人間だけど私は魔化魍を育て、魔化魍の王になる。   作:創夜叉

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はい。新話です。
今回は幽冥とクダキツネとヒトリマの会話にヤオビクニこと沖野 美岬に衣鬼とミイラの会話をお送りします。


記録肆拾参

「ありが…ひっぐ………とう、ありがとう……ひっぐ、ありがと……うううう」

 

 猛士の北海道第1支部から囚われた波音の仲間とともに帰って来た。

 波音(擬人態)は囚われていた仲間の姿を見て、私に飛びつき涙を流しながら感謝の言葉を言う。

 最初に会った頃とは違って、見た目通り(人間として見たら)な状態になっていた。

 

 私が波音をひなや白と黒に面倒を頼んだのはこの為だ。

 波音は無理してあんな風に喋っていたが、本当は幼い少女と変わらない。自分が無理しなきゃ仲間を救えないという考えで、幼い自分をの本心を閉じ込めて、大人のような態度をするようになった。

 

 だが、私という存在に会い、ひなのような同年代(人間として見たら)と遊び、仲間も全員救われて、もう無理する必要がないと思った波音はこのようになった。

 

「すーーー」

 

 泣き疲れたのか波音は抱きついたまま眠ってしまった。

 

「さてと、次は貴方達の用事を聞きましょうか?」

 

 そう言って、幽冥の振り向いた先には。

 

ボオオ  コン

 

 浮幽の無数の触手に拘束された頭に炎を灯した二足歩行の蜥蜴の魔化魍と土門と唐傘の吐いた糸でグルグル巻きにされている竹筒に入ってる細長い白狐の魔化魍がいた。

 

「貴方達は何で私達を見ていたんですか?」

 

 この魔化魍たちは、私が謎の化け物と戦っている時に視線を感じて、化け物が調鬼さんに倒された後に視線のあった所に向かうとこの2体がいた。その後、逃走しようとするも土門と唐傘、浮幽の手によって捕まり、この状態に至る。

 私の問いに困ったという感じで唸る蜥蜴の魔化魍。

 

【初めまして………というべきか、王よ】

 

 えっ? 今の声ってこの子から?

 そう考えてると–––

 

【喋ってるのは僕たちです王様】

 

 今度は、糸でグルグル巻きにされている竹筒から顔を申し訳ないようにひょこりと出してる白狐の魔化魍から声が聞こえた。

 

「喋れるんですか? 貴方達は?」

 

【ん? 喋れるよ王様】

 

【クダキツネ、普通は知らないぞ】

 

 何を当たり前な事をって感じで私に喋る白狐の魔化魍にツッコミを入れる蜥蜴の魔化魍。

 

【俺はヤドウカイの仲間のヒトリマ】

 

【僕は美岬様に仕えるクダキツネ】

 

 2体は私に自己紹介する。

 とりあえず私に対して何か攻撃をするという訳ではなさそうだ。土門と唐傘、浮幽たちに拘束を解いてもらった。

 

【王様王様。僕たち、王様をある所に案内したいの】

 

「ある所?」

 

【そう。僕の主 美岬様とヒトリマの仲間のいる所に】

 

SIDE美岬

 遅いですねクダキツネ。

 王に万が一の危険が迫った場合の為に、ヤドウカイの仲間のヒトリマと共に行かせたのですが。

 

 戻ってくる気配もない。

 これは罰としていた特製油揚げの1ヶ月禁止ではなく3ヶ月禁止にした方がいいかもしれません。そう考えてると–––

 

「………美岬様、報告です」

 

 私の後ろからハンニャが現れ、頼み事の報告に来ていた。

 

「それで、クダキツネ達は?」

 

「報告、クダキツネとヒトリマは王に見つかり拘束されたと」

 

 はあーー。

 何をしているんですかクダキツネは、見つからないようにと言っておいたのに王に見つかるとは、これは特製油揚げだけじゃなく特製団子も禁止に––––––

 

「それとクダキツネが王たちを連れてこちらに向かってます」

 

 ………………ん? あれ?

