物語の執筆者   作:カボチャッキ―

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第十五話

「ふん!」

 

「ぐっ‼」

 

 顔を近づけてきたジャンヌにヘッドバットを食らった。顔を近づけてきて少しドキドキしたのにがっかりだよ。あのどうやって着けているのかが分からない鉄のやつが当たってとても痛い。

 

 おでこを抑えているとジャンヌが抱き着いてきた。

 

「会えてよかった。あなたに伝えたい言葉があります。聞いてくれますか?」

 

 聞ける状態だと思いますか? 聞き返したいけどまだ痛くて声が出ない。

 

「私はあなたのことを……」

 

「にい……マスターは召喚を控えています! そこまでにした方がよいと思いますよ」

 

 ジャンヌが何か言おうとしたところ突如アルトリアが割り込んできた。

 

「……そうですね。まだ人理修復という問題が残っているのですからこんなことしてる場合ではないですね」

 

「ええ、その通りです」

 

 ジャンヌが俺に抱き着いているので顔は分からないが何か恐ろしい顔をしてる気がする。クー・フーリンが顔を上げるのは危険だと伝えてきている。

 

 言わなくても雰囲気で分かるよ。女性って怖いよね。

 

「さて、話も落ち着いてきたし春樹君の召喚を行おうじゃないか」

 

 ジャンヌが離れたところでダ・ヴィンチさんが話を戻してくれた。さすが万能人、こんな時でもいい仕事をしてくれる。

 

 そして俺は赤くなったであろうおでこを抑えながら虹色の石を3個ほど放り込んだ。そして出てきたのは約束をしていた彼女だった。

 

「マルタです。共に世界を救いましょう」

 

「……うん」

 

 来てくれて嬉しいけど、特異点でのバイオレンスな記憶が蘇る。こんなスケバンみたいな人じゃなくもっと俺を癒してくれそうな人がいい。

 

 今のところ女性で癒してくれそうなのがいないのが問題だ。マジで脳筋ばかりじゃないか?

 

「頑張りましょうね。えーと……」

 

「夏目春樹。好きなほうで呼んでくれ」

 

「では春樹で。これからよろしくね」

 

「うん、よろしく」

 

 まだ聖女モードでいる間に次に進めよう。マルタ姉さんが周りに挨拶している間に次の召喚に移る。そして出てきたのは……

 

「ヴラドだ。貴様を守るためにここに参上した!」

 

「ヴラドーーーーー! よく来てくれた! お前が来てくれるのを待ってたよ。お前みたいなまともな人と一緒にいたかったんだよ。これからよろしくな! 本当にお前に守られるなんて俺は幸せだよ!」

 

 あなたが全ては遠き理想郷(アヴァロン)です。

 

「う…うむ、任せてくれ。ランサーとして、そして護国の英雄としてお前を守ろう」

 

「かっこいい! 尊敬しています。結婚してください」

 

「そ…それは遠慮しておこう」

 

「断り方もかっこいい!」

 

 ヴラド三世マジでかっこいいです。何よりも彼のいいところは俺に物理的にも精神的にも優しいところである。しかも王様なのに手芸もできるという完璧さ。

 

 俺がテンションをあげていると後ろから頭を掴まれた。

 

「ねえ、春樹。なんで私の時は微妙な顔をしていたのにヴラドさんの時はそんなに嬉しそうなの?」

 

「え、いや、ほら同性だから、こう、話が合うから嬉しい的なやつです。はい」

 

 あっ、頭が割れそう。

 

「そんなことより、女性サーヴァントにあまり興味を持っていなかったのは男が好きだからなんですね兄さん。だから、マーリンと仲が良かったんですね⁉ 信じてたのに‼」

 

 何でそこで疑っちゃうのアル? マーリンはどう見ても女性好きじゃん。

 

「私の時も私よりもジルと一緒にいることが多かったのはそういうことですね」

 

 ねぇ、ジャンヌ。ジルは俺と君の間の結婚を祈ってたんだよ。たぶん英霊の座で涙流してるよ。

 

 周りから一気に声がかかる。そんな一気に声をかけられたら返事できないよ。そしてお願いだからクー・フーリンとヴラドはさ、そんな青ざめた顔でこちらを見ないで誤解だから。

 

 藤丸君も引かないで、マシュちゃんとヤンデレちゃんも藤丸君を守るように前に立たないで。

 

 泣きそうになりながら、俺は弁解する。

 

「俺はちゃんと女性が好きです。マーリンやジルとよくいたのは友達だからです。決して恋愛的なものではありません」

 

「本当ですか? 神に誓えますか?」

 

「それは無理」

 

「怪しすぎます」

 

 だから俺は神様をあまり信じてないから。それと神に誓うって言っても日本人では一生のお願い並みに軽いからさ、その言葉。

 

「無罪だから。ちゃんとそっちの女の子に聞いてみてくれぇ」

 

 疲れた、泣きそうだ。後、頭を放してください姉さん。

 

「ええ、女が好きという言葉に嘘はありませんでした」

 

「それなら……納得します」

 

 絶対に納得してないことは分かるが、蒸し返してもこちらが責められそうなので何も言わない。

 

 ただ、召喚するだけなのにボロボロになった俺は忘れていた3回目の召喚をする。

 

「サーヴァントアヴェンジャー。召喚に応じ参上しました。安心してください、きちんと仕事はしますから。ほらこれが契約書です」

 

 出てきたのはジャンヌの黒色だった。いろいろ驚いていると先ほど言っていた契約書を渡してきた。あ、フランス語だ。内容は簡単に言うと悪いことしません、それと頑張ります。というやつだった。

 

「そこにいる聖女様と一緒に戦うのは嫌ですが我儘はいいませんのでどうぞ使ってください」

 

「あ…ああ」

 

 彼女はフランスを滅ぼそうとしていたはずだ。そんな彼女が味方になるのは少し違和感を感じるがヤンデレさんが‘嘘だ!’と言わないので本当なのだろう。

 

 少し驚いているとさらに黒ジャンヌが続けて言った。

 

「それにジルにもあなたを助けてくれと言われましたから」

 

「え、ジルに会ったの?」

 

「いいえ、会ってはいません。しかし、ここに召喚されたときにお願いされた気がしただけです。感覚的なものですけどね」

 

「……そうか」

 

 ジル、お前はどこまでも真面目だな。

 

「これからよろしくな。俺は夏目春樹。好きに呼んでくれ」

 

「ええ。では春樹と呼びましょう。私のことはオルタと呼んでください。それとちゃんと面白いこと教えて下さいな」

 

 頷いて握手した。彼女とはあまり関わりはなかったが面白いことを教えると約束したのだからちゃんと教えてやろう。ここでのもともとの仕事は教師だったし。

 

 こうして俺たちはたぶん頼りになる仲間を加えて次の特異点に備えるのだった。

 


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