色々とドタバタがありまして、いつもよりもかなり時間がかかってしまいました。申し訳ございません。おまけにそこまで長くありません。
そんなわけで、今回は幽冥が引き篭もっている魔化魍の元に向かう話です。
ノビアガリの案内で歩いて数分経った。
全てが水晶のような壁の九竜宮は内側からでも外の景色が見える。まるで水族館のトンネル水槽を歩いてるような気分になる。
それにしても海の中にあるということもあり、てっきり劇場版の響鬼に出たオロチが首領をしていた血狂魔党の本部のように建物内も海水が満ちているのかと思ったけど、そんな様子はなく。空気が通っている。
「ノビアガリ、質問聞いてもいいかな?」
私の声に反応してノビアガリは歩くのを止めて、長い首を曲げてこちらに顔を向ける。
【ええ。どのような質問でしょうか? 私が答えられるものは答えます】
「この九竜宮は海の中なのに空気があるのは他の魔化魍のため?」
【ええ。流石ともいうべき、ご慧眼です。その通りでございます。
本来、この九竜宮はオロチ種とオロチ種の番となった魔化魍、オロチ種の血を引く幼体、そしてオロチの童子と姫のみにしか立ち入ることの出来ない場所で、この宮内も本来は海水で満たされていたのですが、あの子を保護したクズリュウ様が側で見守るためにこの九竜宮にあった全ての海水を抜き、新鮮な空気を術で作り出したのです】
ノビアガリの話を聞きやはりと思った。
劇場版の響鬼とお姉ちゃんから聞いた話によるとオロチ種の魔化魍は海に生息している魔化魍で、同じ海に暮らす魔化魍や人間を喰らって成長するとのこと、そんな魔化魍が自分の住処ともいうべき場所をわざわざ地上と同じように空気を満たすのは、クズリュウの弱体化に繋がる。
そんな弱体化をしても構わないほどにその魔化魍を心配してるのだろう。
【他に聞きたいことはございますか?】
「この九竜宮はクズリュウやアシュラ、それにツルベオトシやノビアガリ以外にも魔化魍がいるの?」
【はい。現在、この九竜宮にはクズリュウ様の旧知の客人の魔化魍が三体、居候が四体、あの子の診察のために呼んだ三体がおります】
「ううん?」
今、ノビアガリの紹介に変なのが混じっていたような気がする。聞き間違いかな?
【ん? ああ、居候のことですか?】
あ、聞き間違いじゃなかったみたいだ。
【居候たちについては多分、後ほど会うことになるでしょうから。その時を楽しみにしといてください】
そう言って此方に向けていた頭を前に戻してノビアガリはクズリュウに頼まれた案内係として再び歩き始める。しかし、客人に居候、そして保護した子の診察に呼ばれた魔化魍か…………話し合いが終わったらクズリュウに紹介して貰おうかな。
そして、ノビアガリはある扉の前に着くと此方に身体を向ける。
【ここがその部屋です】
ノビアガリは紹介を終えると扉から離れて、遠くの位置に立ち、それを見た私は扉の前に立つ。
扉はこの九竜宮と同じ水晶で出来て透き通ってる筈なのだが、水晶の扉、いや正確にいうのならその扉に繋がっている部屋全体が白くなって中の様子が見えずらい。だが、その理由は扉の前に来て直ぐ分かった。それは部屋の中から漏れているこの冷気だろう。
この冷気によって部屋周りは冷やされて霜が張り、透き通って見えるはずの水晶の壁は見えなくなっていのだ。
取り敢えずは中にいるであろう魔化魍と話すために扉にノックをしようとしたら–––
【誰?】
扉の前に立った私たちに気付いたのか中にいる魔化魍の声が中から部屋の中から聞こえてくる。
「私は魔化魍の王になる安倍 幽冥。君と話がしたいの」
【はなし、そんなの必要ない。ボクは誰とも関わりたくないんだ】
そんな魔化魍の言葉に応えるように扉からさらに強い冷気が漏れ出て、周辺の霜がさらに広がる。
「君のことはクズリュウから聞いた」
【っ!!!】
「色々とあったのも聞いた。でも、私は–––」
そう言って扉にドアノブに手を掛けると同時だった––––
【入んないでよ!!】
中の魔化魍の言葉と共に先ほどの冷気とは比べ物にならない冷気によって、扉から氷柱と氷塊が突き出すように生えてくる。
「っ!」
【「王!!」】
氷塊の一部が腕を刺し、そこから血が滲み出る。後ろにいたノビアガリが脚先から術で生み出した水で私の腕から溢れる血を洗い流し、赤がタオルを取り出し、私の怪我をした腕に巻き始める。
