人間だけど私は魔化魍を育て、魔化魍の王になる。   作:創夜叉

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オクリイヌの紹介回とついにジャック・オ・ランタンが………な回です。


記録陸拾捌

 送り犬。

 東北から九州に至る各地にいる妖怪。姿は犬が多いが地方によっては狼の姿であったり、また地方によって行動も違う。基本的には夜中の山道を歩いてると後ろからピタリとついてくる犬が現れる。その時に転んだりすると、犬に食い殺される。だが、転んだとしても転んだ風に見せなければ襲われない。

 ここは各地共通だが、犬が体当たりして突き倒そうとしたり、転ぶと何処からか大量の犬が現れ襲ってきたりなどと地方によって違う。

 また、山を抜けたあとに「さよなら」や「お見送りありがとう」と言うと去ったりする。

 『小県郡民譚集』によると長野県の塩田(現・上田市)に住む女が、出産のために夫のもとを離れて実家に戻る途中、山道で産気づき、その場で子供を産み落とした。夜になって何匹もの送り犬が集まり、女は恐れつつ「食うなら食ってくれ」と言ったが、送り犬は襲いかかるどころか、山中の狼から母子を守っていた。やがて送り犬の1匹が、夫を引っぱって来た。夫は妻と子に再会し、送り犬に赤飯を振舞ったという。

 

 という話のある妖怪。

 前に朧が食香から聞いた話によると食香は私たちと出会う前に数々の親無し魔化魍を自分の子供のように自身の肉をあげて育てていたらしく、今は各地に散って、たまに会いにくるらしい。

 私の近くにいる乱風も食香に育てられた子供らしく、親離れした後に茂久と会ったそうだ。

 

 そして、食香が娘と言った目の前のオクリイヌ(擬人態)は現在、食香の前で正座して、食香のありがたい(?)お説教を受けていた。

 

「オクリイヌ。前に言いましたが、私をお袋と呼んで親しむのは嬉しいのですが、その口調は直しなさいとあれほど言った筈です」

 

「はい」

 

「少しは連絡として私に会いに来てくれてもいいじゃないですか。それを『ガキかよ』みたいな事を言って会いにきてくれませんし」

 

「はい。すいません」

 

 食香の説教でどんどん小さくなり、顔を下げて畳の床に顔が着きそうなライダースーツの女性。

 

「それn……」

 

 これ以上は流石に可哀想だし、止めるか。

 

「はいはい食香。この子も反省しているみたいだし、ね」

 

「む。そうですね8分の2は言えたので今日はこれくらいにしてあげます」

 

 ライダースーツの女性は顔を上げて、キラキラした目で幽冥に感謝の視線を送る。

 

「あ、でも今度説教の続きはさせてもらいます」 

 

 上げて落とすとはまさにこの事の如く、オクリイヌの表情は再びどん底に落ちたくらいに暗くなった。すると、乱風がオクリイヌの肩を叩いて、慰める。

 

「まあ、その時は私も付き合うよ」

 

「ありがとな」

 

 乱風の言葉で少しはましになったのか暗い顔は少し晴れていた。

 

「それで、ジャック・オ・ランタン。貴方は私に何のようですか?」

 

【そうでした、目的を言わずに話が終わりそうでした】

 

 するとジャック・オ・ランタンとその仲間はその姿を人間に変えて、片脚を付いた体勢に変えて、幽冥に顔を向ける。

 

「「「「「我らを王の家族にしてほしい!!」」」」」

 

 5人の願いの声が響く。

 部屋の音は何も聞こえなくなり、ただ静かな空間の中で5人の魔化魍は王である少女の答えを待っていた。

 幽冥の答えは勿論。

 

「私、9代目魔化魍の王が貴方たちを家族とします」

 

 その答えを聞き、部屋は騒がしいを超える歓声に包まれた。

 ある者はその答えに涙を流しながら喜び、ある者は新たな家族に喜び、ある者は帰る時に使う術の変更に困ったり、ある者は新たな恋敵が出来ないか警戒したりと多様な反応があった。

 

「………名前を考えないとね」

 

 実は幽冥、家族となった魔化魍に名前を付けるのは好きらしく、ちゃんとその種族と個性にあったような名前を考えるのが楽しいようだ。

 

SIDE錫鬼

 今回は遂に我らが動くことを認められて、少し興奮を隠せない。というか、既に戦闘前の高揚で口角は上がりっぱなしで、同僚の岸鬼の注意があって、口角を直すもすぐに上がってしまう。

 

「また笑ってるぞ錫鬼」

 

 再び注意されるが–––

 

「ダメです。高揚のせいでもう笑いを抑えられません」

 

 口角を直すのやめたらもう、にやけが止まらない。嗚呼、嗚呼、早く戦いたい。

 

 だが、ただ戦うのはつまらない。何か大切なものを弱みを使って、ひたすら戦う(遊ぶ)。そして、命乞いのように擦り寄って来た魔化魍を惨めに殺す。

 

 嗚呼、想像しただけで興奮が高揚が治らない。

 

 早く、この高揚を解き放たせてくれ。

 

SIDEOUT

 

 ジャック達の名前を考えてる時、また襖が開いた。

 また知らない人(魔化魍)が入ってきたのかと思ったら、入ってきたのは黄色いパーカーを着た幼女とその幼女に手を引っ張られて来たひなが入って来た。

 

「ほら、ひな言うことあるでしょ」

 

 幼女に背中を押されて、ひなは私の前に出てくる。

 

「お、お姉ちゃん。さっきはごめんなさい」

 

 ひなはそう言って頭を下げる。

 

「ふふ。別にひなに怒ることは何もないよ。それにそれはひなのお婆ちゃんに言った方が喜ぶと思うよ」

 

 私が怒っていないことが分かって、そのまま襖開けたまま、ひなは何処かに向かった。言うまでもなくコソデノテの所に行ったんだろうけど、心配してなのかひなが部屋を出てすぐに食香と波音と黄色いパーカーを着た幼女が後を追った。

 

SIDE楽鬼

 目的の場所に着き、傭兵達を指定した場所に配置させる。

 

 錫鬼は既に準備完了というか既に逝かれてるというようなテンションだ。岸鬼は自身の音撃武器を構えて、いつでも戦えるように構えてる。

 さて………

 

「みなさん、撃ち方始め!!」

 

 楽鬼の号令が傭兵たちに響いき、傭兵たちはその手に持つ対魔化魍炸裂式狙撃弾の入った銃を構えて、幽冥たちがいるコソデノテの屋敷に放たれた。




如何でしたでしょうか?
次回は遂にひな編の戦闘回に入ります。楽しみに待っていた皆様が期待できるような戦闘回を書きたいです。


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