物語の執筆者   作:カボチャッキ―

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第十一話

 のんびり空の旅と言えばいいのか困るが竜の上に乗って移動なんてなかなかできないものである。

 

 竜に咥えられて移動したことは結構あるけどな!

 

 のんびりしていると黒ジャンヌたちから情報が入る。なんでもリヨンでサーヴァントがいたらしいが、残念ながら倒されたらしい。

 

 その情報に耳を傾けているとマルタがこちらを見て昔遊びで使っていたハンドサインを送って来た。

 

 なになに……実はそのサーヴァントは生きている。へぇ、生きてるんだ。よかったね。

 

 その情報は嬉しいので早速伝達する。

 

『もしもしもしもし、こちらイケメンマスター。オーヴァー』

 

『こちらイケメンランサー。オーヴァー』

 

『こ、こちらイケメンセイバー。オーヴァー』

 

『……みんなでノッてくるなよ、反応に困るだろ』

 

『こっちとしては、捕まった直後にそんな余裕そうに連絡してきたお前に困ってるわ』

 

『兄さん、相変わらずしぶといですね』

 

『うん、そんなこと冥界の神様にも言われたわ。それよりもいい情報、リヨンにいい感じのサーヴァントがいるってさ』

 

『あん? その情報信用できるのか?』

 

『そこは安心して脳筋でも優しさには溢れてる人からの情報だから』

 

『まぁ、目的地には困っていたところです。あなたの無事もついでに藤丸に伝えておきましょう』

 

『俺の無事をついでにしないで。それと頼みます』

 

 必要なものは伝えたので黙っておこう。

 

 そして時間が経つこと数十分、彼女の本拠地である城に到着した。俺も竜から降ろされて周りをキョロキョロしているとめっちゃでかい竜がいた。

 

 こいつ、どっかで見たことがあるような、でも竜なんてみんな外見同じだしな。竜の判別方法なんて色と形態以外ないしな。

 

 でも、みんなに伝えようと思って念話してみたが伝わらない。どうやらここにはアンテナが立ってないようだ。

 

「さて、この男は空いている部屋に放り込んでおきなさい。その間に私はあらたなサーヴァントを召喚します」

 

 どうやら、数で不利と悟ったらしく兵を増やすようだ。誰が出てくるのか気になるが移動を促されたので渋々移動する。

 

 そして通されたのは普通の部屋だった。外装が趣味の悪いことになっていたので警戒していたが安心した。

 

 俺を部屋に通した後、ヴラドは先に済ませる用事があると出て行き、俺の部屋に残ったのはマルタであった。背後に死刑用BGMが流れている。

 

「さて、久しぶりね。馬鹿」

 

 出会いがしらに拳骨を食らわせられる。頭がぐわんぐわんする。この聖女、攻撃力に極振りしているに違いない。

 

「あのさぁ、人のこと馬鹿って言うの止めてくれる。確かに頭の中に筋肉しかないから名前がおぼえ……」

 

 俺の目の前にあった高級そうな机が真っ二つに割られた。

 

「何か言った?」

 

「いえ、私は馬鹿です。さすがマルタ様、頭がよろしいようで」

 

「ふふ、ものわかりがよくて助かります」

 

 この人が丁寧に話す時は威嚇を意味しているのではないかと思っている。

 

「さて、いろいろ言いたいことがあるけど監視されてそうだから下手なこと言えないわね」

 

「じゃあ、何しに来たの?」

 

「嫌がらせよ。あそこまで言われたら仕返ししたくなるのが普通でしょ」

 

「姉さん、聖女止めたら? むしろ死んだら?」

 

「聖女として出てきた私にそんなこと言われたら困るのだけど、それと私はもう死んでるから。それであんたは何で生きてるの?」

 

「それは山よりも深く海よりも高い理由が……」

 

「腹立つから早く言え」

 

「理由って言われても、神様の嫌がらせとしか」

 

「あんた、神様からも聖女からも嫌がらせされるなんてよっぽど徳の低い生き方してるのね」

 

「やかましい!」

 

「あはははは! まあ本当のところはあんたともう一度話したかっただけよ。しっかりしなさいよ」

 