【っ………もういいでしょ。ボクと関わると今度は腕だけじゃすまないよ。だから二度と僕に関わらないで!!】
私が怪我したのに反応してか一瞬詰まるも、すぐに否定の言葉を言う。中の魔化魍は部屋の内側に戻った。
「王、そこの無礼な子にちょっとお仕置きをしてもいいでしょうか?」
怪我した私を見て赤は自身の本性である妖姫の姿に戻ろうとする。魔化魍を保護している側であるノビアガリも何も言わないのは、主人と同等の存在である魔化魍の王の私の怪我は流石に擁護しずらいからだろうか。だが–––
「赤、やめなさい」
「しかし」
「いいから。私に任せて」
「かしこまりました」
私の言葉を聞き、赤は落ち着いたのか本性に戻ろうとした身体を止めて人間の姿に戻った。
私はノビアガリの方に顔を向ける。
「ノビアガリ、ここの扉って壊れても直る?」
【? ええ。クズリュウ様の力によって多少の損傷は修復可能です………しかしなぜですか?】
「なぜって……………それは勿論こうするからだよ!!」
そう言って私はシュテンドウジさんの力を腕に宿し、目の前の氷柱と氷塊に覆われた扉に向かって思い切り振り抜く。
振り抜かれた扉は、傍から見たら見た目は普通の人間の腕から繰り出されたパンチによって扉は氷もろとも砕け散る。
【「えええええええええええ!!」】
私のやったことに驚愕の声をあげる赤とノビアガリを無視する。
部屋全体が凍っていたから下手したら扉以外も壊れるかと思ったけど、シュテンドウジさんの力を借りたおかげで扉と氷だけ壊せたから問題なし。
「よし」
「よし、じゃないですよ王。何をしているのですか!!」
【そうですよ!! 確かに多少の損傷は修復可能と言いましたが、だからといって扉を壊すなんて!!】
「でもこのままじゃ、あの子ずっと閉じこもるだけだから。多少強引でも話をしないといけないんだよ」
「ですが、王」
「赤とノビアガリは部屋の外で待ってて、こういう話は一対一の方が良いからね」
「あ! 王!!」
そう言って赤たちを置いて、無理やり入った部屋の中は無造作に生えた氷だらけの部屋で、その中心には–––
【えっ……………】
上半身が氷に覆われたマンモスのような大型魔化魍が私のやったことに理解出来ず、宇宙猫顔を晒すのだった。
如何でしたでしょうか?
話を聞く気がないのなら話を聞かざるおえない状況にしてしまえばいいと、そういうわけで次回はそんな幽冥と魔化魍のお話と別行動した家族視点、行動を始めた猛士サイドを書こうと思います。
次話はなるべく早くに書いてあげられるよう努力します。それでは、次回をお楽しみにしてください。
ーおまけー
迷家
【はーーい。おまけコーナーの時間だよー♪】
迷家
【今回のゲストは此方!】
崩
【今回は我か?】
迷家
【幼体魔化魍術指南役こと崩です】
崩
【我にそんな役職はなかったはずだが?】
迷家
【今、考えたからね】
崩
【しかし、名の響きはいいな。王から許可が貰えたら名乗らせてもらおうかの】
迷家
【おお、好評。じゃあ早速〜質問。崩のおじいちゃんって、どんな魔化魍?】
崩
【我の祖父か…………我の祖父はオトロシ異常種ゲンブという魔化魍でな】
崩
【長い時を生きたオトロシが至る異常種でオトロシ全種の中でも術による戦闘を得意とするんじゃ】
迷家
【術特化ね〜他にはなんかあるの?】
崩
【本当かどうかは定かでは無いが、100年ほど絶食出来る体質と北方の位置にいる限りあらゆる攻撃を無効にする力、オトロシ種のみ自由に呼び寄せられると聞いたことがある】
迷家
【崩のおじいちゃんって、やっぱり厳しかった?】
崩
【厳しかったな。だが、厳しいながらも優しさもあった。幼少の我は術は嫌いでな。よく祖父の術の修行から逃げていたものだ。
だがある時に祖父に諭されてな、我がこうやってお前たちのような小さい子たちに術を教えられるのも全ては祖父のおかげだ】
迷家
【へえ〜。そういえば前に崩のおじいちゃんって先先代の王であるユキジョロウ様に仕えてたんだよね。どこで知り合ったの?】
崩
【我も祖父に詳しく聞けたわけでは無いが、腐れ縁と仰っていた】
迷家
【腐れ縁?】
崩
【我が知っていて語れるのはこれくらいだ。では帰らせてもらう】
迷家
【え? あ、ちょちょ、ちょっと!! ねえ!! あ〜あ〜、帰っちゃったよ。
あ、ごめんね今回のおまけコーナーはこれまで、また次回をお楽しみにね〜♪】