガコンと音が鳴り、壁がどんどん形を変えて、重そうな黒い扉が現れる。
「王は少し下がってください、何があるか分からないので。睡樹、王をお願いします」
シュルルゥゥゥ
そう言って白は黒い扉開ける。ギギギっと耳障りな音を出して、扉が開く。
睡樹の後ろから扉の中を見てみたが、中には様々な道具や秘密部屋にあった書物や巻物より古そうな巻物がいくつかあった。
「大丈夫です」
「まるで、倉庫みたいだね」
そう思いながら、部屋に入ると道具が乱雑に置かれてる中で目立つ傘を見つける。その傘に向かって歩き始める。
SIDE◯◯
あああ、久々の光だ………だけど、結局気付かれず………またこの暗闇に残されるのか。
僕を作った創造主たちは失敗したという理由で僕を封印してこの倉庫に閉じ込めた。それからはたまに開けられるが封印されてるので動くことも出来ずにただジッと眺めるしか出来ない………そう思ってた。
「何だろう? この傘?」
えっ?
SIDEOUT
「何だろう? この傘?」
道具の置かれた中で石突きにコウモリの頭を付け、親骨が土門とは違う蜘蛛の脚になっている傘を私は手に取る。よく見ると傘の柄のほうによく分からない赤い文字で書かれた白い札を見つける。何かは分からないが、札をベリっと剥がす。
札を剥がした途端に傘が急にブルブル震え始め、おかしな様子に気が付いた白が傘を持ち、倉庫の外の部屋に向かって投げた。
傘は徐々に形を変えて、落ちる頃にはその姿を変えていた。
それは6つ目のコウモリの頭に蜘蛛の脚を模した翼を持ち、下半身はほぼコウモリの魔化魍だった。
カラララララ
コウモリの魔化魍は自分の身体を見て、何もなかったのか嬉しそうに声を出す。
「あれは!」
「あの魔化魍が何なのか分かるの?」
「はい。あれはカラカサオバケです」
「カラカサオバケ………」
白の話を聞きながら、カラカサオバケのことを思い出していた。
カラカサオバケ。
傘お化け、からかさ小僧、傘化け、一本足などと色んな名前を持つ傘のポピュラーな妖怪又は付喪神の一種。
1つ目の付いた傘が1本足で飛び跳ねてる姿、傘から2本の腕を生やした姿、2本足や長い舌など文献によって姿が異なる。夜中に歩く人間を驚かすのが好きで特に実害は無い。
「唐傘………」
「であり………ん、何か言いましたか王」
「この子の名前だよ、そう唐傘」
すると唐傘がこちらを向いた。
「おいで唐傘」
SIDE唐傘
「おいで唐傘」
唐傘………………僕の名前。
初めてだ、ずっとこの倉庫に置かれて何年も経った、いつかは僕を見つけてくれると何度も願い、その度にそんなものは来ないと諦めていた僕を笑顔で呼ぶのがいるなんて。しかも、ただの人間じゃない、気配でわかる人間だけど魔化魍の王が僕を呼んでくれている。
僕は王の近くまで行き、頭を下げる。
「ふふ、いい子いい子」
微笑みながら僕の頭を撫でてくれる温かい手に僕は久しく感じる眠りに付いた。
SIDEOUT
唐傘の頭を撫でてるとやがて身体が変化しさっきの傘に戻る。
「王、大じょ………」
「シーー、今は眠ってるから静かにね白」
「分かりました」
傘に戻った唐傘を撫でてると、後ろから何かに抱きつかれる。
「なあに睡樹?」
シュルルゥゥゥ………
睡樹が寂しそうに声をあげた、まるで自分も撫でてと言うように。
「甘えん坊なのね、睡樹は」
そう言いながらも私は睡樹の頭を撫でる 。
羨ましいそうに見てる白を面白く思いながら、新しい家族が増えたことに私は喜んでいた。
如何でしたでしょう。
今回は茨木翡翠さんのカラカサオバケを出させてもらいました。アイディアありがとうございます。
次回は鬼のサイドを少し書いて、幽冥のサイドを書こうとも思います。