人間だけど私は魔化魍を育て、魔化魍の王になる。   作:創夜叉

30 / 165
今回の話で投稿作品が30個目になります。
これからもご愛読をお願いいたします。


記録弐拾捌

 わずかにブルブル震えているキャリーケースを持ち、ひなちゃんと白、黒、お姉ちゃんと共に土門たちがバレないような宿をあっちこっち探してたら、たまたま(・・・・)出会った男がちょうど空いた(・・・)という貸家に案内してくれて。その場所に泊まることにした。

 

 街から少し離れた場所にあるという貸家に向かって歩いている。

 日が沈み始めて、キラキラと反射していた雪の光は橙色に染まっている。

 

 東京の山の中では滅多に見られない景色に感動しながら歩いていると大きな木の家が見えてきた。

 丸太を組み合わせて作られた貸家は手入れがあまりされていないように見えた。この際、外見なんて気にしない。

 とりあえず、今は土門達が氷のように固まらない内にキャリーケースから出して温めてあげないと思い、扉を開けて中に入ると––––

 

「おおっ!!」

 

「コレハ!!」

 

「大っきいいーーーー!!」

 

 手入れされていなかった外とは違い、中はかなり綺麗だった。埃を被っていないペンダントライト、綺麗に並べられた椅子と長机、新品同様なコンロ、トイレも和式ではなく洋式で風呂も別々になっている。

 

「どうですか?」

 

 ここまで案内してくれた男が感想を聞いてきた。

 

「正直、びっくりしました」

 

「そうでしょう。ここは外見のせいで泊まる客は少ないのですが、一部の物好きな方は泊まっていかれるんです」

 

「しかし、本当に良いんですかここの料金は高いんですよね?」

 

 この貸家おそらくかなりの料金になるだろうと思い、男に聞くと。

 

「料金は既に支払われております」

 

「えええっ!!」

 

「ソレハドウイウ事デスカ?」

 

「3日前くらいに青い作務衣を着たお方が料金を払ってくれて、キャリーケースを持った、防寒コートを着た女の子2人と女性3人を見つけたら、ここに案内しろと言われましたので」

 

 どういう事だろうか。私達のこの格好、特に防寒コートは駅に降りてから着たものだ。それなのにまるでその格好で来ることが分かっていたかのような指定をしてここに泊まれるようにしてくれた。

 そして、今気付いたのだが、この男の目を見たら光が灯っていなかった。

 

「………安倍 幽冥様………いや9代目魔化魍の王」

 

「「「!!!!」」」

 

ガルルルル  ピィィィィィィ  ギリギリギリギリ

ノォォォォォン  シュルルゥゥゥ  コォォォォォン

ウォォォォ  カラララララ

 

 驚いた。話すのを突然辞めて、立っていた男が急に教えた筈もない私の名前を言って、さらに普通の人間が知る筈もない事を言い始めた。

 この男の異常性に気付いた白と黒は私の前に立ち、お姉ちゃんはひなちゃんの前に立って変身鬼笛を取り出して、キャリーケースを無理矢理開けて土門たちが飛び出し、男の周りを包囲した。

 だが、男はそんな事も気にせずに続けている。

 

「あっしはアズキアライと申しやす。この男に術を掛け、伝言を伝えさせてもらいやす。

 この伝言を聞かれたら、5日後に北海道の日本海側の海から少し離れた所にある寺に来てくだせい。あっしの主人、美岬様が貴方に会いたいとのことでやす」

 

 どうやらこの男は、それなりの力を持つ魔化魍の術で操られていたらしい。そして、美岬様と呼ぶ人いやおそらく魔化魍が私に会いたいようだ。

 だが、しかしこの男が言った言葉の中にはある妖怪の名前があった。

 

 アズキアライ。

 全国多数のあらゆる所で出没する。知名度の高い妖怪の1体である。

 川などで小豆をショキショキ言いながら洗っている背が低く法師の姿で笑いながら小豆を洗っているらしく茨城県や佐渡島だと娘を持つ女性が小豆を持って谷川でこの姿を目撃すると娘が早く縁付く–––

 

 アズキアライの事を思い出していたら男は急に倒れて、男の身体は足から砂に変わっていき死んだ。

 

「どうしますか王?」

 

「この伝言を受けてから5日後に日本海側の海の寺か」

 

「行クノデスカ?」

 

「せっかく招待されたんだし、行ってみようよ」

 

「分かりました」

 

 取り敢えず、この砂をどうにかしないと–––

 

「飛火?」

 

コォォォォォン

 

 飛火が男だった砂に近付き、吸い込み始めた。ものの数秒で砂は綺麗になくなり飛火は満足そうに尻尾を振っている。

 飛火はおそらく、人間を粉末の状態にして捕食する魔化魍なのだろう。まあ結果として砂は無くなったので、手招きして飛火を呼んで前脚の脇に手を入れて私の膝の上に乗せて背中を撫でる。

 

ガルルルル  ピィィィィィィ  ギリギリギリギリ

ノォォォォォン ウォォォォォ  カラララララ

 

 それを見た、土門たち(睡樹を除いて)も撫でて撫でてというかのように私の周りに集まる。睡樹は私の手伝いなのか撫でたいのか分からないが顎や崩を自分の側に寄せて撫でていた。

 

SIDEヤドウカイ

【ガシャ、ダラ、ヒトリ、ランピリス、エンエンラ、ヌッペさん、スイコ、ノヅチ・・・さて、北海道の猛士の支部の1つを潰そうか】

 

【【【【【【【「おおおお!!【おー】」】】】】】】

 

 ヤドウカイ達は夜の闇に紛れて行動を開始した。

 そして––––

 

SIDEOUT

 

 

SIDE美岬

「では、みなさん行きますよ!!」

 

【@&¥¥】

 

【【「「「はっ!!」」」】】

 

「シャシャシャシャシャシャシャー」

 

 そして 、美岬達もヤドウカイ達とは離れた別の場所で同じ猛士の支部を襲撃する為に行動を開始した。




如何でしたでしょうか?
ヤドウカイと美岬の猛士襲撃を楽しみにしていた人は申し訳ございません。
それは次回になります。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。