土門たちの餌を早く手に入れないとまずいな。
前に食べさせたのが1週間くらい前だから、かなりの餌が必要になる。白や黒に頼んで、たまに
グルルルル
土門が私の足元に来て、腹が減ったと訴えるように脚を伸ばす。
こんな姿を見ていても私には何も出来ない。腹は満たされことはないが、少し落ち着くように土門の身体を撫でる。
はあ〜この館に誰か近づいて来て、それを餌に出来れば良いんだけど。
「王、報告です」
白が部屋の扉を勢いよく開けて中に入る。なんか慌ただしいけど。
「唐傘からの報告で………鬼が来たと」
ここに暮らして1ヵ月くらい経つが、今まで鬼と戦った事は無かった。
戦闘だとしてもひなちゃんを拐おうとしていたオジサン達だけなものだ。シュテンドウジさんが言っていたが、私はいずれ魔化水晶を集めなければならない、集めるためには鬼と戦わなければならない。
今回のコレは鬼との戦闘を経験していないみんなに戦闘を経験させる良い機会ではないか。
「白……………鬼の数は?」
「唐傘の報告によると2人だそうです」
2人か4人ずつで相手をすれば良いかもしれない。
「白、みんなを呼んで………鬼と戦うよ」
「分かりました」
SIDE白
「黒、そこのシーツを取ってください」
「コレカ?」
黒は、洗濯カゴから洗いたてのシーツを取り出し、それを受け取る。受け取ったシーツを広げるように物干し竿に掛ける。
今日は良い天気なので早く乾くでしょう。
「うん?」
何かが私の服をグイグイ引っ張るので後ろを向くと唐傘がいた。
この子と出会って1週間くらい経つ、初めは王と私、土門、鳴風、顎しか居なかったのに今では、崩、睡樹、黒、羅殴、飛火、ひなちゃん、唐傘とどんどん増えていき、賑やかになったと思う。
それよりも唐傘がなんか報告したいようですね。
唐傘は超音波を使って、半径50mまでなら誰がいるのかを察知する能力を持ち、館に近付く侵入者の報告を私に言うように頼んでいる。
普段はビクビクして、ハッキリしなさいと怒るたびに小さくなるように反省するのだが、今の唐傘は普段のビクビクした雰囲気ではなく緊急事態が発生して慌てる兵士に適確な指示を出す上官のような顔をしていた。
「何かあったんですか?」
カラララララ
「何ですって!?」
唐傘からの報告を聞き、急いで王のいる部屋に向かって走る。そして、扉に着きノックもせずに勢いよく扉を開ける。
「王、報告です」
部屋に入ると王が土門の身体を撫でていた。おおかた、土門が腹が減ったと王に餌の催促をしに来たが、あげるものも無かった王は空腹は紛らわすために身体を撫でてたのだろう。
羨ましいな……………って、今は土門のいた理由を考えて羨ましがってる場合では無かった
「唐傘からの報告で………鬼が来たと」
土門を撫でた手を止め、王の周りの空気が冷たくなってきた。
「白……………鬼の数は?」
「唐傘の報告によると2人だそうです」
王はそれを聞き、土門を撫でていた手を顎に当てて何かを考え込む。少しすると手を顎から離して。
「白、みんなを呼んで………鬼と戦うよ」
「分かりました」
私はみんなを呼ぶために王の部屋から出た。………というよりも王の顔が怖かった。
いつも我らに微笑んだ顔を向ける王では無かった。王の両親と言っていた者を殺すときよりも殺したそうな顔をしていた。
そして私は王に言われた通りにみんなを呼びに行った。
SIDEOUT
SIDE◯◯
関東地方千葉支部に所属している歩の情報でここ最近、魔化魍を連れた少女がいろんな場所で目撃している情報が渡された。そのために千葉支部はその少女を保護して魔化魍を討伐しろと命令を出した。
「さっさと歩け、この愚図が」
私の後ろで偉そうに命令しているのは同僚の角であり、千葉支部の支部長がいない時の代理支部長となった悪鬼。
幼少の頃に両親を魔化魍に殺され、魔化魍に対しての恨みで猛士に入り、鬼となるが今の立場に酔いしれてるのか傲慢な性格となり、私の胃を困らせる人だ。
