人間だけど私は魔化魍を育て、魔化魍の王になる。   作:創夜叉

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更新遅れて申し訳ございません。
面談やら何やらで書くのが少し遅くなりました。


記録陸拾弐

目の前の妖姫からひなの正体を知らされる。

 

 コソデノテ。

 遊女の死後、死皮となった小袖を見て、友人たちがその遊女の在りし日を偲んで悲しむ一方、当の遊女は誰からも身請けされずに不自由な生活を強いられことを悲しみ、身請け金を求めるあまり小袖の袖口から手が伸びている。

 また遊女がこの小袖を着飾りたかった願いが叶わず、その怨みによって小袖から手を伸ばしたもの、または小袖を着ていた女性の生への執着が妖怪化したもの。

 創作系の作品では手先の悪いもの、スリの常習犯などの服の裾に取り憑いて悪さをする妖怪。

 

 ひなの家族に会うという目的で来たが、早々に関係者と会えるとは思わなかった。

 

「魔化魍の王、ひな様の2人をコソデノテ様のいる屋敷に案内してよろしいでしょうか?」

 

「………その格好は辛いでしょ、解いていいよ」

 

 そう言うと、2人は姿勢を解いて立ち上がる。

 今だに警戒している家族に警戒を解いて貰った。いつまでもあの状態だと話が進まないし。

 

【しかし、何故王の側に人間がそれも鬼?】

 

 椿の魔化魍が私のお姉ちゃんと突鬼を指差して、私に聞いた。

 答えようと口を開こうとしたら。

 

「私は幽の………魔化魍の王の姉だよ!!」

 

「俺は捕虜だよ。何かする気はねえぜ、コレ(・・)があるからな」

 

 春詠お姉ちゃんはそれが何か悪いのかと言うかのように答えて、突鬼こと錬さんは自分の片手を見せながら何もしないと宣言した。

 それもそうだ。何かする気が無いのは事実だろう。なにせ錬さんの片手に結ばれてる紐はただの紐ではない。紐を作ったのは元は人間(・・)で巫女をしていたという蛇姫だ。

 蛇姫はこれを『双方の呪紐』と呼び、錬さんと妖世館の一室で捕らえてるもう1人の鬼である衣鬼の黒風 愛衣さんに結びつけられてる。

 この紐は人間の感情を読み取り、反抗心を感じた瞬間に全身に激痛、呼吸困難、神経の麻痺、五感剥奪のいずれかが襲う。しかも、コレは同じものを結んだ者同士に効果があり、片方だけでも反抗心を考えば連帯責任として2人共同じ苦しみを味わう。

 故に突鬼と衣鬼は逃げることが出来し、反抗することもないのだ。

 春詠の言葉を聞き、錬のことを見て、椿の魔化魍は納得したのかしてないのか不明だが、幽冥の方に顔を向ける。

 

「ああ、そうでした。目的だけ話して、私は自己紹介していませんでした」

 

 突然、そんな事を言って椿の魔化魍を自分の側に連れて来る。

 

【私の名はフルツバキ、コソデノテ様を守っている者の1人です】

 

「私はフルツバキの育て親の姫です。貴女と同じお方に会うのはこれで9回目になります」

 

 2人の自己紹介を聞いてると何かおかしなことが聞こえた。

 フルツバキの方は守っている者の1人(・・・・・・・・・)と言い、姫はこれで9回目(・・・)と言った。

 前者の答えも気になるが、今は後者の方が気になる。

 

「9回目ってどういうことですか?」

 

「? ………ああ、その事ですね。実は私、貴女と同じ存在である歴代の王たちに会ったことがあるんです」

 

「「「「「え、えええええええ!!」」」」」

 

 幽冥と春詠、白、赤、そして何故か驚いてる錬の声は森の外にまで響き渡った。

 その様子を見る1つの影はふよふよと浮いていた。

 

SIDEジャック・オ・ランタン

 コソデノテの住む屋敷、日光浴をするには丁度いいような廊下に2体の魔化魍がいた。

 

【報告】【王と接触】

 

【………そうですか】

 

 全身が溶岩のような南瓜頭の魔化魍 ジャック・オ・ランタンに宙に浮く2つの首の魔化魍 マイクビが報告する。いつも一緒のもう1つの首は幽冥たちと接触するフルツバキとその姫の様子確認のため、この場にはいない。

 

【マイクビそのまま見ていて下さい。連中が襲って来てもおかしく無いんですから】

 

【分かった】【そう伝えとく】

 

 マイクビはそう言って、廊下から外へ出ていく。

 その様子を見ていた者に気付き、ジャック・オ・ランタンは声を掛ける。

 

【ヒャクメさん……ですよね? 話は終わったので出てきても大丈夫ですよ】

 

【【………】】

 

 そう言って姿を現わすのは鰭が凍った1つ目の複数の金魚の魔化魍 ヒャクメだった。

 

【ノツゴは如何でしたか?】

 

 ジャック・オ・ランタンはヒャクメと一緒に出たノツゴの事を聞く。ノツゴはジャック・オ・ランタンたちの中で一番幼い魔化魍で、みんなに可愛いがられてる。

 だが、最近まで戦闘の出来ない幼体だったので、今回のことを聞き、戦闘に参加させるかどうかの判断の為にヒャクメと一緒に戦いに行かせた。

 

【【補助は問題ありません。傭兵が相手でしたがあれなら問題なく戦えると思います】】

 

【そうですか。ノツゴは何処に】

 

【【氷像を運んでもらってます。後で氷菓子としてお出しします】】

 

【それはいいですね。私もあれは好きなんですよ】

 

【【そうですか。腕が鳴ります】】

 

 そう言うと、ヒャクメは金魚の絵が描かれた和服の少女に姿を変えて、屋敷の奥に行った。ジャック・オ・ランタンも姿を変えて、猛士北海道第1支部に潜入した際の姿、南 瓜火に変わる。

 

「会えるのが楽しみですよ。魔化魍の王」

 

 陽のあたる廊下で呟いた瓜火の声は誰にも聞こえずに風の中に消えた。




如何でしたでしょうか?
今回はオリジナルの魔化魍 マイクビが出てきました。
次回はひなにとってはキツい真実の話。少し、シリアス(?)かもしれません。

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