人間だけど私は魔化魍を育て、魔化魍の王になる。   作:創夜叉

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お待たせしました。
松竹梅兄弟の戦い。
黒、顎、睡樹、暴炎、蛇姫、食香、荒夜、狂姫、命樹VS梅鬼と
ひな、波音の護衛お留守番組の話です。


記録伍拾

SIDE梅鬼

 削っても削っても減らない。

 

「全く面倒臭いよ!!」

 

 梅鬼は両手に持つ音撃棒 梅欄を構えて目の前から迫るツタや火の玉、弓矢、木の根を自身に当たらないものは無視して、当たるやつのみをひたすら叩き落としていた。

 そして目の前にいる魔化魍たちを睨む。

 

シュルゥゥゥ

 

 ツタの腕を梅欄によって破壊されて、土から出る水分によって修復中の睡樹。

 

暴炎

【炎が、炎を、炎をくれ………………ありがとう蛇姫】

 

蛇姫

【どういたしまして】

 

 頭の炎が弱くなっている暴炎に炎の術で回復させている蛇姫。

 

【………………】

 

 次の矢を番えて梅鬼の頭を狙う狂姫。

 

ユレレレレレ

 

 睡樹と同じ様に破壊された根の脚を修復中の命樹。

 

「(見た感じ、回復にはそこまで時間が掛からないようですね)」

 

 梅鬼は目の前の植物の姿を持つ2体の魔化魍を見て、自己再生するのにどれくらい掛かるのかを確認し、それによって2体の魔化魍を倒す為に必要な時間を調べていた。

 だが、2体の植物魔化魍だけでなく、蛇の下半身を持つ女の魔化魍や頭と尻尾に炎を灯す2足歩行の蜥蜴の魔化魍も相手にしないといけない。

 

「(私は松鬼兄さんや竹鬼兄さんのようには………)」

 

 そう思った梅鬼はバックルに付いてる音撃鼓 梅雨を地面に置くと、梅雨は巨大化して梅鬼は–––

 

音撃打(おんげきだ) 積土成山(せきどせいざん)!!」

 

 梅雨に向かって梅蘭を叩きつける。

 

暴炎たち

【【【【?!】】】】

 

 睡樹たちは目の前の鬼に対して何をしていると思うが、それは直ぐに効果をあらわした。

 

シュルゥゥゥゥゥゥゥゥゥ  ボオオオオオオオオオ

ヒュウウウウウウウウウウウ  ユレレレレレレレレレ

 

 離れた場所にいるのに睡樹たちの身体に音撃が響く。

 先程の梅蘭の攻撃で腕を修復した睡樹と脚を修復した命樹は身体に亀裂が入っていきブチブチと身体に張り付いてるツタや根が千切れていく。暴炎や蛇姫もその身体に罅に似たものが出来ていく。

 

 あと少しで音撃が叩き終わる。そう思い、梅蘭を握る力をさらに強くしてさらに勢いよく梅雨に叩きつける。

 締めの一撃を梅雨に叩きこもうとした瞬間–––

 

プ……ルル………ル

 

 何かの声が聞こえ、とどめを放とうとする梅蘭の動きを止める。

 

プル…ルル……ルル

 

 風を切る音ともに何かが梅鬼に接近している。

 

プルルルルルルルル

 

 そして、音はハッキリ聞こえるようになり、それは背中の方から聞こえてくる。梅鬼が後ろを振り向くと目と鼻の先にプルプルした肌色の玉が飛んできた。

 そして、梅鬼の顔にプルプルした肌色の玉が衝突する。

 

 梅鬼は衝突した衝撃で梅蘭を離してしまい、梅雨が元のサイズに戻ってしまう。

 

 プルプルした肌色の玉いやヌッペフオフの食香。

 梅鬼は梅蘭と梅雨を拾って、その場から離れるように飛び、食香が飛んできた方を見ると、野球のピッチャーのように腕を真っ直ぐ伸ばした木こり 黒がいた。

 梅鬼は邪魔された怒りで歯軋りをする。

 

「( 後、一撃で決まったのに、クソ!!)」

 

