初めに陽太郎VS暴炎
陽太郎VS荒夜
陽太郎VS屍王
を送りします。
それは唐突に始まった。
荒夜
【陽太郎殿、少々手合わせを願いたい】
その言葉を言ったのは美岬の部下とも言えるヤシャの荒夜だった。陽太郎さんは最初は少し驚いていたが、その顔は獰猛な笑みに変わる。
そして、それを見た薫さんも私の家族に–––
「誰か勝負しない私に勝ったら叶えられる願い叶えてあげるよ」
その言葉に反応した骸と狂姫、拳牙は薫さんに詰め寄る。
骸
【その話って】
狂姫
【本当に………】
拳牙
【本当に叶えてくれるのですか】
「う、うん。叶えてあげるよ………私に勝てたらね」
そう言った後に薫さんは陽太郎さんに目を向けると、陽太郎さんはパチンと指を鳴らす。
その瞬間に、城の中庭にいた私たちはコロシアムの様な場所に移動した。
館は如何やら、城の中庭にあるらしい。
「挑戦者はコロシアムの中央に見学者はコロシアムの席に移動してください」
私たちはそのまま、席の方に移動する。
SIDE陽太郎
「では私達、鬼崎義姉弟と挑戦者による試合を開始します!! 最初は陽君からだよ」
コロシアムの中央にいる義姉さんの声がコロシアムの中で響き、見学者となっているクローズや眼魔コマンド、ヒトカラゲと魔化魍の王の家族の一部の声がコロシアムに響き渡る。
「まずは誰からやりますか」
暴炎
【俺と、勝負】
「良いですよ」
陽太郎が茶色の笛を吹くと空から2匹の蝙蝠が飛んで来る。
そして陽太郎の手に止まると、光を放ち蝙蝠の姿から2丁の銃 『
「先ずは小手調べです」
陽太郎はそう言うと、
暴炎
【………】
暴炎は身体に密着して隠れている腕を出して、頭の炎を操り、銃弾を焼却する。頭の炎を元の位置に戻して、暴炎は陽太郎に向かって駆ける。
陽太郎は走る暴炎に向かって撃つが、暴炎はギリギリの所で躱して、その距離をどんどん近付けるが陽太郎は–––
「
暴炎
【っ唸れ!!】
ゆらゆらと暴炎の頭部で燃えてる炎は暴炎の声で勢いを増して、暴炎の身体全体を炎が包み込んで、
だが、そこには暴炎の姿が無かった。
「っ!!」
陽太郎は後ろから迫る気配に気付き、振り向くと口から炎を吐こうとする暴炎がいた。
だが、陽太郎は暴炎の下顎に向けて蹴りを入れ、炎を吐き出そうとする暴炎の口を無理矢理に閉じさせる。炎を吐き出せずに暴炎は目を見開く。
陽太郎は
陽太郎は暴炎を宙に蹴り上げて、再び銃口を暴炎に合わせる。
「
宙に上げられた暴炎に特大の雷が当たる。雷はそのまま暴炎の身体に留まり、陽太郎が構えを解くと、少し黒焦げになった暴炎が落ちて来る。
「勝負あり」
義姉の声が響き、陽太郎はハッとする。久々の屑転生者以外との戦闘で最後だけつい本気になってしまった。
そして、暴炎の傷を治す為に近づこうとするが、いつの間にか暴炎は朧に咥えられて、幽冥の元に移動し、ドレスから赤紫の着物に姿を変えた幽冥が口移しで何かを暴炎に飲ませていた。
徐々に傷が無くなっていく暴炎を見て、陽太郎は安堵する。
「さて、次は誰がやりますか」
陽太郎の視線は、残りの挑戦者の荒夜と屍王に向けられる。
「では次は私がお相手願います」
荒夜は刀を帯に通して、陽太郎の前に立つ。
それを見た陽太郎は今度は口笛をピィーーと吹くと–––
アオオオオオン
遠吠えと共に朧とは違う逞しい青い狼が陽太郎の元に現れる。
「いくよガル!!」
アオオオオオン
ガルが遠吠えをすると少し明るかった空が黒く染まり、三日月が輝く夜に変わる。
そして、ガルは青い剣 『
「同じ剣で勝負してくれてかたじけない」
わざわざ自分と同じ武器を使ってくれた陽太郎に感謝の言葉を荒夜は送る。
「いいよ。それにガルは僕の相棒だし、それに貴方とは剣で勝負したいんです」
荒夜
【重ねて感謝する…………では、征くぞ】
荒夜の姿は擬人態を解いて魔化魍としての姿に戻り刀を構える。
陽太郎も剣を構えて、2人は隙を伺う。
SIDEOUT
………って、またいつの間にかこの姿になっていた。
そして、私の膝の上には橙の髪の青年が静かに呼吸をしながら眠っていた。まあ、さっきの試合をしていた家族を考えて、この青年は暴炎だろう。
そして、陽太郎さんに次に挑むのは荒夜のようだ。
美岬の話によると、荒夜はとある武家の武士だったと聞く。居合を得意とし、その時代では居合を使った戦いにおいては負け無しだったといわれる。
荒夜は刀を横に向けていつでも居合をできる体勢に変える。
