人間だけど私は魔化魍を育て、魔化魍の王になる。   作:創夜叉

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大変遅れて申し訳ございません。
今回はスコーピオンロードの戦闘やノツゴの戦闘を見直したりして、かなり遅くなりました。



記録漆拾肆

SIDEノツゴ

「(……う…五月蝿い)」

 

 自分の近くから聞こえる音で気絶による睡眠から目を覚ます幼女(ノツゴ)。目を開けて、見えたのは–––

 

「いいね楽しいいよ!!」

 

波音

【巫山戯るな!!】

 

 自分を背に抱えて戦うひなの側にいた少女らしき魔化魍とオカリナを模した音撃武器を持つ女性の鬼が戦っており、小太刀のような武器で鬼の音撃武器の攻撃を斬り裂き、突きのように突き出すと刀身が伸びて、鬼の額に伸びるが、鬼はディスクアニマルのディスクを使って攻撃を逸らして、距離を取るように後ろに跳び、屋敷の側にあった森の中に隠れた。

 魔化魍が戦っていた鬼が居なくなったと分かり、追撃を掛けようとするが–––

 

波音

【ノツゴだっけ? 起きてるなら、降りてもらっていい?】

 

「え、えっとアマビエだよね?」

 

波音

【確かにアマビエだけど、私は波音。王の家族のひとり】

 

 そう言って、自分を背中から降ろした波音は、鬼の逃げた森の中に空中を泳ぐように追いかけて行った。ノツゴは今だに響く音で、迂闊に歩くのは危険と判断して、近くの岩に身を隠して、自分から見て右側を覗いてみると–––

 

「あぶな!! 貴様は遊んでいるつもりか?!」

 

【ただの人風情が妾と戦えてるだけ有難く思え、フュゥゥゥゥゥゥ】

 

 錫杖のような音撃棒を持つ鬼に王は冷気を吹きつける。冷気を避けた鬼は、その場所を見ると凍りついている地面を見て驚愕するが、音撃棒を構える。王は頭上に浮かべた氷柱を鬼向けて放つ。

 鬼は放たれた氷柱を砕くか避けるが、1本の氷柱が掠り、氷柱の掠った肩の鎧を見て、避けることに専念し始める。王は次々と頭上に氷柱を作り出して、鬼に発射を繰り返す。鬼の避けた場所は氷柱が突き刺り、地面はつるつると滑る氷のスケートリンクのように変わっていた。

 

 そして、王の居る場所から反対の左を見ると自身の育て親代わりであるレイウルスの戦斧と鬼の持つ音撃弦が鍔迫り合い、レイウルスと鬼は互いに睨み合う。だが、鬼は音撃弦を片手に持ち、腰にぶら下がっている角張ったディスクらしき物を見えないように握り込み、レイウルスの顔に向けて、その拳を叩き込んだ。

 

SIDEOUT

 

 

SIDE岸鬼

 目の前の魔化魍らしきなにかと戦う。片手に斧を持ち、俺の持つ音撃弦と拮抗する。

 だが、俺はこんな魔化魍かも分からない奴に邪魔されるわけにはいかない。10年だ。やっと見つけた。これで取り戻せる(・・・・・)。その為にも藩の言う、姫という娘を捕らえなけらば。

 

 隠し武器としているディスクウェポンを目の前の奴に見えないように隠し持ち、顔に目掛けて拳を叩き込んだ。

 

 顔に命中して動けなくなったところに音撃弦 岸際を使って攻撃しようと考えた岸鬼は、鎧の面に隠れたその目を見開く、そこに居たのはレイウルスではなく、鍬形虫の大顎のような腕を交差して岸鬼の攻撃を防ぐ幼女(ノツゴ)だった。

 

「余計な真似を………」

 

「ぶー!! 隠し武器の存在に気付いてなかったから守ったのに!!」

 

 魔化魍だった幼女はそのまま腕を横に振って、岸鬼を遠くに吹き飛ばす。

 

「気付いていたが、私に鬼の武器が通じないのは知っているだろう」

 

「それでもだよ!!」

 

 幼女の姿に変わっている魔化魍と異形の戦闘しているのにまるで、親子喧嘩にように会話する姿に岸鬼は苛つく。

 

「それに何であれ(・・)出さないの!!」

 

「あの程度の奴に出す必要は「慢心していただけでしょ!!」……むう」

 

 まるで手を抜いてると言わんばかりのその会話によって岸鬼はさらに苛つく。

 

「こんな所を創造主様とやらに見られてたらどうするつもりなの!!」

 

「!!」

 

 異形が魔化魍の言葉に怯む。

 

「絶対にガッカリさせるでしょうね!!」

 

 さらに異形が怯む。

 

「だから、本気であいつを殺さなきゃ!!」

 

