人間だけど私は魔化魍を育て、魔化魍の王になる。   作:創夜叉

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お待たせしました。
今回で魔化魍の王が4体目になります。歴代の王も後半分なりました。


記録伍拾肆

SIDE鳴風

 王が魔化水晶を触って、眠ってしまい。2日目の朝になった。

 以前の私だったら慌ててたけど、今は気にしていない。何故なら王は必ず目覚めるから。

 

鳴風

【今日もいい風が吹いてる】

 

 そう口にしながら空を飛ぶ鳴風。

 

【鳴風ーー!!】

 

 そう声が聞こえて、後ろを向くと–––

 

【一緒に飛ぼうか】

 

鳴風

【いいよ】

 

 兜が一緒に空を飛ぼうと提案する。

 鳴風は迷いのない即答で答え、兜は嬉しそうに鳴風の隣を並行して飛び始める。

 兜の種族であるアカエイと鳴風の種族イッタンモメンとは人間でいう親戚のような関係に位置する種族だ。

 似た外見をしているが、食料と育つ環境が異なる。イッタンモメンは汁系のものを好んで湖で育ち、アカエイは干物系を好んで海で育つ。

 そんなわけで2体はすぐに意気投合して仲良くなった。

 

【ねえ鳴風】

 

鳴風

【どうしたの兜?】

 

【あなたは心配しないの王のこと】

 

鳴風

【心配してないって言ったら白とかが怒りそうだけど、私はそんなに心配してないよ】

 

【そう】

 

 兜はそれから喋らずに鳴風と並行して飛んでいた。

 そして、2体は飛び続けて雲の上に着いた時ちょうどに日が沈んでいくところだった。

 

鳴風

【やっぱり綺麗だな〜】

 

【そうだね。でも、1ヶ月に1回しかでない満月も綺麗だよ】

 

鳴風

【じゃあ、今度私にも見せてよ】

 

【ふふ。良いよ】

 

 鳴風と兜はそのまま日が沈むまでその場で滞空し、日が沈むと貸家の方に帰るために人間たちに見つからないように飛んだ。

 

SIDEOUT

 

 

SIDE羅殴

 王が眠られて4日経った。

 俺は貸家の部屋の1つで木を削っている。

 今回、俺が作ろうとしてるのはからくり箱または秘密箱と呼ばれているものだ。

 

 いくつもの仕掛けがあってそれが鍵がわりになりその仕掛けを解く事で箱を開く事ができる。完成品はひなと波音に渡す。そして2人の感想や改良点を聞いて、また新しいものを作る。

 

 部屋にコンコンと木槌で叩く音がリズムゲームのように響く。

 彼のザンバラ髪は部屋の湿気で少しグショグショになり、それが水滴となってポタポタと下に垂れていく。

 

 からくり箱の制作を始めて数時間が経った。

 仕掛けの取り付けも終わり、今は彫刻刀を使って、箱の表面を削っている。

 削り終わったひなの箱には蝶の彫刻が彫られており、今彫っているのは波音ので鯉の彫刻を彫っている。

 

 

 

 

 

 

 さらに数時間経った。

 羅殴の前には色が塗り終わり、鮮やかな色のからくり箱が2つとその上に紙が2枚置かれている。そして羅殴が現在悩んでいるのは、どのタイミングで渡すかだ。

 

 だが、既に夜遅くで今のタイミングで渡すのは酷と思い、からくり箱を持とうとするが羅殴は睡魔に襲われる。食事もせずにずっと作業していたからか羅殴は床に倒れてそのまま深く眠った。

 

 羅殴が眠って少しすると。

 羅殴のいる部屋の扉が開き、誰かが入る。そして、入って来た者は箱と紙の存在に気付き、紙の1つを読む。

 

「コレハ………ヨク頑張ッタナ」

 

 読み終わった者は眠る羅殴の頭を撫でた後に背中にのせて、からくり箱と紙を持って、部屋から出た。

 

 

 

 

 

 

 俺はいつの間にか眠っていた事に気付き、布団を退かそうと………布団!!