陽太郎さんは蒼い剣を担ぐと、数人の陽太郎さんに分身する。
「「「えええええ!!」」」
突然の事に私たちは驚く。
そんな私たちを薫さんが微笑んだ顔で見る。
SIDE荒夜
突然の分身に私は驚くが、数が増えただけと思う。
「では、行きます
分身した陽太郎殿が私に迫る。私は迫る刀身に合わせて刀を抜いて、剣戟を防ぐ。
しかも、ただの分身では無いようだ攻撃を受けた手応えがどれも本物だった。おそらく、分身と言っても本物と大差ない分身なのだろう。
だが、分身は分身だ。
こっちにも1対多に対する剣技も持っている。
荒夜
【閃居合流 絢爛】
刀を抜き、迫る陽太郎殿達の首、胴、腕、脚に連続の居合を浴びせる。
分身の陽太郎殿は1人を残して、黒いモヤとなって消える。
「驚きましたね。私が本物だと気付いていたんですか?」
荒夜
【いいえ。ただ貴方程の実力者が避けれない筈がない】
「ははははははははは!! そうですか。僕がここまで笑ったのも久しぶりです。ですから、特別に私の技を1つ教えてあげます」
荒夜
【ほお、それは興味深いですね】
「今から1回だけ見せます。それを覚えて私に使ってみてください」
陽太郎の剣は蒼炎に包まれる。そして–––
「煉獄一閃」
蒼炎と共に振り下ろされる一撃はコロシアムの床を砕いて、燃やし尽くした。
その光景を見た鬼面の下にある私の顔は歓喜に満ちた顔に変わっていただろう。なにせ、幾人もの転生者を屠った男の技を伝授して貰ったのだから。
「では、荒夜さん。どうぞ」
陽太郎は荒夜の前に立ち、
荒夜
【陽太郎殿、貴殿の技を私なりに解釈して使わせて頂きます】
荒夜は刀を旋風回転し始める。
陽太郎はいきなり刀を回転させる荒夜に質問をしようと思うが、それは無用になった。
荒夜の刀が徐々に赤くなり、やがて炎を灯す。更にその刀を鞘に納刀する。
だが、なぜ荒夜がこのような方法で炎を生み出したのかというと、彼の魔化魍の属性は茶、地の属性だ。そして、彼は近接戦闘に特化している為か、術を使った攻撃や補助という術を使うことが出来ない為、このような方法を使って、炎を作り出したのだ。
荒夜
【では、参る!!】
三日月の光が荒夜の姿を照らす。
三日月の光に照らされながら荒夜は陽太郎に向かって走る。そして、陽太郎との距離がわずかというところで刀を抜く、刀は赤銅色に変わり陽太郎を倒す為に必殺の剣戟が迫る。
荒夜
【煉獄一閃!!】
「煉獄一閃!!」
陽太郎も己の煉獄一閃で対抗する。そして、2つの剣がぶつかり合い、込められた熱同士の激突で爆発が起きる。
立っていたのは–––
「凄いですね荒夜さん。此処までとは………」
服が少しボロボロな陽太郎だった。
荒夜は折れた刀を握りしめたまま倒れていて、折れた刀身が近くのコロシアムの床に突き刺さっていた。
だが、陽太郎も無傷ではなかった。 ピシッと響く音で陽太郎は自身の剣を見ると、刀身に僅かな罅がはいっていた。
「荒夜さんは貴方は見事に私の煉獄一閃を習得しました。これはその腕を讃えてお贈りします」
陽太郎は倒れる荒夜にそう言うと、彼の握っていた刀と離れた刀身を持って、その場で刀を造り出す。
出来た刀を荒夜の手に握らせた。
すると、荒夜と似た白の鬼面を着けた和服の女性 狂姫が現れて、倒れている荒夜を抱えて、陽太郎に顔を向ける。
狂姫
【荒夜様があそこまで楽しそうにしていたのは久しいです。陽太郎様、荒夜様のお相手有難うございます】
言いたいことを言った狂姫はそのまま、幽冥の元に術を使って移動した。
「(いい奥さんですね荒夜さん)」
SIDEOUT
SIDE陽太郎
そして–––
三日月の夜が消えて、荒夜のいないコロシアムに仁王立ちで立つ屍王がいた。
屍王
【ハハハハハハハハハハハハハ、漸く我の出番か!!】
どうやら先程の一戦を見て、本気を出す気になったのだろう。
包帯を全身に巻いている仮姿から本来の姿に戻っていた。
手に持っていた剣はいつの間にか消えており、水色の笛を吹くとコブラが飛んで来る。途中でコブラが光ると鎌へと姿を変えてグルグルと回りながらに陽太郎の手元に収まる。
『
「
先まで戦った暴炎や荒夜の時とは違い、陽太郎は技を放つ。彼の長年の転生者との戦いの経験による感が屍王をただの魔化魍とは違うと思ったからだ。
だが、屍王はその場を動かずに長杖を振る。屍王の長杖から光の光線が発射され、光のループを消し去る。
消えたループを見て、眼を見開く陽太郎は自分に迫る光線に気付き、陽太郎は体を屈めて避ける。
屍王
