人間だけど私は魔化魍を育て、魔化魍の王になる。   作:創夜叉

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73話更新です。
今回は前回言った通りにしようと思いましたが、さらに猛士のSIDEも入れました。


記録陸拾漆

SIDE潘

「戦いの準備は整ったかね楽鬼」

 

「はい。みんな殺る気満々ですよーーー」

 

 緊張感のない楽鬼の楽しそうな声が部屋に響く。錫鬼と岸鬼は仁王立ちの状態で潘の後ろに立っている。

 

「では…………諸君。これからやる事にやる気がないのなら降りてもらっても構わないよ」

 

 藩は目の前にいる傭兵たちに参加するのかしないのかと問うた。

 だが、その質問は意味のないもの。その理由は–––

 

「まあ、君たちに意識はないからね。聞いても仕方ないか」

 

 彼らの意識は藩の作った特殊な勾玉から発する力によって奪われていた。そこにいるのは自分の意思では動くことも喋ることもできない人間。しかも、藩たちは彼らを傭兵と呼ぶが、実際は違う。

 

 彼ら全員、戦闘のせの字も知らない一般人。だが、藩の持つ勾玉によって無理矢理知識を植え付けて、傭兵と呼んで使っているのだ。

 その事を勿論、『佐賀3人衆』も知っているいや、むしろ知らなかったらおかしい。この傭兵と呼ぶ、一般人をこの佐賀支部に連れてきたのは他ならぬ『佐賀3人衆』なのだから。

 

「では、佐賀3人衆!!」

 

「「「………」」」

 

「傭兵たちを引き連れて、目標を捕まろ。何を使っても構わない」

 

 藩の声を聞き、静かに待つ『佐賀3人衆』の手には各々の変身道具があった。

 

「諸君達の活躍で我らの夢が叶う。皆、身を塵に変えるまで戦え」

 

「「「応!!!」」」

 

 佐賀3人衆が答えると、傭兵たちも一斉に声を上げる。

 

「さあ、戦闘の始まりだ!!」

 

SIDEOUT

 

 

SIDE命樹

 睡樹と共に野菜の種を植え終わり、睡樹と水をあげている。

 如雨露といわれる人間の作った水を入れて植物に水をやる為の道具で、普段睡樹は自身の飲む水を入れて、身体に巻きつけている物。今はツタから外して、植えた種に水をあげている。

 

睡樹

【早く……実ら…ないか……な】

 

命樹

【王によるとそんなに直ぐ実るものではないらしい。気ままにやるしかないだろ】

 

睡樹

【そっ……か】

 

 直ぐ実らないと知って少し、悲しそうに顔を下げる睡樹。

 睡樹の悲しそうな顔を見て、命樹は脚から出てる根を先程、種を植えた場所に突き刺す。

 せっかく植えた種に何をするんだと睡樹は命樹の脚の根を抜こうとするが、命樹の根の先、地面からポッと小さな芽が出始める。それを見て、睡樹は根を抜こうとするのを止めて、そのまま眺める。

 

 すると芽はポンポンと次々に生えて、そのまま少しだけ茎を伸ばして少し成長する。

 

 ある程度、成長したと思った自分は、根を抜く。少しフラッとしたて倒れそうになるが、睡樹が自分を支えてくれた。

 

睡樹

【何を…やっ……たの?】

 

命樹

【出来るかどうかは分からなかったが、自分の養分を野菜に分けた】

 

 命樹の種族であるジュボッコは自身の体内にある養分を他の植物又は植物系魔化魍に分け与える能力を持つ。

 そして、今回はそれを使って野菜に養分を分けたのだが、もちろんいいことばかりの能力ではない。この能力で分ける養分はジュボッコの身体から生み出されている。その為、養分を与えるとジュボッコの体内の養分は減っていき、倒れる。下手をすれば命を削る力でもある。

 

睡樹

【………】

 

 睡樹は命樹を地面に寝かせて、如雨露の中に少し残しておいた水を命樹の脚の根に置いて、根を如雨露の中に突っ込む。

 

命樹

【これは、お主の水だろう】

 

睡樹

【野菜を…少し……育てて…くれたお…礼】

 

 そのまま睡樹は如雨露の中の水が切れるまで命樹の側で座りながら待っていた。

 そして、そこから少し離れた所には–––

 

五位

【ようやく彼奴にも春が来たのか、ううう】

 

 その光景を嬉しそうに見る相棒(五位)が居た。

 

SIDEOUT

 

