人間だけど私は魔化魍を育て、魔化魍の王になる。   作:創夜叉

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お久しぶりです。
波音の捕食方法を悩んでたら遅くなりました。


漆 宴会中編

「僕が考えていいんですか。幽冥さん」

 

「いいとお思います。それに陽太郎さんならいい名前をつけてくれそうな気がします」

 

「そうですか。では、名前は此方で考えさせてもらいます。………あ、そうでした!」

 

 何かを考える動作をした後に、はじにいるヒトカラゲ達を見て何かを思い出す。

 

「館の名前は後になりますが、先にこちらの話を済ませますね」

 

 そう言った陽太郎の背後には眼魔コマンド、ヒトカラゲ、クローズがそれぞれ4人1組で現れる。

 すると–––

 

「彼らは貴方の家族の力と魅力で、貴方の部下になりたいという者達です」

 

 その言葉を理解するのに私はその場で固まっていた。

 

 その後、白や春詠お姉ちゃんの手で意識が戻った私は、そのことを考えていた。

 私は整列する眼魔コマンド達を見る。どの子も覚悟を決めているという眼をしている。

 

「陽太郎さん。私はまだ陽太郎さんのような立派な主ではありません」

 

 この言葉を聞き、眼魔コマンド達は少しショボンとした空気が出るが、私は気にせずに続きの言葉を出す。

 

「………ですが、まだ王として目覚めていないこんな私でも彼らの主にはなれるでしょうか?」

 

 その言葉を聞いて少し呆気にとられる陽太郎さんはすぐにその顔を笑みに変えて、眼魔コマンド達はショボンとした空気から感謝のような空気がでる。

 幽冥は眼魔コマンド、ヒトカラゲ、クローズの3種族の戦闘員を12名を部下にした。

 

SIDE眠眠

 ここは海と書かれた扉の繋がっている先である。

 太陽が照らす透き通った海と照り輝く砂浜にはいくつものバラバラの死体(・・・・・・・)があった。

 死体の一部はまるで体内から破裂したものや胸元に大きな穴を開けて干からびたもの、腹からでる臓物が一纏めにされて顔の皮を剥がされたもの等多種多様な死体が砂浜の白い砂を赤く染め上げる。

 

「がああああああ」

 

眠眠

【ねえ、よくも僕の好きなものを傷付けたね】

 

 煙の身体で男の身体を締め上げる眠眠はどんどん力を込めていく。

 締め上げられた箇所や顔、身体中の穴からどくどく血が流れていき、男は激しく抵抗するも–––

 

眠眠

【動くなよ(ゴミ)が!!】 

 

 抵抗にイラついた眠眠は自身の入っている古パイプを男の頭に突き刺す。

 痙攣する男の額にぐりぐりと古パイプを動かす。やがて、痙攣は止まり男は事切れる。

 

 眠眠は全身を煙に変えて男の死体を包み込み、死体は煙の中でどんどん小さくなっていき、やがて最後には形も残さずに消える。

 

眠眠

【………美味くない。こんな屑はやっぱり不味い】

 

【あなたって子供が好きなのね】

 

眠眠

【分からない。でも、あの屑が子供に手を出したのは間違いない】

 

 そう。砂浜に散らばるいくつかの死体はほとんどは眠眠がやったものだ。

 

【まあ食べたくないなら良いけど、いくつかは波音にあげてくれないかしら。あの娘、獲物を獲れないから】

 

眠眠

【分かった】

 

 眠眠は煙を操作して砂浜に散らばる死体を1つに纏めて、煙で圧縮して団子に変え、術で空間に仕舞う。

 それを見届けた兜は獲物を探すために飛び去った。

 

SIDEOUT

 

 兜は砂浜から飛び去った後に海に潜行して、獲物を探している。

 そうすると派手な爆発音が響き、その場所に向かってその巨体を動かす。

 

 そこには一隻の船とマストに鋏を食い込ませる鋏刃と船底の板に歯を食い込ませる穿殻、船員を触手で捕まえる浮幽がいた。

 

ンキィ、ンキィ

 

穿殻

【ご飯、ご飯】

 

ルルル、ルルル

 

 マストを折ろうとする鋏をハンマーで砕こうと船員は動くが、鋏刃の口から吐かれた溶解液で全身を溶かし、骨になった人間を余った左の鋏で口に運び、ガリゴリと嫌な音が響く。

 

 穿殻は触手の1本を獲物となる人間の頭に動かし、そこにいた人間の頭は綺麗になくなり、胴体のみの身体から大量の血が流れ出る。また胴体にも群がるように触手が飛びつき死体はなくなる。

 

 船員が浮幽の触手にカットラスで斬りかかるも触手の柔らかさに弾かれてその身体はどんどん干からびていき、ミイラとなると浮幽は次の獲物に触手を伸ばす。

 