 

「んっ?」

 

 私がクダキツネの罰を考えてる時にハンニャから聞き逃せない内容が聞こえた。

 

「ハンニャ、もう1回同じこと言ってもらっていい」

 

「それとクダキツネが王たちを連れてこちらに向かってます」

 

「えええええええ!!」

 

 …………………嘘。

 クダキツネ何をやってるんですか!! こっちはまだ迎える準備もしてないのに、まず身体を洗って、髪を梳かして、アズキアライ達に料理を作ってもらわないと、それにあの子の好物も作って、あっ春詠さんの分も作らないと。それから………」

 

 そうやって考えてると

 

「………………美岬様、心で喋ってるつもりかもしれませんが聞こえてます」

 

「////////!!」

 

「王に会えるのが嬉しいのは分かりますが少し落ち着いてください」

 

 ハンニャの言葉を聞いて恥ずかしい気持ちになり手で顔を覆った美岬が元に戻ったのは、王が廃寺に辿り着く少し前だった。

 

SIDEOUT

 

 

SIDE◯◯

 美岬ことヤオビクニがハンニャに恥ずかしい所を見られてる同時刻。

 廃寺から少し離れた所にある隠し扉で隠されてる地下に続く階段。ここはまだ寺に美岬たちが住む前にいた者たちが造った部屋である。

 辺り一面が暗く、光が一切入らない部屋で、その奥には2人の人間が壁から伸びる鎖に繋がれていた。

 

「う、ううう………此処は?」

 

 1人はマシンガンスネークと戦い、戦意喪失で敗北した猛士北海道第2支部の角こと突鬼。その服は囚人のような白黒の線の入った格好で、腕にはジャラジャラと手錠と鎖の音が鳴る。

 

「目が覚めたんですね突鬼」

 

「えっ?」

 

 突鬼は隣から聞こえる声で隣を向くと。

 

「衣鬼!! なっ!!」

 

 同じ猛士北海道第2支部の角 衣鬼だったが、その姿を見て突鬼は戸惑う。

 

「………衣鬼。その格好は?」

 

「言わないでください////////////!!」

 

 その格好は、突鬼の貧乏そうな囚人服とは違い、王族の妃に着せるような高価な服で、胸元には赤の宝石が埋め込められたペンダントを着けている。明らかな格差を感じた。

 

【フハハハハハハ、やはり似合うな】

 

 突然笑い声が聞こえ、衣鬼は憎悪の視線を部屋の入り口に向ける。突鬼はそれにつられて同じ方向を見る。

 そこには衣鬼と戦った魔化魍 ミイラが本体を現して立っていた。

 

【そろそろ決心してくれたか我の妃になるのを】

 

「き、妃!!」

 

 突鬼はミイラの言った言葉に驚き衣鬼を見る。

 

「何度言われても嫌です!!」

 

【フハハハハ、その割にはその服を気に入ってるようではないか】

 

「これは服が無いからその代わりです」

 

 ミイラは北海道第2支部を襲撃した際に戦った衣鬼を気に入り、そのまま連れて来たのだ。だが、鬼でもあるので変身音叉や札などの道具は全て美岬に回収されている。無論、突鬼の変身音叉もだ。

 そして、ミイラは衣鬼のいるこの部屋(突鬼も居るがミイラは気にしていない)に何度も訪れ、『妃になれ』と言う。ある程度会話をすると帰るというのを繰り返していた。

 

 実はミイラが本体を晒して外にいるのはかなり珍しい。

 ミイラは元々、古代エジプトにいた暴君のファラオが自分にもしもの事があった時の為に作られた『ファラオのスペア』といえる人造魔化魍なのだが。作り出した暴君のファラオに反逆した事で棺桶に閉じ込められた。

 そのファラオが死に、存在が明かされる事なくピラミッドの中で眠っていた。それから長い時を経て、墓荒らしによって、ミイラを入れていた棺桶が開かれ何百年の長い時から眠りを覚ましたミイラは墓荒らし達を喰らい、ピラミッドから出た。

 だが、そこには古代エジプトはなく信仰が廃れ科学の進んだ現代だった。

 自分の守ろうとした民は既に居ないことにショックを受けるが、ミイラはエジプトから離れて日本に訪れ、初めて出会ったのが美岬ことヤオビクニだった。そこから美岬を友と呼ぶようになり行動を共にしている。

 

【まあ良い、いずれお前を必ず我の物にしてやる】

 

 そう言ったミイラは長杖を地面に突くと足元から黒い何かが溢れ、姿を消した。

 

「魔化魍なのに………あっ! 突鬼大丈夫?」

 

「………………」

 

「あれ、突鬼?」

 

「きゅううーーーー」 

 

「ちょっ!! 突鬼ぃぃぃ!!」

 

 突鬼は突然なミイラと衣鬼の話についていけずにその場で気絶した。

 衣鬼は気絶した突鬼の介抱を始める。

 

【フハハハハハハ、絶対にお前を我の妃にしてやる】

 

 その光景をミイラ見られてたのに気付かず。




如何でしたでしょうか?
ミイラは衣鬼を自分の妃にしようとした話です。
今回のこの話は、ずっと考えてた案の1つです。出せてよかった。
次回もお楽しみに

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