物語の執筆者 作:カボチャッキ―
無事に敵を殲滅した俺たちは突如現れたジャンヌへと話しかけた。
「あなたは?」
「私はルーラーのサーヴァントであるジャンヌ・ダルクです」
「ジャンヌ!?」
「それって魔女になったはずじゃ?」
「その話は後です。ここから移動しましょう」
不思議がる藤丸君たち。つまり、ジャンヌは二人いるってことだろう。
そう考えているとジャンヌが気まずそうな顔で移動を提案してきた。兵士と共にいるのが居心地が悪いらしい。
俺たちは同意して移動しようとしたところマシュちゃんにぼこられた兵士がジャンヌに話しかけた。
「やはり、今フランスを滅ぼそうとしている聖女は偽物なのですね?」
「……分かりません。もしかしたら私なのかもしれません」
「そうですか。しかし、私たちを守ろうとしてくれたあなたを見て私はあなたを信じてみようと思います。あの青年もそう言ってましたし」
「あの青年とは?」
「はい。何か不思議な青年でして数日前にふらっとこの街に来たのですよ。そして私たちに‘フランスを襲っているジャンヌは偽物だ。本物は王様は殺す可能性があるが共に戦ったフランスの民を襲うはずがない’と力説していたのですよ」
「その青年は?」
「分かりません。演説した後に‘ここも危ないから逃げる’と言って走っていったので」
「分かりました。……相変わらずですね、あの人は。お話ありがとうございました。では私たちは行きます」
なんとなくだけど、その青年って俺っぽいなと思っていると話が終わり、俺たちは近くの森に移動した。
そこでお互いの事情を話し終えた俺たちは協力すること。そして敵の本拠地であるオルレアンに情報収集しながら移動するというところまで決めて今日は寝ることにした。
藤丸君は疲れたらしくらしくすぐに寝てしまった。俺も寝ようと思ったが思うように寝付けなかったのでサーヴァントたちの会話に混ざる。ちなみにマシュちゃんとジャンヌは違う所にいる。
「どうした、春樹、眠れないのか?」
「ああ、寝かしつけてくれる彼女がいないからな」
「なら、わ、私が一緒に寝てあげましょうか?」
「俺、包容力ある人がいいからパス」
「殺します兄さん」
「お、落ち着けアルトリア。美人な顔が台無しだぞ」
「その言葉は聞き飽きました」
いつも通り殴られる。
「で、この時代にもお前さんはいるのかい?」
この時代にもって、俺がいろいろ転生を繰り返していることに気付いたのか。……まあ、違う時代の人が出会ったら分かるよな。
少し驚く俺にクー・フーリンは続ける。
「さっき、兵士が変な奴の話をしてた時に反応してただろ?」
「……よく見てるな。さすが覗きのプロ」
「勝手に変なプロにするな。それで?」
「ああ、確かにいたよ。彼女と共に同じ村で育ったよ。戦争も衛生兵として参加した。その後は彼女の人生を書きながらフランスから飛び出したかな」
「どうしてですか?」
「……分からない。たぶんだけど逃げ出したんだ。大切な人が目の前で処刑されて、その後は狂った友を助けることも出来なかった。だから逃げ出したんだ」
「……そうですか。それで彼女には話さないのですか?」
「話さないさ。今は忙しいからな。まあ、俺もそろそろ寝るわ。おやすみお二人さん」
少し無理やりだったが話を切る。楽しい思い出もある。しかし、それと同じぐらい辛い思いでもあるのだ。ジャンヌが死んでからは大変だったのだ。
「ああ、さっさと寝ろ」
「おやすみなさい兄さん」
空気を読んでくれる二人。やっぱりお前らはイケメンだよ。
そんなこんなで翌日はなかなかの目覚めであった。
「では次の町に向かいましょう」
「はい!」
元気よく返事をしたマシュちゃんに続き街に向けて歩いているとカルデアから通信が入った。出てきたのはマリーだった。
「あなたたちの行く先にサーヴァント反応が探知されたわ気を付けて! ……けど物凄い速さで遠ざかっていくわ。私たちに気付かなかったのね」
そのことに安堵している俺たちにマシュちゃんから不吉な情報が届けられる。
「街が燃えています!」
異常を探知した俺たちは街に急行したが、酷いものだった。生存者はなくドラゴンやゾンビが残っているだけだった。ジャンヌが顔色を悪くしていたが全員で敵を排除していると再び通信が入る。
「気を付けて、先ほどの反応が戻ってきているわ! 数は5しかもとてつもなく速いわ! 気を付けて!」
迫りくる敵に対して身構えていると現われたのはイメチェンした黒いジャンヌとその仲間。
知ってる奴と知らない奴がいる。確かに何度も転生は繰り返して英雄に出会っているがやはり出会えていない英雄もいるらしい。
俺がどのような基準で転生しているか分からないが、神様の気まぐれだろう。
それよりもあの黒いジャンヌはあの時のアルトリアに通じるものがあるな。などと考えていたら普通のジャンヌが嫌いらしくボロクソ悪口を言う黒ジャンヌ(今命名)
二人で何度も言いあう。そしてどうやら主の声とやらが聞こえないらしい。俺的には元から聞こえてなかった説が強い。
やれどちらが本物だなんだと小難しい話は終わったらしく黒ジャンヌがサーヴァントをけしかけてきた。
俺の記憶が正しければヴラド三世と殴り愛聖女に……誰?
あのきわどい格好した人は知らないな。さすがにあんな格好した女性を見たことがあったら思いだせる。
「よし、さっそく来たな! ここは俺たちに任せときな!」
「やったれ!」
ヴラド三世の前にクー・フーリンが行き、SM女性の前にアルトリア、エミヤはデオンのもとへ、マシュはあの……名前は……何だっけな女の前に。そしてジャンヌが黒ジャンヌの前に立ったのだった。