「早く逃げるんだ。おめえら………がっ!!」 

 

 船長らしき人間の胸元に兜は自慢の尾を突き刺して、体液を吸い取り、船長はミイラになった。

 

「せ、船長!!」

 

「よくも船長を!!」

 

 カットラスを構えて、こっちに飛び乗ろうとするが、無駄だ。

 

「「ぎゃああ!!」」

 

 1人は穿殻の触手が喰いちぎり、残った胴体から臓物がボトボト溢れる。

 もう1人は浮幽の触手が胴体に絡まって青い炎を灯した触手から炎を放ち、捕まえたもう1人を焼き、空間に仕舞う。

 

ルルル、ルルル

 

穿殻

【波音のだよね】

 

ルルル、ルルル

 

 肯定という感じで触手を突き出す浮幽に穿殻は納得する。

 穿殻はそのまま船の竜骨を触手でへし折ろうと力を込めようとするが–––

 

鋏刃

【止めろ】

 

 突然発した鋏刃の声で折ろうとした竜骨から触手を外す。鋏刃もよく見るとマストに食い込ませていた鋏を外していた。

 

穿殻

【急にどうしたの何時もなら容赦無く沈めるのに】

 

 鋏刃と穿殻、浮幽、そして、この場にいない赤と今は亡き鋏刃と穿殻の親であったバケガニの童子とサザエオニの姫は波音に出会う前まで原因不明の遭難事故に見せかけて船を襲撃し、人間を喰らっていた過去がある。

 鋏刃は船に対して、いい感情を持っていない。幼少の頃に人間の船に轢かれそうになった鋏刃を助ける為に、バケガニの姫が身を呈して救ったが、バケガニの姫はその時の傷で死亡した。

 

 それ以来、鋏刃は船に憎悪を抱き、船を沈めてきた。だが、そんな鋏刃が今、穿殻に向けて『止めろ』と言った。

 これには長年の付き合いともいえる穿殻も浮幽も驚いていた。

 

鋏刃

【この船はあと少しで我らと同じになる】

 

 その言葉を聞き、穿殻も浮幽も船から触手を離す。

 我らと同じになる………つまり同胞が増えるという事だ。

 鋏刃は壊さないように船に鋏をかけて押して沖まで持って行った。

 

SIDE波音

 私は他のみんなのようにひとりで狩りが出来る訳ではない。

 東洋3大人魚魔化魍の一角に数えられるが、戦闘能力は人間の子供と変わらないひ弱なものだ。その力を補う為に私はある事を美岬に提案した。

 それは–––

 

波音

【はあー、はあー】

 

美岬

【少しは出来るようになったね。まあ、及第点って所かな】

 

 肩で息をしている波音を見て、まだまだ伸びを感じる美岬はそんな事を言う。

 そんな息を荒くしている波音の前には胸元に空いた一点の穴がある死体がある。

 

 波音の手には赤紫のレイピアに似た小太刀が握られていた。

 

 これは、美岬の持つ魚呪刀の1つで、その名は刺鱏(しえい)

 伸縮自在の刀身に先に塗られた神経系の毒を持つ魚呪刀だが、美岬は広範囲の攻撃を可能とする斑鰒(まだらふぐ)を使う為に似た能力を持つ刺鱏(しえい)をどうするか悩んでいた時に波音の話があった。

 波音の戦闘能力向上と使わない刀を持っていても仕方ないという理由で、刺鱏(しえい)を波音に渡し、大量の生きた(人間)がいるという事で波音は現在、3人の人間を刺鱏を使って仕留め、美岬は溢れた2人を仕留めた。

 

美岬

【そういえば、貴方はどういう風に食べるの?】

 

波音

【私はこういう風に】

 

 波音はそう言うと、尻尾の先が3つに別れて、その中央から牙がズラリと円状に並んだ口が見える。

 波音の尻尾は死体の1つに齧り付き、ブチチッと筋繊維が千切れる音とともに死体の上半身は波音の腹に収ま

 その様子を見ていた美岬は–––

 

美岬

【(わーークリオネみたい)】

 

 と思っていたらしい。

 ちなみに美岬はその様子を見ながら死体を腕の力で引き裂き、中から飛び出す臓物を啜って喰っていた。

 

SIDEOUT

 

「ねえ。陽太郎さんこの子達に名前送っていい」

 

 その言葉に眼魔コマンド達は驚愕する。今まで名前を持った戦闘員達のほとんどはなにかしらの功績を持ったものがほとんどだ。だが、彼らは生まれてからそれほど経っておらず功績を取ったことがない。

 そんな自分達が名前を貰っていいのかと–––

 

「まあ、名前と言ってもコードネームみたいなものだよ」

 

「それは良いですね。ねえ、義姉さん」

 

「そうね。良いじゃない。ちなみに名前は何って呼ぶの?」

 