 ひなの事をフルツバキの姫に頼み、家族でどうするかを話そうとした時、部屋の襖を勢いよく開く。

 開いた襖の奥から中に入ってきたのは白衣を着たボサボサな黒髪の男と複数の魔化魍たち、その中には先程、私たちを案内したフルツバキもいる。

 白衣の男が座ると同時に他の魔化魍も光りその姿を人間に変える。

 

「初めまして今代の王、いえお久しぶりというべきでしょうか」

 

 白衣の男が、私に挨拶するが少しおかしな挨拶だ。私は目の前の男と会ったことはない。さらに言えば、白衣の男と同じように座る他の魔化魍も知らない。

 春詠お姉ちゃんや美岬のように前世の友人というわけでもなさそうだ。

 

「うん? ああ、そうでしたね。この姿では会ったことがありませんでしたね」

 

 すると白衣の男の身体は光を放ち、その姿を変えた。

 その姿は動く溶岩だった。その姿を見て、何かを思い出しそうになるが、何かあっと一歩という感じで思い出せない。

 

「あ、あの王」

 

 擬人態となった唐傘が小さく手を挙げて、小さな声で私に声をかける。

 

「あの時に…会った魔化魍だと思う」

 

「あの時?」

 

「北海道で変なのと戦ってた時に」

 

 それを言われて思い出した。そうだ。

 北海道第1支部でシュテンドウジさんの力を借りて変なのと戦った時、私のピンチに助けてくれてそのまま消えた魔化魍。

 

「あ、あの時の」

 

【お久しぶりです。あの時は挨拶もせずに去り申し訳ございません。私はジャック・オ・ランタンと申します】

 

 ジャック・オ・ランタンは自己紹介が終わるとその左隣にいた左足に石枷を付けた幸薄の女性が立ち上がり、その姿を魔化魍(本来の姿)に変える。

 

 幸薄の女性がその姿を石灯籠が背中の甲羅と一体化した亀の魔化魍に変える。

 

【私の名前はバケトウロウです】

 

 バケトウロウの自己紹介が終わると、次は右隣にいた右腕全体と左脚が白骨化している普通の人間ではなさそうな姿の女性が頭部と尻尾が白骨化している蛇の魔化魍に変わる。

 

【私はテオイヘビ、宜しく王様】

 

 テオイヘビの隣に立っていた業平格子の着物を着た両把頭の女性がフルツバキに姿を変える。

 

【自己紹介するまでもありませんが、フルツバキです】

 

 バケトウロウの隣に居た黒の手提げ袋を持った女性が3つの女性の頭の魔化魍に姿を変えた。

 

【私たちは】【マイ】【クビ】

 

 同じ顔に見えるが抑揚が少し違う、マイクビは変わった自己紹介をした。

 

【そういえば、あの子は何処に?】

 

【あの子ならレイウルスと訓練してる筈】

 

 ここに居ない誰かを探すバケトウロウの質問にテオイヘビが答える。

 あの子というのとレイウルスという聞いたこともない妖怪(?)は誰かと思い、その事を聞こうと幽冥は質問しようとするが–––

 

 勢いよく閉められてた襖が開き、そこからヘルメットを抱えた黒のライダースーツを着た金髪の女性が入ってくる。

 

「あれ、お袋の匂いがしたから来たけど、お袋居ねえなぁ」

 

 先程、バケトウロウが言っていたあの子なのかと思い、ジャック・オ・ランタンたちの方を見てみると彼らも誰というような困惑した顔だった。

 そして、そんなこちらの考えを気にせずにライダースーツの女性は鼻でスンスンと匂いを嗅ぎながら、食香が座るところで止まる。

 

「スンスン。お袋の匂いがするな姉さん、あんた何者?」

 

「お袋…………その呼び方はあまりしないでと言いませんでしたか。ねえーー」

 

 目の前に立つライダースーツの女性に、何か論すよ喋りかける食香はライダースーツの女性に顔が合うように顔を上げる。

 

「オクリイヌ」

 

 ライダースーツの女性は驚き、もう一度食香の服にスンスンと匂いを嗅ぐ。

 

「お袋なのか?」

 

「久しぶりだね不良娘(オクリイヌ)

 

 目の前にいる者に対しての食香の喋り方は、まるで親しい者に言うような喋り方だった。




如何でしたでしょうか?
今回は遂にジャック・オ・ランタンとオリジナル魔化魍の一派とオクリイヌを出すことが出来ました。
次回は、戦闘にまでもっていきたいとおもいます。

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