物語の執筆者   作:カボチャッキ―

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第十四話

 食堂でクー・フーリンに罰を与えた後、適当に腹ごしらえをした。その後、ロマニたちに会いメディカルチェックをしてもらった。

 

 その結果、やはり体は健康そのものだった。結局、気絶した理由は分からずじまいだったが俺としてはあのフランスの夢が何か関係しているのだろうと考えたが憶測の範囲から出ないのでもう少し確証が持てたら誰かに聞いてみよう。

 

 そんな訳でさらに翌日、恒例の召喚をすることにした。いつものダ・ヴィンチさんなどのメンバーが集まっている。

 

「さて、今回も召喚するんだけど、ここで一つ問題が発生する。それは僕たちが原因ではあるけどレイシフト中に同行できるサーヴァントは一人三人で合計六人しか無理なんだ。ちなみにマシュはそこに含まれないから安心してレイシフトしてもいいよ」

 

「はい!」

 

「フォウ!」

 

 嬉しそうに返事をするマシュちゃんとフォウ君。あんまり外に出たことがないと言っていたので、冒険することが楽しいのだろう。フォウ君のことはあんまり分からないです。

 

「じゃあ、誰かがやられた場合は残りのメンバーで特異点を攻略しなければならないんですか?」

 

「いや、そこは安心してほしい。一人やられた場合はこちらからすぐに新しいサーヴァントを派遣することができる。それにやられたサーヴァントも霊基は登録してあるから一日も経てば再び派遣できるようになるよ」

 

「なら安心ですね」

 

 ほっとする藤丸君にロマニは厳しい顔つきで言う。

 

「けれども、マシュは例外だ。彼女はデミサーヴァント、つまり生きているサーヴァントだから、気を付けてくれよ」

 

「はい」

 

 緊張しながらも覚悟を決めた返事をする藤丸君。ここらへんはさすが英雄(候補)だ。

 

「そこまで不安になることはないよお二人さん。なんたって歴代の英雄たちが君たちを守り、そして戦ってくれるんだぜ。大船にのったつもりで気楽にいこうよ」

 

「そこまで気楽になられても困りますけどね。でも大丈夫よ、あなたたちはすでに第一特異点を修復したんだから!」

 

 ダ・ヴィンチさんのセリフに苦笑いしながらもこうやって藤丸君たちを褒めるマリーは少し所長らしくなってきた気がする。

 

「はい!」

 

 元気よく返事をするマシュちゃんと藤丸君に周りも優しい笑みを浮かべた。

 

「では早速、召喚していこう! どちらからやる?」

 

「前回は藤丸君からだし今回も藤丸君からどうぞ」

 

「分かりました」

 

 藤丸君は意気揚々と召喚サークルに近づくと虹色の石を3個使った。

 

 そして出てきたのは……

 

「セイバー、ジークフリート。召喚に応じ参上した。好きなように命令してくれ」

 

 出てきたのは白髪の剣士ジークフリートだった。彼とは友人関係であった。いい奴ではあったが他人を優先するばかりで自分のことを蔑ろにしていた。すぐに謝るし、生前も他人を優先して最終的には騙されて死んでしまったのだ。

 

 本当に馬鹿な男だった。俺が何度も他人を優先するんじゃなくて自分を優先しろと言っても聞かなかった。それで喧嘩をしてもすまないとしか言わないのだから腹が立つ。

 

 ジークフリートがみんなに挨拶をしていって最後に俺の番になった。

 

「ジークフリートだ。よろしく頼む」

 

「夏目春樹だ。よろしく」

 

「ああ、マスターだけでなくあなたも守ってみせる」

 

「そんなことより自分も優先してくれジーク」

 

「え?」

 

「すまん、気にしないでくれジークフリート」

 

「あ……ああ」

 

 しまった。昔みたいに言ってしまった。別に俺であることがバレたことで特に困らないけど、なんか気まずいのだ。

 

 こっちをじっと見てくるジークの横で再び召喚する藤丸君。そして召喚されたのは見覚えのある彼女だった。

 

「サーヴァントルーラー、ジャンヌ・ダルク。再び会えてよかったです」

 

「こっちこそ、会えて嬉しいよ。これからよろしく」

 

「はい! よろしくお願いします」

 

 今度はジャンヌが来たようだ。

 

 これまた、こう、再会しづらい相手だ。生前のことは置いておいても、ジルからあんな話を聞かされたのだ意識せざるをえない。でも俺があの俺であることはバレてないし大丈夫でしょ!

 

 そう楽観視しているとジャンヌが俺の前に来た。

 

「またお会いしましたね」

 

「そうだな。これから長い付き合いになると思うからよろしくな」

 

「ええ、共に人理を修復しましょう。それよりも質問があるのですが」

 

「残念、今の俺は質問を受け付けてないんだ」

 

 やばいよ、なんか目が怖いよ。獲物に狙いを定めたかのような視線である。

 

「却下します。あなたは私の質問に答えなければなりません」

 

 そんなこと言われても知らんがな。拒否したいけどこいつ脳筋だからな。ごり押しばかりで全然話を聞いてくれないのだ。

 

「……ちょっとだけな」

 

「ええ、十分です。あなたはフランスの最後でジルを心配するようなセリフを言ってましたね。あれはどういう意味ですか?」

 

「どういう意味もなにも歴史であいつが狂気に身を落とすのは分かっているのだからあのセリフを言ってもおかしくないだろう」

 

 前まで自分の正体がバレてもいいって言ってたの取り消すわ。バレたらろくでもない目にあわされそう。

 

「そうですか。では最後の質問です。私とあなたは生前にもあったことがありますか?」

 

 ドキっとした。心臓がバクバクしているのが分かる。ここで下手なことを言ったらバレる。

 

 どうする? 誰か助けてくれないかな。周りを見てみると俺とジャンヌの会話には気づいているが傍観をするつもりらしい俺のサーヴァントたち。

 

 ヘルプコールを出すが、自分で何とかしろとしか言ってくれない。役立たずめ!

 

「どうしたのですか? 早く言ってください」

 

 ぐいぐいと近づいてくるジャンヌ。ああっ、肩つかまれた。痛い。こいつ筋力強いよ!

 

「ああ、えーと、無いです。さすがにそんな馬鹿げたことあるわけないでしょ」

 

 お願い見逃して。そう願っていると後ろから声が聞こえた。それは俺を一気に絶望へ突き落す声だった。

 

「その方は嘘をついていますわよ」

 

「え?」

 

 後ろを振り向くと藤丸君と藤丸君に抱き着いているサーヴァントがいた。それはフランスで最後に見たヤンデレの見本みたいな子だった。

 

「やはりですか。分かっていましたがこの期に及んで嘘を吐かれたことには腹が立ちます」

 

「え?」

 

「横からすまない。俺とも生前に出会ったことがあっただろうか?」

 

「え、いや、ない……です」

 

「それも嘘ですわ」

 

「やはりか。また会えて喜ばしいな。友よ」

 

「え?」

 

「あなたと再び会えたことを神に感謝します」

 

「え? 神はろくでなしばかりだよ」

 

 ギリシャ神話を見てみろ。

 

「それは本当のようです」

 

「そうですか」

 

 笑顔で近づいてくるジャンヌを見ながら俺は心の中で思った。

 

 やっぱり神様でいいやつは少ない。そしてジャンヌが信じている神は絶対にろくでなしだ、と。


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