「眼魔コマンド達は黒服、クローズは黒帽、ヒトカラゲは群青鎧と呼ぼうかと」

 

 その事を聞き、戦闘員達は歓喜に似た感情を覚えて、この事を喜んでいた。

 

「王様よ、ちっと話だが良いか?」

 

 そう言ったのは、人間に化けているマシンガンスネークだった。

 

「そいつらを俺たちに預けてもらえねえか」

 

 俺たちと言うのはマシンガンスネークを含めて、ランピリスワーム、インセクト眼魔の事だろう。

 

「(確かに、陽太郎さん曰く、戦闘経験がない戦闘員を育てるには戦闘経験が豊富な怪人がやった方が良いでしょう)」

 

 そう思った幽冥は首を縦にふる。

 

「シャシャシャ、そうか。じゃ戻ったら俺たちが鍛えてやる。安心しろ1人で鬼と対等に戦える位まで鍛えてやる」

 

 人間の姿なのに背後には大きく口を開ける蛇が見える。

 

SIDE鳴風

鳴風

【海は広いなー大きいなー】

 

 海の中を泳ぎながら歌う鳴風。その尾からは赤い線を描き、その線が出始めてる所には複数の絞られた死体が浮いていた。

 そして、泳いでると上に影を見つけ、顔を出すと人間の血を吸う唐傘がいた。

 

唐傘

【////////】

 

 唐傘は私に気付いたのか、翼で死体と自分の顔を隠す。

 

鳴風

【ごめん】

 

唐傘

【良いよ。普通に術で仕舞っておけばよかったと思うよ】

 

 唐傘は何故か理由は不明だが、人間を喰らう際には姿を消しているか自分の作った巣の中で喰らっている。

 だから鳴風は素直に謝る。

 

鳴風

【何で、姿をいつも隠すの?】

 

唐傘

【………】

 

鳴風

【言いたくないなら言わなくて良いよ】

 

唐傘

【いや、大した理由じゃないよ…………その恥ずかしいから】

 

鳴風

【へぇ!】

 

 まさかのそんな理由とは思わずに変な声をあげる鳴風。

 

鳴風

【でも、どうして恥ずかしいの】

 

唐傘

【そのね。みんなと一緒の食事って慣れてなくて………その………】

 

 鳴風は喋る唐傘の言葉で何故一緒の食事が苦手なのか理由が分かった。

 唐傘は館の男女に造られた人造魔化魍の一種で失敗したという理由で、封印を施され地下の倉庫に閉じ込められた。

 集団行動にあまり慣れないのはその為と判断した鳴風が取ったのは–––

 

鳴風

【これから少しずつ慣れていけば良いよ】

 

 母親の代わりのように唐傘の面倒を見る事を決めた鳴風だった。

 

SIDEOUT

 

 

SIDE跳

 海のど真ん中にある島の森の中に血飛沫が飛び散る。

 身体から何かが貫通してその穴から血が出ていく。

 人間はチーズのように穴だらけになり死体が重なっていく。

 

ショキ、ショキ、ショキ、ショキ

 

 笊の上で研ぐ小豆の音と共に青い作務衣を着た雨蛙の魔化魍 アズキアライの跳は獲物の人間に得意の小豆の投擲を放つ。

 

【今回は良い苗が沢山手に入りそうでやす】

 

 そう言いながら次から次と死体を術で仕舞い、自分も僅かに残った肉片を舌で掻き集めて纏めて喰らう。

 

【そろそろあっちの苗は収穫出来そうでやす】

 

 人間の身体を貫通した小豆を再び、集めて笊に乗せていく。

 それを繰り返しているせいか笊は既に赤黒くなり、中の小豆も血に染まって赤く輝いている。

 

【誰でやす】 

 

 何かの気配に気付いた跳は小豆を投げつけるが、手応えがなかった。

 

【私ですよ跳】

 

 木を掻き分けて現れたのは、一部が液体化して跳の攻撃を無力化し、その手には首の骨が折られた人間を持った魔化魍 スイコの拳牙だった。

 

【すまねえでやす。どうにも作業中は神経質になりやすく】

 

拳牙

【何も言わずに近づいた私が悪いんです。気にしていません】

 

【それは、申し訳ないでやす。館に戻りやしたら良いおはぎをご馳走しやす】

 

拳牙

【それは楽しみです】

 

 そう言うと、拳牙は手に持つ人間を自身の身体を変質させた液体に包み込み、全体が包まれると水圧で圧縮して団子に変えて取り出し、自身の口に持っていき喰べ始めた。

 宴会はまだ少し続く。




如何でしたでしょうか?
次回は住宅街での魔化魍達の食事を書き、宴会を終わらせます。
最後あたりに館の名前を出します。

気になることがあったら活動報告の質問コーナーに書いてください。

では、また次回。

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