人間だけど私は魔化魍を育て、魔化魍の王になる。   作:創夜叉

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お待たせしました。ひな編の戦闘回になります。
先ず最初に誰を出すかで悩みこういう編成になりました。
では、お楽しみください。


記録漆拾

SIDE錫鬼

 屋敷から離れた森の中に数十人の傭兵を連れた錫鬼がいた。

 自身の音撃武器 音撃棒 錫浄を手で叩きながら、次をどうするか考えていた。岸鬼と楽鬼はこの場に居らず、目的のものを探すために傭兵を多数引き連れて、向かった。

 

「ふむ、あと2〜3回撃って。その後、各自の判断に任せて、我も向かうとしよう」

 

 傭兵たちに次の弾を込めろと指示を送り、発射させようとした瞬間、何かが動いた音が聞こえ、不意に上を見上げると樹の上から糸を垂らして身体を支えて自身の首を狙う為に糸の付いた前脚を振り上げるツチグモの土門の8つの複眼と目があう。見られたと気付き、土門は一気に前脚に付いてる糸を振り下ろす。

 

 糸が鉄にぶつかったとしても普通はこんな音が出ないが、金属同士のぶつかった音が響き、土門の攻撃は失敗した。土門は急いで樹の上に戻ろうとするが、それをさせるまいと錫鬼の投げた茜鷹のディスクアニマルで糸を切られて、土門は重力によって地面に落下する。追撃のチャンスとみた錫鬼はそのまま、音撃棒 錫浄で叩き潰そうと振り上げて、土門の腹部に目掛けて振り下ろす。

 

 ドゴンと音が響くがそこには土門が居らず、錫浄によって砕かれた地面と何かの一部の破片(・・・・・)しか無かった。そして、土門は上から伸びた蔓に掴まって某ゴリラに育てられた青年のように助けた羅殴の腕に掴まっていた。

 錫鬼は土門と羅殴に向かって、ディスクアニマルを追撃させる指示を出そうとした瞬間、地面から植物の蔓が出てきて、傭兵を一部巻き込んで、錫鬼の手足を縛る。更に頭上からはクナイが飛んでくる。

 だが、錫鬼は縛られてる右腕の蔓を先程飛ばした茜鷹のディスクアニマルが切り裂き、手に付いたままの蔓でクナイを薙ぎ払う。

 

 クナイは弾かれて、地面に落ちる。錫鬼は辺りを見渡すが、そこには土門も羅殴も見当たらず、錫鬼は少し苛立つ。

 

「ちっ!! まあ良いでしょう。あれらの相手はこの者どもに任せれば」

 

 錫鬼はそう言って、傭兵達に足止めに徹するように命じて、自分は屋敷の中に入るための場所を探しに行った。

 

SIDEOUT

 

 

SIDE白

羅殴

【大丈夫か土門?】

 

土門

【はい。幸い傷は浅い、むしろ羅殴に助けられなければ、もっと酷かったでしょう】

 

 そう言う土門の脚は俺が救助のタイミングがずれて、土門の4本の左脚の内2本が先から欠けるように無くなっていた。

 

「蛇姫、治療をお願いします」

 

 白の指示を受けて、蛇姫は土門の欠けた左脚に向けて、回復の術を使う。土門の欠けた脚は少しずつ元の形に戻っていく。

 

唐傘

【ど、どうする? お、鬼は消えたけど】

 

 唐傘の言葉を聞き、白と赤はどうするか考えた。

 鬼は消えたが、肝心の傭兵はまだいる。フルツバキの攻撃で人数は少し減ったが、その数はまだ多い。しかし、土門達は奇襲には失敗したが、王である幽冥から言われた鬱陶しい音を出す傭兵の攻撃は止めることが出来た。

 そして、白と赤はこの場にいる家族の力をどう使うかを考えた。煉獄の園(パーガトリー・エデン)から頂いた食糧によって、しばらくはご飯がいらなくなったと思うが、それは違う。あるものはいつかなくなる。しかも、成長期である幼体の魔化魍はよく喰べる。それこそ、頂いた食糧もいつか尽きるだろう。

 

 だからこそ、白と赤は幽冥からの指示が終わった後に自身が指示する家族に言った。『どんな残骸でも食糧になる』と、その為に基本的には形が少しでも残るように殲滅しろと命じた。

 

「土門、傷は治りましたか?」

 

土門

【はい。なんの支障もありません】

 

 土門はそう言って、自身の欠けていた左脚を私に見せる。

 

「では、土門と羅殴はフルツバキと一緒に傭兵の相手お願いします」

 

 白の指示を聞き、樹の上に移動して傭兵の元に向かった。

 

「唐傘、蛇姫は3人の仕留めた人間を空間倉庫に仕舞ってください」

 

唐傘

【わ、分かったよ】

 

蛇姫

【ふむ】

 

 蛇姫を唐傘の脚を手で掴み、空に飛んで行った。

 

「………」

 

「………」

 

 白と赤の沈黙が続く。だが、2人の視線は外れることなく相手である()の眼を見ている。

 

「………白」

 

「何でしょう?」

 

「私は絶対に貴女には負けませんよ」

 

「それはこっちのセリフです。王の正妃になるのは私です!!」

 

「いいや私が正妃になります」

 

