対戦はこのようになります。
赤、土門、飛火、羅欧、骸、葉隠、浮幽、拳牙、跳VS松竹梅兄弟 松鬼
SIDE松鬼
「ここは何処だ?」
松竹梅兄弟の1人 松鬼は何処か分からない森の中にいた。隣にいた兄弟の梅鬼も竹鬼もいない。
どうやら俺1人のようだ。そう考えてると突然–––
「っ!?」
風を切るように飛んできた複数の何かが松鬼の身体目掛けて放たれた。咄嗟の事で避けるが肩の装甲を少し掠り、僅かに装甲が削れた。
そして、松鬼が上を見ると木の上に複数の影があった。
「流石は『松竹梅兄弟』の長男。中々ですね」
木の上に佇むのは波音を守る為に行動していた幽冥の新しい従者、クラゲビの妖姫 赤。
土門
【やっぱりそう簡単にはいきませんか】
樹の幹に張り付いている巨大な全身虎縞の黄金蜘蛛の魔化魍 土門。
羅殴
【さて、やりますか】
腕をぶんぶんと回すザンバラ髮の猿の魔化魍 羅殴。
飛火
【避けられちゃった】
枝の上で犬のように座っている二本の尾を持つ赤い狐の魔化魍 飛火。
骸
【ジャラララララ、こいつはどんな頭蓋骨かな】
白骨化している下半身で樹に巻き付き、頭蓋骨を咥える独眼の蛇の魔化魍 骸。
拳牙
【今回は私も本気を出そう】
拳を重ね、身体の一部が液状化している鯱の頭で虎の上半身の人型の魔化魍 拳牙。
跳
【あっしの新術の試し撃ちになってもらいやしょう】
木の上で蝙蝠のようにぶら下がっている青い作務衣を着た雨蛙の魔化魍 跳。
コン、コン、コン、コン 、コン、コン
鳴き声を上げる度にその分体を増やしていく竹筒に入った細長い白狐の魔化魍 葉隠。
ルルル、ルルル
鳴き声を上げ、無数の触手と赤と青の2色の炎を灯す触手を持つ海月の魔化魍クラゲビ 浮幽。
赤を中心に8体の魔化魍が樹の上から松鬼を見下ろす。
そして、見下ろされている松鬼は–––
「ははははははっははははははっはははははっはははははっはははははっは」
赤たち
【【【【【【【【「!!??」】】】】】】】】
突然、大声で笑い始める松鬼。
「最高だ! 最高だよ!! 今までこれ程の魔化魍と戦った事は無かった。これで俺はどれくらい強くなれるんだ!!」
想鬼の引き連れた『松竹梅兄弟』が魔化魍と戦うのはそれぞれ目的ある。
三男である梅鬼はどんな魔化魍にも負けない力。
次男である竹鬼は師とも言える想鬼を超えること。
そして長男の松鬼は果てしない闘争いや魔化魍との殺し合い。
他の兄弟に比べると、長男は狂っていた。次男と三男はまともなのに長男だけがこのような考えに至ったのかは本人にしか分からない。
ただ松鬼は目の前にいる魔化魍とただ殺し合いたいだけ………その為に行動している。
「さあ、始めようじゃねえか」
松鬼はそう言うと、腰にぶら下げてる音撃管を取り外して赤達に照準を合わせる。
「こちらも行きますよ」
グルルルルル ウォォォォォォォ コォォォォォン
ジャラララララ グガアアアアア ショキ、ショキ
コン、コン、コン、コン、コン、コン ルルル、ルルル、ルルル、ルルル
「ほらくらいな!!」
松鬼の音撃管 落松から音撃の弾が放たれる。
だが、各々その攻撃を避けて深い森の中に散りじりに隠れる。
「ちっ」
松鬼は舌打ちをして辺り構わずに落松を撃つ。
グルルルルルルルル
いつの間にか背後に回った土門が自身の身体から作り出した糸を前脚に絡ませ勢いよく振り下ろす。
「甘えよ」
だが、糸は松鬼の身体に当たらず避けられる。
「そらよ」
落松を土門に向けて撃つが–––
コン、コン、コン、コン、コン、コン、コン、コン
樹の陰から飛び出す葉隠の大量の分体が土門を守るように囲み、音撃の弾は葉隠の分体を簡単に爆散させるが分体が全ていなくなる頃には既に土門の姿は無く、代わりにそこには大きな穴があった。
「くそっ!!」
ジャララララララララララ
土門の掘った穴から骸が飛び出し、松鬼に向けて溶解液を吹き出す。
「ちっ!!」
