人間だけど私は魔化魍を育て、魔化魍の王になる。   作:創夜叉

68 / 165
お待たせしました。
本当は昨日投稿するつもりでしたが睡魔に負けてこの時間に投稿させてもらいました。


路地裏の薬屋

 睡樹の目的である野菜の種を買い終えて、妖世館に戻る道の時に見つけた路地裏。

 そこに何かあると感じた私はそのまま路地裏に入っていった。

 

 睡樹も昇布も路地裏に行く私に気付いて、着いてくる。

 すると、1つの店を見つける。

 

 こんな所に店なんて有ったんだと思い、近付いて見るとその店の状態に驚いた。

 

 壁一面には中傷的な言葉で書かれた紙が貼られ、窓は1枚残らず割られて僅かな欠片が窓枠についてる程度、扉は一度火がつけられたのか下の部分が焦げて黒くなっている。

 

「この店……入る…の主?」

 

「うん。少し気になってね」 

 

 睡樹にそう言って私は店の扉に手を掛けて扉を開ける。扉についてる鈴がチリンと鳴る。

 中は外とは違って、綺麗だった。だが、よく見ると僅かなガラスの破片が散らばっている。

 棚には色んな種類の薬瓶が均等に置いてあり、その下の嵌ってるプレートには効能が書いてあった。

 

 睡樹と昇布はこういう店に入るのが初めてなのか、置かれてる薬瓶を手に取り見ている。

 

「あ」 

 

 女性の声とガラスの割れる音が聞こえ、私は後ろに向くと緑の頭巾を被り、杖をついた女性が奥にある部屋から出てきていた。

 店員というよりはこの店の店長だろう。

 

「………いらっしゃいませ」

 

 女性は私が客だと気付いて、挨拶をしてレジの方に向かい椅子に座る。

 何でか知らないが、あの店長が気になってしまう。

 

「王よ。あの女、先程まで分かりませんでしたが魔化魍です」

 

「えっ!」

 

 昇布が耳打ちした内容に驚き、店長を見るが私には何も感じない。

 その様子を見て、再び昇布は私に耳打ちする。

 

「おそらく、薬か何かで誤魔化しているのでしょう。それで正体に気付かなかったんだと思います」

 

 そう言われて私は買っていこうと思う薬瓶を見ながら、後ろの店長がどんな魔化魍なのか考えてた。

 

SIDE◯◯

 私はあと3日でこの店を畳む。

 

 私の思い出の詰まったこの店を手放すのは嫌だけど、アイツらは店を手放せば、客には手を出さないと言ったがどうせ嘘だ。

 でも、私がこうすれば客に被害はない。

 それまでの残り僅かな時間を過ごそうと思い、今日作った薬を並べようとしたら、お客がいた。

 

 しかも普段来るような人間やお客とは違う、最近噂で聞いていた『魔化魍の王』とその仲間もとい家族だ。

 私は驚いて薬を落としてしまった。

 ですが例え、王であろうとお客はお客。私はこの店の店長です。売るときにはキチンと売る。

 いつも通りにレジの側にある椅子に座り、お客に私の作った商品を売る。

 

「貴女、魔化魍ですよね」

 

 いつの間にか数本の薬瓶を持って、王がレジの前に立っていた。

 

SIDEOUT

 

「貴女、魔化魍ですよね」

 

 買う商品を持って、店長に話し掛けた。店長は驚いた顔をしている。

 

「………何の事ですか?」

 

 動揺を隠すように喋るがどう見ても焦っている。

 

「別にどうこうする訳じゃないよ。少し話を聞きたいだけ」

 

「そうですか………王に反抗する訳じゃありませんし話します」

 

 すると、店長は術を解き、魔化魍としての姿を現す。

 その姿は緑の頭巾を被り、直立二足歩行する鼠の姿だった。

 

【私はキュウソという魔化魍です】

 

 キュウソ。

 長い年月を経て妖怪化した鼠の妖怪。『絵本百物語』や『翁草』などの江戸時代の古書や民間伝承にあるもので、主に人間に害を与えるものとして描かれるが子猫を育てるものとして描かれることがある。

 

【それで聞きたいこととは】

 

「話す前に擬人態に戻ったら誰が来るか分からないし」

 

【そうですね】

 

