白、鳴風、唐傘、常闇、鋏刃、穿殻、昇布、兜、五位VS松竹梅兄弟 竹鬼
SIDE竹鬼
「逃げるなゴルァああああああああああ!!」
松鬼が戦闘を開始した同時刻。
謎の黒い影に掴まれ、先程の海岸とは違う海岸に飛ばされた松竹梅兄弟の1人 竹鬼はそこにいた妖姫と
「鬼さん。こちら手の鳴る方へ」
魔化魍の王の最初の従者、白は竹鬼の音撃弦 竹林の攻撃を鉄扇でいなしながら器用に手を叩き、竹鬼を挑発している。
「ほらほら鬼さん私ばかりに構ってると大変な目に遭いますよ」
「? ………………!!」
白の言われた言葉が気になって冷静に考えようとする刹那。
海から飛んできた物に気付き、竹鬼は頭を下げて躱し、飛んできた海の方を見ると–––
カラララララ
太陽がギラギラと照らす空には蜘蛛の脚のような形の翼を羽ばたかせる唐傘。
ヒュルルルルルル
何処までも続く海には鯱の頭の触手を動かす穿殻。
「にゃろおお!! ちっ!!」
唐傘と穿殻に向かおうとする竹鬼は顔を下に向けると砂浜の砂に上に3つの影が地面に映り、長年の戦いの感でその場から離れると真っ赤な槍と槍の形状をした何かと途轍もなく長い尻尾が飛んできた。
上空からの攻撃を躱した竹鬼は空を見上げると–––
常闇
【ほお、今のを躱すか】
竹鬼の咄嗟の判断を感嘆するのは背にある蝙蝠の翼で空を羽ばたく常闇。
兜
【次は外さないでよ鳴風】
常闇の右脇で鷹の翼で羽ばたき尻尾先からシュウーと煙が上がっている兜。
鳴風
【うん。でもそっちも外さないでよ兜】
常闇の左脇で燕の翼で羽ばたき砂の地面に尻尾を突き刺している鳴風。
「(流石にこれはまずい)」
この状況を見て不利と感じた竹鬼は、下の砂を竹林を使って巻き上げて、その場から消えた。
SIDEOUT
SIDE白
不利な状況で逃げた鬼を見て、白はその口を三日月のように歪める。
「予定通りにこの場から去りましたね」
鳴風
【うん。この数だと不利だと判断したからだと思う】
兜
【流石は松竹梅兄弟、伊達に3桁以上の魔化魍清めてるわけじゃないね】
竹鬼が逃走するのをまるで分かっていたように喋る白と鳴風と兜。
穿殻
【それで次は?】
海から砂浜に上がった穿殻は白に次の行動をどうするかと聞いた。
「逃げた鬼の追跡は昇布と五位に任せてます」
唐傘
【鋏刃は?】
この場にいない最後の存在が何処にいるのかを聞く唐傘。
「鋏刃には仕掛けを頼んでます。五位からの合図がきたらその場にあの鬼を誘導します。準備をしておいてください」
鳴風たち
【【【【【分かった【承知した】】】】】】
白の指示を聞き鳴風、唐傘、常闇、兜は空へ、空を飛べない穿殻は鯱の頭の触手を使って砂の地面に潜った。
その場に残った白は何もせずに砂の地面に座り込んだ。
「(鳴風も大きくなったものですね)」
白は自身の子とも言える鳴風の成長を嬉しく思いながら座っていた。鬼の追跡に向かった五位が出す合図を待ちながら。
SIDEOUT
SIDE昇布
先程の砂浜からかなり離れた砂浜の上を飛ぶ2つの影。
昇布
【何処にいる鬼】
五位
【焦るな昇布。焦っても仕方ない】
1つは、東洋龍の様な姿で空を泳ぐように飛ぶ昇布。もう1つは両翼に青い光を灯して昇布と並行して飛ぶ五位。
昇布
【分かっている。だが、俺は王に無様な姿を見せてしまった】
五位
【仕方がないさ。あの時のお前はあいつらに操られていたんだ】
昇布
【だが、王に攻撃しようとしたのも事実。あの時、睡樹が俺を拘束してくれなかったらきっと・・・】
五位
