壱 転移
おかしい、おかしい。
あの後、準備が完了したということで貸家の中に全員(捕虜である突鬼と衣鬼は縛った状態で同じ場所に)集まり、崩と跳に転移の術を発動させた。
結果、術は成功して北海道にいた私たちは東京にある館に無事転移出来たが、転移した直後にまた別の所に館ごと転移した。
その場所はおそらく日本やアメリカなどの外国ではなく異世界。
その理由は、転移直後に見た景色。地面は闇を表すような漆黒で、樹木は灰色で葉は1つも付いていない。そして生命体は1つも見ていない。
だが、このままここでジッとしてもしょうがないので私は–––
「取り敢えず、お姉ちゃんと朧と美岬は着いてきて。ひなと波音はここから外に出ないでね。白と黒と赤はひなと波音をお願い。土門たちは館の防衛をお願い。
もしも生命体がいて友好的なら私に報告して、もしも敵対の意思を見せたら全力で敵を滅ぼしなさい」
「分かった」
波音
【分かったお姉ちゃん】
朧
【分かったよ幽冥お姉ちゃん】
美岬
【ふふふ分かったは幽】
「「「かしこまりました」」」
朧、美岬を除いた全員
【【【【【ハッ!!】】】】】
そして、幽冥たちは行動を始めた。
SIDE慧鬼
幽たちと共に歩いて数分経つが、周りの景色は館の中から見た景色と変わらずで、同じ景色ばかり続いてる。
幽は先程、朧に頼んでさらに先を走って見に行ってもらっている。
「何も無いですね。」
美岬
【幽。今は朧の報告を待ちましょう】
人間態の姿では無く、本来のヤオビクニとしての姿に戻り、その手には布で包まれた斬馬刀のような魚呪刀
「前世の頃だったら転生とかは信じなかったのに、まさか自分で経験するとはね」
美岬
【そうですね。私は魔化魍として、春詠さんは鬼として、幽は魔化魍の王として】
美岬の言葉で思い出すが、幽は魔化水晶が集まるたびに少しずつ魔化魍の王として人間の身体が無くなっていく。
どう足掻いても人間である私は寿命で死んでしまう。
だから、館の地下室にあった資料などで人間を魔化魍にする研究を幽には秘密で行なっているが、今だに人間を魔化魍に変える方法は見つかっていない。
「幽冥お姉〜〜ちゃん!!」
そうこう考えていると、朧が声をあげながら幽の胸元に飛びついた。
「おかえり朧。何か見つけたの?」
朧
【うん。でも此処からかなり離れた所にあったから幽冥お姉ちゃん達を背に乗せて走った方がいいと思って。だから全員乗って】
そう言って、朧は擬人態を解除して本来の姿に戻し、身体を屈めて、幽冥たちが乗りやすい体勢になった。
「朧、凄いサラサラだね」
「確かに幽の髪よりサラサラしてるかも」
美岬
【朧、後で手入れの方法教えて】
朧
【いいよ。じゃ、みんな乗ったみたいなので、目的地まで走るから振り落とされないようにね】
そう言って、走り出す朧。
そして速度はどんどん増していき、遂には流れる景色が映像のように見えるほどの速さで走り出す朧。
そんな風に走る朧の上に乗って数分。
朧の走りは徐々にゆっくりしていき、やがてその脚を止めた。
朧
【ほら、あれだよあれ!!】
朧が何かを見つけた方向に幽冥たちは顔を向ける。
「「【!!!】」」
それを見た瞬間に息を呑んだ。
生命が一切存在しないと思われた世界でハッキリと生命が存在すると思われるものを朧は発見したと幽冥は思った。
そこにあったのは、まるでおとぎ話の王子様の住むような大きな西洋の城だった。
SIDEOUT
SIDE◯◯
「流石は陽くん。此処、
さて、早く来ないかな〜〜
その城の中に住まう女性は幽冥たちの来訪を楽しみに待っていた。
如何でしたでしょうか?
城を発見した幽冥たちはその城に向けて、歩みを進める。
そして、館に残った白たちに送られる使者と名乗る異形。
次回、人間だけど私は魔化魍を育てています。コラボ編 魔化魍の王と煉獄の義姉弟 弐 邂逅。
お楽しみにしてください。