 キュウソはそのまま擬人態に戻って椅子に腰掛ける。

 

「王は何を聞きたいのですか?」

 

「この店の外の事についてです」

 

「あれですか。あれは………」 

 

「店長さん邪魔するぜ! へへっへ……なんだ客がいるのか」

 

 キュウソが話をしようとしたら時に店の扉が開き、スーツを着た男達が入って来た。

 

「いらっしゃいませ、羽田さん」

 

 キュウソは話すのを辞めて、入ってきた男達に挨拶する。

 

「どうも店長さん。回りくどいのは嫌いなんでちゃっちゃっと済ませましょう………今日こそはこの店畳んでもらいましょうか」

 

「この店は後3日待ってもらえる筈です!! 何で!!」

 

「こっちにも色々と事情があるんや。ほら、この書類にサインしてくれんかのー」

 

 成る程。つまりこの店の外の状態はこいつらが原因ということか。

 そうこう考えてる私を他所にキュウソと男は口論を続ける。男はカッとなったのか机に手を叩きつける。

 

「いい加減にしな店長!! こっちが下手に出たら舐めたこと抜かしおって………店長さん。あんたがこの書類書かない言うならそこのお客に痛い目にあってもらいましょうか」

 

「!!!」

 

「「あ゛あ゛!!」」

 

 羽田という男に腕を掴まれて引き寄せられ首に腕が締まっている。

 というか睡樹と昇布が出してはいけない声出してる。

 

「何だ兄ちゃんと嬢ちゃんはこの姉ちゃんの知り合いか」

 

「口を閉じろ下等生物!!」

 

「僕らの主に……手を出した………万死に…値する」

 

 睡樹と昇布がキレた口調で喋ってると……あれ、意識が………

 

「何だてめえら。歯向かうと「五月蝿いなぁ」……へっ……ぎゃああああ!!」

 

SIDEキュウソ

 突然、王の口調が変わったと思ったら、自身の首を絞める羽田さんの腕を掴み、そのまま腕をへし折った。

 

 王が羽田さんの腕を折ったことを皮切りに一方的な蹂躙が始まった。

 

 睡樹と呼ばれた魔化魍は腕をツタにして男の身体を突き刺すように伸ばして刺し殺した。

 

 昇布と呼ばれた魔化魍は両腕を布のよう変えて男たちの身体を両断した。

 

 王は手に持つ瓢箪から出る酒を口に含んで毒霧にして吹く。毒霧を浴びた羽田さんを含めた人間はドロドロに溶け、床の染みになった。

 

 ことが終わると店の中に静寂が訪れた。

 

「話の続きは大丈夫ですよ………それよりも私の家族にならないキュウソ」

 

 王の手が私の前に差し出された。




如何でしたでしょうか?
今回は新しくキュウソという魔化魍を出させてもらいました。
この魔化魍はひな編で

質問コーナー回答の欄
美岬
【質問コーナー。今回は前回の覇王龍さんの質問の続きである魚呪刀の残り4本の紹介をします。担当は私と】

屍王
【フッハハハハハハ。我だ!】

美岬
【では先ず、5本目の魚呪刀、突烏賊(とついか)

屍王
【烏賊の瞬発力とよく嗤う人間の魂を集めて造った槍に似た形状を持つ刀だ】

美岬
【これ、中距離の戦いなら無類の強さを発揮するの。6本目は幽蛸(ゆうだこ)

屍王
【蛸の擬態能力と存在感の薄い人間の魂を合わせて造った刀だ】

美岬
【ある特殊能力を持った刀で潜入や暗殺に向いてる刀。7本目は壊鯱(かいしゃち)

屍王
【好奇心旺盛な鯱と狂った人間の魂を合わせて造った刃がチェーンソーに似た刀だ】

美岬
【武器破壊に特化した刀で2番目に気に入ってる刀。最後の8本目は堅鯨(けんげい)

屍王
【鯨の耐久力とスポーツ選手の魂を合わせて造った刀だ】

美岬
【耐久性に特化した刀で峰打ちならぬ峰殴りが出来る】

美岬
【以上が全魚呪刀です】

屍王
【気になることがるなら活動報告の質問コーナーに書くがよい】

美岬
【では……】

美岬
【また次回〜】

屍王
【次回を楽しみに待て。フハハハハハハ】

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。