 2人の妖姫は幽冥に対して、好意を持っている。どちらも王に救われたことと王に傷を治してもらったことから、今のようになっている。ちなみにこの正妃対戦もとい第1妃対戦の参加者は白と赤、それに朧と美岬も参加者である。

 

「1度、貴女と決着を着けたほうがいいかもしれませんね」

 

 白は服の中から鉄扇を取り出す。

 

「そうですね。1度上下関係をハッキリとしましょうか」

 

 赤はパーカーの後ろから十字槍を取り出して、左腕だけ妖姫の状態に変える。

 2人は己の獲物を構えて、幽冥の正妃の座を掛けた戦いを始めた。

 

SIDEOUT

 

 

SIDE朧

 

 一方。

 

【しくしく】

 

 朧はまだ泣いていた。だが、白と赤の戦いが始まろうとした–––

 

【しk……幽冥お姉ちゃんは私のものだよ!!】

 

【どうした急に!? って危な!!】

 

 突然、そんな声を上げる朧に側にいた骸は驚いて、磨いていた青水晶の頭蓋骨を落としそうになるが尻尾でなんとか落とさずに済んだ。

 

【幽冥お姉ちゃんの正妃を掛けた戦いが始まった気がするの】

 

【何だそりゃ?】

 

 骸は疑問をそのまま口に出して、朧に聞くが朧は空を見上げて、右前脚を握りこぶしにして悔しそうにしている。

 さらに一方–––

 

SIDEOUT

 

 

SIDE美岬

美岬

【ああ、もう何でこんないるの!?】

 

 コソデノテの屋敷の側で崩たちの防衛の穴をついて少しずつ入ってくる傭兵の侵入を防ごうと魚呪刀 堅鯨(けいげい)を振るって、傭兵たちの進行を常闇たちとともに食い止めていた。

 堅鯨(けいげい)の能力を使って傭兵たちの攻撃を弾き、弾切れを起こした瞬間にまとめて叩き潰す。だが潰しても潰しても迫る傭兵たちに美岬は少しイラついていた。

 

美岬

【ん。(………これって!?)】

 

 そして、次の傭兵を狙いを定めようとした時………美岬は感じ取った。普段、幽冥の傍に立つ従者たちのぶつかり合う気配に、だが–––

 

美岬

【って、邪魔だよ!!】

 

 止まっているのチャンスと思ったのか攻撃をする傭兵に苛立ち、美岬は持っていた堅鯨(けいげい)を傭兵目掛けて投げつける。回転する堅鯨(けいげい)は傭兵を巻き込んで、地面に突き刺さる。

 しかし–––

 

美岬

【……あ、やっちゃった】

 

 美岬の魚呪刀 堅鯨(けいげい)持っている間のみ、あらゆる物理を無効化する能力をもつ魚呪刀。その力によって、傭兵たちの使う対魔化魍弾を無効化にしていた。

 だが、その堅鯨(けいげい)は今、投げてしまい。手元には無い。しかも、美岬は魚呪刀を別の刀に換える際は手元に換える為の魚呪刀が無ければいけない。

 

 結果、美岬は先程まで何ともなかった攻撃が通じてしまうのだ。その為に美岬は堅鯨(けいげい)のある位置まで移動しようとするも傭兵が撃つ対魔化魍弾が邪魔でなかなか進むことができない。

 

 そして、対魔化魍弾の弾丸が美岬に当たりそうになった時、美岬に当たりそうになった弾丸は両断されて、地面にパラパラと落ちる。

 

常闇

【私の友人に手出しはさせん】

 

【ダメだねーー】【………単純】

 

 そこには真紅のように真っ赤な小刀を持った常闇と櫛や鏡を口に咥えたマイクビがいた。

 マイクビの首の1つは髪の毛で数人の傭兵の全身を縛り付けて、どんどん締めていく。バキッ、ボキと身体から軋みながら鳴る音にマイクビの首の1つは楽しみながら口を歪める。

 

【そうそう。その顔いいね。最高だよあの時も、あいつらをこうしてやりたかった!!】

 

 マイクビの首の1つが言ったことに、残りの2つの首も顔を暗くする。なぜ、彼女たちが顔を暗くしたのかはまた違う機会で話すことになるだろう。

 そして、髪を解いて地面に落ちたのは、ぐにゃぐにゃといってもいいくらいに骨を粉砕された傭兵たちだった。

 マイクビの1つはそのまま、ぐにゃぐにゃの死体の1つに口を近づけて、吸うようにして死体を喰らう。それを見てか、2つの首も櫛と鏡を置いて、死体を吸うようにして喰べた。

 常闇は僅かに残った血を集めて、頭上に赤い球体を作り出す。

 

常闇

【テオイヘビ。血で良いのなら分けれるが】

 

【ああ、すまない】

 

 テオイヘビは口を開けて、そこに常闇が操作した血を流し込む。

 

【ぷはー。ありがとう】

 

 満足げに言うテオイヘビを見て、常闇はそのまま美岬の方に向かう。

 私の様子を見て、常闇は安堵の息をあげる。それにしても、何でこうも傭兵たちが来るのかと思った美岬は侵入を防ぐ為に外にいる崩達を心配した。




如何でしたでしょうか?
今回は傭兵の攻撃を止める土門班と侵入するものを防ぐ美岬班を書きました。
なぜ、崩達の所を突破できたのかは次回で書きます。

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