人間だけど私は魔化魍を育て、魔化魍の王になる。   作:創夜叉

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更新完了です。
今回は波音の前半と幽冥の後半でお送りします。


記録漆拾陸

SIDE波音

 パリ、ピシッとひび割れたような音ともに何かが砕ける。砕けのは–––

 

「が、ぎゃああああ!!」

 

 楽鬼の肘近くの腕とその手にあった音撃気鳴笛(オカリナ)だった。

 

「な、何ですか!? それは!!」

 

 波音の持つそれ(・・)に楽鬼は驚く。

 何故なら、楽鬼の腕と音撃気鳴笛(オカリナ)を砕いたのは、波音の持つ手から楽鬼の腕のあった部分まで伸びる(・・・)刺鱏(しえい)だった。

 

 そう。これこそ刺鱏の本来の力、神経毒はあくまで刺鱏(しえい)の元となった生物の魂()の特徴の副次的なものに過ぎず、真の力は刀身の伸縮自在である。

 そして、音撃気鳴笛(オカリナ)共に楽鬼の腕が砕け散ったのは、音撃気鳴笛(オカリナ)衝撃徹弱点を突いた(・・・・・・)からだ。

 音撃気鳴笛(オカリナ)衝撃徹は、対象に対して、衝撃を送り込む際に機構の一部に僅かな隙間が出来る。波音がやったのはその隙間に向けて刺鱏(しえい)を突き刺して、衝撃を逆流させて、その衝撃で楽鬼の腕もろとも音撃気鳴笛(オカリナ)を破壊したのだ。

 

「まだ、負けてない!!」

 

 そう言って、自身の変身音叉を音叉刀に変えて、茜鷹と瑠璃狼のディスクを投げつける。

 ディスクからディスクアニマルになった数体の茜鷹と瑠璃狼が波音に襲いかかる。

 しかし本来、ディスクアニマルは魔化魍を捜索する為に使う事が多く、魔化魍に対しての攻撃能力はそこまで高くない。数があれば大型の魔化魍でも足止めすることは出来る。

 だが、波音のような等身大の魔化魍でも数十枚のディスクアニマルが必要なのに対して、楽鬼が持っていたのは2桁以下のディスクアニマル。波音は刺鱏を構えて、連続で突きを放ち、茜鷹と瑠璃狼を砕く。

 

「隙あり!!」

 

 ディスクアニマルによって出来た隙で楽鬼は波音に迫り、音叉刀を人間でいう心臓と同じ位置に目掛けて突き刺す。

 

波音

【惜しかったね】

 

 だが、音叉刀は波音の身体に刺さらず、刺鱏(しえい)の柄で音叉刀の刀身を受け止める。

 刺鱏(しえい)の刀身に赤紫のオーラが纏い、楽鬼は攻撃を避ける為に波音から離れようとするが–––

 

「ぐっ!」

 

 楽鬼の左脚には波音の尾の棘が突き刺さって、楽鬼は避けられず、赤紫のオーラを纏った刺鱏(しえい)が楽鬼を斬り裂く。

 

「うう、あ、ああああ」

 

 鎧の上から斬られても、刀身の毒は身体の中に入っていき楽鬼を蝕み、楽鬼は苦しそうに呻く。

 刺鱏(しえい)の副次効果である神経毒によって呼吸が乱れていき、腕と脚の神経が麻痺して持っていた音叉刀を落とし、さらに神経毒による身体の麻痺が悪化して、楽鬼は地面に倒れる。

 

 息も絶え絶えな状態で、楽鬼は波音を見上げるように見る。

 波音の深海のような深く青い瞳は楽鬼の姿を捉えて、ジッと見つめる。

 

SIDEOUT

 

 

SIDE楽鬼

 魔化魍が私を見下ろす。魔化魍に見下されて、私の心の中は怒りでも、憎悪でも、悲しみでもなく空っぽ(・・・)だった。

 それはそうだ。藩さんに拾われてから、私は自分の意思で行動したことなんて1度もない。常に藩さんの指示によって行動していた。私はそれに従い、ずっと流されるように過ごしてきた。

 

 私と同じ孤児と戦うのも。

 

 攫った人間を傭兵に変えるのも。

 

 魔化魍を倒すのも。

 

 実験体と闘うのも。

 

 私の意思はない。前の実験まで生きてた同じ孤児の話し相手曰く、『つまらない人生なんだな』と言われた。

 走馬灯のように思い出が過ぎ去りながら、だんだんと毒が原因なのか、目の前が暗くなっていく、魔化魍は小太刀をこちらに向けて、振り下ろした。

 

SIDEOUT

 

 

SIDE波音

 初めて鬼と戦い、勝利を掴めた。

 刺鱏(しえい)の意思に認められたおかげで勝てた。まあ、予知能力は低下したけど非力な頃に比べれば–––

 

波音

【って、気付いたんだけど私、記憶消えてないよね!!】

 

 何で?