「……分かってるよ姉ちゃん」

 

「ふふ、それでよし! じゃあね」

 

 嬉しそうに笑いながら出ていくマルタ。相変わらず心配性なんだから。

 

 

 

 少し時間が経ってからヴラドが入って来た。

 

「……久しいな友よ」

 

「ああ、元気にしてた?」

 

「ふっ、ああ元気にしてたとも!」

 

 ヴラドは目の前の机が壊れてることに若干引きながら椅子に座った。

 

「お前さん、どうして血を求める変態みたいになってるの?」

 

「どうやら狂化されたことが原因らしい。それと血生臭い逸話が残っているからだろう」

 

 彼をモデルにしたドラキュラも関係しているのかもしれない。

 

「ふーん、大変だな」

 

「全くだ。しかし貴様は余よりも大変な目に会っているようだが?」

 

「分かる?」

 

「ああ、国を救うため余と共に生きた貴様が今度は世界を救うために生きるとは、難儀な奴だな」

 

「死んだ後に呼び出されるお前の方が難儀だろ」

 

「その通りだな」

 

 お互い笑う。気難しいやつではあったが責任感が強くいい奴だった。懐かしい話をしているとヴラドが立ちあがった。

 

「さて、余も長時間ここにいては何を言われるか分からん。すぐに出ていくとしよう」

 

「じゃあな」

 

 手を振り出ていくのを見送る。さて、俺と話したがっていた二人は帰った訳だ。

 

 ここから逃亡することは不可能。ということは助けが来るのを待つべきなのだろう。

 

 藤丸君の活躍はあとで記録を見せてもらおう。

 

 そう考えていると予想外の第三の客人が入って来た。

 

「あら、あんた生きてたの? あの二人に八つ裂きにされたと思っていたわ」

 

 相変わらず物騒なことを言っている黒ジャンヌであった。

 

「残念、俺の代わりに机が八つ裂きにされたよ」

 

「そのようね」

 

 下の机を確認してヴラドと同じように座る黒ジャンヌ。

 

「何か用で?」

 

「別に?」

 

 お互い無言の時間が続く。お願いだ、話すか出ていくかしてくれ。

 

 俺の思いが通じたのか黒ジャンヌは話しだした。

 

「あんた、私と会ったことある?」

 

「? いや、初対面だが」

 

「そうよね。なんでかな出会ったことがあるような気がするんだけど」

 

 ジャンヌと同じ記憶を共有しているならその可能性もあるのだろう。

 

「俺からも質問していい?」

 

「別にいいわよ」

 

「お前さんはフランスを滅ぼすんだろ?」

 

「ええ、そうよ! 何、今ここで止めてみせる?」

 

「いや、さすがに俺には無理でしょ。それよりその後はどうするんだ?」

 

「……その後?」

 

「ああ、その後だ。正直な話、俺もこんな国滅んでもいいと思っている。英雄を妬み殺す国だ。そんな国は腐るほどある。そのたびに滅べと思っている」

 

「あら、気が合うじゃない。仲間になる?」

 

「それは止めておこう。それよりもその後だ」

 

「……別に考えてないわよ。滅ぼした後のことなんて。特にこの国への復讐以外にやりたいことなんてありませんし」

 

 この特異点が滅んだ後に世界が滅びることは知らないみたいだな。

 

「……それは勿体ない」

 

「勿体ない?」

 

「ああ、結構長いこと生きてきたが世の中にはおもしろいことがたくさんある。なのにあんたは国を滅ぼすなんてつまらないことで満足しようとしている。それは勿体なくないか?」

 

 悩むそぶりを見せる黒ジャンヌ。

 

「……それもそうね。なら滅ぼした後にしたいことでも考えておくわ」

 

 どうでもいいと言われると思ったが意外にあっさりと前向きな考えを見せる黒ジャンヌに少し驚いた。

 

 まあ、藤丸君が止めると思うが再びどこかで召喚される可能性があるのだ、その時にでもたのしんでもらいたいものだ。

 

「それがいい」

 

「じゃあ、大人しくしときなさいよ」

 

 黒ジャンヌは適当に手を振りながら出ていったのだった。

 

 


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