人間だけど私は魔化魍を育て、魔化魍の王になる。   作:創夜叉

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今回は王が人質に・・・
白と黒が率いる魔化魍一家の王奪回作戦が開始する。


記録弐拾弐

 何故、こんなことになったのでしょう。

 

「おい、お前ら早く逃走用の車を3台よこせ! さもないとこのガキの頭をぶち抜くぞ!」

 

 私の頭には黒い塊もとい拳銃を突きつけられ、廃工場の3階の窓近くで私を抱えた犯人が下にいる警察に向かって言う。

 正直言って、私って前世から運が非常に悪いんです。

 まあ、電王の彼よりは運はいい方だと思う。財布を急に取られたり、絡まれたり、ビー玉で転んだりは無いけど、拉致られたり、通り魔に刺されそうになったり、コンクリート漬けになりそうになったりって色々あったな。

 

 彼女は電王の彼よりは運が良いと言ってるが、実際は彼よりもタチの悪い方で運が悪い。

 電王の彼こと野上 良太郎の運の悪さは命に直結するような事が少なかったが、幽冥の場合、全てが死んでもおかしくない事が多い。

 そして、大抵こういう自体になった時は前世の彼女の親友、姉、兄がピンチの時に駆けつけ彼女を助けてくれるのだが、親友と姉はいるはずも無いし、兄だった姉の慧鬼は洋館の下の地下研究室を見て、三日三晩寝ずに調べてたせいか熱を出して、今はひなに看病されている。

 だが、彼女の前世はと言ったが、今世の家族はどういうもの達か忘れてはいないだろう。

 

ピィィィィィィ ギリギリギリギリ  カラララララ

 

 そう。彼女の『家族(魔化魍)』は『彼女()』を害そうとする人間たちに容赦無く喰らう為に行動を始めようとしていた。

 

SIDE白

 迂闊でした。慧鬼から聞かされた王の運の悪さがこれ程とは。

 

「ドウ攻メル白」

 

「もうすぐ鳴風と唐傘が戻ってきます。その報告で作戦をたてましょう」

 

「ソウダナ」

 

 隣にいる黒とどう王を救うかという話をしている。

 

ピィィィィィィ カラララララ

 

 鳴風と唐傘が戻ってきたみたいですね。

 

「如何でしたか?」

 

ピィィィ ピィ ピィィィ

 

「敵は19で入り口に見張り2人、王を監視する1人、後は各所に16人ですか」

 

カラララララ

 

「分かりました」

 

「助カルゾ鳴風、唐傘」

 

ピィィィィィィ カラララララ

 

 今回、王を救出する為に来たのは、白は当然の事で鳴風、顎、崩、黒、羅殴 、唐傘といった感じである。

 他の家族とも言える土門や睡樹、飛火の3体はひなの遊び相手兼護衛と慧鬼の看病の為に黒が頼んで残ってもらった。

 

「まず最初に王の側にいる見張りを羅殴が片付けてください」

 

ウォォ

 

「その後に入り口付近の見張りを唐傘が」

 

カラララララララ

 

「後は各々の判断で行動してください」

 

ピィィィィ ギリギリギリ  ノォォォン

 

 指示を聞いた鳴風たちは自分の役目を果たす為に行動を開始した。

 

「良カッタノカ?」

 

「何がですか?」

 

「私タチガ救出ニ迎エバ、スグニ終ワルト思ウガ」

 

「いつまでも育て役である我らがあの子達の手助けをしてはいけないんです」

 

「ソレモソウダガ」

 

「大丈夫です。以前の鬼との戦いの事をきっかけにあの子達は自分で修行していたんです」

 

 そう。あの鬼たちとの戦いの際、1対4で挑んだものの苦戦をした事が鳴風たちの向上心を上げるきっかけとなり皆、隠れては修行をしていて、最年長でもある崩からは術を学んでいるのだ。

 白と黒は話すのを辞めて、鳴風たちを待つことにした。きっと王を救出してくるという事を信じて。

 

SIDEOUT

 

 

SIDE羅殴

 慧鬼さんから教えてもらった王の運の無さがこれ程とは、でもそんな王を守るのが我々なのだけど。

 

「チッ、なぜこんなガキを見てなきゃいけないんだ」

 

 あっ!! 王!!

 

「そうだ。こいつで少し相手を」

 

ウォォォォォォォ

 

 男はそう言ってズボンに手を掛け、王の着ている服を掴もうとする。それを見て、俺は男に飛びかかる。

 

「羅殴!!」

 

「なんだこの猿はク………がああ」 

 

 羅殴は幽冥の服を掴む男の首元に引っ付き、手を喉に食い込ませた手をグジュと掻き回し、手を抜くとクルミのようなものを取り出す。

 男はそのまま倒れる。羅殴の手によって喉からは血が流れている。死体を一瞥した羅殴は王を縛っている縄を引き千切る。

 

「羅殴ありがとうね」

 

 服は上が少し破れかかってたが、王の身体に怪我とかは一切無かった。

 羅殴は幽冥の肩に乗り、男から取ったクルミのようなものを食べ始めた。幽冥は羅殴の背中を撫でながら、家族たちが来るのを待っていた。

 

SIDEOUT

 

 

