物語の執筆者   作:カボチャッキ―

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ジークフリート
風呂場で春樹に後ろに立たれてビンタを食らわせた。春樹はそれ以来後ろから近づかなくなった。やはりすまないと思った。

ジャンヌ
‘自分の信じる神様は自分の中にいる’と悟り始めた。春樹に‘その神様、頭大丈夫?’と聞かれてビンタを食らわせた。春樹はやはり神様はあかんと確信した。

清姫
春樹を追いかける女性を参考にストーカー力をアップさせた。今なら、どこにでも侵入可能。


第二十四話

 朝、目を覚ますと体が縛られて動けなかった。そして目の前にネロの寝顔があった。俺の部屋じゃなくてネロの部屋になってない?

 

 ……何があったの昨日? 俺は確か自分の部屋で寝たはず。なのに何故俺は簀巻きにされて寝かさせられているのだろう?

 

 何とか抜け出せないかと体をくねくねさせていると隣からネロが起きる気配がした。

 

「おお、目を覚ましたか春樹。では目覚めのキスをしようではないか」

「⁉ っちょ、あかん。やめて、この状態で。あっ……」

 

 キスをされてしまった後にネロに話を聞いたところ、一緒に寝ると思っていたのに勝手に消えていたので今度は逃げないように捕縛して連行したとのこと。

 

 俺が間違っているのかもしれないけど、普通は俺のほうに来て寝ない? そこで捕縛&連行ってパワフル過ぎない? 

 

 言いたいことはあるけど無意味なので黙っておく。俺はネロに勝手に出て行ったことを謝って自室に戻り着替えて食堂に向かった。

 

 食事後、今回の連合帝国首都進撃作戦について説明された。俺は後方でスパルタや呂布など会話ができない組と待機するらしい。貧乏くじを引かされた。一方で藤丸君とネロは前方で戦うとのこと。

 

 作戦会議も終わりついに俺たちは首都に向けて進んだ。

 

 

 後方でバーサーカー二人が暴れないようにのんびり進んでいると、敵が襲い掛かってきた。

 

「全員、混乱することなく迎撃!」

 

 一時、混乱したもののすぐに体制を立て直したネロ軍とサーヴァントたちは敵軍に反撃した。

 

 残された俺は暴走し始めたスパルタクスを抑えるために近づいた。

 

「スパルタクス、落ち着いてくれ、戦闘はまだまだあるから」

「否、やつらが圧制者である!」

「会話しようよ! それに彼らは圧制者じゃないって! 他にも圧制者はいるって」

「共に行こう同士よ!」

「WHAT?」

 

 すると俺はスパルタクスに肩車をされて共に突撃することになった。

 

「フハハハハハハハ、我が愛を受け取るがいい」

「……すげー揺れる。頑張れ俺の筋肉! 落ちたら頭を引きずられるぞ! ……あっ」

「このまま行くぞ!」

「……誰でもいいから助けてくれぇ! そこの敵軍の兵士、止めろぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

 俺は肩に足を引っかけた状態になってしまった。よって頭をスパルタクスの尻にぶつけながら戦闘をすることになった。

 

 あまりの辛さから逆さ状態で敵兵に助けを求めるために叫ぶと顔を引きつらせて下がった。よく見ると全員がスパルタクスから距離を取り始めた。もちろん味方も。

 

「何をやっているんだ! もっと根性出せよ! ローマだろ⁉」

 

 首をかくんかくんさせながら叫ぶ俺に今度こそ敵兵が撤退し始めた。

 

「ストップ、敵兵、逃げた! 止まって スパルタクス!」

 

 俺の声が聞こえたのかオルタが戻ってきて助けてくれた。最近、俺の中でオルタへの好感度が上昇中です。

 

 首がむち打ちになった俺は考えを巡らせていた。敵が何をやりたいのかが分からないが、嫌な予感がする。主に俺の身に何かが起きそう。

 

 前方にいるネロ達に無事を知らせるように兵士に伝えたところ、前からブーディカがやってきた。

 

「話は聞いたよ。スパルタクスのことありがとね。今度は私も一緒に面倒見るよ」

「本当にありがとうございます」

 

 報告に行った兵士君、ナイス。俺が将なら褒美をめっちゃ出すわ。

 

 ブーディカが来たことによって落ち着いたスパルタクスと呂布と共に進んでいると前方から叫び声が聞こえてきた。

 

 何かでっかい敵が出たんだろうなと考えを巡らせていると、こちらにも敵襲があった。

 

「みんな、またあの二人が暴走したから敵を倒しつつ連れ戻してきてくれ!」

 

 俺の命令に頷いたサーヴァントたちがスパルタクスを追いかけ、俺はその場で待機していた。全方向で戦闘が行われている中、あるところででっかい馬が兵士を踏みつけていた。よく見ると見たことがある赤毛の少年もいる。

 

 あいつ、サーヴァントだ! 

 

 やばいと思った俺は令呪を発動しようとしたが、体が動かなくなった。

 

 またですか⁉ 最近多くない? 

