物語の執筆者   作:カボチャッキ―

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主人公との絡み

ヴラド三世
主人公とチェス勝負をして負けた。地味に傷ついた。

マルタ
今度は北斗の〇にはまる。特に南斗がお気に入り。この前も訓練用人形を切り裂いた。春樹は彼女がどこに向かっているのかが不安になってきた。

オルタ
春樹に‘髪を伸ばしたらかわいいと思う’と言われ髪を伸ばそうかと考え中。


第二十三話

 戦闘後、誰が春樹をお姫様抱っこするかという戦闘が再び行われ、話し合い(?)の結果、首都まではジャンヌで決まった。その時、彼女は咆哮して旗を振り回した。その姿はまさに、民衆を導く自由の女神とそっくりであった。

 

 終始にやけ面だったジャンヌを恨みがましい様子で見ていたネロだが、首都近くまで来た時に一気にテンションが爆発した。

 

 首都内に入りパレードのように人が盛り上がる中、民衆は見た。

 

「おい、皇帝様が抱きかかえているのは誰だ?」

「分からん、しかし、何とも大事そうに抱えているぞ」

「もしかしたら、婿かもしれないぞ!」

「つまり、結婚したのか⁉」

「そうに違いない。今は戦争で余裕がないが終われば挙式なされるぞ」

「これはめでてぇ! みんなもっと騒ごうぜ!」

「うぉおおおおおおおおおおおお!」

 

 民衆の声が聞こえ笑顔が最高潮に達するネロ。一方でブスっとした顔になるジャンヌ。他の面々は苦笑いしていたのだった。ちなみに春樹は悪夢に魘されているのか苦しげだった。

 

 城内に到着して、すぐ、ネロの配下の武将二人が窮地に陥っているという情報が入った。ネロはすぐに藤丸たちに命令して援護に行かせるのだった。

 

 

 目を覚ましてみたら誰かに抱きかかえられているようだった。少し気持ち悪さが残るが動けないこともない。動こうとしたらベッドに寝かされた。どうやら俺は女神様から逃げ出すことに成功したらしい。

 

 現状を把握するために薄目で周りを見たらネロが扉を閉めているところだった。

 

 ほっほう。女神から逃げ出したと思ったら、皇帝に監禁されるとは、なかなか強烈なコンボですな。

 

 諦めて寝ようとしたらネロが話しかけてきた。

 

「春樹よ、寝ていると思うが聞いてくれ」

 

 何だ?

 

「余はな、少しこたえているのだ。ここまで過去のローマ皇帝と何度か戦ってきた。もしかしたら神祖まで出てくるかもしれん。こうして過去の皇帝たちが出てきたのは余の歩みが間違っているからではないかと考えてしまうのだ」

 

 ……まぁ、普通こんなこと起こらないし、そんなこと考えてしまっても不思議ではないよな。

 

「余は第五代皇帝だ。そうなるように歩んできた。でも……」

「そんなこと考えるなネロ」

「春樹?」

 

 泣きながら、そんな顔しながら弱音を吐くなよ。

 

「俺が思うに、過去のローマ皇帝もそこまで凄い人物じゃなかったよ」

「何を言っている⁉ あの偉大な人物たちを凄くないだと?」

「これで正しいのか、これは間違っているのか、皇帝とは何だ。たくさんのことに悩んでいた。悩んだ結果、間違った結果、彼らは歴史に名前を刻んだ。そして次の皇帝たちにローマを繋いでいったんだ」

「……」

「今、ネロがやっていることと同じだろ?」

「……うむ」

 

 確かに全員が凄かった。でもネロも十分すごいと思う。

 

「それに、君が例え間違った道を選んだとしても、それは君が選んだ、君にしか選べない皇帝の生き様だ。最後まで進まなきゃ間違っているのか、あっているのかは分からないさ。だからどんな道でも進め、それがローマだよ」

「ローマ……」

「それにカエサルだってお前を見て笑っていた。あいつは認めてなかったらずばっというタイプだよ」

「ふふふ、そうかもしれんな」

「そうそう、辛いときは笑っとけ。第五代皇帝は豪華絢爛に笑え」

「そうだな、そうだとも。余は第五代皇帝ネロ・クラウディウスだからな」

「もし、他の皇帝が出てきても堂々とそんな風に笑って言ってやれ!」

「もちろんだ!」

 

 泣きながらネロは笑った。俺もそれを見て笑った。

 

「なぁ、春樹。彼らは悩んだ時にはどうしてたんだ?」

「そうだなぁ、どっかに息抜きに出かけたり、後は俺によく相談してきてたよ」

「……本当に余と一緒だな」

「ああ」

「春樹、余も相談していいか?」

「もちろん。どんな時でも相談に乗るよ」

「ありがとう。余は嬉しい!」

 

 ネロは飛び込むようにして俺にタックルしてきた。その拍子に俺とネロはベッドに横になってしまった。俺が抱き着いてきたネロの頭をポンポンと触っているとネロがすやすやと寝息を立て始めた。

 