骸の吐いた溶解液に松鬼は腰にぶら下げてるディスクアニマル 茜鷹を投げつけて、自身に掛かるはずだった溶解液を防ぐ。
だがその結果、茜鷹のディスクは見るも無惨な姿に変わった。
ジャララララララララララ
溶解液が通じないと見て、骸は咥えている頭蓋骨を離して、何か呟く。
すると、地面に落ちていた頭蓋骨はカタカタと振動を起こして、宙に浮く。
骸
【行け!!】
骸の指示を受けた頭蓋骨は口を開いて松鬼に向かって突撃する。
松鬼は、頭蓋骨に落松の音撃の弾を放つが頭蓋骨は物ともせずに松鬼にどんどん迫る。
それを見た松鬼は普通の変身鬼笛とは違う変身鬼笛を落松の発射口の先に取り付け、再び落松を撃つ。
骸
【!!】
先程の音に比べて少し重い音で発射された音撃の弾によって頭蓋骨は見事に砕ける。
骸
【てめえ、俺のコレクションの頭蓋骨を!!】
激昂して、松鬼に攻撃を仕掛けようとする骸の身体に何かが絡みつく。
ルルル、ルルル
浮幽が触手で骸を拘束して、自分の元に寄せて樹の上へと消える。
「待ちやがれ!! くそ!!」
骸と浮幽の去った樹の上を眺め、別の魔化魍が逃げた方に松鬼は向かった。
SIDEOUT
SIDE赤
「骸、大事な物だとは分かっていますが、あれが終わったら直ぐに樹に上がってと言ったでしょ」
浮幽によって樹の上に連れてこられた骸は赤に怒られていた。ちなみに此処に連れてきた浮幽は触手で骸を縛ったままで、赤の方には飛火が座っている。
骸
【だけどよ!!】
「だけどじゃありません。貴方が死んだら王は悲しみます」
骸
【………………分かったよ】
「よろしい」
飛火
【ねえ、骸】
赤の肩に座っている飛火が骸に話しかける。
飛火
【あの頭蓋骨、羅殴に頼めば直してもらえるかもよ】
骸
【本当か!!】
骸はその話を聞いて、浮幽に拘束されてるにもかかわらずものすごい勢いで飛火に詰め寄る。
飛火
【う、うん】
骸
【そうか。後で集めとかないとな】
「では、葉隠。鬼の現在地は?」
赤は骸の説教を辞めると浮幽の上にいて自身と同じ姿をした分体に紛れている葉隠に聞く。
葉隠
【鬼の現在地は………………跳の方に向かったよ】
分体が何か呟いてるのをそのまま葉隠は伝える。
「では、みなさん次の行動に移ってください」
赤以外
【ああ【はーい】【ルルル】】
赤の指示に従って樹の上から降りる骸達。
骸達が消えた樹の上で赤は胸元から出したヤシの実のペンダントを見た後に握りしめて、上を見上げる。
「………王よ、貴方に救われたこの命は貴方の為に」
赤はペンダントを仕舞って樹の上から降りた。
SIDEOUT
SIDE松鬼
跳
【どうしやしたどうしやした。それではあっしに近付けやせんよ!!】
「ほざくな!!」
松鬼が向かった先には松鬼を待ち構えていた跳がいた。
攻撃を仕掛けるが跳が謎の術を使って音撃の弾をあらぬ方向に飛ばし、それが続いて今のこの状況になっている。
「ぴょんぴょんと鬱陶しんだよ!!」
跳に向けて落松の音撃の弾を放つも、ぴょんぴょんと跳ねる跳には一直線にしか向かわない音撃の弾は跳弾するわけでもなくそのまま避けた後ろに樹に当たる。そして、跳は避ける度にあらゆる術を放つ。
ある時は鬼火、ある時は氷塊、ある時は落雷、またある時は圧縮した空気、そして毒とランダムに放たれる術に松鬼はイライラを募らせる。
それはそうだ。最初の放たれた術を防ごうとすると別の術がそれを防いでもまた別の術を鼬ごっこの様に繰り出す跳の攻撃は松鬼の様に敵がいた瞬間にすぐ攻撃を仕掛ける猪突猛進の様な鬼には辛い攻撃なのだ。
だが–––
「だんだん慣れてきたぜ。てめえの術!!」
腐っても北海道の最高戦力の1人。似た攻撃を何度も繰り返されれば、自然とその攻撃に対して対応できる様になる。
しかし、ここまで来ると松鬼は1つの疑問を覚える。
今戦ってる魔化魍以外の魔化魍と妖姫がいねえと。
