人間だけど私は魔化魍を育て、魔化魍の王になる。   作:創夜叉

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ひな編の戦闘回3作目になります。
今回は最初に食香たち防衛組、お願いされたオクリイヌ、捜索の眠眠達、そして波音が………


記録漆拾壱

SIDE食香

 キリがないとしか言えない。

 倒しても倒しても現れる傭兵たちに食香は溜め息を吐きたくなるが、そんな事で減らないと分かるため、それをグッと抑える。

 食香は身体を千切って、無数の分体で傭兵の上に落として、圧死させる。だが、指示がないと動かない分体は傭兵の撃つ対魔化魍弾の攻撃で清められる。自身にも対魔化魍弾が迫るがそれを千切って生み出した小さな分体で防ぐ。

 

【むうん!!】

 

 崩が前脚を叩きつけて地面を操作し、傭兵たちの足元から地面を隆起させ、傭兵の身体を貫通させる。

 

ビュウウウウウウウ

 

 乱風の声と共に風は真空の刃となって、傭兵の身体を切り裂く。

 

【よ、っと!!】 

 

 ジャック・オ・ランタンは腕を地面に突っ込み、地面はグツグツと燃え上がって液状化し、それを傭兵に向けて掬い取って投げる。投げられた溶岩は傭兵の身体全体に掛かり、その肉を焦がす。

 

【固まれ!!】

 

 バケトウロウはその巨躯な脚で傭兵を蹴り飛ばす。しかも、触れたら石化する右脚の蹴り。蹴られた傭兵はその身体を灰色の石に変えて、地面にぶつかると同時に砕け散る。

 

 崩たちは淡々と処理していくも傭兵達たちは数を減らさずにどんどん現れる。

 錫鬼たちが猛士佐賀支部から連れた傭兵は全てで500人以上にもなる。土門たちが相手している遠距離攻撃部隊は総数で100位の人数で構成されている。

 そして、残りの400人はこのようにして屋敷の入り口から侵入して崩達と戦闘を行い、その僅かの隙を通って、美岬達の所に傭兵が向かったという事だ。

 

SIDEOUT

 

 

SIDEオクリイヌ

 屋敷から遠く離れた国道にヤマハFJR1300を走らせる1人の女性がいた。

 

 擬人態の姿で走るのは、食香の育てた娘の1人であるオクリイヌである。

 彼女が何故、屋敷から離れた国道を走っているのか。その理由は自分のお袋(食香)が仕えてる(?)今代の王である幽冥から頼まれたからだ。その内容は、手薄になった佐賀支部を襲撃しろ(・・・・・・・・・)という頼みだ。

 

 幽冥は屋敷を襲撃してきた戦力は佐賀支部の全戦力と考えた。

 そこで幽冥はバイクという機動力と食香の育てた魔化魍の中では3本の指に入る戦闘能力を誇ったオクリイヌを手薄になった猛士の佐賀支部に向かわせた。

 

「しかし、何で王様はあんな事言ったんだ?」

 

 ヤマハFJR1300を走らせながら、私は思った。

 王様が言った頼みは2つある。

 1つは手薄な佐賀支部の襲撃。もう1つは、支部長といわれる男の持つ怪しい道具の回収。

 

 前者の理由なら分かるが後者の理由がオクリイヌには理解できなかった。まあ、王様には何か考えがあるのだろうとオクリイヌは自分に言い聞かせながら愛車を走らせる。

 

「すんすん。こっちか!!」

 

 先程匂った僅かな匂いからオクリイヌは猛士の佐賀支部の場所を目指す。そしてーーー

 

「見つけたぜ」

 

 オクリイヌは匂いの終着点である猛士の佐賀支部に着いた。そして、扉の前には2人の見張りがいた。オクリイヌはそれを見つけると歩きながらら、見張りに近づく。

 

 見張りも突然現れたオクリイヌに驚くが、オクリイヌの人間の姿はライダースーツを着た巨乳の金髪女性。

 要するに男だとしたら誰でも思う。欲に駆られてオクリイヌに近付く。だが、オクリイヌはそんな見張りの背に気づかれないように足から出したもやを使って、見張りの背に集める。

 集まったもやは拳のように形を変える。そして影が作れるほどの大きさになった時、見張りは後ろのもやの存在に気づくが、オクリイヌは気にせずそのまま見張りに振り下ろす。

 

 グシャとトマトを潰すように見張り2人を肉塊に変えて、オクリイヌの顔と服には血と肉片が大量に飛びついた。

 

「ああ汚ねえな。まあ、これからもっと汚くなる(・・・・)から別にいいか」

 

 オクリイヌは擬人態を解き、その背から出るもやを集め、佐賀支部の入り口を破壊する。破壊すると同時にけたましい警報音が響く。そんな音に気にせずにオクリイヌは佐賀支部の中に入っていた。

 

SIDEOUT

 

 

SIDEランピリス

 私達はこの屋敷の主人のコソデノテとその部下ともいうヒャクメを探していた。ただ、集団で無駄に広い屋敷を探しても意味がないので、丁度3つの道に別れたため、それぞれの探し方で探すことにした。

