人間だけど私は魔化魍を育て、魔化魍の王になる。   作:創夜叉

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こんばんは。
更新が遅れて大変申し訳ございません。さあ、いよいよ九竜編の始まりです。
今回はオリジナル魔化魍視点から幽冥視点の予定です。
では、どうぞ!!


九竜編
記録百弐拾肆


SIDE◯◯

 水晶のように透き通った壁に囲われたある一室。

 そこは部屋全体が無数の氷に覆われていて、氷から発する冷気によって部屋は霜付き、その霜のせいで本来なら部屋の外からでも透き通って見えるはずの部屋の中は見えなくなっており、外部を拒絶するかのようだった。

 そんな部屋の氷の中心部ともいうべき場所に一つの大きな影がいた。

 

【ううう、ひぐっ】

 

 幼子のように泣く影は、氷の中心で身を縮み込ませる。

 すると辺りの氷は少しずつ伸びていき、何も無かった床には新たな氷が伸び始めていく。

 

 これらの現象はすべて、この影、いな魔化魍がやっていることだ。だが、やりたくてやってるのではない。やりたくなくても止める方法を知らない。つまり、自身の能力を制御出来ていないのだ。

 

【ひぐっ、う、ひぐ……】

 

 魔化魍の声に呼応するかのように周囲の氷は伸びるだけでなく太く大きくなっていく。

 そのまま伸びていけば氷の先端が魔化魍に突き刺さるのだろうが、だが氷は魔化魍の近くまでくると動きは止まる。それ見た魔化魍が氷に近づこうとすると、尖った氷の先端はボロボロと崩れて、結晶の山と化す。

 

【ううう、なんで? ボクを死なせてくれないの!!】

 

 それを見た魔化魍が叫ぶ。

 魔化魍が言ったようにこの魔化魍は自らの命を断とうとしている。だが、それは出来なかった。

 

 最初は壁に頭をぶつけて死のうとした。ある程度の距離を離れて壁に向かって走ろうとした次の瞬間、氷が脚全体を覆って魔化魍の動きを止めた。魔化魍は氷を壊そうとしたが、そもそも動こうにも動けず、死ぬ気が無くなると氷は溶けた。

 

 次は身体を傷付けて全身から血を流して死のうとした。だが、また氷が邪魔をした。

 自分の身体に爪が刺さりそうになると、その場所が氷に覆われて、その爪を弾いた。違う場所を刺そうとすればそこが氷に覆われる。

 

 その次は運ばれた水の容器に顔を突っ込んで溺死しようとした。しかし、氷で失敗した。

 顔が水に突っ込もうとした直前に水は一気に冷えてシャーベット状の雪に変化した。いくら顔を突っ込んだところでシャーベットのようにジャリジャリとした雪で呼吸を止めることは出来なかった。

 

 なら食事を抜いて餓死しようとした。

 いつも扉の前に置かれる食事を無視して、魔化魍は眠りについた。だが、次の日に目を覚ませば、自身の前に広がる食事によって発生した残骸。そして、口元にこびり付いた肉片。眠っている無意識の間に魔化魍は部屋の外にある食事を持ち込んで無意識に喰らっていたのだ。

 

 何度も死のうとした。だが、何をしようとしても自分の意思を無視して動く氷あるいは無意識で行われる自分の行動によって死ぬことが出来なかった。

 失敗が続いた魔化魍はもう何もする気が失せた。どうせ死のうと思っても失敗する。だから部屋の中で何もせずに過ごしている。

 しかし時折、今のように生えてきた氷を体に刺そうと動けば、氷は勝手に崩れて刺さることのない無害な結晶に変わる。そして、失敗するその度に声を上げて泣く。

 泣き疲れて眠り、無意識によって勝手に食事を摂り、死のうと動く、失敗する。ただそれの繰り返し。

 

【なんで死ねないの!! ボクなんかいたって周りに、うう】

 

 そんな魔化魍の声に反応するふたつの影が部屋の外の扉の前にいた。

 

【…………………】

 

【どうした?】

 

あの時(・・・)のことをすこし】

 

【そうか】

 

【今でも思うんです。もっと違う方法だったらあの子は傷つかなかったのではないかと】

 

【過ぎた過去を言っても意味がない】

 

【……………そうですね】

 

 そういうとふたつの影は扉から離れて奥の方へと消えていった。

 

SIDEOUT

 

