今回は前回の話の幽冥SIDEを書きました。
コソデノテとヒャクメを捜索させていた春詠お姉ちゃん達がコソデノテを探していたヒャクメを連れて、私の元に来た。
ヒャクメ曰く、『コソデノテ様は、ひな様を探しに行くと仰られて私が抑える間も無く消えてしまった』とのこと。それで、私は春詠お姉ちゃん達にヒャクメの護衛を任せて、私だけで探しに行った。
屋敷の中を歩いてるとちょこちょこ現れる傭兵をシュテンドウジさんの力やイヌガミさんの力を使いながら進む。進んでいるとある部屋を見つける。そこは障子の扉の部屋だったが、その障子と壁の隙間に黒くなった人間の腕が挟まっていた。
その腕を見て、私はその障子を開けて、中に入るとそこに居たのは、ワームや眼魔、オルフェノクやオルグのようにこの世界に存在しない者。
「…………」
それは、傭兵の首をへし折って、そのまま畳の床に投げ捨てる。そして、頭に戦斧が叩きつけられて放置されてる死体に近付き、力任せに戦斧を引き抜き、戦斧を振り付いていた血が畳に染み込む。
やがて、それは………アンノウンが私の方に目を向ける。
「………貴様がジャック達の言っていた王か?」
同じアンノウンであるハイドロゾアロードと同じ声で喋るスコーピオンロード。そして、ジャック・オ・ランタンが言っていたレイウルスはどうやら魔化魍ではなく、目の前のアンノウンことだったらしい。
重度の特撮オタクとも言われた弟が、平成怪人は個体名を持つが、人間からは通称で呼ばれてる怪人が存在する。アギトに出てくるアンノウンはマラークという種族で、それぞれラテン語の個体名を持つと言っていた。
私は目の前のアンノウンの質問を返すために答えを述べる。
「そうです。私が今代の王です」
スコーピオンロードは値踏みするような視線を幽冥にするが、直ぐに辞める。どうやら私をアギトなのかアギトになる資格を持つ者なのか見ていたようだが、何もしない所を見ると、私はどちらでも無いのだろう。
「私は大丈夫なようですね」
「………貴様はアギトでも無い。資格も持たない。だが、アギトに目覚めようとした時に殺す」
スコーピオンロードの僅かな殺気は少し身体を震えさせたが、何時ぞやかの夢の中で会ったユキジョロウさんの全身凍結の時に比べれば、怖くはない。
「………だが、ここに私の創造主は居ない。貴様がアギトに目覚めても私の創造主に害を与えられるはずもない。だから私は貴様がアギトだとしても見逃す」
「ありがとうございます」
「それと、ノツゴを見てないか?」
「ノツゴ、ノツゴですか!!」
「!! そ、そうだ」
私の声に驚き、少し身体をビクッとさせるが直ぐに元の状態に戻って肯定の返事をするスコーピオンロード。
だが、私はそちらよりノツゴという名前の方に驚いた。
ノツゴ。
蠍のような身体に鍬形虫の大顎を持った魔化魍で10年に1度現れる大型魔化魍。元となった妖怪は間引きや堕胎、私生児を産んだ娘の子供の口を塞いで殺したなどの不遇な死を遂げた子供の霊が成仏できずにこの世を彷徨ったものとされる。
防御力が非常に高く、腕の立つ鬼でも倒すのが困難で、弱点が獲物を喰らう際に開く口の中に攻撃を打ち込み、怯んだ隙に音撃を浴びせることでしか清められない。
乱風と同じ様にかなり強い魔化魍。
しかし、スコーピオンロードが何故、ノツゴを探してるのかが分からなかった。
「………あいつは恩人の形見だ。それに………」
スコーピオンロードの最後の言葉は聞き取れなかったが、どうやらこのスコーピオンロードはノツゴの保護者をしている者みたいだ。
だが、そんな風に思うことも出来なくなることが起きた。
「っ!! 何、これ」
突然の頭痛とともに見せられる光景、そこには魔化魍としての姿になっている波音とコソデノテが、先程見た幼女と自身の家族の1人でもあるひなを鬼から守っている光景が浮かぶ。
【今回はこれだけだ】
そんな光景が見えてる中で何かが私にそう言って、何かはそのまま何も答えずに消えた。
「大丈夫か」
突然見せられた光景によって四つ這いの状態になった私にスコーピオンロードが質問する。
「大丈夫です。ですが、そんなことは言ってられません!! ひなと子供が!!」
そう。あの見せられた光景がもしも。今起きてることなら、急いで行かなければ。
「………その子供は黄色い服を着ていたか?」
スコーピオンロードが質問した内容の子供は確かにいた。波音が庇っていて、今も気絶していると伝えると–––
「………」
スコーピオンロードの持つ戦斧の柄がミシミシと音が鳴る。
「案内を頼む」
私は、そのままスコーピオンロードを連れて、頭に浮かんだ光景の場所に向かった。
そして、私が体を踏まれてる波音やボロボロの状態でもなお、ひなを守るコソデノテを見た瞬間、怒りがこみ上げた。
怒り、憎しみ、殺意など様々な感情が頭をぐるぐる廻る。自身の未だに半端な王の力を使って、ここいら周辺を荒地に変えようとした時–––
【少し頭を冷やせ】
響くのは、氷のように冷徹な王の声、その声と共に私の湧き出た感情の波は治まっていき、段々と思考がクリアになっていく。そして、私の姿は以前、夢に見たユキジョロウさんと似た姿に変わっていた。
シュテンドウジさんやイヌガミさん、フグルマヨウヒさんとと同じようにユキジョロウさんが力を貸してくれたようだ。ユキジョロウさんのお陰で冷静になった頭で、目の前の光景にどうするかと考えると–––
「くそ!! 離せ!!」
鬼の1人が音撃弦を波音達に向けて、突き刺そうとするが波音が鬼の音撃弦を刃先から掴み、動きを封じていた。やがて、波音は音撃弦を離して、鬼はその反動で倒れ、波音は遠くに落ちているレオピアに似た小太刀を手に引き寄せると、剣から霧が出てきて、波音を包み込む。
鬼は攻撃を波音のいる霧に向けて行うが、まるで雲を斬るように攻撃が当たっている感じがなかった。そして、鬼は苛立ったのか、霧に向けて音撃を放とうとすると、隣にいるスコーピオンロードが手に持つ戦斧を投げる。そして、私は空気中の水分を凍らせて作った氷柱でコソデノテに攻撃を仕掛ける鬼に放つ。
「これは!!」
突然の攻撃に鬼は驚き、それと同時に霧が晴れて中から姿を変えた波音が現れる。
如何でしたでしょうか?
次回はスコーピオンロードとノツゴの岸鬼との戦闘回です。
お楽しみに