物語の執筆者   作:カボチャッキ―

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マルタの攻撃がビームではなく、祈ると目標がひとりでの爆発する攻撃であるとの情報をもらったのでマルタの攻撃の部分を修正しました。


第十話

 アルトリアがSMの格好をした女性に対して一方的な試合をする中、ランサー同士であるクー・フーリンとヴラド三世は睨みあっていた。

 

「余に血を捧げるのは貴様か?」

 

「残念ながら違うね。お前さんは誰の血ももらえねぇよ。ここで俺にやられるのだからな」

 

「やれるものなら、やってみせろ」

 

 少し話したところで槍兵同士の苛烈な戦いが行われている。

 

 違う、あいつは……、ヴラドはそんなこと言わない。確かにオスマン帝国の兵士を串刺しにした。でもそれは国を守るためであった。あいつ自身が血を、戦いを求めたことなどなかったはずだ。

 

 しかし、実際にサーヴァントで召喚されたあいつは血を求めている。

 

「っは、やるねぇ! ここまでの腕だ。さぞ活躍した英雄だろう?」

 

「そちらもな」

 

 お互いに実力を確認しながらも戦いを続ける。

 

「ランサー、そいつはヴラド三世だ! 宝具とかは分からんが頑張れ!」

 

「なるほど、串刺し公か。さっすがマスターよく知っている」

 

「ほう、この少しの時間で余の真名に気付くとはやるな」

 

 まるで人事のように話すヴラドに少しイラつく。

 

「何感心しているんだ! お前も血が欲しいとか、らしくないこと言ってないでさっさと正気になれ!」

 

「……ドラキュラのモデルにもなった余に対して、らしくないか」

 

 戦闘をしながら少し考え込むヴラド。

 

「そら、戦闘中に考え事している余裕があるのかい!」

 

「くっ」

 

 段々押されていく中ヴラドはクー・フーリンとの距離を取り俺の方をじっと見てきた。

 

「あそこまで残酷なことをした余にそんなことを言ってくれたのは一人しかいなかった。そしてありえないと分かっているがそれでも余の勘が告げている、お前が余の友であると」

 

「……」

 

 ここで何と答えれば良いのか迷った俺が黙っているとヴラドは笑った。

 

「小娘に命令されてつまらないことをさせられたと思っていたが嬉しいこともあるものだな」

 

「ああ、それには同感だ。友に再び会えるってのは嬉しいものだ」

 

「ほう、あいつは貴様とも友人関係だったのか」

 

 ヴラドに対して同意を示したクー・フーリンがヴラドを遠くへ蹴り飛ばす。蹴られたヴラドは体勢を立て直しながらもすぐ近くに走って来たクー・フーリンへと反撃したのだった。

 

 

 エミヤとデオンが均衡した戦いをしている中、デミサーヴァントであるマシュは苦戦していた。杖から出る謎の光を盾で防いでいるがじわじわと追い詰めれている。

 

「がんばれ、マシュ!」

 

 応援する藤丸に応えようと、反撃するチャンスをうかがっているマシュに後ろから声が掛る。

 

「マシュちゃん気を付けて! そいつ今は聖女のフリしてボン○ーマンみたいなことしてるけど実際は殴った方が強いから。脳みそ筋肉だから。竜を鎮めたって言うけど本当は竜を拳で沈めただけだからね!」

 

「あ゛? 誰だ今そんなこと言ったやつ! ぼこるぞ!」

 

 急に荒々しい声を出した彼女に呆然とするマシュは、あることに気付いた。

 

「竜を鎮めた聖女? 彼女はマルタですね!」

 

「そう、そんな名前だった!」

 

「おいてめぇ! そこ動くな鉄拳制裁してやる!」

 

「口調、誤魔化せよ!」

 

「……、動かないでください」

 

「遅いけどな!」

 

「やっぱり殴る!」

 

 会話をしながらマルタは不思議な気分であった。聖女なのにやることはフランスを滅ぼすことであってげんなりしていたが、今しがたした会話は昔何度も繰り返してやった気がする。

 

 自分があの人のような言動をした時に‘頭、大丈夫?’と失礼なことを言ってきた弟とのやりとりそのものだった。

 

 自分やラザロが神を信じなさいと言っても‘……おっちょこちょいの神様ってかわいいよね。俺は金星の神様がかわいいと思う’なんて馬鹿なことを言っていた弟だ。

 

 その後に殴り飛ばしたがその話は置いといて。彼が自分の弟と重なるのは偶然ではないだろう。初対面の自分に対して真名をあてて脳筋とまで言ったのだ、あれはやはり一番馬鹿だった弟だろう。

 

 ならば殴り飛ばすのは確定ね。

 

 なんとか目の前のサーヴァントを倒さないように狂化に抗いながら聖女マルタはそんな風に考えていた。

 

 

 

 ところどころで戦闘が起こる中、戦場に突如ガラスの馬車が走りこんできた。

 

 すごーい、綺麗だね!

 

 なんて考えていると出て来たのはマリー・アントワネットとモーツァルトだった。彼らのことはもちろん知っているがそこまで深い仲にはならなかった。

 

「ヴィヴ・ラ・フランス! うふふふふ、正義の味方として参上したわ!」

 

 なかなか派手なセリフと共に突入してきた、マリー・アントワネットは黒ジャンヌに対して宣戦布告した。

 

「さて、私は革命を防げなかった王妃だけど、今回はフランスをあなたから守ってみせるわジャンヌ・ダルクさん」

 

「ちっ、あんなやつに邪魔されるなんて。全員撤退よ!」

 

 そんな彼女たちの乱入に少し分が悪いと考えたのか撤退の命令を出す黒ジャンヌ。

 

「逃がすと思っているのですか?」

 

「あらあら、聖処女様は恐いですね。ええもちろん逃がさせてもらいます。ワイバーン!」

 

 黒ジャンヌがワイバーンに命令する。各サーヴァントへと襲いかかるワイバーン。

 

 トラウマが蘇る俺は逃げようとするが身体が動かなくなる。

 

 まただ、はたして神様は俺に何を望んでいるのだ。何? このまま食われろってこと? 藤丸君の物語をまだ一章ぐらいしか書いてないよ?

 

 そんなことを考えていると頭上に影がかかる。

 

 そしてワイバーンに身体を鷲掴みにされる。食べるつもりではないのかな?

 

「ちょ、何やってんだ馬鹿野郎!」

 

「また、逃げ遅れたのですか!?」

 

 自分のサーヴァントから少しひどい言葉が投げられるが答えている余裕が無い。

 

「痛い痛い! もっとやさしく掴んで! こう見えてもデリケートなの俺。平成の日本で引きこもってたから!」

 

 叫びも虚しく俺は救出されることなくそのまま敵サーヴァント御一行と合流し、黒ジャンヌが乗っている竜に降ろされた。

 

「あのー、何で俺を捕まえたのですか?」

 

「それはあなたがこちらのサーヴァントの真名を知っていて面倒だったことと、あの二人があなたを連れて来いと注文してきたからですよ。マスターとしてサーヴァントの願いは聞いてあげないといけませんから」

 

 ニヤニヤと俺を見る黒ジャンヌ。やはりノーマルジャンヌそっくりである。

 

 ちなみに隣を見ると懐かしそうな顔をするヴラド(比較的安全)と指をボキボキ鳴らしているマルタ(比較的危険)がこっちを見ていた。

 

 死にませんようにと願いながらジャンヌに襟首を掴まれながら連行されるのだった。


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