 梅鬼の放つ音撃打(おんげきだ) 積土成山(せきどせいざん)は従来の音撃打とは異なり、地脈を利用して魔化魍に音撃を浴びせる技である。

 その為、一度でも梅蘭で攻撃を当てれば、それを目印にして地脈に音撃を当てて目印にした魔化魍に攻撃する事が出来る。

 しかし、攻撃を受けていない暴炎と蛇姫が音撃を受けたのは理由がある。この音撃のもう1つの特徴は攻撃を受けなかったとしても周りに攻撃を受けた魔化魍がいればそれをを中心に音撃を当てる事が出来る。

 

 だが、この音撃には弱点がある。

 地脈に接する、つまり地面に接していれば音撃を当てられるが、地面から離れている木の上や地面に触れることのない空にいる魔化魍に対してはほぼ意味のない技なのだ。

 

 『松竹梅兄弟』が今まで魔化魍を倒してこれたのは状況に応じた連携にある。空の魔化魍には松鬼が地からは梅鬼、その両方を攻める竹鬼の連携があるからこそたくさんの魔化魍を清めてきた。

 

 だが、この場には松鬼も竹鬼もいない。空を飛ぶ魔化魍は居ないが、先程の黒に飛ばされてきた食香の事もあり迂闊に動く事が梅鬼は出来なかった。

 

 そんな隙があったからこそ梅鬼は気付かなかった。後ろから迫る黒い面を着けた人型の魔化魍 ヤシャの荒夜が刀を収めた状態で走り、いつでも刀を抜けるように鍔に指を掛けて向かってきていることに。

 

「っ!!」

 

 荒夜の存在に気付き、梅蘭を振るが、遠くから飛んできた矢が振るった腕の梅蘭を弾き、そのまま梅鬼は右の肩から先を荒夜に斬り落とされた。

 

「ぐあああああ!!」

 

 斬れた痛みでもう1つの梅蘭を落としそうになるが、荒夜の振るう刀を防ぐ為に梅蘭を振るって、梅鬼は梅蘭を刀にぶつけた反動を利用して遠くに跳躍する。

 

SIDEOUT

 

 

SIDE狂姫

 嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼、早く早くその命を散らしなさい。

 

 そう思いながら次の矢を継がえて、愛しの人(荒夜様)が攻撃を仕掛ける鬼の武器に向けて、矢を放つ。

 矢は見事に武器に当たり、愛しの人(荒夜様)の持つ刀が鬼の右肩から先を斬り落とした。

 愛しの人(荒夜様)は再び、刀を振るが鬼はもう1つの武器で刀にぶつけ反動でその場から跳躍して逃げようとするが。

 

ヒュルゥゥゥゥゥゥゥ  ユレレレレレレレレレ

 

 その先に待ち構えていたのはツタの腕と根の脚を組み合わせたパチンコのような物を構えている睡樹と命樹。

 

ギリギリギリギリギリギリギリギリ

 

 そのパチンコの中心で構えている顎だった。

 

SIDEOUT

 

 

SIDE梅鬼

 顎が梅鬼の身体にパチンコの弾のように飛んでくる。そして、顎の上顎が梅鬼の腹部に突き刺さる。

 梅鬼は必死に顎を外そうと残った左腕を使うが、顎が上顎を食い込ませ梅鬼の身体の中に蟻酸を吹き込む。鎧の中の人間の身体はもちろん何も着けていないその結果は–––

 

「がああああああああああああああ!!」

 

 梅鬼の鎧の隙間から白い煙が出てくる。

 

「あぁぁぁぁぁ………ぁ、ぁぁ……」

 

 梅鬼の声はだんだんと小さくなって梅鬼の左腕の抵抗は弱くなり、鎧は少しずつ崩れていく。

梅鬼の身体の隙間から煙は無くなるが今度は隙間からドロッとした赤黒い液体が流れてくる。

 

「ぁぁぁ………」

 

 梅鬼の意識はどんどん薄れていき、顎はそのまま離れると梅鬼は鎧は崩れて、その鎧の中には梅鬼の身体はなく。空になっており、ドロドロと赤黒い液体が溢れるように流れ出ていた。

 

SIDEOUT

 

 

 

 

SIDEひな

 幽冥達が、想鬼と『松竹梅三兄弟』と戦いを始めた頃。

 