 

 動かないことに焦っていると赤毛の少年が俺の前に来た。

 

「おや、こんなところに不思議な服を着ている人がいるな。あなたは誰だい?」

「俺はしがない旅人だよ少年」

「あははは、しがない旅人がこんなところでボロボロになるなんてことはないと思うよ」

「俺も少年がこんな戦場のど真ん中で馬に乗って暴れまわるなんてことはないと思うな」

「言われてみたらそうだね。サーヴァントとして召喚されたからか知らないけど僕が戦うことに違和感がなかったよ」

「……召喚されたことは関係ないと思うな。お前の性格が原因だろ。アリストテレスも諦めていたし」

「うん、そうだね。先生にもいっぱい注意されたからね。そしてやっぱりあなたは●●●先生ですね」

「違うと思うな」

「そんなことないさ。不思議と分かるんだよ。普通の人なら絶対に分からないけど先生は他の人とは圧倒的に雰囲気が違うからね。遠目から見たときに‘あ、先生がいる’って分かったよ。きっと他の英雄たちも完全には分からないかもしれないけど何となく分かる人は多くいると思うな」

「……そんな嫌な情報知りたくなかった」

 

 どおりで、すぐにばれると思った。……自分から墓穴掘ったのもあったけど。

 

「さて、このまま先生と昔みたいに問答をしたいけど時間がないから、もう行くね。……そうだ! 先生も連れて行こう。そのほうが面白くなりそうだし」

「そんなついでで連行しようとしないでくれません」

「いいからいいから、ほら先生、行くよ」

 

 文句を言う前にアレキサンダーは俺の体を抱きかかえるとブケファラスに乗って走り出した。

 

 子供に抱えられるなんて恥ずかしい!

 

 撤退していく軍を見ているとブーディカも誘拐されていた。この子は一体何がしたいのだろうか?

 

「アレキサンダー、君は何がしたいの?」

「うん? 僕はねネロ・クラウディウスと話がしてみたいんだ」

「それは大事なことか」

「とても大事なことだよ」

「……お節介だな、相変わらず」

「それは先生譲りだからね。先生もいろんな人にお節介を焼いて苦労してるんじゃないの?」

「うーん、否定できないのが辛いところだな」

 

 二人して笑ってしまう。こうして話してしまうのも仕方がないだろう。大切な弟子だったのだから。

 

 

 誘拐された俺とブーディカはとある部屋に別々に入れられた。途中でインテリヤクザみたいな人がいたが誰だろうか。結構現代の人っぽかったな。

 

 それよりロマンと連絡せねばと会話を試みるができない。

 

「カルデアの魔術師頑張れよ!」

 

 叫んだところでどうしようもないので現状を整理する。

 

 まず、俺の体が動かなくなった結果、誘拐された。つまり藤丸君が成長するために俺が邪魔だったということだ。これは前回のフランスと同じだろう。アレキサンダーは敵対する気はないと言っていたし死ぬことはないだろう。

 

 彼らが迎えに来てくれるまで俺は待って居よう。俺は部屋で横になるのだった。

 

 

 夏目春樹とブーディカが誘拐された。その情報はネロを大きく動揺させた。ちなみにカルデアメンバーは‘また誘拐された。でも大丈夫だろう’と結構薄情なことを考えていた。

 

「……どうすればいい春樹?」

 

 弱弱しく呟かれた名前に藤丸もまた動揺した。彼にとってサーヴァントとは物語の中の英雄。つまり憧れの存在だった。どのような逆境にも立ち向かい笑ってそれを乗り越える。そのような存在であると考えていた。

 

 しかし、彼女はどうだろうか。大事な人を誘拐され、ピンチに立たされた。その彼女は笑顔ではなく悲壮感を漂わせていた。彼は理解した。英雄もただの人間なのだと。大切な人から離れたことを心細く思う自分と同じ人間なのだということを。

 

 この状況でマシュもサーヴァントも何も言わない。だが、藤丸には何となくだが分かった。‘自分がなんとかしなければならない’と。

 

「ネロ帝!」

「な、なんだ?」

「何を止まっているんですか! 夏目さんやブーディカさんはあなたの助けを待っているんですよ!」

「余の助け?」

「そうです!」

 

 ネロが顔を上げて藤丸の顔を見る。その顔は決意に満ちた顔をしていた。その顔を見たネロは深呼吸をすると上を見た。

 

「感謝するぞ、立香。余はどこか弱気になっていたと思う。しかし、ここで止まるわけにはいかない! すでに荊軻からの情報で敵拠点は分かっている。このまま敵拠点を砕き二人を助けるぞ!」

「はい!」

 

 頷くと藤丸はロマンに情報を求めた。敵がサーヴァントであること。今から行く砦が罠であること。それらの情報を踏まえて藤丸は決めた。

 

「突撃しましょう! 敵の罠があったとしてもマシュやみんながいるなら勝てます!」

「はい!」

 

 彼の決断に笑って答えるサーヴァントたち。

 

「よく決断してくれた、藤丸! これより我らは敵の砦に攻め込む。みなのものついて参れ!」

 

 藤丸は、自分には何もできないと考えていた。しかし、その考えが間違いであることに気付いた。そして自分もまた今回のように英雄の助けになれるように成長しようと心に誓ったのだった。




あけましておめでとうございます!本年もよろしくお願いします!

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