 中部地方の猛士との戦いを終えて妖世館に戻ろうとした幽冥たちだったが、狼鬼との戦いで帰還に使う『転移の札』を破損し、更には狼鬼の招集によって中部地方から関東地方につながる道全てに過激派に属する鬼たちが待ち構えているため、幽冥たちは鬼との戦闘を避けて妖世館に帰るために荒夜と狂姫の知り合いがいるという宮城へ向かうことになった。

 

 そして、荒夜の案内で猛士の鬼からの妨害もなく宮城県に無事に着くことができた。

 

荒夜

【あともう少しで目的の場所に着きます】

 

 先頭を歩く荒夜が後ろに歩く幽冥たちに声をかける。

 

【しかし鬼共は現れなかったでやすね】

 

荒夜

【鬼も知り得ない道を使いましたので、余計な戦闘はしたくありませんでしたので】

 

美岬

【まあ、その意見には賛成だよ。ただでさえも荷物(・・)があるし】

 

 そう言った美岬の視線の先には拳牙の背に拘束された鬼こと労鬼がいた。

 拳牙は鬼と戦った時に、強者として強くなる可能性のある鬼がいると殺さずにそのまま放置して生かしてしまうというのは、相棒でもあった大尊から聞いていたが、まさか捕虜として連れてくると思わなかった。

 

拳牙

【それは申し訳ございません。ですが、鬼を連れているのは美岬も同じ筈では】

 

 拳牙の言う通り、美岬も戦っていた鬼、吹舞鬼を捕虜とし単凍の持つ魚呪刀 待狆穴子(まちんあなご)を使って拘束し、不動に背負われている。

 

「美岬が連れて来た鬼はちょっと事情があってね」

 

拳牙

【事情ですか?】

 

「今の状態だと話しづらいからね。落ち着いたらみんなにも説明するよ」

 

拳牙

【分かりました】

 

 何か言いたそうな拳牙だったが王にこう言われては何も言えなかった。

 渋々、納得した様子の拳牙に申し訳なく思いながら幽冥は、不動の背にいる吹舞鬼を見る。

 

 不動の背にいる吹舞鬼の正体は魔化魍クビナシである。戦いが終わって宮城へと向かう前に美岬からの話を聞いて、吹舞鬼の正体を知った私は困惑した。

 何故、魔化魍であるクビナシが鬼として活動して同族でもある魔化魍と戦っていたのか理由は分からない。だが美岬は思い当たる節があるのか、吹舞鬼と戦った幽冥や美岬は一緒に戦った家族に口止めをし、吹舞鬼の正体を隠してそのまま連れて来たのだ。

 

荒夜

【王、そろそろ目的地に………!!】

 

ノォォォォォン

 

荒夜

【伏せてください!!】

 

 何かの声に反応して荒夜は全員に向かって叫ぶ。そして、荒夜が叫んだと同時に晴れた空から突然と赤い塊が降り注いでくる。

 

「っ!!」

 

美岬

【何これ!!】

 

ジャラララアアア

 

鈴音

障壁!!】

 

 迫る赤い塊に各々が対応する。

 幽冥は札で赤い塊を粉々にして、荒夜や美岬は刀で斬り飛ばし、骸は骨の尻尾で叩き落とし、鈴音は術で作り出した障壁で家族を守り、違う術を使って赤い塊を吹き飛ばす跳がその正体を叫ぶ。

 

【噴石でやすか!!】

 

 噴石、つまりは火山弾である。

 周囲に火山はない筈なのに飛んでくる噴石。しかも、無造作に飛び散るというより決まった範囲に目掛けて降り注いでくるという印象を覚える。

 

荒夜

【こっちだ!!】

 

 荒夜が私たちから離れるように刀を握りながら駆ける。荒夜の声に反応するかのように火山弾の雨は離れて駆ける荒夜を狙うように上から降り注ぎ、降ってくるそれらを荒夜は心討(しんうち)の峰と鞘を使って打ち払っていく。

 

荒夜

【久々だというのに随分な挨拶ですねツルベオトシ!!】

 

 荒夜の声に応えて土煙を払うように現れたのは背中が活火山の甲羅で天辺の穴からボコボコと溶岩を垂らし、頭に二本の角を生やした鰐亀の姿をした魔化魍だった。




如何でしたでしょうか?
先ずはここまでです。
次回は、現れた魔化魍ツルベオトシとの会話を入れての、荒夜の言っていた夫妻の魔化魍を出そうと思います。

ーおまけー
迷家
【イエイ、おまけコーナーの時間だよ。本当は跳が連れてくるみたいだったけど、何か向こうが忙しそうだったから。今回は僕が前に声かけた子を呼んできたよ。さあさあ、テキパキ行っちゃいましょう! 今回のゲストは〜こちら!!】