 そう言って、岸鬼を幼女ことノツゴは右腕で指差すように突き出し、その身体を本来の姿に戻していく。

 巨大な黄色い蠍の体躯に、鍬形虫の大顎を持った魔化魍ーーー

 

オギャァァァァ

 

「(ノツゴ)」

 

 よりにもよってと岸鬼は心の中で思いながら逆にチャンスが訪れたと思った。

 

 岸鬼はかつて、当時、女性最強とも言われた茶鬼という鬼の弟子だった。

 孤児だった自分を拾って育ててくれた存在で、憧れであり、自身の好きだった女性。ある時、夜な夜なよく出掛けていた茶鬼に着いて行き、初めて魔化魍や猛士、鬼の存在を知り、茶鬼と同じ存在となる為に弟子になった。

 そこからはつらい修行があったが、茶鬼に認められる人になりたいと岸鬼は必死に努力して、弟子からようやく一人前の鬼に認められるという所まで来た。そして、一人前になった時に茶鬼に告白をしようとしていた。岸鬼は一人前、正式な鬼となり岸鬼という名を貰った。

 この事を茶鬼に報告しようと自分と茶鬼の住んでいた家に戻った。だが家には茶鬼は居らず、家の中のリビングには魔化魍討伐に呼べれた時に置く、紙が置いてあった。帰ってきたときに報告すれば驚くかなと岸鬼は待った。

 だが、岸鬼は告白することは出来なかった。何故なら、茶鬼は討伐にいった魔化魍に同僚である数人の鬼と共に殺されたからだ。そして、その時に茶鬼たちに討伐対象とされた魔化魍がノツゴ(・・・)だった。

 

 だからこそ目の前のノツゴと異形を殺し、姫を手に入れて、俺の願いを叶える。

 

 異形とノツゴは並び、俺を睨んでいる。

 異形は手に持っていた戦斧を地面に突き刺して、右の拳を左肩に持っていき、右手の指を全て開き、そこに人差し指と中指だけを伸ばした左手を持って、その左手で右手の甲にZを描く。

 

 そして、その頭上から青い円が発生して、異形はそこに腕を入れて、青い円から上半身を覆える盾を取り出して、地面に突き刺した戦斧を引き抜く。

 

 岸鬼は、先程とは違う雰囲気に気が付き、自身の音撃弦 岸際を構えて、異形に向かって走る。

 異形は焦ることなく、盾を前に突き出す。岸鬼はその盾に向かって岸際を突き刺すがーーー

 

 岸際は突き刺さることなく盾から少し離れた場所で固定されるかのように止まっていた。岸鬼はそれでも、見えない隙間に向けて突き刺そうとするが、一向に刺さる気配もない。

 

 突如、襲ってきた衝撃によって岸鬼は屋敷の壁に叩きつけられる。自分の立っていった場所には大顎をフルスイングしたような体勢のノツゴだった。壁に吹き飛ばされた岸鬼はディスクアニマル 瑠璃狼をノツゴと異形に投げつける。瑠璃狼のディスクは変形して、ノツゴ達の身体の周りを飛び跳ねるように攻撃を仕掛けるが、ノツゴはその強固な甲皮によって攻撃は通さずに逆に罅割れて、そのまま砕け散り、異形は的確に戦斧で瑠璃狼を粉砕していく。

 

 僅かに動けなかった隙を突いて、岸鬼はノツゴの方に向かって走り、岸際を槍投げのようにノツゴの尻尾に投げつける。ノツゴは岸際を尻尾で弾くが、弾かれた先には岸鬼がおり、弾かれた岸際を遠心力を利用するように振り回して、ノツゴの右大顎に岸際を叩きつける。

 

 岸際を叩きつけられたノツゴの大顎はやがて崩れるように砕け散る。

 

オギャァァァァァァァァ

 

 ノツゴの悲鳴にも似た鳴き声が響き、岸鬼は再び、攻撃を仕掛けよとするがーーー

 

「がはっ!」

 

 レイウルスの大盾によるシールドバッシュで岸鬼はノツゴから引き離すように弾き飛ばし、さらにレイウルスは戦斧を岸際を持っていた腕を斬り落とす。

 

「があああああああ!!」

 

 斬られた腕から吹き出る血でその身体を赤く染めるレイウルスはそのまま近付き、腕を抑えて倒れる岸鬼の残った腕や両脚を戦斧で斬り裂く。

 

「ぎやああああああああ!!」

 

 耳障りだと思うような叫びにレイウルスは淡々と戦斧を振り下ろし、岸鬼を細く小分けするように斬り裂く。

 そこに残ったのは、もはや形も不明なほどに切り刻まれた肉片と肉塊だけだった。




如何でしたでしょうか?
次回は波音と笑鬼の戦いを書こうと思います。

本来、ノツゴはあの程度の攻撃で大顎は砕けませんが、まだ少し幼体の為、砕けたことにしました。
そして、岸鬼は保護者の怒りを買って切り刻まれました。

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