そうこの戦闘を始める前に確認した魔化魍と妖姫が跳と戦ってる所から姿を見せて居ないのだ。
「(俺が戦ってる魔化魍以外の
そう。戦闘経験の豊富な跳でも北海道の最高戦力の鬼に1体で戦いを挑むのは無理ではない。しかしその戦闘が長く続くのは跳には厳しい。
元々、跳の戦闘スタイルは敵を翻弄する様な戦い方ではなく時間を掛けない短期決戦を得意とする。
だが、その疑問の答えはすぐに明かされる。なぜならば。
跳
【(くくく、気付かずにこっちの計画通りでやす。では、次の動きといきやしょう)】
跳は跳ねるのをやめて地面に手を置く。
「観念したのか蛙」
地面に手を当てたままの跳に落松の照準を合わせる。
だがその瞬間–––
跳
【はっ!!!!】
地面から大量の水が発生し、辺り一面、水によって地面が消えた。
「何だこりゃ!!」
水に驚くも、再び照準を合わせる松鬼。だが照準を合わせた先には跳は消えていた。
「どこ行きやがった!!」
落松をいつでも撃てるように構える松鬼は辺りを見回す。すると目の前の水の表面が急に膨張し、松鬼に向かって拳の形をした水が松鬼に迫る。突然の攻撃に避けられず拳の形をした水は松鬼の胸部に直撃する。
「がはっ」
胸部に受けた衝撃で後ろの樹に飛ばされ、肺の中の空気が一気に出る。げほげほと咳き込みながら目の前水を見ると、水は形を変え松鬼の前に現れる。
水から形を変えたのが原因か全身が水で濡れていて毛も下向きにシュッとなっている。
拳牙
【どうだ。私の一撃は?】
拳を前に突き出す拳牙は、目の前で咳き込む松鬼に聞く。
拳牙がいつの間にか松鬼の前に現れ、どうやって攻撃を仕掛けたのか、疑問の答えは簡単だ。
拳牙は最初から松鬼の側を
拳牙の能力は率直に言うと、自身の液体化。拳牙は自身を僅かな水分に変えて松鬼の周りを漂っていた。
そしてある地点まで松鬼を跳が誘い込み、そこで跳が術を発動し水を発生させて、自身の能力をフルに発揮出来る状態にして能力を解除、自身の身体を構成させる時に攻撃を仕掛けたのだ。
「(くそ!! 今ので肋骨がもっていかれた。なんつう力だ)」
胸を抑えながら立ち上がろうとする松鬼。すると何かが肩に乗っかり、肩を見ると。
ウォォォ
羅殴が松鬼の肩に乗っかていた。そして息を大きく吸い込む。
ウォォォォォォォォォ
松鬼の耳元で雄叫びに似た自身の声をぶつける。
「があああああああああ!!!!」
羅殴の種族ヤマビコは声に毒をのせて広範囲を腐食させる能力を持つ。そんな声をゼロ距離に近い耳元で叫ばれれば、面越しとはいえ鼓膜は確実に破れる。
羅殴は既に松鬼の肩から地面に降りていた。松鬼は耳を抑えながらも落松を羅殴に向けて撃とうとする瞬間–––
「はっ!!」
いつの間にか現れた赤の持つ十字槍によって落松を持つ腕ごとバラバラにされた。
「ぐああああ!!」
鼓膜の時とは違い、そこまで痛みを感じていないがそれは単にあまりもの痛みに神経が麻痺してしまったのが原因だろう。そして落松には自身の変身鬼笛が付いていた。それごとバラバラにされた結果、松鬼は変身が解除され元の人間の姿に戻っていた。
そして、松鬼の身体に白い糸と、骨の尾、更には無数の触手が巻き付く。
グルルルルル ジャララララ ルルル、ルルル
声を上げながら土門と骸、浮幽が近付いてくる。
土門の背には跳と葉隠、骸の頭の上に飛火がいた。
「さあ遺言はありますか?」
「くたばれ魔化魍」
松鬼は身動きの取れないまま樹に叩きつけられた。
「が、あああ」
人間の姿のまま頭を樹に叩きつけられた松鬼は頭から血を流して意識は朦朧としている。
「皆よくやりました。王からは戦った鬼を喰らっていいと言っておりました………なので仲良く8等分してください」
明らかに笑顔で言うことでは無いことを喰われる本人の前で言う赤。
そして、最後に松鬼が見たのは自身の身体を貪るように喰らう土門たちだった。
如何でしたでしょうか?
次回は白チームと竹鬼の戦いです。