 ゆっくり休んでくれよネロ。

 

 ネロをゆっくりベッドに寝かせようとするがネロのホールドが外れない。俺には分かる、このネロから絶対に放さないという覚悟が見える。

 

 俺は諦めて一緒に寝ることにした。

 

 

 それから数時間後、ネロは目覚めた。俺の顔を見て、‘かっこ悪いところを見せたな’と言ったが‘見慣れてるから気にしなくてもいい’と言ったら赤面して足早に出て行った。

 

 ちょっと胸がキュンっとしてしまった。

 

 今度は部屋の鍵がかかっていなかったので安心しながら歩いていると藤丸君たちとエンカウントした。

 

「あっ、夏目さん元気になったんですね」

「うん。元気になったよ。ドスケベな夏目さんは元気になったよ」

 

 いきなりスケベ扱いされたことを忘れん。

 

「そ、それは……そもそも夏目さんが紛らわしい偽名使ったからじゃないですか!」

「馬鹿野郎! 女神とか厄介なものに名前を知られることがどんなに恐ろしいことなのか分からんのか⁉」

「それは……いやいや、紛らわしい偽名を使ったことと関係ないですし、話をそらさないで下さい」

 

 こやつ、勢いで誤魔化されなくなったな。

 

「まぁ、この話は置いておこう」

「……そうですね」

 

 不毛な争いが長引くだけだ。

 

「俺が寝てた間に何かあった?」

「そうそう、ネロ帝の配下の客将にサーヴァントがいたんですよ。呂布と荊軻さんなんですけど」

「おお、心強いじゃないか!」

「夏目さん、この二人と知合いですか?」

「うーん、呂布も荊軻も見たことがあるなぁ程度だったよ」

「そうなんですか?」

「俺は英雄ならみんな知り合いってわけでもないしね」

「意外です」

 

 荊軻の時代には俺は後に始皇帝になる人と共にいた。呂布の時は珍しく魏呉蜀のそれぞれにいた。だから、何度か会うことはあったがあまり深くかかわらなかったんだよな。

 

 藤丸君との話で荊軻と呂布、二人とも話がかみ合わないなどの話をしていたらネロに呼ばれた。

 

「立香、ご苦労であったな。そなたの活躍で大事な将を失わなくてすんだ。感謝するぞ!」

「はい!」

「そして皆の者聞け! これより我らは敵本陣へと攻撃をしかける! 時間は明日の朝からだ。敵の攻勢も激しくなっているがガリアを奪還した今、我らに勝機はある!」

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

「今日は皆の者、よく体を休めるように! 以上解散!」

 

 俺は隣に立っていた藤丸君に話しかけられた。

 

「なんだか、ネロ帝元気になりましたね。ちょっと追い詰められているような感じだったから安心しました」

「俺もだよ」

 

 二人して安心したところで各自の部屋に戻った。そこでサーヴァントたちと軽く話し合うことになった。

 

「春樹、あなたネロ帝と何かあったの?」

「まぁ、励ましたよ」

「本当にそれだけ? あの様子だったら他にもあったんじゃないの?」

 

 ええい、お前は何が聞きたいんだマルタ。

 

「ちょっと落ち込んでたから、どんな時にも相談に乗るって言った。他にも頭をポンポンした」

「……それは駄目だわ。落ち込んでるときに親身になってもらったらやられるわ」

「ネロはそんなちょろくないでしょ」

「いやー、すでにあんたに首ったけの状態でそれでしょ? 今夜は覚悟したほうがいいわね」

「そんな馬鹿な」

「あなたたちはどう思う?」

 

 果物を食べている二人がこちらを向く。

 

「余として、今夜が決戦だな」

「私も同感」

「……誰か一緒に寝よ?」

「嫌!」

 

 そんなみんなして嫌がらなくても。

 

「とにかく、あんたの自業自得なんだから覚悟決めなさい!」

 

 そう言って追い出された俺は風呂に入り、とぼとぼと自室(監禁部屋)に戻った。

 

 そして寝ていると部屋にノックの音が響いた。

 

「春樹、余である。起きているか?」

「起きているよ」

 

 返事をするとネロが部屋の中に入ってきた。

 

「少し相談したいことがあってな」

「うん、聞くよ」

 

 するとネロはベッドに腰をかけていた俺の横に座った。距離が近い。

 

「それで相談って何かな?」

「うむ、明日のことなんだがな、……その……勝てるか心配になってな」

「それなら大丈夫だよ。藤丸君や客将のみんなもいるじゃないか」

「そうだな。それでだな……今夜は……その……」

 

 ちらっちらっとこちらを見ながらためらいがちなネロに俺は昔を思い出した。彼女は寂しくなったり、心細くなったりするとよく部屋に来て一緒にいてくれと言ってきたもんだ。

 

「いいよ、ネロが寝るまで一緒にいようか」

「うむ!」

 

 嬉しそうに笑ったネロに手を引かれて俺はネロの部屋に行った。そして彼女が寝たのを見守った後に自室に戻って寝直したのだった。


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