第1支部の話はこれを除いて、後1話の予定です。
あああ、無力だ。私は無力だ瀕死の重症を負った魔化魍1体を助けられない程、無力だ。
私の目の前には、鳴風に連れられたアオサギビという魔化魍が横たわっている。このアオサギビも波音の囚われた仲間の1体だ。
アオサギビの周りには赤、鋏刃、浮幽、穿殻がアオサギビの怪我の手当てをしているが。
私には何故か分かる。激しく呼吸するアオサギビ、このままではおそらく
そんなのは駄目だ。私が如何にかして………でも如何すれば?
そんな私の頭に声が聞こえる。
【仕方ないなぁ、今回はウチが
声が聞こえなくなると同時に私は意識を失った。
SIDE赤
私は有り得ないものを見ている。私たちがアオサギビの怪我の手当てをしていると王が突然倒れ、少しすると立ち上がった。
ただ………王の様子は明らかにおかしかった。
そう思ってると、王の身体が光り始め、私や鋏刃たちはあまりの眩しさに目を塞ぐ。
光が治り、其処には王がいたが、その姿は変わっていた。
長い黒髪は不純の無い綺麗な白髪に、服は厚い防寒コートから赤紫色の和服に、肩には鬼瓦を模した肩当て、腰に薄茶色の瓢箪をぶら下げ、額には王の証の青い龍の痣、頭頂部に2本の角を生やした姿に変わる。
その姿を見て、ある王を思い出す。
その王は、鬼と似た姿をしているが魔化魍であり、人間の血と米を発酵させて作った酒を呑む。その酒は人間には猛毒だが、魔化魍に対しては癒しと快楽を与える。そんな酒を使った王は歴代の中でもただ1体。
その王の名はシュテンドウジ………………現魔化魍の王 安倍 幽冥の先代ともいうべき8代目の魔化魍の王である。
【ふうーー懐かしき現世やなぁ】
王が少し間の空いた声で喋り始めて、腰の瓢箪を口に付ける。
【んく。んく。ふうー。ちぃぃとその子見せなぁ】
「わああああ」
瓢箪を口から離すと消えて、いつの間にか私の目の前に王が立っていた。
そしてアオサギビに近付き、アオサギビの罅割れた嘴に口を付け、何かをアオサギビの口に流し込む。
アオサギビの身体を薄緑色の光に覆われて、その変化が直ぐアオサギビの身体に表れる。
嘴の罅は消えて、千切れそうだった翼は内側から筋繊維の様なものが傷を繋ぎ初めて元に戻る。身体の穴も塞がって、激しかったアオサギビの呼吸は穏やかなものに変わる。
それを見た鋏刃たちは安堵した顔をする。
「んく。んく。これで、大丈夫やぁ」
「待ってください!!」
私の声で王はこちらを向く。
「貴女様は先代の王 シュテンドウジ様ですか?」
私の言葉で、鋏刃たちは静かになる。
【せや、今は
王の身体を借りたシュテンドウジ様の声が私たちの耳に響く。
SIDEOUT
SIDEクダキツネ
あの後、何とか王を見つけ出して、遠くから眺めてたらのあの言葉。もうビックリ。
【驚いたね】
【ああ】
クダキツネの言葉に肯定するヒトリマ。それはそうだ。死んだはずの先代の王が現魔化魍の王の身体で現れたのだ。
【でも、何で先代の王が?】
【おそらく、王が何かしたのだろう】
その言葉にクダキツネはヤオビクニが言っていた言葉を思い出す。
魔化魍でも家族と言える人間。
それを思い出していたクダキツネは気を失ったように倒れる王を見て、嫌な予感がして王の所に幾つもの分体を放とうとするが、その前に王の家族の魔化魍が王を支えていた。
危なかった。危うく出て、見つかるところだったとクダギツネは思い。幽冥の監視に戻った。
SIDEOUT
SIDE調鬼
ショウケラは助けたし、ジュボッコとアオサギビのいた部屋は大きな穴が空いていて、誰も居なかった。おそらく南さんが言っていた魔化魍の王の仲間が助けたのだろう。アカエイは南さんが助けると言っていたので、問題は無い。
だから、私はこの子達の為に志々田支部長を殺す。ショウケラにも魔化魍の王の所に向かってと言っても追いかけてくるので、そのまま支部長室に向かった。
やっと支部長室に着いたと思った瞬間に部屋の中から扉と何かが吹き飛び、私の方に向かってくるが、ショウケラが目の前に立ち、扉を爪で切り裂き、私は飛んでくる何かを受け止めると–––
ユレレレ……レレ
ボロボロな姿のジュボッコだった。
「ジュボッコ!!」
ボロボロなジュボッコを降ろして、身体を見ようとするが。
「何だ。落ちこぼれか。その下等生物を早く檻に戻せ」
聞き覚えのある傲慢な喋り方に誰がいるのか分かった。
扉の無い部屋から出て来たのは、ここ第1支部の支部長の志々田 謙介だった。
だが、その右腕はまるで魔化魍のような異形のような腕だった。
如何でしでしょうか?
次回は調鬼&ショウケラ、ジュボッコVS志々田 謙介をお送りします。