シリアスっぽく出来たと思います。
SIDE波音
幼女を守る為に鬼の踏みつけを耐えていた私は意識を失いそうになった時、突然、時が止まった。
私を踏みつけていた2人の鬼も、コソデノテにぐりぐりと音撃武器を突き刺す鬼も私の庇っている幼女もその体勢のままピクリとも動かずにその空間に固定されているように動かなかった。
《力を望むか?》
止められた空間から声が響く。
私は声の主を探すが、今この場にいる者の中で声を出せるのは私以外、誰もいない。だが1つだけ声を出しているかもしれないと思ったものがあった。それは–––
鬼の攻撃で落としてしまった。美岬から貰った魚呪刀
そして、私は美岬からこの刀を貰った時のこと思い出した。
〜回想〜
波音
【魚呪刀の意思? そんなものが本当にあるの?】
私はまさかと思い笑うが美岬は大真面目な顔で言っていた。
美岬
【本当よ。あまり信じられないかもしれないけどねーーーこの刀はとある鍛治師の魔化魍に頼んで鍛造してもらった刀。その鍛冶師は武器を鍛造する際に魂を使うの。
それが原因かは分からないけど、その鍛治師の鍛造した武器は全て、意思を持つようになったの。ただ……】
波音
【ただ?】
美岬
【武器の意思は元々が何かの魂だったせいか。使用者を観察して、その結果次第で力を貸してくれるようになるの私が持つ魚呪刀でその意思に認められたのは
他の刀にはまだ認められていないんです。特に貴女に言うのも何ですが、その
波音
【覚悟】
美岬
【それじゃ、次は】
その後に試し斬りになる人間が来たので、この話は終わった。
〜回想終了〜
おそらく、この止まった世界は
波音
【
私の声が静寂な空間に響く。
すると–––
静寂だった空間にカラン、コロンと下駄の音が響き渡る。どんどんその音は近くなり、現れたのは着物の上に紫のちゃんちゃんこを着て、高下駄を履き、左目を伸びた黒髪で隠し、腰の帯に
《いよ〜波音》
妙な笑顔と友達にするような挨拶で近付く少年に私は聞いた。
波音
【貴方が
《そうだ。俺がお前の持ってる
波音
【美岬に聞いた頃はそんなまさかと思ってたけど、こんな事が起きたら本当の事なんだね】
《信じてもらえて何よりーーーさて、話を戻そう。力を望むか?》
笑顔は消えて真剣な顔に変わり、私に質問する。
そして、力を望むかと言うことに対して、【力を望む】と答えようとすると–––
《しかし、力を手にすれば、今までの記憶が消える》
波音
【……え?】
《当たり前だろう。何もなく力が手に入るなんてのは漫画やアニメだけだ。
何事にもメリット、デメリットがあるんだ。望めば、強くなれるが記憶を失う。望まなければ、そのまま鬼に清められるという話さ。まあ、どちらを選ぶもお前次第。それと俺がお前の前に現れるのこれが最初で最期かもしれねえからな。よーーーく考えろよ》
波音は刺鱏の意思に言われた言葉に驚愕するも何処か納得していた。強い力を持つからには何かしらの代償がある。それは自分自身が他の魔化魍が滅多に持つ事がない予知能力を持つ為に力は並の魔化魍いや下手したら幼体の魔化魍以下。
波音
【………決まった】
だからこそ波音は欲した。
波音
【力を望む!!】
《今までの記憶が消えてもいいのか?》
波音
【ええ……良いわよ。ここでもしも力を望まなかったら。ひなを守れない!!】
《………》
波音
【ひなだけじゃない。幽冥姉ちゃんも鋏刃も穿殻も浮幽も赤も昇布も三尸も兜も命樹も五位もインセクトも守れない】
《………》
波音
【今までの記憶が消える。ええ、ひな達を守る力が手に入るなら喜んで捨てるよ!!】
そう。もしも此処で力を望まないと言えば、待つのはひなが居なくなることと魔化魍である私たちの死。
しかし力を望めば、ひなを助ける事が出来る。ひなとの思い出いや家族の思い出が無くなるのは嫌だが、会ってそれ程経っていないからこそ今までの記憶を消されたとしても私は構わない。また新しく楽しい記憶、思い出を作れば良い。
それにひなの唯一の家族であるコソデノテを殺させない為に、目の前の鬼たちを殺す力を私は欲しい!!