 羅殴は身体を上げて、今の状況を見る。

 

 部屋はいつの間にか作業部屋から寝室に変わっていた。

 そして、俺の寝る布団の反対側には。

 

「すーーー」

 

波音

【むにゃむにゃ】

 

 気持ちよさそうにくっ付いて寝るひなと波音が布団の中にいて、その枕の近くには俺の作ったからくり箱が2つとも置いてあった。

 そして、布団をよく見ると–––

 

羅殴

【(成る程、黒が)】

 

 黒の着る木こりのベストも一緒に掛かっていた。

 羅殴はひな達が目覚めないようにゆっくりと布団から出て、黒を探し始める。

 その後、羅殴が黒にお礼を言えたかは、当事者の羅殴と黒しか知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ちなみに。

 

「これ羅殴の新しいやつだ!!」

波音

【うん。でもどうやって開けるんだろう?】

 

 この後、からくり箱を開けるのに四苦八苦するひなと波音を見た美岬が開け方を教えると、2人は楽しんで開けたり閉めたりを繰り返していた。

 

SIDEOUT

 

 フグルマヨウヒさんの話を聞いてた途中で、景色が変わる。

 先程までいた本を詰め込んだ棚が沢山あった空間とは違い、そこは水晶のように透き通った氷の部屋だった。

 

「お前が9代目か」

 

 そして、後ろを振り向くと。

 今まで会った事がある人型の魔化魍の中ではダントツに高い身長の女性が氷の玉座から私を見下ろしていた。しかも右首筋に青い龍の痣がある。

 病的な程に白い肌に巫女服のような着物、青い髪には氷柱を模した複数の飾り簪を指し、赤の組紐が両腕に巻かれていて、シンデレラのガラスの靴のように透き通った氷の下駄を履き、金色の瞳で私をじっと見つめている。

 

「はよう答えんか!」

 

 はい。私が9代目と言われている者です。

 

「そうか…………はー、それにしてもまさか人間が王に選ばれるとは」

 

 少し溜め息を出し、やれやれというように首を振る魔化魍の王様の1体。

 そして–––

 

「そうだった妾の名を申してなかったな」

 

 こほんと咳払いをして私に目を合わせる魔化魍の王様。気のせいか部屋の低かった温度がさらに下がった気がする。

 

「妾の名はユキジョロウ。7代目魔化魍の王をしていたものじゃ」

 

 7代目ということはシュテンドウジさんの前の魔化魍の王か。

 今思うと、これで王に会うのは4回目だ。

 

「そうだ。今回の王はもう4つも魔化水晶を集めたのかとな」

 

 へっ…………それってどう言う事ですか?

 

「今までで魔化水晶を集められたのは多くても3個だったんだが、お前は王になって間もないのにもう4つ集めた。これは今までの王が成し得なかった事だ誇るが良い」

 

 急にそんなこと……言われて、も………

 

「今回はここまでか、まあ良いまた会えるだろう」

 

 幽冥が現実に戻ったことに気付いたユキジョロウはそのまま目を閉じた。




如何でしたでしょうか?
今回は7代目魔化魍の王ユキジョロウを出させていただきました。

質問コーナー回答の欄
シュテン
【今回はうちが9代目の代わりにうちらが答えたるわ】

イヌガミ
【今回は覇王龍さんの先代の我ら魔化魍の王についての質問だな。今回は後の楽しみという事で名前のみ教えようと思う】

シュテン
【先ずはオオマガドキやな。我らから見たら初代魔化魍の王で魔化魍の憧れやったお方や】

イヌガミ
【次はそこにいるシュテンドウジの先祖にもなる2代目の王 フグルマヨウヒだ】

シュテン
【次はイツマデンちゅう王やな3代目の王だった王やな】

イヌガミ
【4代目はダイダラボッチという王だ】

シュテン
【5代目はうちの側にいる朧の実母のイヌガミや】

イヌガミ
【…………あ、6代目はキンマモンという王だ】

ユキジョロウ
【7代目は妾。ユキジョロウじゃ】

イヌガミ
【貴様いつの間に!!】

ユキジョロウ
【まあさして気にする事ではあるまい】

シュテン
【8代目はうちシュテンドウジや】

イヌガミ
【これで全部の王を紹介できたな】

ユキジョロウ
【気になる事があれば質問コーナーに書くが良い】

シュテン
【では、さいなら】

イヌガミ
【では、また会おう】

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