【初めまして、キュウソの蝕です】

迷家
【そう。今回は我が家のマッドメディスンクリエイターこと蝕です!!】


【誰がマッドメディスンクリエイターですか。私はほんの少し薬が好きなだけですよ!】

迷家
【いや、その言い方だとアブナイ薬をやってる人の常套句みたいに聞こえるよ】


【ごほん! それでどんな質問ですか?】

迷家
【おっと、本題を間違えるところだったね。じゃあ、質問は〜】

迷家
【今まで作った薬の中でヤバいのってどんな薬?】


【ヤバい薬ですか?】

迷家
【そう。ほら、前に鹿児島支部で使ってた壊楽とか葬嫉みたいなやつ】


【え? アレがヤバいやつなんですか?】

迷家
【へ?】


【え?】

迷家
【いやいやいや。えっ、蝕、アレ危ない薬じゃないって言うの!!】


【ええ。壊楽葬嫉は私の中での危険度を10段階評価で言うところの5ってところですね】

迷家
【ええええええ!! アレが5って、じゃあアレよりもヤバい薬があるの!!】


【まあ、ありますね】

迷家
【えええ、アレよりもさらにヤバいのが】


【せっかくですから一つだけ紹介しますね】

迷家
【いや、今日のところは〜】


【いえいえご遠慮なく。じゃあ早速】ゴソゴソ

迷家
【え〜っと蝕さーん】


【あ、ありました。コレです】

迷家
【うえっ、何そのいかにもな色の薬】


【コレは私が三徹の徹夜と徹夜のテンションによって倫理と常識を捨ててしまって誕生した劇ヤバ薬の一つ、その名も………………転心(てんしん)

迷家
【どんな薬なの?】


【まあ、ザックリ言うのでしたら性格を変えてしまう薬ですね】

迷家
【えっと、つまり】


【そうですね。前に捕まえた焙鬼って覚えていますか?】

迷家
【ああ、蝕が薬漬けにして廃人同然にした】


【はい。その鬼です。薬の実験用として連れてきたのは良かったのですが、ちょっと薬の効き過ぎで廃人同然だったので、その鬼をどうにかしようと使ったのがこの転心(てんしん)ですね】

迷家
【焙鬼と戦った縫や捕虜の鬼によると嗅覚が秀でた猪突猛進で短気そうなオラオラ系な感じって聞いたけど、今じゃお淑やかっていうか、かなり大人しい普通な性格になったみたいだけど、その薬って狙った性格に変えれるの?】


【それがですね。この薬は確実に狙った性格にするのではなく、ランダムに性格を変えてしまう薬なんです】

迷家
【へ?! ランダム! ってことはどんな性格になるのか分からないの?】


【ええ。しかも性格が一度変わるとまた薬を使って性格を変えないといけないし、しかもその時に元の性格に戻るかは分からないから、元の性格になるまで同じことを繰り返さないといけないし、おまけに薬を使って性格を変えるのに薬を使ってから三日経たないと使えないし】

迷家
【なんで三日後?】


【それがこの薬を作るのに使った材料の中には副作用が少しヤバいものがいくつかありまして、もしも三日も待たずにこの薬を使えば………】

迷家
【つ、使えば?】


【運が良ければ性格が変わるだけで済みますが、その時に変わる性格はほとんどイカれた性格になる確率が高いですし、最悪の場合は廃人となって一生そのまま……】

迷家
【ひいいい!! ちょっと、そんな危ない薬早く処分してよ!!】


【処分したいのも山々ですが、割とこの薬も使い道がありますし、それに使ってる材料が材料なもので処分が難しいですし】

迷家
【じゃあ、間違っても王に掛かることがないようにしてよ】


【まあ、今はあんな事が起きない限り、迂闊に使わないように空間倉庫の奥底に封じ込めるように仕舞ってるから大丈夫です】

迷家
【ホントに気をつけてよ…………………はあ〜、なんで軽い質問が下手するとヤバい物があることが発覚することになるんだろう……………あ、ごめんね今回はここ迄だよ。じゃ、次回もよろしく、蝕もお疲れ、部屋に戻って大丈夫だよ。はあー戻ったら少し寝よう】


【……………はあ〜、本当はもう少し変な性格になってくれれば薬の実験台として使ったのに………残念だったな。まあ、また探せばいいか人間(モルモット)は幾らでもいるし】
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