《………お前の覚悟はよーーーく分かった。じゃ、目閉じてな》
刺鱏の意思が近付き、私の頭の上に左手を置く。
そして、何かが頭に流れ込んでくるのを感じて私は意識を失った。
《ふふふふ、まあ今回はその覚悟に免じてサービスしてやるか♪》
意識を失った波音に対して、
SIDEOUT
SIDE岸鬼
弱い。弱い。弱すぎる。
まあ、姫を手に入れられれば良い。その前に目の前の魔化魍を清めなければなぁ。
岸鬼は背に背負った音撃弦
刃を向け、突き刺し貫こうとした瞬間、岸際を動かそうにも全然動かない。岸鬼は自分の岸際を見ると子供を庇っていた魔化魍が岸際の刃先を掴んでいた。岸鬼はさらに力を込めて、貫こうとするが刃先はピクリとも動かず、岸鬼は仮面の下で顔を赤くしていた。
「くそ!! 離せ!!」
魔化魍は岸際を掴むのを止めて、そのまま離すと込めていた力によって、岸鬼は倒れる。
岸鬼が離れたのを確認した魔化魍は地面に落ちていたレイピアに似た小太刀を手に引きせて、庇っていた子供を自分の背に乗せ、小太刀を垂直に構える。
やがて、小太刀から霧が発生し、魔化魍と子供の身体を包みこむ。
異常に感じた俺と楽鬼で霧に攻撃するも当たった感触はなく、ただ霧を切っている感覚しかなかった。岸鬼は煩わしく思い、自身の音撃でこの霧ごと中にいる魔化魍と子供を吹き飛ばそうと岸際を構えると、突如、ブンブンと風を切りながら接近するものに気付き、岸鬼はその場から避けた。そこにあったのは1本の戦斧。
離れた所にいた錫鬼も同じらしく、そこには無数の氷柱が突き刺さっていた。
「これは!!」
そして、岸鬼たちはただならぬ殺気を纏って近付く気配が2つあった。
1つは氷柱を模した簪を複数差し、透き通った青髪に病的な白い肌、巫女服のような服を着て、ガラスのような氷で出来た下駄を履く女性。
もう1つは、左肩近くに金の金属羽根を着けた全身赤紫の蠍の人型。
人間とは思えない冷酷な笑みを浮かべて、周囲の水分を集めて、頭上に氷柱を作る魔化魍の王。
投げた戦斧を右手で引き抜き、斧の先を鬼たちに向けて殺意の篭った眼で
そして、魔化魍がいた霧はどんどん薄くなっていき、その姿を現わす。
赤みがかかったピンクのツインテール、その両側頭部には銀色の海星が着き、身体には鱏の棘を模した肩当ての付いた紫の軽鎧、薄緑の尾先には鱏の棘を生やした人魚。その手には魚呪刀
その姿に魔化魍の王 幽冥は驚くも、直ぐに元の顔に戻り、敵である鬼に目を向けた。
さざ波のように小さな音は、船をも飲み込む激しい渦に変わり、その力を今、目の前の鬼に手に持つ魚呪刀
如何でしたでしょうか?
波音のパワーアップの姿はいつか変異態と幻魔転身を纏めた安倍家の魔化魍 変異態+幻魔転身集に載せますので、楽しみにしていてください。
あの姿の波音の種族名はアマビエ
また何故、幽冥とレイウルスが同時に出て来たのかは次回の前半に書きます。