正直言って、私は魔化魍に対しては悪い感情は持っていない。なぜなら、魔化魍は食べてるだけなんだからね。人間だって生きていくために牛とか、豚とか、鳥とか、魚とか、他の生物を食べて生きているんだから、魔化魍からしたらそれが人間だったってだけ。
私は元々、千葉支部の銀だったんだけど8人の鬼の子孫なのだから鬼になれと言われ、角に移っただけなのだ。
「いいか、慧鬼。魔化魍を見つけたら即殺せ!!」
はあ〜悪鬼のこの性格にはもうコリゴリだ。
私は魔化魍の研究をしていたいだけなのに。
SIDEOUT
館の外に出ると、みんな集めっているみたいだ。白と黒は後ろに立っている。
「みんな、今ここに鬼が近づいている」
ピィィィィィィ ギリギリギリギリギリギリ
ノォォォォォン シュルルゥゥゥ ウォォォォォォォ
コォォォォォン カラララララ
土門は知っているから吠えてないが、他の子たちはみんな殺気立っている。
だけど、みんなを鎮めるように手をあげて、吠えるのを辞めさせる。
「みんなも分かってると思うけど、魔化魍は鬼の敵。それは長年続く歴史みたいなものだけど、今は私やみんながいる。各々協力して、鬼を無力化した後に私の元に連れて来て」
「土門、鳴風、崩、羅殴は男の鬼の方に行ってください。顎、睡樹、飛火、唐傘は女の鬼をお願いします。殺さずに王の元に連れて来てください。できれば生きて連れて来て欲しいのですが、連れてこれないなら喰べても結構です」
「デハ、行動ヲ開始シテ下サイ」
黒の言葉で土門たちは行動を始めた。
土門と羅殴は鳴風の上に乗って空を飛んで行き、崩は頭と手足をしまって甲羅の状態で滑っていく。
顎は穴を掘って潜り、睡樹は顎の後ろからついて行き、飛火は傘になった唐傘の柄に掴まって、風に乗って空を飛んでいく。
SIDE慧鬼
「もうすぐ館だ。さっさと動け」
はあ〜もうやだ。とっとと終わらせましょう。
私は服の中に仕舞ってあった変身鬼笛
「悪鬼!」
「慧鬼!」
悪鬼の身体に土が纏わり付くように姿を変えた。
一般的な鬼より少し大きい鬼面、頭部が茶色で縁取りされていて真ん中に三日月状の角があり、身体に弦に似た線が肩から腰まで右に入っている鬼 悪鬼に姿を変える。
私の身体の周りが吹雪いて、私の身体を変える。
鬼面とは違う狐の面が右側頭部に付いており、頭部が水色で縁取りされていて後頭部に狐の尻尾を模した角が2本生えてる。胸元に面とは違った狐の顔が描かれた鬼 慧鬼に姿を変える。
「慧鬼後ろから援護しろよ」
「今、動くのは……………って話を聞いて下さい」
すると、悪鬼の後ろから何かが迫ってくるのに気付く。
「悪鬼後ろ!!」
「なっ!!」
悪鬼は当たる直前に躱して、襲撃者を見る。
ピィィィィィィ
それは一般的なイッタンモメンと違い、少し小さいから幼体だと思う。そして背中に同じ幼体のツチグモとヤマビコが乗っている。
その後ろからオトロシが来て、頭と手足を出して、私たちを睨む。悪鬼はそのままオトロシ達に向かっていく。
「魔化魍………魔化魍殺す殺す」
私は先走る悪鬼を援護するために音撃管
盛り上がった地面を見ると、オオアリが頭を出していた。オオアリに向けて撃とうとすると盛り上がった地面から植物のツタが出てきて私の四肢に絡み付く。
そして、空からは奇妙な傘に掴まっている狐の魔化魍が私に向けて火を吹く。
火! これは好都合。
そう思って私の四肢に付いてるツタに当たるようにツタを掴んで火の軌道に合わせる。火はツタに着火し、燃え始める。すると、ツタが出てきた地面から蕗の葉を乗せたハエトリソウの顔をした魔化魍が出てきた。
奇妙な傘に乗った狐の魔化魍は地面に降りると、奇妙な傘は6つ目のコウモリの頭に蜘蛛の脚を模した翼の魔化魍に姿を変える。
魔化魍に気を取られてた所為か悪鬼は消えた。
実質この魔化魍たちによって、私たちは分断されたようだ。魔化魍はここまで策略めいた行動はしない。おそらく最近噂されている『魔化魍の王』がこの魔化魍たちの統率者なのだろう。
これは非常に厄介な戦いになりそうです。
如何でしたでしょうか?
話にもありましたが、鬼の1人が生き残ります。話の流れ的にどちらが生き残るのかは分かると思いますがあまり気にせずに次回まで待ってください。