SIDE男

 警察の連中が入ってこないように俺達は見張っている。

 今頃、少女を見張ってる男は少女で遊んでるんだろうと思った。だが、既にこの時に少女を見張っていた男は羅殴の手により既に殺されていた。

 そして、この男たちも直ぐに男と同じ運命を辿るのだろう。

 

「おい、あれは何だ?」

 

 隣にいる見張りが上を指して教えてくれ、その先を見ると、開いたままの傘がゆらゆらしながら落ちてくる。

 そんな、不可思議な現象に俺も隣の見張りも驚いて、落ちてくる傘をじっと見るが。

 

「がっ………」

 

 隣にいた見張りからおかしな声が聞こえて、隣を見ると頭にクナイが刺さって、死んでいた。

 

「!!」

 

 突然の死に驚き、男は辺りを見渡すも、誰もいなかった。そして男はある事に気付く。

 

「傘が消えてる」

 

 ゆらゆら降りてきた傘はいつの間にか男の前からその姿を消していた。

 男は恐怖を感じていた。得体の知れないナニカが自分の近くにいる、この場から早く逃げたい、その思いでいっぱいだった。

 服に仕舞っていたサイレンサー付きの拳銃を取り、構えながら辺りを見るも何もいない。すると–––

 

カラララララララ

 

 何か声が聞こえてきた。

 

カラララララララ

 

 遠くから聞こえるのにまるで自分の側で聞こえてくる。

 

カラララララララ 

 

 辺りに向かって撃つも。

 

カラララララララ

 

 声はドンドン大きく聞こえてくる。

 男の恐怖は絶頂に達し、その場から逃げようとするが–––

 

カラララララララ 

 

「があっ」 

 

 手足に何かが刺さり、男はアスファルトに顔を叩きつけるように転ぶ。

 男は刺さった何かを見るとクナイだった。男の恐怖は絶頂に達し、顔を上げようとした瞬間に男の頭にクナイが刺さり、男は物言わぬ死体へと変わった。

 

カラララララララ

 

 男の頭にクナイを振り下ろした唐傘は死体に向かって手を翳す。すると死体は忽然と姿を消した。

 死体が消えたのを確認した唐傘は自身の身体を傘に変えて空へと飛んでいく。

 

SIDEOUT

 

 

SIDE鳴風

 私と顎、崩で15人の人間をどうするかを話していた。

 

鳴風

【崩さん、生きてる人間をそのまま捕獲する術はある?】

 

【どういう事だ鳴風?】

 

鳴風

【私たちの食事は人間です。またいつ人間食べれなくなるのかは分からないから、捕獲して保存食にするんだよ】

 

【なるほど。さすが鳴風】

 

【分かった。丁度いい術が1つあるが、一箇所に集まらんと使えん】

 

鳴風

【では、私たちがその場所に誘導するから、術の準備をお願い】

 

【じゃ、誘導の為に俺は動くぞ鳴風】

 

 顎はそう言うと、硬い床に蟻酸を垂らし床を溶かして下にある地面を掘り始め、地面の中に消える。

 

【術の支度をする誘導を頼むぞ】

 

 崩はそう言い、どこかに向かって歩き始める。

 それを見届けた鳴風は捕獲の為に人間のいる場所へ飛んで行った。

 

SIDEOUT

 

 

SIDE男

 何が起きてるんだ。

 俺は自分の目を疑った、切り裂かれる拳銃とナイフ、溶け散る銃弾、腹を押さえ蹲る部下。

 その惨状を作ったのは–––

 

ピィィィィィィ  ギリギリギリギリ

 

 燕と糸巻鱏を足したような生物 イッタンモメンの鳴風と柴犬くらいの大きさの8本脚の蟻 オオアリの顎だった。

 男達は銃を乱射するも顎の吐く蟻酸によって銃弾は全て溶かされ当たりもしない。顎にナイフを当てようと近付く男の後ろから鳴風が飛んで来て、ナイフの刃を翼で切断し、それと同時に尻尾で両腕を突き刺す。

 

「ああああああああ!!」

 

 両腕を貫通した男を鳴風は尻尾を使って、蹲る男に向かって投げつける。

 

「「があっ!!」」

 

 男は蹲る男の頭にぶつかり気絶させられる。

 

「(このままでは、捕まってもいい早く逃げねば)」

 

 男はこのままでは全滅してしまうと思い、生き残っている部下を集め、警察のいる方に向かおうとした。

 だが、目の前には犀と象亀を合わし岩の身体を持った魔化魍 オトロシの崩が待ち構えていた。

 

ピィィィィィィ

 

 男たちの後ろから物凄い突風が起き、散らばっていた男達はドンドン中央に寄せ集めるように集まっていく。

 それを見た崩は男たちが集まったのを見ると前足を床に叩きつけると男たちの周りに赤い円が発生して、円から強い光が起きると誰もいなかった。

 それを見た崩は鳴風と顎に頷く。それを見た2体は嬉しそうにその場で勝利を伝えるように吠えた。

 

ピィィィィィィィィィィィ  ギリギリギリギリギリギリ

ノォォォォォォォォォン

 

 3体の魔化魍の声は遠くで待っていた王と羅殴の耳に届き、離れて待っていた従者たちにも届いた。




如何でしたでしょうか?
王との再開は次回になります。
そろそろ北海道編を書こうと思います。

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