【随分と軽い攻撃だな、そんな脆弱な攻撃ではなく本気を見せろ】
屍王は体勢を崩さずに長杖を地面に突くと、地面から大量のミイラが飛び出て陽太郎に迫る。
「自分だけ高みの見物ですか?」
「王は座して戦うものというが、我はそのような王ではない」
そう言った屍王は長杖の先を光らせて、術を放つ。
突然の地割れ、空中からの落岩、飛んで来る石飛礫、死角をついた土の槍などといったあらゆる茶属性の地の術と屍王の身体から吹き出す黒い何かが陽太郎を襲う。
だが、陽太郎もやられてるだけではすまない。迫るミイラ達の中から1体を蹴り飛ばして、他のミイラを巻き込んで転倒させる。
「
紫のオーラを纏った
屍王は杖を構えて、陽太郎の一撃を長杖で防ぐ。
屍王
【やるではないか。だが、我が術だけしか使えない王ではない!!】
長杖を使った屍王の攻撃は軌道を読みづらく、陽太郎を苦しめる。
SIDEOUT
SIDE薫
初めて見た陽くんがここまで追い詰められるなんて–––
薫は此処まで追い詰められる義弟を見て、少し不安に思った。
美岬
【薫さん】
美岬の声に気付き、薫は美岬の方に顔を向ける。
その顔を見て、美岬は微笑んで薫を安心させるように喋る。
美岬
【大丈夫ですよ屍王も引き時は理解しています】
「………それにしてもあの魔化魍は何ですか」
美岬
【そうですね。彼は古代エジプトで造られた『人造魔化魍』です】
「人造魔化魍!?」
美岬
【そうです。とあるファラオのスペアとして造られました。
ですが、その王は暴君とも言うべきファラオでした。彼は民を救う為に反旗を翻しましたが、創造主に刃向かった罰で封印されました。
彼は思ったんでしょうもっと強ければ、民を救えたのではないかと………】
「………」
美岬
【ですから彼は仲間の力を借りて、今の強さになったんです。2度と大切な民を失わないように】
薫は屍王の過去を聞き、彼の強さの理由が分かった気がした。
SIDEOUT
SIDE陽太郎
強い。
おそらく、この場にいる魔化魍の中では明らかな上位に位置する強さなのだろう。
だが–––
「(僕はこの
陽太郎は、心の中でその事を思い出し、屍王に強い視線を送る。
屍王
【そうだ! その眼だ! 我はその眼を見たかった!!】
屍王は余裕にも似た陽太郎の眼が気に食わなかった。だが、荒夜との戦いの時に見えた眼を見て、屍王はもう1度見て見たかったのだ、彼の眼を、余裕という慢心を捨てた男の本気の眼を。
歓喜に似た声を出す屍王は長杖を掲げる。
屍王
【ファラオの名の下に『
杖を中心に発生した巨大な光の柱は屍王を包み込む。
光が消えると、そこには先の姿とは違う、屍王がいた。
黒かった体躯は金に染まり、頭部の角は鋭さを増し、手には
この姿は
通称 超ファラオモード(名付け親は跳)
陽太郎は、
屍王も
「
屍王
【
片やピラミッドを模したエネルギー、片や太陽を模したエネルギーがぶつかり合い、鍔迫り合う。
だが双方のエネルギー態は同等なせいなのかだんだんヒビが入っていく。このままでは大規模な爆発が起きてこのコロシアムは消滅してしまう。
それに気付いた幽冥と薫は同時に立ち上がり、幽冥と薫はエネルギー態の方に向かう。
そして、赤紫の和服から札が大量に貼られた漢服に姿を変えて、手に持つ数枚の札を持ち、薫は手に黒いオーラを纏わせる。
「巨なる力よ減退せよ!!」
「
幽冥の手から離れた数枚の札はエネルギー態に付くと、エネルギー態の大きさを小さくしていき、やがてソフトボールサイズに縮小して薫の手から放たれる
「
薫は空に向けて、エネルギー態を解放して、エネルギー態は空に昇っていき、やがて巨大な爆発と共に消滅した。
幽冥と薫はそれを見て、安堵し屍王と陽太郎の方を見る。
屍王
【お、王よ何を………は、離せ!!】
「ね、義姉さ………ね、義姉さん勘弁して」
結果的に言うと、屍王と陽太郎の戦いは引き分けとなった。そのすぐ後に幽冥は屍王を、薫は陽太郎を何処かに連れて行った。
そして、屍王と陽太郎はごめんなさい、ごめんなさいと言いながら正座した姿で見つかり、幽冥の家族達(春詠と美岬を除く)は幽冥を決して怒らせてはいけないという暗黙のルールができたのは言うまでもない。
SIDEOUT
SIDE◯◯
凄い、私たちもあの様なもの達に仕えたい。
コロシアムにいた
如何でしたでしょうか?
今回、登場した屍王の姿は安倍家の魔化魍 変異態+幻魔転身集 壱の巻で追加しました。
次回は薫の戦いになります。