【そう言うな。俺が王に会った時なんて、俺は瀕死の姿だったんだぜ】
昇布は少し前の自分の犯したことをこの戦いで返上しようとしていた。五位も同じである。
どちらも普通なら死んでいてもおかしくなかった。だが、どちらも今代の王にその命を救われた。
昇布は身体を蝕む苦痛から解放してくれ、五位は瀕死ともいえる身体を癒してくれた王に感謝の気持ちでいっぱいだった。
王に対しての感謝を思い出していると、五位の目に目的の物が入る。
昇布
【見つけた。五位、合図を】
五位
【ああ】
そう言うと五位は両翼の青い光を胸元に集めて1つにし空に向けて放った。
それはある合図だった。
「むこうですか」
砂浜に座っていた白は合図のあった場所へと向かって走り出した。
鳴風
【合図がきた。唐傘】
唐傘
【うん。鋏刃のところに行くよ】
兜
【私は白を拾ってくよ】
常闇
【そうか。では、行くか鳴風】
鳴風
【うん】
空を飛ぶ4体の魔化魍は白に与えられた指示を実行する為に行動を始める。
穿殻
【しくしく。みんな何処?】
だが、約1名は現在、砂の中で迷子になっていた。
SIDEOUT
SIDE竹鬼
魔化魍たちに囲まれて何とか巻いたと思って休んでいたら突然、空が青い光で覆われて俺は目を光から防ぐ為に腕を使って目を守る。だが、それがダメだった。
「かはっ」
目を防いでいたのが原因で腹部に強烈な一撃を受ける。それを受けた竹鬼は離れた砂浜に打ち上げられている流木に叩きつけられる。
そして、竹鬼は自分を叩きつけた犯人を見た。
それは頭頂部に鹿の角、鼻の先に犀の角を生やした白龍だった。
フシュルルルル
その正体は、先程まで五位の隣にいた昇布だった。
なぜ昇布がかなり上空にいた五位の隣に居た昇布が一瞬にして竹鬼の腹部に攻撃出来たのか
昇布の身体は龍に似た体躯をしていて重いイメージに見られがちだが実際は違う。
昇布の身体は布の様に軽いが、その硬さは某アニメの特殊合金並に硬い。
さて、そんな昇布に突撃された竹鬼は普通に立っている様に見えるが、その腹部に受けたダメージは内臓破裂。鬼の痩せ我慢で立っているに過ぎない。
「(くそっ。内臓が逝かれやがったが………)くそ、くたばれ魔化魍」
怯んだと思った竹鬼の攻撃に昇布は驚き、隙を晒してしまった。
フシュルルルル
突如、砂浜から飛び出した鯱の頭の触手が昇布に向け攻撃を仕掛けた竹鬼の右肩に喰い込む。そして、その巨体を砂浜から現す。
巨大な栄螺の殻に蹠面から出る4本の内の1本の鯱の頭の触手を持つ穿殻が竹鬼の身体を持ち上げて、自身を回転させた遠心力を使い遠くに投げ飛ばす。
昇布
【すまない穿殻】
助けてもらった穿殻にお礼を言う。
穿殻
【………………】
昇布
【ん? 穿殻?】
だが、無反応な穿殻に疑問を覚える昇布。
穿殻
【しくしくしくしく】
昇布
【えっ】
穿殻
【みんなは空を飛べるからいいけど、僕は地中だよ、合図なんて分かるわけないじゃん!!】
そう今回の戦いで、罠を仕掛けている鋏刃と指揮をする白を除いて、ほとんどの魔化魍は空を飛ぶ事が出来る。
白は合図があるまで現状待機、鋏刃は仕掛けの準備の為、だが合図で行動する穿殻は地中にいる為に光は見えず、いつ出ればいいのか分からずに地中で過ごすが地上で感じた衝撃音に気付き、地上に上がったきたのだ。
五位
【まあ落ち着け………みんな来たようだぞ】
「ええ。いいタイミングです」
兜の背に乗った白が地上に降りる。その隣に常闇が降りてくる。そして鋏刃を見て。
常闇