「王様ーー」

 

波音

【ミイラの王様】

 

屍王

【ハハハハハ、そうか我に民がいたとしたらこんな感じだったんだろうな】

 

 仮姿である全身に包帯を巻いた人型の魔化魍 ミイラの屍王。

 そんな屍王の身体の包帯をいじって遊ぶ、ひなと波音。彼は今代の王である幽冥に頼まれてひなと波音の護衛をしている。もちろん1体でではない。

 

 王の姉であり『8人の鬼』の慧鬼こと安倍 春詠。

 

 猛士北海道第1支部を裏切った調鬼の月村 あぐり。

 

 朧の友人の蛍の地球外生命体ランピリスワーム。

 

 美岬の用心棒をしていた機関銃を持った蛇のマシンガンスネーク。

 

 波音の側にいた実体のない幽霊蜂のインセクト眼魔。

 

 岩のような甲羅を持つ崩、古パイプに住むツートンカラーの貘の眠眠、あらゆる物を吸い込む大尊、尾の先に提灯を着けたオッドアイの蜥蜴の三尸と共に護衛をしている。

 

 いや、護衛は確かにしている。インセクト眼魔は自身の能力を使って無数の蜂を監視にして周囲を見張っている。さらには突然の奇襲に備えてか崩は大岩に化けて姿を隠している。

 だが–––

 

「ねえ、遊んでよお姉ちゃん」

 

波音

【遊んで、遊んで】

 

「うふふ。良いよ、おいで」

 

波音

【「わーい」】

 

 言うまでもないがひなは幼い人間で遊びたい年頃なのだ。だが、精神が成熟してる波音もこのような状態であるのかを言うと幽冥とひなのおかげだ。

 波音の見た目はひなと同い年にしか見えない。

 そんな波音はひなの遊び相手をよくしている。だが、幼いひなと遊んでいくうちに精神が少しずつ幼くなっていき見た目通りの精神になっていた。

 そして、民がいたらという事をひな達で考えてる屍王から離れて、少し離れた所にいたランピリスに声をかけている。

 

SIDEOUT

 

 

SIDE慧鬼

「和みますね」

 

「そうですね」

 

 そんな光景をお茶を飲みながら眺めてるのは春詠とあぐりだった。

 この2人は実は同期の鬼で友人関係である。

 当時、あぐりが歩だった頃に幽冥という妹の存在を知る前の春詠と出会い魔化魍の話をよくしていた。また前世の話を最初にした相手でもある。

 

「しかし前に言っていた慧鬼の前世の妹さんが今代の魔化魍の王とは」

 

「私も聞いた時はビックリしたけど幽だったらなんかあり得るかなって思ったよ」

 

「何でですか?」

 

「幽ね、私が嫉妬するくらい妖怪が好きだったのそんな子がまあ、そうしちゃったのは私が原因なんだけどね」

 

「へえーー」

 

 本当、あの時に響鬼を見せなかったら今の幽はいなかったんだろうな。

 

SIDEOUT

 

 

SIDE眠眠

 ふあああ〜。

 眠い、眠いけどあの子の相手は楽しい。

 

「楽しいい!!」

 

波音

【もくもく】

 

 自身の身体の一部を煙に変えてふわふわとひな達を浮かせている眠眠。そして、そんな姿を見て、微笑むランピリスに少しイラっとくるものはあるけど今はひな達の相手をしてあげないと。

 

 眠眠は自分でも気づいていないが、眠眠自体はかなりの子供好きである。その理由は後々明らかになる。

 

「ひなちゃーーん! 波音ちゃーーん! ご飯ですよ!!」

 

 春詠の声が聞こえて、ゆっくり煙からひな達を降ろす。もう少し遊んでという目で眠眠を見る。

 

眠眠

【ご飯を食べたら〜また遊んであげるから食べて来なさい】

 

波音

【「はーーーい」】

 

 ひな達は駆け足で廃寺の中に走っていた。

 

SIDEOUT

 

「さあ、行くよ」

 

「上等だ!!」

 

 北海道の戦いはついに最後の時を迎えた。




如何でしたでしょうか?
次回で長かった北海道編最後の戦いです。
お楽しみに

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