 確かに鬼を倒せるくらいの力を得れた、その対価として今までの記憶が消えるって言われた筈なのに、私の記憶は消えていなかった。

 しかし、記憶が消えるのを構わないって言っていた。今考えると結構私凄いこと言ったな–––

 

波音

【ありがとうね刺鱏(しえい)

 

 波音は自身の手にある刺鱏(しえい)に感謝の言葉を述べるのだった。

 

SIDEOUT

 

 何もない宙にピキピキと何かが凍っていく音が響き、そこからは連続して氷柱の弾幕が放たれる。それを放つのは、ユキジョロウの力を借りた幽冥。

 

 対するは、猛士佐賀支部の『佐賀3人衆』のリーダーともいうべき鬼、錫鬼。

 その手に持つ錫型の音撃棒 錫杖を回転させて氷柱の弾幕を砕いていき、弾幕の隙をついて錫杖に灯した炎を幽冥に向けて放つ。

 

 だが、幽冥が手を振るうと霧状の小さな氷が炎を包み込み、カチンコチンに凍らせる。

 炎だった氷は地面に落下して砕け散って、同じ攻防が続く。どちらも決め手になるような攻撃を当てていなかった。

 

「(ただ、氷柱を撃つだけじゃ、あの鬼に攻撃は当てられない)」

 

 そう考える幽冥は前世の知識で氷を使うヒーロー、敵キャラクター又はアニメキャラクターを思い出そうとしていた。

 その中で浮かんだのは、ダラけきった正義の元海軍大将、史上最年少の十番隊隊長、悪のカリスマの門番、裸になる氷の造形魔導士、恐竜を全滅させた仲良し3人組の1人、No.2ヒーローの2つの能力を持つ息子、皇帝に仕える四天王の豪将、幻想郷のおバカな氷精などといったキャラクター達が思い浮かび、幽冥はその中で何がユキジョロウとの戦闘スタイルに合うかを氷柱を放ちながら考えていた。

 

 ここで、幽冥の中にいる王たちの話になるが、魔化魍の王たちは幽冥が前世を持った人間だということは知っている。そして、その前世には個性的な友人達がいたおかげで、凡ゆる知識を幽冥は持っていた。

 妖怪好きのキッカケとなったオカルト好きな兄であり現姉の春詠、前世の世界ではその名を轟かせた料理人の姉、無類の歴史マニアな美岬、ロボットなどの機械系に詳しいゲーマーの妹、特撮マニアな弟、旅行好きで様々な経験を話す親友など様々な存在が幽冥に知識を与えた。

 その知識を幽冥に憑依している王たちは共有して、それを新たな自分の技として考えたりしていた。

 以前、北海道で戦った想鬼にイヌガミが使った『超大嵐』はとある特撮ヒーローの技をアレンジして生み出した技でもある。

 そして、幽冥の考えてる頭にユキジョロウの声が響く。

 

【こやつのコレなら、妾の新しい技として使えそうだ】

 

 そい言って見せられた物に幽冥は受ける鬼に対して、ご愁傷様と思うが、ボロボロになっていたコソデノテのことを思い出して、その考えを消した。

 

SIDE錫鬼

 先程まで、氷柱を撃ってきた女の魔化魍の動きが止まる。

 普通ならこのタイミングは絶好の攻撃のチャンスだが–––

 

「何だ?!」

 

 ふと、目に見えない何かを感じた錫鬼は錫杖を地面に突いて、結界を生み出す。

 そして、結界が張られると同時に世界は白に染まった。




如何でしたでしょうか?

今回はこんな感じになりました。
幽冥の考えていたキャラ達は色々な作品の氷系の能力の人たちです。

そして、ユキジョロウが参考にした技のキャラはとあるゲームのキャラです。
そのキャラのアレンジ技は次回の話で出ます。
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