【準備は出来てるのか鋏刃】
鋏刃
【………】
常闇の声に身体を振って答える鋏刃。
「(準備だと)」
常闇の声を聞き、明らか先程とは違う空気が漂う。
すると、上空にいる鳴風と兜が翼を羽ばたかせて風を竹鬼の身体に浴びせる。2つの風はやがて1つになりそれは竜巻となって竹鬼の身体は竜巻によって浮かび上がり上空に錐揉みしながら飛ばされる。
竜巻で上空に浮かび上がった竹鬼はやがて渦の中心に留められる。
さらに唐傘は術を使って鎖を呼んで空中に固定され、穿殻の栄螺の殻の突起が吹き矢の様に発射されて竹鬼の身体の一部を貫き、五位は羽根をばら撒くと羽根は1つ1つが機雷のように変わって渦の中で竹鬼の身体に爆裂する。
機雷の爆裂はどんどん激しくなり、その爆裂によって竹鬼の鎧は自身を縛る鎖と共に少しずつ砕けて、竜巻の頂上に飛ばされる。
竜巻から飛び出た竹鬼は昇布が全身を使って拘束し、今度は逆方向に回転して飯綱落としのように落下していき、残った鎧はボロボロと砕けていく。
そして地面にぶつかる手前で昇布は身体を離し、竹鬼はその真下にいる白の上に落下する。
「はあああああ!!」
白の繰り出した鉄扇の一撃によって僅かに残っていた竹鬼の鎧は全て砕け散り、人間としての姿が露出し、鋏刃の元に飛ばされる。
鋏刃が砂浜に右の鋏を突き刺すと、砂浜の地面は割れて少し深い穴に変わり、そこには大量の白い液体が詰め込まれていた。
そうこれこそが、鋏刃の仕掛けたもの。
自身の背中に群生する藤壺が噴出する溶解泡を大量に砂浜から作った穴に詰め込んだのだ、竹鬼はその泡の穴に落ちる。
「くそっ!!」
落ちなかった。
穴の周りにある淵を掴み落下を逃れたのだ。しかし、竜巻に巻きあげられ、爆裂に巻き込まれてボロボロになった竹鬼の音撃弦 竹林はくるくると回りながら白い泡の中に落ち、ジュウという音とともにその姿を消す。
自分は助かったと思う竹鬼。
「………常闇」
常闇
【ああ、任せろ】
白の言葉を聞いて何をすれば良いのか察した常闇は竹鬼に向けて自身の血で作った真紅の槍3本を竹鬼の淵を掴む右手以外の四肢に向けて放つ。
「がああああああ!!」
鎧を着けていない生身の身体にはとても耐えられる痛みではなかった。竹鬼はそれでも落ちまいと必死に淵を掴む。
だが、どんなに頑張っても自分の身体を右手のみで支えるのは無理があった。掴む力は徐々になくなりやがて穴に落ちていった。
穴の中に落ちて溶けていく自分の身体を見て竹鬼はふと、上を見上げると自分と戦っていた白が薄気味悪い笑顔とともに見下げていた。
「松竹梅兄弟は強いと聞きましたが期待はずれでした」
この時、ふざけるなと竹鬼は言いたかった。
「貴方より我が王の姉君であらせられる春詠さんの方がもっと強かったですよ」
俺を他の鬼と比べるな。と言いたくても喋ることは出来なかった。
溶解泡によって溶かされた喉に流れこんだ溶解泡が声帯を溶かしたのだ。
「所詮はそこら辺の鬼と変わらない鬼でした。ですが………」
白は言葉を一旦止めて、溶けていく竹鬼に三日月のように歪んだ笑顔で言った。
「少しは楽しめましたよ。幼稚園の学芸会くらいには」
白の言った言葉で心を壊された竹鬼。
自身の今までの努力を否定され、挙げ句の果てには幼稚園の学芸会くらいには楽しめた。この言葉を最後に竹鬼の身体は白い溶解泡の中に消えていった。
如何でしたでしょうか?
次回は最後の従者 黒の率いる黒チームVS松竹梅兄弟 末っ子の梅鬼です。
さらにお留守番組の様子も描こうと思います。