 王の姉である春詠は突鬼を見張るために私のそばに残り、浮幽は自作の体温を探知する炎を生み出して右の方に向かった、蝕は怪しげな粉末薬を吸い込んで、少しフラっとするが左の道に入った。そして、私は–––

 

「眠眠出番ですよ」

 

眠眠

【フアアアアアア、出番? 眠れたからいいけど】

 

 私の相棒こと眠眠で捜索。眠眠は身体を煙に変えて、コソデノテとヒャクメの居るであろう場所へ導く煙になって私達はそれを辿って探す。

 しばらく、歩くと–––

 

【【コソデノテ様ーーー】】

 

 重なった女性の声が聞こえてきた。

 その場所まで行くと、単眼の鰭が凍った無数の金魚の魔化魍 ヒャクメがいた。

 

【【このような時に襲撃とはーー側に居れなかった自分が不甲斐ない】】

 

 ヒャクメの話を聞く限り、どうやらコソデノテはここに居ないようだ。

 

眠眠

【連れてくる?】

 

「ええ。お願いします」

 

 眠眠は煙の状態でヒャクメに近付き、ヒャクメの後ろから声を掛けた。

 

眠眠

【おーい。ヒャクメさん】

 

【【あ、貴方は王の所の……いいえそれどころでは、コソデノテ様を見ませんでしたか?! あ!】】

 

 眠眠の存在に気付き、少し驚くも眠眠に近付いて、逆にコソデノテがどこに居るかと聞いた。そして、煙に一部変わっている眠眠に触ってしまい結果、鰭が乗っかった眠眠の両前脚と身体が分断された姿になった。

 

【【す、すいません!! コソデノテ様が心配でしたので、ですが身体切れるなんて!!】】

 

眠眠

【あー大丈夫、大丈夫】

 

 眠眠はそう言うと、別れた前両脚を煙に変えて、自分の身体にくっ付けると前両脚は元の場所に生えたように戻っていた。

 それを見てかヒャクメはへなへなと降りていき、ため息を吐く。そんな様子を気にせずに煙でヒャクメを包み込み、眠眠はそのままヒャクメを連れて来る。ヒャクメは煙から出ようとするが煙の心地よさで落ち着き、話を聞こうとすると–––

 

浮幽

【ルルル、ルル……ルルル!!】

 

 触手の先に捕まえた1匹のヒャクメを掲げて、こっちに来た浮幽は眠眠の煙の中に居る無数のヒャクメが居たことに驚いた。

 そして–––

 

【見つけました………あれ、こんなに居たっけ?】

 

 両手で抱えるようにヒャクメを連れてふらふらと入ってきた蝕はヒャクメ達に気付き、少し具合を悪そうに呟く。

 

【【すいません、コソデノテ様を探すために別れていたもので】】

 

 ヒャクメの言葉で微妙な空気になり、眠眠達は苦笑いを浮かべてコソデノテを探すため、屋敷の中を再び回り始めた。

 

SIDEOUT

 

 

SIDE波音

 ひなと幼女は気絶しているため、私1人でひな達を守らないといけなくなった。ひなを心配して現れたコソデノテがひなを保護してくれたお陰で、ひなをコソデノテに任せて、幼女だけを守ることに専念できる。

 だが–––

 

「意外と簡単だったね」

 

 音撃気鳴笛(オカリナ)を持って、嬉しそうな笑みを面の内側で浮かべる楽鬼。

 

「楽鬼、楽しみを奪うなよ」

 

 自身の楽しみを奪われて、少し不機嫌な岸鬼。

 

「ああ、弱いなーー」

 

 錫杖型の音撃棒 錫浄を肩に構えて、目の前の者達(・・)を興味なさげに見る錫鬼。

 

 現れた3人の鬼との戦いで初めは優勢だったが、だが鬼の1人が抱えているひなと幼女に気付き、攻撃が私とコソデノテからひなと幼女に移り、私達は不利になった。

 そして、楽鬼と岸鬼の攻撃で幼女を庇った為に私は下半身の一部を持っていかれ、コソデノテは錫鬼の攻撃からその身を使ってひなを守ったために全身火傷に負った。

 

「よく見たら、目的の姫が居ますね。これは楽に任務完了しそうだ」

 

「だが、また傭兵を作る為に俺たちが連れて来いって言われるんだ」

 

 楽鬼と岸鬼の声が聞こえて、コソデノテは全身火傷を負ったその身体を鞭打って、ひなを守ろうとする。だが、錫鬼が錫浄でコソデノテの身体に突いて、火傷を負った身体にぐりぐりと押す。その様子を見てか、楽鬼も岸鬼も見つけた幼女に対して、同じことをしようとする。

 

 波音が幼女を抱えて、2人の鬼からの踏みつけから幼女を守る。だが、音撃武器での攻撃ではないとはいえ、鬼の攻撃は確実に波音の身体をボロボロにしていた。

 そして、波音は意識を失おうとしたとき、周りの時が止まった。

 波音が何を起きたか理解出来ずに、唖然とするが声が聞こえる。

 

《力を望むか?》

 

 止まった時の世界で、何かの声が響く。




如何でしたでしょうか?
今回の回はこんな感じになりました。
次回は謎の声によって波音の覚悟が………そして、ひなと幼女のため、9代目魔化魍の王とノツゴを守る為に奸知のサソリが動く。


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